2013年11月23日(土) 越後の笹だんご
先日、ワイフKが、友人達と新潟県の湯沢温泉に旅行し、土産に、名物の「笹だんご」を買って来てくれた。以前と殆ど変らない、懐かし味わいである。
すげの紐で結んだ形状からは、子供の頃に、5月節句に食べた自家製の笹巻き(ちまき 粽)が思い出される。
入れてある袋をよく見たら、表に、“生笹使用”とあり、どう言う事だろうかと、少し、ネットで調べてみた。 ネット情報では、笹だんごは、まず、米粉(上新粉、もち粉)に、もち草を入れて練り、これで餡(あん)を包んで団子にするが、その後の製造工程に、最近は、以下の3通りがあるという。(越後名物笹だんごの田中屋本店◆新潟土産笹団子の店)
1:笹で包んで笹ごと蒸す
団子を、笹で包んで蒸すもので、古来の伝統的な製法と言う。
2:蒸すのでなく煮る
1で、蒸すのではなく、煮る製法もあるようだ。
3:蒸した後に、生笹で包む
これは、最近多くなった製法の様で、まず団子を蒸し、その後、それを、生の笹の葉で包む。生の葉なので、緑の色合いが良いようだ。
笹の葉には、殺菌効果があると言われ、笹だんごは、この笹の葉で包んである訳だ。刺し身などの盛り付けでよく見かける笹風の飾りも、同様の趣旨だが、今は、本物の笹ではないがーー。
笹だんごには、一般的には、保存料等は使われていないようだが、団子が硬くならなくしたり、笹から離れやすくするための添加物が使われることもあるという。
それぞれの製法には、一長一短があり、伝統的な製法を踏まえながらも、どのように工夫するかの、競い合いにも見えるが、ここでは、これ以上の詮索は止めにしたい。
笹だんごで連想するのが、夏目漱石の小説「坊っちゃん」である。
高校時代に読んだこの名作だが、女中の「おきよ」が、越後の「笹飴」が食べたいと言うくだりがあり、自分は、かなり長い間、これは「笹だんご」だと記憶していたものだ。ネットを見たら、筆者と同じように勘違いしているご仁も、いるようだがーー。
笹だんごは、社会人になって以降、出張帰りの土産に買ってきたり、知人から貰ったりして、何度も食べた事があるが、ある時期までは、これが坊っちゃんの、おきよが好きだったものか、と思ったものだ。
一方、笹飴は、残念ながら、舐めたことはないが、現在も、越後の名物の一つになっているようだ。(下図:くさのやの笹飴。夏目漱石の「坊ちゃん」で有名な越後新潟の素朴な銘菓 より)
笹飴 包み 笹飴 中身
小説坊っちゃんには、道後温泉の入り口に、作者の漱石もよく食べに行ったという、団子屋がでてくるようだ。 この話と、越後の笹だんごとが、混線したのかもしれない。
この団子、どのようなものだったかは明確ではないが、現在、道後温泉では、「坊っちゃん団子」と称して、彩りが楽しい団子が売られているという。
坊っちゃん団子(ネット画像より)
越後の笹だんご・笹飴と、道後温泉の坊っちゃんだんごと、それぞれに、伝統も生かされているようで嬉しくなる。
笹だんごは、往時の上杉謙信率いる越後の武士たちが、出陣時に、非常食として携帯したものが始まりと言う説もあるようだ。その当時は、米は大変貴重だったので、くず米等も活用しながら、団子を作ったようだ。現在のような餡は、入っていなかったと思われる。
笹だんごは、往時から戦後に至るまで、蒸して団子に作った後は、笹の殺菌効果だけで品質を保たせた訳だが、その後、技術革新が進み、現在は、製造後直ぐに冷凍保存するようだ。冷凍状態だと、かなりの期間、風味は余り変わらず、配送も冷凍状態のまま行い、それを解凍して売り出されているようだ。消費期限の表示は、発売日を入れて4日〜5日以内とある。
この笹だんごを、自家用の非常食、防災用食品として、1年もの間、冷凍保存している、心掛けのいい人もいるようで、やや驚きだが、感心させられる話である。