2015年6月21日(日) MERSコロナウイルス
この所、連日のように、韓国で、MERSコロナウイルスによる感染症が蔓延しているニュースが伝えられている。
この5月に、同国での感染者が初めて確認されて1カ月程だが、この間、急速に感染が拡大し、昨日のニュースでは、
患者数 166人 死亡者数 24人
と言う事だ。
韓国では、朴大統領が予定していた訪米を延期するなど、国を上げて対策に躍起になっているようだ。
まだ、流行は治まってはいないようだが、昨日のニュースでは、前日に初めて、新たな患者が確認されなかったようで、蔓延が収束方向に向かうのであれば嬉しいことだ。
韓国では病院での院内感染だけに留まり、市中までには拡大してはいないという。
同国のMERSに対する関係者の取り組みで、中東からの入国者の把握・管理の不備や、発熱患者の病院での扱い等の初期対応が悪かった事等に加え、患者を見舞う同国の慣習などが、院内感染を広げたようだ。
医療機関は、本来は、病気を治療する所だが、事、感染症に関しては、病気を貰ったり、他人に広める場所ともなる。そして最も肝心なことだが、医療関係者や保健関係者が、的確に情報を把握し、我が身の危険を防ぎながら、正しく対応し、国民に周知する必要がある、ということのようだ。
今回のMERSコロナウイルスは、3年前の2012年に、初めて確認された、新参のウイルスのようだ。このウイルスが引き起こす感染症MERSの語源は、
Middle East Respiratory Syndrome
中東地域 呼吸の 症候群
から来ていて、文字通り、「中東呼吸器症候群」と呼ばれ、中東地域から広がった呼吸器の疾患で、現地のヒトコブラクダや、ヤマコウモリが、宿主として、このウイルスを保有していると言われる。
MERSコロナウイルス
このウイルスは、空気感染ではなく、咳・くしゃみの飛沫や、皮膚の接触等で感染するようで、感染すると、2週間程の潜伏期間を経て、発症するという。
この感染症の致死率は、これまでは、中東地域等のデータから、可なり高く約40%と言われているが、韓国だけで見ると、約14%(24/166)と低いようだ。その理由は不明のようだが、医療機関を受診する患者の状況が違うのかも知れないともいう。
ともあれ、高齢者や、糖尿病、慢性肺疾患、免疫不全などの基礎疾患をもつ人には、やはり、怖い病気という。
現状では、治療法として、特効薬やワクチンは無く、対症療法だけだが、個人レベルでの防護策としては、
うがい・手洗いの実行
マスクエチケットを励行(自分のため・他人のために マスクをする)
不要・不急な外出や人との接触を避ける
危険な地域には渡航しない
等と言う(以上 中東呼吸器症候群(MERS)に関するQ&A|厚生労働省 等より)
世界の感染状況を見ると、初期の2013年は、下図のようだ。 (ネット画像 より)
そして、最近(2015年6月)の状況は、下図のようで、患者総数は1150名、死亡者総数は350名程となっている。(ネット情報 より)
2つの図を比べて見ると、地域としては、当初の欧州と中東地域から、人の往来等が原因で、中東周辺・中国や、米国にも拡大し、この5月以降、上述のように、韓国で急拡大したようだ。
隣国の韓国での急拡大で、特に日本では、俄に関心が高まった感じだが、それ以前は、世界や我が国では、MERSは、どの様に捉えられていたのだろうか?
図によれば、本家の中東地域、特に、サウジアラビアと、UAEでは、現在も、患者数は多いようだが、この所の国内の報道は、韓国オンリーで、中東地域での状況については、全く伝えられていないのは何故なのか、不思議に思っていたことだ。
我が国では、韓国以外の地域では、半ば、終息したように捉えられていたのだろうか?
ウイルスによる感染症と言えば、昨年は、国際的には、西アフリカでのエボラ出血熱が、国内では、デング熱が大きな話題になった。
当ブログでも、下記記事
ウイルスの時代―デング熱 (2014/9/08)
ウイルスの時代―エボラ出血熱 (2014/9/16)
ウイルスの時代―感染症との闘い (2014/9/28)
で、取り上げている。
前者のエボラ出血熱については、リベリアやギニアやシエラレオネなどで、国家的な大きな脅威となったが、WHOを中心に各国が連携した取り組みが行われ、何とか治まっただろうか。
後者のデング熱については、対岸の火事ではない、我が国を直接襲った身近な感染症として、取り組みが強化された。冬季の間は治まっていたのだが、ウイルスを媒介するヒトスジシマカが、この夏、近隣の公園等で活動する季節を迎えている。
最後のブログ記事で、感染症の一覧を取り上げ、その中で、ウイルス性感染症も話題としている。一覧表は、ネット情報等を参考にしたのだが、でもそこには、今回のMERSは、載っていない。その理由は、まだよく知られていないか、脅威では無くなっていたから、だろうか?
一方、上記の一覧表には、似たような、ウイルスによる感染症として、SARSが載っている。これは、
SARS:Severe Acute Respiratory Syndrome
猛烈な 激しい 呼吸の 症候群
の頭文字を取った略称で、急性重症呼吸器症候群(新型肺炎、中国肺炎とも)と呼ばれる、同様の呼吸器系の感染症だ。
このSARSの病原体は、コロナウイルスの仲間と言われるが、MERSコロナウイルスとは異なるものという。両者の違いの詳細は、未調査である。
このSARSは、2002年に中国で発症・確認され、致死率は低いものの、可なりの死者も出て話題となり、中国現地に工場を持つ企業等では、大きな問題となったのだが、2003年には制圧され、現在は治まっているようだ。 (以上 重症急性呼吸器症候群 - Wikipedia )
地球上に存在すると想定されるウイルスの種類は数多く、今後も、未知のウイルスによる新たな感染症が、次から次へと確認される可能性は、高いようだ。
微細なウイルスが原因となる疾患の、原因究明と対処法の研究は、現代の医療分野での、フロンティアの一つと言えるであろうか。