2015年5月28日(木) 選挙と住民投票 2
最近行われた選挙や住民投票の中から、先日は、当ブログの下記記事、
選挙と住民投票 1 (2015/5/25)
で、イギリスの総選挙を取り上げた。
今回は、続編として、大阪都構想に関する住民投票の話題である。
◇ 大阪都構想
周知のように、大阪都構想についての大阪市民による住民投票が、この5月17日に実施され、
投票率 66.83%
反対 705,585票 50.38%
賛成 694,844票 49.62%
票差 10,741票 0.77%
となり、僅差で否決されている。 可なり高い投票率で、住民投票が実施されたことは、今後の自治にとって、いい経験となるだろうか。
この投票の結果、大阪都構想は廃案となり、これを主唱して来た、現大阪市長である橋本徹氏は、この12月の任期一杯で、政治家を降りると表明していて、政界等への影響もあるようだ。
橋本氏の歯に衣着せぬ物言いには、ファンも敵も多く、毀誉褒貶が半ばしているが、TV時代にうまく乗った風雲児的な人材で、異才と言えるだろうか。
大阪都構想なるものは、橋本氏が、大阪府知事になった、2010年に提唱されたものだが、その後、大阪府知事を任期途中で辞めて大阪市長になったり、大阪維新の会、日本維新の会を結成したりと、話題満載で、めまぐるしく状況は変化した。(大阪都構想 - Wikipedia 等を参照)
ここで、これらの経過を後追いする積りは無いが、以下のように、構想自体にも、大きな変化が見られる。(下図は、上記サイトから引用)
当初は、下図のように、現在の大阪市と、これに隣接する周辺都市を含めて、20の特別区に再編するという、東京23区にも匹敵する、 広域都市構想だったようだ。
初期の大阪都構想(20特別区)
当初の狙いとしては、
①政令指定都市である大阪市と大阪府などの、二重行政の無駄を省き、
②産業基盤の整備と経済的競争力を強化し、
③地盤沈下が著しい大阪の再生を図る。
だったようだ。
即ち、①だけでなく、②、③にあるように、往時の大阪、関西の賑わいと地位を取り戻したい、という悲願が込められているように思える。
大阪都構想は、大阪を、日本のもう一方の極とすることで、東京一極集中を緩和、解消し、地方を活性化し、国土の発展を図る狙いもあったろうか。
筆者が、関西に赴任した時の経験からみても、大阪の東京に対抗する意識は強烈で、「負けたらあかんで東京に」である。
それが、途中で、政令指定都市の堺市が不参加になるなど(この辺の事情は未調査)、構想が縮小し、下図のような、大阪市だけの再編になってしまったようだ。 アピールポイントも、①2重行政の無駄をなくす、等だけとなってしまった。
投票日の出口調査データをもとに、世代別に分析した賛成/反対は、下図のようだ。(大阪都構想は本当に「老人」に潰されたのか? - NAVER まとめ)
世代別賛否
特に反対票が多かったのは、70代以上という。高齢者の思いは、若し、大阪市が無くなれば、住民サービスが低下し、関心事の一つである、現在の「敬老パス」が無くなるのでは、という不安感があった、ともいう。
図のように、世代別では賛成が多かったのに、全体では反対が多かったのは、世代別の投票率や出口調査の信憑性もあるが、どうしてだろうか、やや不思議ではある。
今回の大阪市の住民投票での争点は、それ程広がりのあるものではないように思えるものの、他の政令指定都市(京都、名古屋、横浜等)の抱える共通の問題でもあろう。
ともあれ、道州制の論議にも繋がるものと期待していただけに、残念な幕切れではある。