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気仙沼あれこれ   その2

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2013年11月20日(水)  気仙沼あれこれ  2 

 

 

 先日、当ブログに

     気仙沼あれこれ  1  (2013/11/15)

を載せ、宮城県県北にある気仙沼市の、大震災後の復興の様子や、土地の海産物である、ホヤ、サンマ、ホタテ等について触れたが、本稿はその続編である。

  

 気仙沼と言えばフカヒレ、と言われる程で、気仙沼はフカヒレの全国一の生産地であり、その原料であるサメの水揚げ量も、気仙沼港が全国一という。

 前稿で触れた、市のマスコットキャラクターである、ホヤぼーやの装束には、サメは出てこないが、ぼーやの好きな食べ物はフカヒレで、特技は、サメに乗ること、という。 

 今回は、フカヒレとサメの話題について取り上げてみた。

 

 

○サメとフカ

 フカヒレとは、フカという魚のヒレ(鰭)という意。 フカ(鱶)とは、通常のサメ(鮫)の大きなものを呼ぶようだ。

 筆者はこれまで、漠然とだが、サメよりも怖い、凶暴なフカと言う魚がいる、と思って来た位だ。が、今回集めた色々な情報から、フカという種の魚がいる訳ではなく、フカとサメは、同じ魚であることがはっきりした。魚の呼称としては、以下はサメとしたい。

 

 多くの種類があるサメの中で、フカヒレを作るのは、

   ・高級品  ジンベエザメ ウバザメ

   ・一般品  ヨシキリザメ(別名アオザメ)、ネズミザメ

等と言われる。(サメ - Wikipediaふかひれ - Wikipedia

 

 映画ジョーズに出て来た、人間を襲う怖いサメは、ホオジロザメという種のようだ。

 又、因幡の白兎神話で、兎が最後に皮を剥かれる“わに”は、サメのようで、その中のシュモクザメという説もあるようだ。(因幡の白兎 - Wikipedia

 余談になるが、大阪の天保山にある水族館「海遊館」の巨大な立体水槽で、かなり以前だが、主役の初代ジンベエザメを観たことがある。海にいる大きなクジラは哺乳動物なので、魚類では、ジンベエザメが最大だという。このサメ、大きな身体には似合わず、名前に似て(?)穏やかな性格で、食べるものは、プランクトンや小魚という。

 「海遊館」では、初代ジンベエザメは、数年前に死んでしまったが、その後は、後継のジンベエザメ君達が、展示されているようだ。

 

 

○フカヒレ

 サメの魚体には、下図の4種程のヒレがあり、これらから、フカヒレが作られるようだ。(図はフカヒレ物語より引用)      

        

 下図の、ずらりと並んだ尾ビレの天日干しの光景は、壮観だ。 でも、後述するように、ヒレを取って残る大部分のサメの魚体は、一部は蒲鉾等の加工品にも使われるものの、大半は、廃棄されている、という。

この事を思うと、この写真をみて、自然や生き物の命に対して申し訳ないと感じるのは、筆者だけだろうか。(図はフカヒレ物語より) 

        切り取られた尾ビレの天日干し 

 ごく最近になって知った情報だが、フカヒレは、古来からの日本の食材で、中国へも輸出されたようだ。中華料理でのフカヒレ料理の起源に関し、中国の広東で、日本から輸入した食材から考案された、とあるが、信じられない話ではある。

 フカヒレは、現在は、世界的には、シンガポールやインドネシアなどで多く生産されているようだが、今も、日本から香港等に輸出されているという。(ふかひれ - Wikipedia、 フカヒレ物語) 

 

○フカヒレ料理

 フカヒレには、コラーゲンやコンドロイチンが凝縮されていて、健康的にも良い食材と言われる。

 フカヒレ料理には、形のいい背ビレ・尾ビレを姿のまま(排翅)使った高価な姿煮と、その他のヒレ等を細かくほぐして(散翅)使った比較的安価なスープがある。 (下図は ふかひれ - Wikipediaより)   

         

 高級食材であるフカヒレを使った中華料理は、なかなか、庶民の口には入らないもの。 自分は、スープは何度も経験しているものの、姿煮を食べたのはほんの1〜2回だろうか。 

  地下鉄千代田線の新お茶ノ水駅のエスカレータの壁面広告に、近くにある銀座アスターお茶の水賓館のメニューの写真が出ている。エスカレータの昇降時には、そこの写真にある美味しそうなフカヒレの姿煮が目に入ったものだ。 このお茶の水賓館で、実際のフカヒレの姿煮を食べられるのは、何時のことになるかな?

