2013年11月26日(火) 地球の未来とCOP19
国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)(地球温暖化防止条約等 とも)に関する、今年の締約国会議(COP19)が、この11月、ポーランドのワルシャワで開催され、今回も極めて難航したが、22日の終了予定が1日延長されて、幸いにも、なんとか合意に漕ぎ着けられたようだ。
会議風景(ネット画像)
地球上では、温室効果化ガス(CO2、メタン等)が原因と言われる、極地等の温暖化傾向や、台風・竜巻等の異常発生や、島嶼での海面上昇等の、例年にない気候変動現象が続き、被害も多発していて、待ったなしの状況だろう。
でも、これらの現象の科学的な因果関係が明確でなく、経済成長も必要とあって、人間社会は、相変わらず、目先の利害に終始し、対策が進んでいない状況だろうか。
1993年に京都で開催されたCOP3で採択された京都議定書は、温室効果ガスの排出を規制する拘束力をもつ唯一の国際的取り決め(広義の条約)だが、
・先進国にしか削減義務が課せられていない
・アメリカ、中国という2大排出国が参加していない
・2005年から始まって2012年で期限が切れる
と言った、基本的な問題を内包している。
この事から、2012年の期限が切れる前に、参加国の不平等の問題を解決しながら、次の目標を設定し、新たな議定書を採択する努力がなされて来たのだが、結局、実を結んでいない。
苦肉の策として、京都議定書の期限を、2013〜2019を第2約束期間として、2020年直前までに延長したのだが、参加国、内容とも、バラバラの状況で、現在は、殆ど有名無実と言ってもいい状況だろう。
2010年以降の最近のCOP会議は、以下のように、京都議定書を延長して形だけは保ち時間を稼ぎながら、何とか、次の新たな枠組みでスタートすべく、努力がなされてきている訳だ。(次図は COP19「枠組み」駆け引き : 特集 : 環境 : YOMIURIONLINE))
此処までの全体の状況については、以前、毎日新聞系のサイトで見つけたもので、1昨年のダーバン会議後に作られた下図が、分りやすく整理されていて、現在も基本的には変わっていないので引用したい。
そして、今回のCOP19では、今後のロードマップは纏まらないのでは、と懸念されたのだが、ギリギリで、なんとか合意されたようだ。
それによれば、
・米、中を含む全ての加盟国が参加して(下図:データ集[1] (世界のCO2排出量) - JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター)
・2020年から新たな枠組みでスタートする
ために
・2015年3月迄に、各国が削減目標(自主目標)を提出(自主目標の評価法は?)
・2015年のCOP21で新たな枠組みを合意
などを含む、以下の様なスケジュールが固まったようだ。(下図:COP19:合意 自主目標を15年3月末までに提出− 毎日jp(毎日新聞) )
やや大げさに言えば、今回の合意には、“地球の未来が懸かっている”、と言えるだろう。形の上では立派な合意ができたので、この通りに実行していくことが極めて重要なのだが、国によっては、提出された目標値が甘く、評価に耐えられない等、この行動計画が、絵に画いた餅にならないと言う保証はない。
又、今後の状況如何では、米国や中国等の姿勢が変わる可能性もあろう。 アメリカには、途中で京都議定書から離脱した前科もある。
一方、世界の排出量ワーストワンの中国だが、国内の深刻な大気汚染の現状から、この国の政府が、本気で、環境保護に取り組むことになるだろうか。
今後、先進国と途上国間の、利害が大きく衝突する可能性もあろう。
此処で、日本のポジションを見てみよう。日本は、以前は、極めて熱心に取り組んで来たのだが、2011年の東日本大震災による、原発の全面停止と、火力依存の増大という事態に遭遇し、極めて厳しい状況になった。 このことから、当初の目標達成は不可能となり、残念ながら、議定書からの離脱を表明し、自主規制に切り替えている。
その後、国内の論議で、新たな削減目標を固め、今回の会議で、以下のように、正式に、方針転換を表明している。
90年比 △25% 2009年の国連気候変動サミットで表明(鳩山総理)
↓
05年比 △3.8% 今回2013年のCOP19で表明(石原環境相)
(90年比 だと、+約3%と大きく後退)
今回の数値は、京都議定書の第2約束期間である、2020年までに達成する自主目標になるが、原発の稼働はゼロとしているようだ。
2020年からスタートする新たな自主目標については、今後の原発の方向も見据えながら、来年の国連気候変動サミットの動き等も踏まえて、2015年3月に提出する迄に、見直す事となるだろう。
日本の目標が後退した事に対し、国際的な批判も強いようだが、これを緩和するため、3年間で、資金面で1.6兆円の途上国支援を行う事を、今回、表明している。
先進的な省エネ技術・温室効果ガス削減技術などを持つ日本としては、苦しい中でも、リーダーシップを発揮しながら、地球環境の維持・改善に貢献する道を探ることになるだろう。
2020年、東京オリンピックの開催と、地球環境保護活動の新たなスタートとが、奇しくも、同じ年になる訳で、どちらも、希望の中で迎えられることを祈りたい。