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指文字の文化  その5

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2014年1月25日(土)  指文字の文化  その5

 

 

 色んな場で使われる指文字について、この所、当ブログに、下の4件の記事を投稿している。

      指文字の文化  その1 (2013/11/14)

      指文字の文化  その2 (2013/11/17)

      指文字の文化  その3 (2013/12/10)

      指文字の文化  その4 (2014/01/19) 

 最近の前稿では、手と指の拳遊びと、その代表であるジャンケンのルールについて取り上げた。本稿では、ジャンケンの実際として、2人でやる場合の確率的な側面について、述べる事としたい。 

 

◎ジャンケンでの確率を求める

ジャンケンで、最も単純な、A、Bの2人が勝負する場合の確率を考えてみたい。 

◇1人が出す手は、グー(G)、チョキ(C)、パー(P)の3通りなので、2人では、 3×3=9通りの場合がある。

◇1回目で、2人が異なる手を出した場合は、勝負が決まる。Aの1つの手に対して、Bの手は2通りあり、全体では、3×2=6通りとなり、この確率は、

   6/9=2/3

 2人が同じ手を出した場合は、アイコ(分りやすくするため、カタカナ表記に)になる。アイコになるのは、2人がともに、G、C、Pになる場合で、手が3通りあることから、1回目でアイコになる確率は、

   1/3×1/3×3= 1/3

である。

 勝負が決まる確率は、全体から、アイコになる確率を引いても求められる。

   1−1/3=2/3

◇1回目がアイコの場合は、2回目の勝負になる。

2回目で勝負が決まる確率は、以下となる。

   1/3×2/3=2/32

2回目もアイコになる確率は、

   1/3×1/3=1/32

従って、2回目迄で決着する確率は、2回目もアイコになる確率を引いて

   1−1/32  

となる。

◇1、2回目ともアイコの場合は、3回目の勝負になる。

3回目も、アイコになる確率は、

   1/32×1/3=1/33

従って、3回目迄で決着する確率は

   1−1/33

となる。

 

◇このように見て来ると、(n−1)回目までアイコになり、n回目の勝負になって、n回目もアイコとなる確率は、

   1/3n−1×1/3=1/3n

従って、n回目迄で決着する確率は、

   1−1/3n

となる。

 

 

◎決着するまでの平均回数を求める

◇ネットのWikipedia情報では、2人のジャンケンで決着するまでの平均回数は、答えだけ1.5回と出ていて、算出根拠は示されていない。(じゃんけん - Wikipedia

  そこで自分なりに考え、この場合の平均回数は、勝負の回数とそこで決着がつく確率との積(期待値)で、試行を限りなく(∞)繰り返した場合に得られるとすると、前述の値より、平均回数は、以下の無限級数の式となる。

 1×2/3+2×2/32+3×2/33+4×2/34------------+n×2/3n+--------

=Lim n→∞Σ1n(n×2/3n)

この無限級数は、n→∞では、どうなるのだろうか? 1.5に収斂するだろうか。 

 

◇この無限級数の各項は、分子側が一次関数の変数だが、分母側は指数関数の変数だから、分子に比べて、分母側が急速に大きくなっていくため、各項は、急速に小さくなっていくことから、感覚的には、収斂しそうに見える。

n=5位まで実際に計算して見ると、だんだん、1.5に近づいていくのが分る。

 でも、正しく求める方法が分らず、今回は、ネットにある1.5を、そのまま引用することとし、今後、機会をみて調査・検討したい、としていた。

 

 所が、つい先日、遠い昔の学生時代に買った、古びた微積分の本(「微分積分學精説」 岩切晴二著 培風館)を眺めていたら、全て正数からなる無限級数(正項級数という)の収斂、発散については、「ダランベールの判定法」という定理があるという記述を、たまたま見つけた。 これによれば、無限級数Σ=anで、判定式