 同じお茶の水にある、山の上ホテルで、某社長に案内されて、フカヒレラーメンを御馳走になったことがある。姿煮が載ったラーメンで、中々の味だったと記憶している。 

 

○サメの魚体の行く方と食利用

 サメの魚体はかなり大きく、ヒレ類を切り取っても、大半は残るわけだが、これらは、その後、どうなるのだろうか。

 サメは、世界各地で行われている、マグロ延縄漁等の副産物として捕獲されるという。全国のサメ漁の70〜80%(1.3万トン)もが気仙沼に水揚げされ、ヒレの部位だけが、フカヒレの製造に使われるが、魚体の大部分は残る。 そして、その一部は蒲鉾の、又一部は はんぺんの、原料として使われるようだ。(水産加工品のいろいろ勝川俊雄 公式サイト » ガーディアンが気仙沼のサメ漁業を非難している件について ) サメのはんぺんは、なぜか、最高級品と言う。

 でも、残る大半は、利用されずに廃棄されていて、酷い話だが、漁獲後、港に持ち帰らずに、海中投棄も行われている、という情報もある。

 

 魚肉としては、サメの肉は殆ど流通せず、魚屋でも滅多に見掛けることはない。

 サメの体内には、浸透圧調整用の尿素があると言われ、捕獲後暫くすると、この尿素から、アンモニアが発生して臭くなるようだ。この臭くなることが、食用として利用されずに敬遠される理由と言う。

 これまで何度か、サメ肉を食べた自分の経験では、薄桃色で、油っこさは無く、割とあっさりしていたような記憶だが、特段の風味はなく、美味しいとは余り感じなかった。 何処かに、ひりひり辛いような味覚もあっただろうか。

 

 資源の有効利用の観点から、廃棄するのはゆゆしき事態であるとして、サメの食品としての有効性が各方面で話題になる中で、宮城県産業技術総合センターでは、研究が重ねられており、このサメを宮城県の新名物にしよう!と意気込んでいるようだ。

これまで、ヒレと軟骨は有効に活用されているが、それ以外の肉と皮は全く使われていないため、センターには、「なんとかできないだろうか?」という技術相談が数多く寄せられているという。(知恵の輪ニッポン - シーズ・フラッシュ : サメ肉の加工方法とサメ皮のなめし方法

 又、東京都でも食利用の類似の研究が行なわれているようだ。(サメの食利用をめざして - 東京都島しょ農林水産総合センター) 

 これらの今後の研究に期待したいものである。

 

 

○食利用の前途に光?−ワニ料理

 一昨日18日の昼だが、NHKテレビを見ていたら、興味深い番組に出会った。 ひるブラ 「ワニを食べる山里の秋〜広島県庄原市〜」と言うものだ。(NHK 番組表 | ひるブラ「“ワニ”を食べる山里の秋〜広島県庄原(しょうばら)市〜」

ワニと言うのは、爬虫類のワニ(鰐)ではなく、この辺りの方言で、サメのことを、ワニと呼ぶようだ。

 驚いたことに、この地では、専ら敬遠されているサメの肉を、昔だけでなく、何と現在も、普段の生活で食べる一方、お祭りや御祝い事の御馳走としても食べている、と言うのだ。

サメ肉は、暫くするとアンモニアが出て、独特の臭みになるので、現在の庄原市では、冷蔵・冷凍輸送したり、臭いが気にならない、色々な調理法が工夫されているようで、刺し身でも美味しいという。ワニ料理は、この辺り備北地方の、名物郷土料理にもなっているという。

 一方番組では、時間がたったものを、そのまま刺し身で食べた年配者は、この臭みが、昔のワニの味だ、と懐かしそうであった。 

  

 庄原市は、海が遠い中国山地の山間にあるため、以前は、生の海の魚は殆ど手に入らず、生で食べられたのが、唯一、サメだったという。

サメは、前述のように、捕獲して暫くすると体内からアンモニアが発生するが、逆に、これの防腐効果が効を奏して、2週間もの間、常温でも保存でき、生で食べられたのだと言う。 通常の魚は、常温で保つのは、精々2〜3日だろうか。(サメ - Wikipedia 他)

 往時、日本海側の石見国の大田の漁港と、山間の備後国の三次・庄原との間には、「ワニの道」があり、生のサメが運ばれたとか。(生活科学研究室 |広島県(庄原市) ワニ料理/発見!) 往時、この道の途中となった頓原の、現在の道の駅「頓原」にも、サメ料理があるようだ。(島根県: 体イキイキ 美味しい一品

        
                     ワニの刺身                            ワニのフライ 

 筆者が生まれ育った山形県内陸の村山地方は山に囲まれた盆地になっていて、太平洋からも、日本海からも遠く、小さい頃は、生の海の魚は滅多に見られなかったもので、海産物と言えば、塩振り・酢漬けにしたり、干物にしたものが殆どだったのだが、庄原市も似たような状況だったのだろう。

 この所の、冷蔵保存技術や、運搬配送技術、食品加工技術等の進展には目を見張るものがあり、勿論、庄原市も、現在はこれらの恩恵を受けている訳だが、この今も、郷土料理のワニ料理として、サメの食文化が根付いている地域がある、というのは、どこか嬉しいことである。

そう言えば、やはり海の無い山梨県の特産物が、煮あわび(鮑の煮貝)であった!

又、ネットに依れば、やはり海の無い栃木県内にも、サメを食べる習慣が残っている地域があるという。

 

 これらの地域と、気仙沼市や宮城県などが連携し合って、新たなサメの食文化や資源の有効活用法を生み出して欲しいものである。

今は、敬遠されて踏んだり蹴ったりの、可哀想なサメ君だが、浮かばれる日は来ると信じたい。


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