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原発再稼働の司法判断

2015年5月13日(水)  原発再稼働の司法判断

 

 

 この所、原発関連で、

    ●ロボットによる事故原発内部の調査、

    ●再稼働についての裁判所の判断、

    ●原発反対を唱えるドローン騒動、

    ●千葉県での中間貯蔵施設の建設、

    ●西暦30年のエネルギーミックス、

    ●事故から29年経過したチェルノブイリ事故原発、

等のニュースが続いている。

 

 この中で、先日は、

    ●ロボットによる事故原発内部の調査

の関連で、以下の記事を投稿している。

     原発関連のニュースーーロボット  (2015/4/28)

 

 今回は、

    ●再稼働についての裁判所の判断

の話題について取りあげることとしたい。

 

 先日の4月15日、高浜原発の再稼働を差し止める仮処分の申し立てが、福井地裁で認められ、関西電力は再稼働に向けての準備が出来なくなり、世間を驚かせた。

そして、4月22日、川内原発の再稼働を差し止める仮処分に関して、鹿児島地裁で出される判決が、注目されたが、結果は、差し止めが認められず、却下された。こちらは、事業者である九州電力は、再稼働に向けての準備を進められることとなった。

 

 高浜原発と、川内原発とで、司法判断が違った訳だ。

その後の動きは、余りフォローしてはいないが、関西電力は、不服として控訴したようで、5/20にも意見陳述がある予定だし、川内原発の原告側は、次の手を用意する等、すんなり事が進む状況ではなくなったと言える。

 

 

◇両原発の適合審査合格

 川内原発は、周知のように、規制委員会による新規制基準のもとで、昨年9月、再稼働に向けて、第1号の適合審査合格となり、以降、諸般の準備が進められて来たところだ。

新規制基準と、川内原発の再稼働についての適合審査については、筆者なりに理解し、妥当なものとして来たところで、当ブログ記事でも、以下のように、何度も取り上げて来た。

     原発の安全審査 1~4  (2014/7/29~8/7)

     川内原発の適合審査合格  (2014/9/14)

     川内原発稼働 地元合意  (2014/11/9)

 

 一方、高浜原発の再稼働に関する適合審査についても、以下の様に取り上げている。

     高浜原発  適合審査合格 (2015/3/3) 

 

 両原発とも、再稼働に向けての準備や手続きが進められているところだ。

自分なりに理解し、妥当と思ってきた事案だけに、再稼働を認めない仮処分の判決が出たことは、いささか、心外であった。

 

 

◇仮処分とは

 筆者は、司法での、通常の裁判と仮処分との違い、等については、全くの門外漢だ。仮処分について、改めて調べる必要があるが、高浜原発の仮処分の新聞記事の用語解説では、以下のように出ている。

〈仮処分〉 取り返しがつかない損害などを避けるため、債権者の申し立てに基づき、債務者の行為の差し止めなどを命じる暫定的な司法手続き。今回の仮処分では住民側が債権者で関西電力が債務者にあたる。正式な裁判で今回の決定と異なる内容の判決が出た場合、再稼働の差し止めを命じる決定は取り消される。(高浜原発再稼働を差し止め 福井地裁が仮処分決定:朝日新聞デジタル

 

 他の情報では、仮処分とは、急を要する事案について、申し立てがあれば、裁判所が、早い処理を行い、申し立てが妥当と認められれば、仮措置として、事案の実行を止めることができる、というルールという。裁判所の判断の適否はともかくとして、出された仮処分には、従わざるを得ない強制力があるようだ。

債権者(原告)/債務者(被告)が、仮処分を不服として、上級機関へ、抗告するルールもあるようで、決着が長引く事にもなるという。(以上 仮の地位を定める仮処分|庶民の弁護士 伊東良徳  等)

 

 

◇再稼働についての裁判所の判断と私見

*今回の仮処分の内容だが、高浜原発に関して、判決では、以下のような理由、

   イ耐震設計の前提となる基準地震動を越す地震が、2005年以降だけで、4原発(福島第一を含む)で5回も襲われている。

   ロ高浜原発では、基準地震動(700ガル)以下の地震でも、原子炉の冷却機能が失われる可能性がある。

   ハ使用済み核燃料プールは、堅固な施設になっていない。

等から、「現実的で切迫した危険がある」、と、申し立てを認めたと言う。

 

