2015年6月2日(火) 選挙と住民投票 3
最近行われた選挙や住民投票の中から、これまで、当ブログの下記記事、
選挙と住民投票 1 (2015/5/25)
選挙と住民投票 2 (2015/5/28)
で、それぞれ、イギリスの総選挙と、大阪都構想の住民投票を取り上げた。
今回は、続編として、先月末に、アイルランドで実施された、同性婚に関する国民投票について取りあげることとしたい。
◇アイルランドでの国民投票
先月の5月22日に、アイルランドで、同性婚を巡って、憲法に同性婚を認める条文を追加するかどうかを問う国民投票が行われたようだ。 このようなテーマで、国民投票が行われたことは、聊か、驚きであった。
条文案は「結婚は、法に基づき、性別との関係なく2人によって成立する」というもののようだ。“性別との関係なく2人によって成立する”という下りがポイントだが、同国の現在の憲法や法律では、どの様な表現になっているのか、は未調査である。(アイルランド、同性婚を憲法で認めるか 世界初の国民投票を実施へ どんな条文案?)
有権者322万人による国民投票は、
投票率 60.5%
結果 賛成 62% 反対38%
で、憲法改正が承認されたようだ。
この国民投票の結果で、ただちに憲法が改正されて、同性婚が保証されるのか、手続き関連の法整備等を俟ってから施行されるのかは、やや不明である。
カソリックの伝統を重んじる保守色の強いアイルランドは、1993年までは同姓愛が、1996年までは離婚が、違法とされたお国柄という。だが、同性婚については、後述のように、既に、パートナーシップ制度があり(2010年)、可なりの権利は認められ保護されていたようだが、今回、養子縁組等も含めて、完全な形で、憲法上で合法となったと言える。
地元のカソリック関係者達は、同性愛者の権利は「結婚の定義を変えることなく尊重されるべきだ」として、今回の住民投票で反対票を投じるよう呼びかけていただけに、国民投票の結果は、大きな衝撃だったようだが、時代の流れに合わせざるを得ない、ということだろうか。
用語だが、本稿での「同姓婚」とは、生物学的な同性同士の結婚をいい、通常の、異性同士の結婚「異性婚」と区別している。又、同姓婚は、同姓結婚、同姓愛結婚、LGBT婚などとも言われるが、ここでは、同義語としている。
◇世界各国の状況
同姓婚が、法的に正式に認められたのは、2001年のオランダが最初のようで、以来10数年になるが、そんなに歴史は古くは無い。同性婚は、現在、欧米を中心に、可なりの国で認められているようだが、しっかりと法制化している国と、パートナーシップ法などで、保護している国があるようだ。勿論、法的に認めず、禁止している国もあり、世界各国の状況は以下の様だ。(世界のLGBT婚事情|LGBT(ゲイ,レズビアン)結婚式 披露宴を総合プロデュース、同性結婚 - Wikipedia 等より)
法制化
欧州 オランダ2001 ベルギー2003 スペイン2005
スエーデン2009 ノルウエー2009 アイスランド2009
ポルトガル2010 デンマーク2012 フランス2013
イギリス(イ・ウ)2013
北米 アメリカ(州毎) カナダ
南米 アルゼンチン ウルグアイ
アフリカ 南アフリカ
大洋州 ニュージランド
パートナーシップ法
欧州 ドイツ(2001) フィンランド2002
イギリス(ス、北)2005 アイルランド(2010) 等
北米 アメリカ(州毎) メキシコ
南米 ブラジル 等
大洋州 オーストラリア 等
未法制化
欧州 イタリア ロシア 等
違法 欧州 ハンガリー ポーランド ベラルーシ ウクライナ 等
北米 アメリカ(州毎) 等
アジアでは、同性婚について、検討中はあるものの認めている国は無いようだ。 それどころか、違法とする国も多く、死刑になる国もあるようだ。(LGBT - Wikipedia)
日本の場合だが、周知のように、憲法24条で、“婚姻は、両性の合意にのみ基づいて成立し夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により維持されなければならない”とある。勿論、同姓婚は認められていない。
でも、改めて調べた所では、一部自治体レベル(渋谷区)で、パートナーシップ制として認めている例がるようだ。
我が国でも、今後は、世界の潮流に合わせて、同性婚を認める方向に進むのだろうか。
◇LGBT
人間を含む生物の世界は、基本的には、雄(男)と雌(女)の、両性から成り立っている。 でも、人間の社会では、生まれながらの自身の性に疑問を持ち、悩む人達もあるようだ。
この人達の悩みは、性同一性障害(Gender Idetity Disorder: DID)と言われるようで、疾患の一つでもある。
少し前だが(2000年か)、作家の吉永みち子氏が、集英社新書『性同一性障害』を発表し、大きな話題となり、筆者も、この本を、丹念に読んだことだ。 LGBTという言葉を初めて知ったのもこの時であるが、この頃に、埼玉医大病院での、性転換手術のニュース等も報道された。
LGBTは、以下の頭文字をとったものだ。
L:Lesbian 女性同性愛者
G:Gay 男性同性愛者
B:Bisexual 両性愛者
T:Transgender 性別越境者(性同一性障害者を含む)(LGBT - Wikipedia)
性については、生物学的性(雄/雌)の他に、社会的・文化的ありようとしての性があり、前者をsex、後者をgenderと、区別しているだろうか。
LGBという頭字語は1980年代中期から使われ始め、Tを加えたLGBTという言葉は1990年代からのようだ。それ以降、このLGBTという言葉はこのような人々の自己指定として一般的となり、さらにセクシャルマジョリティー(性的多数者)に対して、セクシャルマイノリティ(性的少数者)を表す言葉として、アメリカ合衆国やその他英語圏の国々で広く受け入れられている。
LGBTという言葉は、性の多様性と性のアイデンティティからなる文化を強調するもので、今や、権利を認められた肯定的な概念と言えるようだ。(LGBT - Wikipedia)
毎年の10月11日は、LGBTの記念日のようで、下図のような虹色の旗が、同性愛者の、国際的な活動のシンボルとなっている。(図は、ネット画像より)
シンボル旗
数ある情報の中で、2014年に国連で、国連職員の待遇に関して、同姓婚と異性婚の扱いを平等にするというニュースがあったのが、ふと目にとまった。(【朝日新聞】国連、同性婚者への待遇を異性婚者と平等に )
◇女装と男装と
ここで、女装・男装について、付け加えて置きたい。演劇や音楽の世界では、外見を変える、男性の女装や、女性の男装等が行われている。女装等では、歌舞伎での女形や、歌曲のカウンターテナーなどがある。通常のTV番組でも、女装の男性タレントがよく出て来る。一方、女性の男装では、宝塚歌劇が、特に有名だ。
これらは、役割や仕事として、ビジネスとして、女装したり、男装しているもので、性の多様性を肯定する、LGBTの動きとは、無関係とは言えないものの、次元が異なる状況だろう。 LGBTでも、自らの心の欲求として、女装したり、男装するケースはある訳だ。