    Lim n→∞ an+1/an=r

で、rの値が

    r<1  ならば 収斂

    r>1  ならば 発散

と言えるという。

 しかも、練習問題として、以下の級数

  1/3+2/32+3/33+---------------+n/3n+----------

の、収斂、発散を調べよ、とあるではないか! この式は、正に、今回の2人のジャンケンの確率で出てきた式だ。しかも、練習問題の答が、rは1/3で収斂、とある。これで、勇気百倍である。

 

 ダランベールの定理を、早速、上記の平均回数の無限級数に当て嵌めてみると、判定式は、

   Lim n→∞ an+1/an=Lim n→∞((2(n+1)/3n+1))/((2n/3n))

                   =Lim n→∞2(n+1)・3n/2n・3n+1

                 =Lim n→∞(1+1/n)/3

                 =1/3<1

となり、練習問題と同様、rは1未満なので、収斂である。 

 

◇ここからは、収斂値を、どうやって求めるか、の模索である。

ここで、昔習った2つの計算方法が思い浮かんだ。

・一つは、自然数1〜n迄の和を求める場合等、順に、各項目が増えていく場合には、

   元の数列と、順序を逆にした数列の両者を足して2で割る(幼いガウスが発見!)

という単純だが、素晴らしい方法である。

 

・もう一つは、無限等比級数の部分和や、極限値を求める場合、

   元の級数と、比を掛けた級数との両者の差を求める

という方法だ。この方法で部分和の式を求め、それから、極限値を算出するものだ。 

 

 後者の場合、等比rが1未満の場合は、級数は、n→∞で収斂する、と習ったものだ。

例えば、

   Lim n→∞Σ0nrn =1+r+r2+r3+-----------+rn+-------------

では 、部分和Snは、 

     Sn=1+r+r2+r3+-----------+rn

両辺に、rを掛けて、

    rSn=   r+r2+r3+-----------+rn+rn+1

両式の差を求めると

(1−r)Sn=1−rn+1

∴  Sn=(1−rn+1)/(1−r)

となり、これから、n→∞で、rn+1→0 となることから、極限値は、

   Lim n→∞Sn=1/(1−r)となる。

 

ただ、これまでは、ダランベールの判定法という呼称は知らなかった。

 ダランベールの判定法は、等比級数だけでなく、例えば、Lim n→∞∑(n2/n!)の様な級数でも、前後の項の比 rと、1との大小関係から、収斂、発散を判定できるようだ。

言うまでも無いが、収斂するか否かを判定する比 rの値と、収斂値は別である。

 

 

◇これらから類推し、ジャンケンの平均回数を算出する、等比級数の部分和の両辺に、等比1/3を掛けて、元の式との差分を取ってみた。すると、各項が1個づつ残る、綺麗な等比級数が得られたのである。この時は、何とも言えない、すっきりした嬉しさを味わった。

 

以下に、具体的に示す。 

n項迄の部分和をSnとすると、

 Sn=1×2/3+2×2/32+3×2/33+-----------------+n×2/3n

    =2/3(1+2/3+3/32+4/33+-----------------+n/3n−1)

ここで、両辺に、3/2を掛けると、

3/2Sn =1+2/3+3/32+4/33+------+n/3n−1+(n+1)/3n  ?

 

?の両辺に、1/3を掛けると

1/2Sn= 1/3+2/32+3/33+---+(n−1)/3n−1+n/3n      ?

?、?式の差をとると、以下のように、各項が1個づつ残ることとなる。

即ち、Snは、

Sn=1+1/3+1/32+1/33+-----------+1/3n−1 +1/3n     ?

という、綺麗な等比級数となる。

 

?の両辺に、等比1/3を掛けて、二つの式の差とる、同様の方法でSnを求めると

Sn=(1−1/3n)/(1−1/3)

  = 3/2(1−1/3n)

従って、n→∞では、比の値が1/3で、1以下であるため、1/3n→0となり、

    Lim n→∞Sn=Lim n→∞3/2(1−1/3n)=3/2=1.5     

と、1.5に収斂する事が分る。  

 

 

 以上、興味に任せてかなり深みに嵌ってしまったが、何とか数値が求められたことで、自分なりには、すっきりした事ではある。

ジャンケンの話は、次稿以降も、暫く続きそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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