2013年11月30日(土) くさやー1 臭い珍味
○ 先日、知人が、伊豆七島の一つ新島の名物である「くさや」を、クール宅配便で届けて呉れた。 アオムロアジの一夜干しで、何と、7枚も入っているではないか! 最近は、御目にかかったことは無く、久しぶりのご馳走である。
包みを開くと、かなり強い臭いだが、何はともあれ、早速、1枚を、台所のグリルで焼いてみた。部屋の中に臭いが立ち込めたが、夫婦とも好きな口なので、殆ど気にならない。
筆者にとっては、懐かしいにおいで、食べて見ると柔らかく、コクがあり奥行きるのある旨味である。
一夜干しの くさや 焼いたところ
今後の保存も考慮し、物は試しと、2枚は、更に天日で干して見る事とした。ハエ除けに、ネットを被せてルーフバルコニーの棚からぶら下げたが、2日間も干したら、すっかり乾燥し、普通の硬さになった。
更に外で干す
そして、残った4枚は、臭いが他に移らないようアルミホイルで包む等して、冷蔵庫で冷凍にした。その中から、酒好きの知人に一部、お裾分けしている。
以前、文京区に住んでいた頃は、近くにある乾物屋で、時たま、くさやを買ったが、品物は、よく乾燥したものだった。
足立区の現居に、数人の来客があった時、ルーフバルコニーに、七輪を持ち出して、周囲を気にしながら、くさやを焼き、酒の肴で頂いたこともある。残しておくのは厄介なので、全部焼いて仕舞い、ほぐして軽く酒に浸し、瓶に入れて、後で、じっくり味わった。
○ くさやについて、改めて、ネット等で調べてみた。
くさやの材料となる魚は、アオシマアジ、シマアジ、トビウオなどだ。このアジは、通常よりもやや大型で、シマアジは脂がのっており、それに比べて、アオシマアジは脂分が少ないようで、トビウオは更にあっさりしているという。
「くさや」の語源については、“くさい”から来ていると言うのが、常識的な説だが、呼称の語尾が、××や となっているのが面白い。
魚の体液や内臓やうろこ等が発酵した液体(浸け汁、くさや液 通称「くさや汁」)に、原料の魚を浸ける。
くさや汁には、数日間ほど浸けると思ったのだが、長くて一昼夜ほど馴染ませて取り出し、水洗いしてから干すと言う。
くさや汁に漬ける(ネット画像より)
昔、島では、塩水に浸して干物を作る時、幕府に献上する貴重品だった塩を、出来るだけ節約するため、同じ塩水を繰り返し使ったようだ。このことから、いつの間にか くさや汁が出来ていて、くさやの旨みに気付いた、と言われる。
くさや汁には、200年〜300年も前から伝わるものもあり、それぞれの家伝の秘宝と言えるようだ。
汁から上げて天日で乾燥する場合、元々は、上干し(4〜5日)ものが多かったようだ。が、最近は、より柔らかい、中干し(2〜3日)ものに人気があるようだ。
そして、今回の、文字通りの一夜干しは、食べ付けてしまうと、それ以上に美味しいものはない、と嵌ってしまう、という触れ込みである。( 三井グラフ バックナンバー|三井広報委員会 )
○ くさやは、アジの干物の保存食だが、通常の干物とは異なる発酵食品であることから、独特の風味(臭いにおい 臭味)があり、このことが、好悪が分れる分岐点でもある。
世界中で臭いと言われる発酵食品を、臭い順に並べると以下のようになると言う。臭みの度合いを表す、アラバスター単位(Au:Alabaster unit)という尺度があるようだ。(くさや - Wikipedia より)
順位 食品名 国 材料等 Au
1 シュールストレミング スエーデン ニシン塩漬缶詰 8070
2 ホンオフェ 韓国 エイ 6230
3 エピキュアーチーズ ニュージーランド 缶詰チーズ 1870
4 キビヤック 北極圏 海鳥 1370
5 くさや(焼きたて) 日本(伊豆七島) ムロアジ 1267
6 鮒寿司 日本(福井) 鮒・米 486
7 納豆 日本(東日本) 大豆 452
8 くさや(焼く前) 日本(伊豆七島) ムロアジ 447
9 沢庵(古漬け) 日本 大根 430
10 臭豆腐 中国 豆腐 420
上記の、No.1〜No.4迄は、聞くのも初めてで、食べた経験も無い。特に、No.1、No.2は別格で、日本代表としてベスト5に入っている、焼いたくさやの、数倍も臭いと言うのはどんなだろうか、想像を超えている。この辺迄が、珍味と言えるだろうか。
世界一臭い珍味 シュールストレミング(ネット画像より)
No.6以降は、日本では、結構馴染がある食品で、どれも、自分で食べた経験があり、身近なものだ。臭い食品の例として、納豆が挙げられているのは、納豆ファンを自任する自分としては、やや心外だが、反面、嬉しいような気分もある。
余談だが、上記の韓国のホンオフェに類似した、アンモニア臭が強い発酵食品として、アイスランドで作られる、ハウカットルと言うのがあるようだ。 ニシオンデンザメ等の肉を、常温で数カ月、熟成させたものとある。 これの臭さは、上述のAuでは、どの位になるのだろうか。(アイスランド発!猛臭シャーク伝説!)
ハウカットル熟成中
先日、当ブログの下記記事で、広島県北の山間部で、アンモニア臭のするサメ肉が食べられている話題に触れたところだ。
気仙沼あれこれ その2 (2013/11/20)
アイスランドでは、アンモニアを出すサメ肉を、更に積極的に生かした、猛臭の保存食にしていたようで、嬉しくなる。アンモニアの臭いは、臭いものの代表の一つと言う事であろう。
次稿では、人間の五感全般と、その中の嗅覚に関し、心地良いにおいと、嫌なにおい等について触れる予定である。