2021年4月23日(金) 夫婦別姓の話題が再び
最近、夫婦別姓が話題となっている。
当ブログでは、名前の話題や夫婦別姓に関し、これまで以下の4件の記事を投稿している。
①名前の話題ー姓と名 (2015/11/30)
②名前の話題ー夫婦別姓 (2015/12/10)
③名前の話題ー最高裁判決(2015/12/22)
➃夫婦別姓制度 (2020/12/31)
この中で、夫婦別姓については、記事②で、詳しく述べていて、➃では、制度面に触れている。
今回は、別姓での戸籍記載に関する地裁判決が出た最近の事案を、始めに取り上げることとした。
◎最近の司法判断
アメリカで結婚し、現地の国内法に従って夫婦別姓が認められていた夫婦が、日本に帰国し、戸籍の申告をしたら、別姓は認められなかった、という事案だ。
夫婦は、婚姻関係の確認を求めて、地裁に訴訟を起こしたが、先日21日、判決が出たようだ。
判決では、結婚の事実は認定されたものの、別姓での戸籍記載は受け入れられなかったという。
下図は、次のサイトから引用:夫婦別姓の戸籍記載認めず 海外結婚は「有効」 東京地裁(時事通信) - Yahoo!ニュース.html
◎各国の状況
結婚する場合の、夫婦の姓について、いくつかの国について、改めて調べてみた。(夫婦別姓 - Wikipedia.htmlを参照)
日本 夫婦同姓のみ(殆どが、夫の姓)
韓国 各自の姓を称する(夫婦別姓)
中国 夫婦別姓・複合姓(冠姓)・夫婦同姓より選択
イギリス 規定なし 同姓・別姓・複合姓を選択可能
フランス 妻は夫の姓を通称として名乗れる
オランダ 別姓、同姓、複合姓から選択
ドイツ 夫の出生姓での同姓から、その後、妻の出生姓、複合姓も可能に
スイス 2013年以降原則別姓に
イタリア 1975の民法改正以降、同姓、別姓、結合姓が選択可能に
アメリカ 1970年代から選択的夫婦別姓が認められた 州ごとに細部は異なる
ブラジル 別姓、同姓、複合姓から選択
ニュージーランド 別姓、結合姓、同姓から選択
エチオピア 殆どの女性は改姓しない
カメルーン 別姓、同姓から選択
世界的には、夫婦別姓の場合、子供の姓については、自由に選べるようだ。
全体としてみると、歴史的には男性側の姓を名乗る慣習から、最近になって、女性側の選択肢が増え、夫婦別姓を選べる方向に進んでいるようだ。
日では、妻は夫に従う、との考えから、妻は、夫の姓に変わるのが一般だが、夫婦別姓だと、子供の姓が混乱することが懸念される、とされてきただろうか。
◎世論調査
朝日新聞社の、、選択的夫婦別姓に対する世論調査では、賛成が次第に増えてきているようで、最新の2021年1月の結果では、賛成が69%と、これまでで最も高かったようだ。下図は、選択的夫婦別姓、賛成69% 50代以下の女性は8割超:朝日新聞デジタル_files のサイトから引用。
以前に、当ブログの以下の記事で引用した、世論調査結果も、以下に図示する。
夫婦別姓制度 (2020/12/31)
調査内容に違いがあるので、比較は難しいが、夫婦別姓に対する意識は、変化してきているだろうか?
◎世界経済フォーラム(WEF)
WEFが毎年発表している、男女間のジェンダーギャップについて、下記記事で取り上げている。
男女共同参画とギャップ (2021/1/3)
男性中心の社会から、女性も主要位置を占める社会への変革が求められている訳だ。
国連のSDGsでは、持続可能な、17の開発目標が掲げられているが、その中で、5番目の目標が、下図の「ジェンダー平等を実現しよう」である。
◎日本の課題
これまで述べてきたことを集約すると、日本の課題は、以下の2点だろうか。
①選択的夫婦別姓制度の実現
世界で、夫婦同姓を強要しているのは、日本だけとなっている。
これは、文化的な、人権上の日本の国際的な地位の向上のため、民法を改正し、可及的速やかに、選択的夫婦別姓制度を実現することが必要だ。
夫婦別姓に関して、司法判断や最高裁判決が、どうなっているのか、気になることではある。(本稿末尾の{参考}を参照)
②社会的な女性の活躍の場の増加
SDGsの目標にもなっている、ジェンダー平等の実現が重要だ。
世界経済フォーラムで指摘されているように、日本では、経済分野、政治分野の遅れを取り戻す事が課題だ。
{参考} ブログ記事:名前―夫婦別姓 (2015/12/10)より
◎今後の方向 社会全体として、男女平等、人権の尊重、といった権利意識の向上の流れがあり、名前も個性の一つとして個性を尊重する流れもある。一方、価値観の多様化が進む中で、互いに違いを許容する社会を実現することが、大きな課題となる時代だろう。 筆者の好きな言葉では、ホモジニアスから、ヘテロジニアスへの転換である。 来週12/16に予定されている、最高裁判決が注目されるが、どの様な判決となるだろうか。 筆者としては、現行の夫婦同姓の強制は違憲である、との判決が出るものと想定している。 国連勧告への対応もあり、女性尊重の観点から、日本としての残された近代化を進める、重要なチャンスでもあろう。 若し万一、“現民法の規定は憲法に違反していない”、といった判決が出た場合は、“日本の人権意識や民主主義は、世界最低”と言うしかなく、憲法判断を行う最高裁の、存在意義が疑われるだろう。 アンケート結果にあるように、受け入れる素地はできつつあると思われ、過渡期では、多少の混乱も予想されるものの、新制度が定着するまでには、そう長くは掛からないだろうと思われる。 明治以降、夫婦同性を強制して来た制度を改めて、同姓、別姓を自由に選択できる社会が来る日を待ちたいものだ。
{参考}ブログ記事:夫婦別姓制度 2020/12/31 より
5年経過した今年に、再び、最高裁判決が出されることになったようだ。
今回、最高裁判決が出される具体的なスケジュールは不明だが、来年の春頃になるのだろうか?