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地球温暖化防止対策ーCOP21

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2015年12月29日(火)  地球温暖化防止対策―COP21 

 

 テロ事件があったパリで、11月30日から開催された、国連の「気候変動枠組条約」(FCCC)(温暖化防止条約とも)の、第21回締約国会議(COP21)が、当初、12月11日までだった予定を1日延長して、ギリギリの交渉が続けられ、何とか、地球温暖化対策の新たな枠組み「パリ協定:Paris Agreement」が採択された。

国連のFCCC体制が、1992年にスタート(発効は94年)して間もなくの、1997年に京都で開催された第3回会議(COP3)で、「京都議定書:Kyoto Protocol」が採択されたのだが、それに続く、18年振りの、拘束力を持つ協定である。 

 今回、何らかの新たな合意がなければ、地球環境の未来はない、とまで言われた会議だっただけに、今後に希望をつないだイベントとなったことに対し、国の威信を懸けた議長役のフランス政府を始めとして、世界の関係者に敬意を表したい。

 

 当ブログでは、このテーマについて何度か取り上げたが、最近では、下記記事

     将来のエネルギーと地球環境 (2015/5/19)

以来である。本稿では、今回の会議を、ひとしきり振り返ることとしたい。

  

◎地球の温暖化が進んでいる!

①地球の温暖化対策の状況

 京都議定書以降の、世界の温暖化対策と排出量の概要は以下だ。

    

((時論公論 「COP21開幕 どうなる?地球温暖化交渉」 | 時論公論 | NHK 解説委員室 | 解説アーカイブス 参照 以下も)

 

 2008年からスタートした京都議定書では、全排出量の3割以下の、先進国だけが削減義務を負い、当時の最大排出国のアメリカは批准せず離脱していて、中国は対象外である。

その後の、毎年開催された会議では、先進国と途上国との対立が繰り返され、足並みがそろわず、カナダやロシアとともに、原発事故の影響で日本も、自主規制になる等、実効は余り上がらず地球環境は悪化して来ている。

 2012年現在での地球全体の排出量を割合で示すと、上図にあるように、成長が著しい中国が26%で最大で、米国が16%と、両国で世界の4割以上を占めている。 そして、EUが11%、インド6.2%、ロシア5.2%、日本3.9%、ブラジル1.4%などと続いている。

 

 今回のCOP21に向けて、各国が、この3月末締め切りで、2030年までの削減目標(約束草案)を提出したが(日本は遅れて5月に)、主な国の数値は下図のようだ。   

          

         (第21回締約国会議(COP21) - JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター より) 

 これにあるように、比較の基準とする年がばらばらである一方(1990年比、2005年比など)、排出量が、絶対値の場合と、GDP当たりの場合とがある。 中国、インドは、後者で、新興国として環境に配慮しながらも、経済発展を進める姿勢を明確にしている。

 

②温度上昇の予測

 政府間パネル(IPCC)での最新の報告によれば、下図のように、地球の平均気温は上がり続けており、今後追加的な対策をとらないと(薄桃色)、2100年までに、産業革命から3.2~最大で5.4℃上昇し、世界各地で、異常気象の増加、海面上昇(最大82cm)、北極海の氷の消滅(今世紀半ばの夏)、生物多様性の減少など、取り返しのつかない影響がでるとされている。    

そして、温暖化ガスの削減対策を、以下のように徹底的に行えば、

    2050年までに2010年比で40~70%削減

    2100年時点で±0~マイナス

図で、水色で示すように、2100年時点の温度上昇は、+0.9~+2.3℃に押さえられると予測している。現在の時点で、すでに、温度上昇は、0.9~1℃程になっているという。 

 

③温度上昇による影響の予測

 IPCCでは、上述の温度上昇による地球環境への影響を、以下の、3つの項目について予測している。(A、B、Cは筆者が便宜的につけたもの)

    A 異常気象 :台風、洪水、旱魃などの増加

    B 影響の格差:食糧や水の分布の変動が生み出す各国への影響の格差

    C 世界経済全体へのダメージ:災害などがもたらす世界経済全体へのダメージ・生物多様性の減少

 下図は、これらの項目について、産業革命からの温度上昇が、2℃の場合について、どの程度危険になるかを色別で示している。色別の意味は以下だ。

    白領域:まだ影響が少ない

    黄領域:影響がはっきり表れる

    赤領域:影響が深刻で広い範囲に及ぶ 

 下図では、黄領域と赤領域の境界の温度を、黒い線で示している。 図から分るように、2℃上昇すると、Aの異常気象に関しては既に赤領域で、Bの各国への影響の格差については、赤の僅か手前だ。又、Cについては、黄領域である。 Aの異常気象を黄領域に留めるには、温度上昇を1.5℃位に押さえる必要があるようだ。

    

 同様に3℃上昇とすると、下図に示すように、A、B2項目が赤領域であり、Cは、辛うじて黄領域だが、変動幅によっては赤領域となり、全体として、不可逆的変化が起るようだ。

    

 

◎今後へ向けて

◇COP21での最終合意内容

 京都議定書以降、足並みが乱れ、有効な対策も進まずに、状況は悪化して来たわけだが、前述のような、危機的な状況の予測から、今回の会議は極めて重要視された。 参加196国・地域の締約国は、何としても合意に漕ぎつけようと、粘り強い説得と妥協を積み重ね、なんとか、最終的に合意されたが、その内容は以下のようだ。

