2014年1月19日(日) 指文字の文化 その4
色んな場で使われる指文字について、昨年後半、当ブログに下の3件の記事を投稿した。
指文字の文化 その1 (2013/11/14)
指文字の文化 その2 (2013/11/17)
指文字の文化 その3 (2013/12/10)
その1では、市場の競りでの「手やり」や、日常生活で使われる指文字について、その2では、フグの「袋競り」での袋内部の手の形等について、触れている。
又、その3では、手話での数字の表現法、手を使った数字の2進デジタル表示等について述べている。
本稿はこれらの続編だが、指文字の一種と言える手の形を使う拳遊びの中で、最も馴染みの深い「ジャンケン」を話題にしている。
○拳遊び
手の形を使う遊びは、一般には、「拳遊び」と呼ばれるようだが、大きく、
・数拳
・三すくみ拳
に分けられるようだ。(じゃんけん - Wikipedia)(拳遊び - Wikipedia)
・数拳は、詳細は未調査だが、古来、お座敷などでの遊びとして行われ、数当てゲームのような要素が強く、自分の手と相手の手の数の合計を、予め予想して当てるような遊びが多いと言う。全国各地に、多くの数拳の遊びがあるようだ。
・三すくみ拳とは、3種の手の形相互の間に、強みと弱みとのエンドレスな関係を持たせたものだ。手の形の数は3種で、ジャンケンが代表的なものである。
手の数が、6種もある球磨拳(六すくみ)から簡略化されて3種になり、三すくみのジャンケンになった、とも言われる。(球磨拳 - Wikipedia)
三すくみ拳は、勝負を決める手段として多く使われている。
以降は、ジャンケンについて、やや具体的に触れることとする。
○ジャンケンのルール
ジャンケンは、道具が全く不要で、3通りの手の形だけを使う所作(動作)だ。日常的に、子供から大人まで利用される、簡便で優れた方法だろう。
ジャンケンは、勝ち負けを決めたり、順番を決めたり、グループ分けをするなど、実用される一方、遊びとして楽しまれることもある。
日本のジャンケンでは、3通りの手の形として、以下の、グー、チョキ、パーが使われている。
(ネット画像より)
ジャンケンで使われている、この手の形を、数字として見ると、前稿の指文字の文化 その1 で述べたように、それぞれ、
グー :全閉 → 数字の 0、5
チョキ :2本指 → 数字の 2、7
パー :全開 → 数字の 5
を表しているのだが、ジャンケンは、これらの数字の意味とは無関係である。
手の形が、最も、出しやすく、区別しやすく、分りやすい、3種にした、と言う事が重要だ。
この3つの手の形相互の強弱・優劣関係は、
グー は、チョキに強く、パーに弱い
チョキ は、パーに強く、 グーに弱い
パー は、グーに強く、 チョキに弱い
という関係になっている。
ジャンケンの本質は、上記のように、3通りの手の形が、“それぞれに対して、強みと弱みを持っていて、公平で対等な力関係を作っている”、ということだ。
この様な、優越・劣勢の関係を、「三すくみ」と言っているのだが、分りやすい言葉で言えば、上には上がある、というエンドレスな関係になっている訳だ。
このような関係があることで、対等で公平に勝負が決まる手段、と言う事が保障されている、素晴らしい方法だ。
原理的には、このような「すくみ」の関係にある手の数としては、幾つでも考えられる訳だが、最も少ないものが3で、3という数の魔力でもあろうか。
通常、三すくみとは、3者が、“にっちもさっちも動きが取れない状態”、“デッドロック状態”、という意味だ。竦(すく)む とは、日頃は余り使わない言葉だが、辞書には、
竦む:縮んで動かない、おそれ縮む
などと出ている。
ジャンケンで、同時に3種の手が出れば、勝負が決まらずアイコ(相子)となる。この状態が、いわゆる、三すくみの状態で、ある頻度で出現することとなる。 三すくみの状態になると、このままでは、埒が明かないので、やり直しが必要となる。
又、全員同じ手が出た場合も、勝負が付かないので、アイコでやり直しとなる。
冒頭に出ている、「三すくみ拳」という呼称について一言。 当初、ジャンケンが、三すくみの関係を使った拳と書かれてあるのを見た時は、“劣勢(すくみ)だけでなく、優勢(まさり)もあるのに、偏ったネーミングでは”、と思ったことだ。でも、
?三者それぞれが、それぞれに対して、優勢・劣勢の対等な関係を構成している
?三者が同時に出された時は、三すくみの状態になる
という、二通りの意味を持つ呼称である、と解することで、一応、納得している。
より的確な呼称案としては、3種の手相互が、優劣双方向で、同格、対等の関係にある事から、
同格拳、三角拳、三角同格拳、三つ巴拳
などはどうだろうか。
○石と鋏と紙
日本のジャケンでは、グー、チョキ、パーの3種の手の形と、実在のもので形が似ている物、石、鋏、紙を対応させている。
以下に示すように、これらの物相互間の生活体験上での強弱関係が、ジャンケンでの関係とほぼ合致していて、連想しやすくなっている。又、グー、チョキ、パーの語源は知らないが、発音の語感とも、かなり、合致しているのも面白い。
言ってみれば、視覚と、エア聴覚(?)を組み合わせたネーミングと言えるようで、これらを考え出した先人の智恵は、素晴らしい。
グー :拳(こぶし)が石に似ている 石→紙には包みこまれるが、鋏には負けない
:拳をグーっと出す
チョキ:2本指の形が鋏に似ている 鋏→石では壊れるが、紙を切れる
:鋏でチョキチョキ切る
パー :手を開いた形が紙に似る 紙→鋏には切られるが、石は包み込んでしまう
:手をパーっと開く/紙でパーっと包む
上記の、3種の手と物の組み合わせと、それら相互間の強弱・優劣関係を、矢印で図示すると、下のようになる。
凡例: 矢印の先に対し強い
矢印の先に対し弱い
図では、強い関係が、反時計廻りで、逆の、弱い関係が、時計廻りになっている。
図で言えば、日本のジャンケンの、グー、チョキ、パーは、強い関係を表した呼び方になっている。
次稿では、実際のジャンケンや、国際的な広がり等について、触れることとしたい。