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将来のエネルギーと地球環境

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2015年5月19日(火) 将来のエネルギーと地球温暖化

 

◇2030年 エネルギーミックス

 先月末に、政府(経済産業省)の長期エネルギー政策の骨子となる、15年後の2030年 エネルギーミックスが固まったようだ。

2030年に必要となる電力エネルギー量を予測し、それを賄うための電源構成を想定したもので、原子力をどの様に位置づけるかが焦点の一つで、発表された電源構成案は以下のようである。(法制度・規制:再エネと原子力ともに20%超で決着、“暫定的な”2030年のエネルギーミックス (1/2) - スマートジャパン

 先ず、電力需要だが、詳細は省略するが、一定の経済成長を前提にした上で、2030年の電力需要を想定し、それに、徹底した省エネ対策を実施する(17%の削減)こととして、必要電力需要を、想定しているようだ。

 

  この図は、省エネ策が入るので、やや、解り難いので、理解しやすい新聞報道等を参考にすれば、以下のようになるようだ。(経産省の2030年電源構成骨子案、原発・再生エネで44%-電力コスト低減を重視:日刊工業新聞

 先ず、スタートとなる、2013年の電源構成の実績では、原発が、ほぼ全面停止していることから、殆どを、火力(石炭、天然ガス、石油など)、に頼らざるを得ず、他方、国民の悲願である、再生可能エネルギーの比率は、10.7%と低い。(下図左)  

 そして、2030年の見通しだが、政府としては、再生可能エネルギーの比率を原発より高めることで、脱原発を求める世論の理解を得たい考えから、原子力を21(20~22)%、水力を含む再生可能エネルギーを23(22~24)%とし、残りは、火力としている。(下図右) 東日本大震災が起こる直前の2010年の、原子力の電源構成比率は、28.6%となっていた。

     

 原子力を、再生可能エネルギーよりも低くしているものの、20%台は確保する数値となっている。状況によっては、両者の比率が22%の同水準となる余地も残しているだろうか。

経済活動を重視するため、将来も原子力を一定程度活用する、という政権の方針が鮮明になったと言える。

 

 

◇既設原発の状況

 現在、既設の全ての原発が停止しているが、これらの再稼働をどうするかは、今後のエネルギーミックスを想定する上で、極めて重要である。

既設の原発の、耐用年数別の状況は、以前に当ブログにも掲載した記事で引用した、政府の資料(「原子力依存度低減の達成に向けた課題」経産省資源エネルギー庁文書(昭和26年7月))では、下図のようになっている。

オリジナルな図は、2014年7月時点のもので、図の中で、廃止措置が決まっている原発(灰色と\)9基と、耐用年数の規制から、来年(2015年)の4~7月で、40年超運転申請の対象となる原発(赤枠)7基が、表示されている。(図の ↑2015年に40年超 で表示) 

 

その後、現在までの間に、廃炉措置が決まった原発が、5基あり、これらを、図で×で示している。図で明らかなように、現時点で廃炉とすることが決まっている原発は、合計14基で、既設原発で残るのは、43基となる。

また、図の赤枠の40年超の施設等の中で、適合審査基準が、より厳しくなるのを承知で、その後、再稼働の運転申請をした原発が3基あり、これらを、○で示す。

これらの、図の修正・加工は、筆者が行ったものである。

 

                

  図から分るように、2030年は、現在から、約15年経過する訳で、既設の原発では、単純計算では、1990年までに運転を開始した施設が、40年の限界を越えることとなる。(図の ↑2030年に40年超 で表示)

従って、既設の原発の中で残る、比較的若い原発は、18基だけとなる。

 

 2030年時点で、前記で想定した原子力を得るには、36~37基程度の原発の稼働が必要になるといわれ、このままでは、到底足りないのは明白だ。 

40年を越えても、より厳しい基準をクリアすれば稼働延長が可能なことから、仮に、限界を50年とし1980年迄とすると、更に、16基が使えることとなり(図の ↑2030年に50年超 で表示)、合計で34基となって、目標実現が近くなる。

 

 そして、既設原発の中で、現時点で廃炉措置が決まっている14基を除いた、ベテラン原発43基全てを、再稼働させると仮定すると(最長53年超)、原発比率は22%程となり、目標を達成できるようだ。

 今回の、エネルギーミックスの見通しに当たっては、原発の新増設には触れていないようだが、既設原発だけで目標達成するのは、このように極めて困難で、相当数の新増設が必要となる、と見るべきだろう。

でも、この事と密接に関連してくるが、今後、再生可能エネルギーの割合をどの位増やせるかが、決め手となるだろうか。

 

 

◇温室効果ガスの削減目標

*COP21

 日本も含め、世界各地で異常気象が頻発しているが、この原因と言われる温室効果ガス等の排出を抑えることが、各国にとっての、いや、地球環境にとっての、焦眉の急の課題である。

 このため、毎年開催されて来た、国連の気候変動枠組条約締結国会議(COP―FCCC)で、今後の方向が模索され、当ブログでも、何度も触れて来たところだ。昨年、ペルーのリマで開催された、COP20については、記事にしていないが、2年前の、COP19については、下記記事

     地球の未来とCOP19 (2013/11/30)

で、大まかな動きが示されているので、その中の、今でも使える下図を引用したい。 

 下図左は、各国の参加状況を示すものだ。京都議定書採択以来、地球環境問題については、主導的に取り組んで来た日本だが、東日本大震災後は、止むなく、枠組みから外れ自主的取り組みとする、など、苦しい対応をせざるを得なかった。 

      

         各国の参加状況                         新枠組みまでの流れ     

そして、上図右は、今年の、COP21パリ会議に向けての、諸準備のスケジュールを示したものだ。

 この11~12月にパリで開催される、この会議は、今後の新たな枠組みが決まる、極めて重要な場となる。 この会議に向けて、この3月迄に、各国が目標値を提出することとなっており、これまで、消極的だった米国や中国が、目標値を公表するなど、積極的な姿勢になっているのが注目されている。 

 *日本の目標値

 翻って日本の状況だが、下図にあるように、2010年の東日本大震災で、日本では、原発が停止し、代わりに火力発電を、大幅に増やさざるを得なかったことで、以降は、電力由来の温室効果ガスの排出量も、増えているのだ。

 

  そんな中で、日本は、国際的な約束事を果たすべく、上述の、2030年のエネルギーミックスの骨子を固める作業を急ぎ、今般、温室効果ガスの排出目標値を、なんとか纏めた、と言える。

具体的には、2030年での温室効果ガスの排出量を、2013比で26%削減する(森林吸収を含む)という案のようだ。

 日本案の詳細と、各国から出されている目標数値と日本の位置づけ、等については、機会を改めて取り上げることとしたい。

法制度・規制:エネルギーミックスの改善で温室効果ガスを削減、2030年までに26% (1/2) - スマートジャパン

 

 日本政府としては、この案を正式に決定し、遅ればせながら、この5月中に、国連の「気候変動枠組条約事務局」に提出する予定で、世界各国の合意形成を目指すこととなる。 

 


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