2015年5月25日(月) 選挙と住民投票 1
日本では、この4月、前半と後半に分れた、統一地方選挙が行われ、自治体の首長や、議会議員が新たに選出された。
イギリスでは、この5月7日に、英国議会庶民院(下院)の構成を決める、5年に一度の総選挙が行われ、現在の保守党のキャメロン政権が、継続されることとなった。
また、5月17日には、大阪市で、「大阪都構想」に関する住民投票が行われ、僅差で、否決された。
そして、5月22日には、アイルランドで、同性愛者同士の結婚を認める憲法改正の是非を巡って、国民投票が行われ、賛成が多数を占めたと言う。
これらの選挙や、住民投票に関する話題を、取り上げる予定だが、今回は、イギリスの総選挙である。
◇イギリスの総選挙
民主主義の原点であり、世界の手本とも言われるイギリスだが、イギリス下院の選挙制度は、単純小選挙区制で、議員定数650と同数の、小選挙区に分かれているようだ。(日本では、小選挙区比例代表並立制)
ビッグベンのイギリス議会
総選挙の事前の予想では、保守党、労働党とも、過半数は取れないだろうというもので、伝統的な2大政党制が崩れるのでは、ともいわれたが、選挙の結果は、予想とはかなり違って、現政権の保守党単独で、過半数を超えたようだ。
過半数を超える政党が無い国会の状態を、ハングパーラメント(宙づり国会)と言うようだが、このような、不安定な状態を、国民はぎりぎりのところで、回避する選択をしたようだ。下図等は、NHKニュースWEB(2015/5/21)から引用している。
又、スコットランド民族党(Scottish National Party:SNP 国民党とも)の候補者が、スコットランドの殆どの選挙区で、労働党の候補者を破り、選挙前の6議席が、65議席に増えると言う大躍進で、第3党になった。でも、議会全体の議席の比率では6%ほどだ。
後述する、昨年行われたスコットランドの独立の是非を問う住民投票の際の、SNPの活躍が、今回の躍進に繋がっていると言う。
保守党政権は、今後、どの様に進めるのだろうか。選挙公約として、EUからの離脱の賛否を問う国民投票を、2017年までに実施するとしている。 昨年の住民投票の時は、SNPは、独立後もEUに残るとしていたがーー。
早くも、日本の経済界では、イギリスがEUを離脱した場合の対応策が、検討されている。
ここで、昨年実施された住民投票について、簡単に振り返りたい。
イギリスでは、昨年9月に、スコットランドの独立を巡って、スコットランド住民による住民投票が実施され、否決されたのは、記憶に新しいところだ。
この住民投票に関しては、当ブログで、下記の様に
スコットランドの行方 1~3 (2014/9/24、9/26、10/27)
と、3回に亘って取り上げているので、詳細は省略する。
注目したいのは、住民投票後の動きだ。
住民投票の後、当時のSNPのサモンド党首(その後 前出のスタージョン党首に交代)は、スコットランドの自治権を拡大するとした英政府の約束が速やかに実行されるよう求め、キャメロン英首相は、イギリス主要3政党の党首が合意した約束は「完全に履行される」と答えている。
この方向で、イギリス政府としては、新たな徴税権限や社会保障の支出などで、スコットランド議会の権限拡大を、昨年11月までに合意し、今年の1月までに法制化する方針を明らかにしていた。
でも、この件については、その後、イギリス国内でどの様な論議があったのか、殆どニュースとして伝わって来ていない。約束事がどのように守られ、実現されるのか、注目していたのだが、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」のが世の常だった、というのだろうか。
そして、今回の総選挙でのSNPの躍進である。スコットランドでは、独立の機運が一層高まる事は明白で、再度、住民投票が行われることもあるのだろうか。
キャメロン政権は、イギリスとEUとの関係の方向付けと、スコットランドの独立の動きへの対処と言う、極めて大きく難しい課題に向き合わざるを得ない状況だ。
当面は、イギリスが世界の注目を集めそうである。