 この事は、筆者から見ると、以下のように、納得がいかないもので、

   イ:新規制基準では、当該原発が立地している地域状況(近隣の活断層分布、過去の地震発生状況等)から、災害リスクを想定している。

     福島第一原発を襲ったクラスの超巨大地震が、全国どこでも起こりうる可能性は、「無い」とは言えないがーーー。

   ロ:新規制基準では、地震、津波での被害を防ぐ、防災の考え方に加え、万が一、全電源断等が起こっても、冷却機能が失われたり、放射性物質が飛散するなどのリスクを、極力少なくする等、最悪の事態を起こさない、多重的な減災の考え方をとっている。(福島第一原発には、これが無かった)

   ハ:省略

「現実的で切迫した危険がある」とは言い難い。

 

*一方、川内原発に関しては、判決では、

   a:基準地震動に関する規制基準と審査については、不合理な点は認められない。

   b:近隣のカルデラの破局的噴火については、学会の多数意見とは認められない。

   c:事故発生時の避難計画は、福島事故の反省を踏まえて作られている。

など、「一定の合理性、実効性を備えている」、として、差し止め請求を却下したようだ。 

 これに対する筆者の意見は、以下である。

   a、cについては、筆者も同じ意見だ。

   b については、有史以前にあったと言われる、九州地域での活発な火山活動などを想定すれば、リスクはある、と言えよう。

 

 

◇仮処分の決定と却下に対する反響

 どちらの仮処分に関しても、事業者や地域住民、規制委員会、立地自治体や政府関係者、経済界、識者、反原発団体 等から、賛成、反対等の、様々な意見が出ている。

 卑しくも専門家集団で構成される規制委員会で採用している新規制基準と、それに基づく適合審査の結果に対して、一地方の裁判所が異を唱えている構図である。

素人の司法に何が分る?! という論調もあるのは当然だろうか。(【高浜原発仮処分】「理解の範囲を超える」「怒りを覚える」“暴走司法”に関経連から批判続出福井地裁はなぜ高浜原発を止めたのか(地震の話を中心に)(渡辺輝人) 川内原発をめぐる動き - 西日本新聞 等等)

 

 下図は、二つの仮処分に関するものだが、どちらも、反対陣営の立場からの、かなり誇張した言い分を、大きく取り上げているのが、興味深い。(図は、ネット画像 より) 

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 世界や社会の動きに関する、数多のニュースの中から、どれを報道し、どれをカットするかは、マスコミ側が選択する訳で、この段階で、報道側の伝えようとする意図が決まる。客観的で、公正、公平な報道等は、存在しないのだ。

マスコミ等で伝えられる情報を信用しない向きには、自ら行動し、他の方法で情報を集めることとなる。 

 今回の仮処分の内容に関して、そして、ニュースの取り上げ方に関して、記事を書いている、マスコミ自身の意見はどうなのか、と聞きたいところだ。 でも彼らは、世の中の動きを伝え、読者に判断材料を提供するのが役目だ、と、意見を言わないのが通例で、「世の木鐸」は、どこかに隠れてしまうようだ。

  

 

 日本には、兎角、お上中心で、「長いものには巻かれろ」、式の“悪しき伝統”(?)があるが、この所、権利意識の高揚や、パーソナルメディア(SNSなど)による少数意見の発露など、不満や意見は、堂々と述べられ、不正があればバラされる、といった傾向が強くなっているだろうか。

 通常の裁判に訴えて原発を止める手続きに加え、仮処分で進行を差し止める等、反対の立場を主張する手段がある事は重要なことで、今回は、この手段のPRにもなったようだ。

又、正式な手続きで、今回、政府方針とは異なる判断が示されたことは、司法の独立性、健全性という点でも評価されていいように思う。裁判官の属人的な要素での、判断のブレは大きかったようだがーーー。

 

 川内原発の再稼働停止の仮処分申請を行うに当たって、かなりの数の住民が原告団から降りたという。これは、今後、事業者側が正式裁判で勝訴して、仮処分期間中に被った、多額の阻害の賠償を請求してきた場合を恐れた、からのようだ。(再稼働差し止め、巨額賠償恐れ申請離脱 23人中10人:ニュース:九州経済 より)

仮処分といえども、その申請に当たっては、それなりの覚悟が必要なことは当然だが、申請が却下される見込みが高く、反対の意見表明を行うだけの、犬の遠吠え程度だったら、いいのかも知れない。

 

 


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