①今世紀後半に温室効果ガスの人為的排出と吸収の均衡(実質排出ゼロ)を達成し、地球の温度上昇を産業革命前比で2℃以下を目標とし、1.5℃未満に抑えるよう努力する。 

②すべての国が2020年以降の温室効果ガスの削減目標を自己申告し、目標値を5年ごとに(削減量を増やす方向で)見直す。削減目標は義務づけせず自主目標とし、定期的な見直し報告を義務づける。  

③途上国の地球温暖化対策に対して先進国が2020年まで、年間1000億ドルを支援し、それ以降も資金支援を約束する。 資金支援は義務づけるが、具体的な額等は協定と切り離して決める。 

COP21、パリ協定採択 196カ国・地域が参加  :日本経済新聞

「京都議定書の屈辱」の二の舞を避けられるか? COP21パリ協定、日本の課題  | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社] 等)

 

◇合意内容について

 ・温度上昇

  ⇒最近観測されている、地球環境の各種の重大な変化と、人為的な温室効果ガス(CO2)の排出量との因果関係が、近年、科学的に、次第に明らかになって来ているようだ。

この排出量を、地球規模で抑制し、地球の温度上昇を、一定値内に押さえようという、近代文明が始まって以来の、地球上での人類の未来を賭けた、壮大なチャレンジである。 

 IPCCでは、温度上昇を押さえ、排出と吸収を均衡させることで、地球環境の可逆性を維持できるとしているが、理想論に過ぎないようにも見える。

我が国での、明治以降の文明開化などを取り上げるまでもなく、よりよい社会や生活を求めていく、地球上の各地域での人間の欲求は、変わることはないだろう。 この方向と地球環境への影響を押さえ、何とかバランスさせることは、決して生易しいものではない。

 ⇒京都議定書での削減目標の決め方を反省し、今回は、数値を義務づけず、自主目標(ガラス張り)という緩い縛りとし、全員参加の形で足並みを合わせている。しかも、前述のように、経済発展もしたい新興国に配慮して、GDPあたりの目標値も許容していて、定期的に自主目標を見直すこととしている。

この様な協定によって、どれ程の削減効果が得られるのだろうか。  

 ⇒実体論として、近代化による、或る程度の環境変化は不可避として、受け入れながら進めることも必要だろうか。

海水温度変化による魚類の回遊域の変化、農産物の産地の変化、等への対応や、北極海航路のへの対応といった事も必要だろう。 

 

・資金支援等の具体化 

⇒資金支援は継続するものの、要調整項目は多く残されている。

資金支援を、協定とは切り離したことで、先進国にも受け入れられたと言えるが、支援額や、供与か融資かなど、今後の交渉は難航も予想される。

中国やブラジルなど、先進国的側面もあるBRICS諸国や、経済発展もしたい途上国などの利害もからんでこよう。

 

⇒温室効果ガスを森林が吸収する機能を排出権として評価し、取引対象とすることは、国によっては、有力な手段になるだろうか。

 

◇日本の取り組み

 ・京都議定書の策定等、当初、FCCCを主導して来た日本だが、特に、東日本大震災で全原発が停止して以降は、発電事業を化石燃料に依存せざるを得ず、自主規制に切り替え ており、COP21に向けての目標提出も、締め切りから遅れて、なんとか2015/5に提出している。 

厳しい世論の下で原発の再稼働を進めながら、当面の化石燃料への依存を減らす一方、再生可能エネルギーへの切り替えを行うなど、苦しく重い、世界有数の排出国としての責務を果たしていかねばならない。

 ・ビジネスチャンス

    一方、我が国は、かって、深刻な公害や大気汚染も経験し、それを克服して来た実績がある。一方で、省エネ技術によって高度なエネルギー効率を実現している日本企業だが、その持てるノウハウを生かした、今後のビジネスチャンスは大きいものがあろう。

良く言われるもので、省エネ家電、地熱発電、石炭ガス化複合発電、バイオ燃料、蓄電池、LED、電気自動車、ゼロエネルギー住宅・ビルなど、の産業・技術分野で、産官学一体となって、大いに世界をリードしていきたいものだ。

 

 ◇当面の行動計画

  果たして、各国の足並みが、今後とも、揃うのだろうか。

中国とアメリカは、今回は手のひらを返したように、合意形成へむけ、イニシアチブを発揮したと自賛しているようだが、今だけの話で、これまでの両国の姿勢から見て、途中で離脱するなど、竜頭蛇尾に終わる可能性も有り得ることだ。

  諸準備をして、2020年、東京オリンピックの年に、新体制がスタートとなるが、2020年までの期間は結構長く、国際的な突発的な状況変化も予想される。もう少し、スタートが繰り上がらないものだろうか。 京都議定書事務局は、ボンにあるようだが、パリ協定の事務局はどこになるのだろうか? 

 

  パリ協定は、参加各国内での批准を経て、来年4月に発効予定という。来年11月には、COP22が、アフリカのモロッコで開催予定だ。

すんなり、事が運ぶことを、先ずは、すなおに期待しよう。


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