2019年4月8日(月) 北方領土問題 その2
2月の北方領土の日(2/7)を切っ掛けに、日ロ双方の政府間で進められている、北方4島の日本への返還交渉と平和条約締結問題に関して、各方面で話題となり、本ブログでも、下記記事
北方領土問題 その1 (2019/2/21)
で、これまでの歴史や、北方4島の状況等についてとりあげている。
この記事の続編の、その2を作成すべく、ネットを見ていたら、たまたま、3月18日は、5年前に、ロシアが力ずくでクリミア半島を編入(併合)した日のようだ。この件については、当ブログでも、何度か取り上げているが(詳細は略)、クリミア半島を、力ずくで自国に編入し、世界から総スカンを食らい、G8から追い出された、ロシアのしたたかさ、恐ろしさを改めて思い出されたことだ。
(この3月末のウクライナの大統領選挙で、1位の新人候補と、2位の現職候補の決戦投票が4/21に行われるようだ。)
その後は、瞬く間に日数が経過してしまったが、日ロ間の交渉は、現在どうなっているのだろうか。
本稿では、日露間の北方領土問題の今後の方向について、素人である筆者の、率直な印象を述べてみたい。
◇ 国際的な領土問題
国際関係では、領土問題は、独立問題とともに、国家の基盤にかかわる最重要事項だけに、解決が極めて難しい問題のひとつであり、現在進行形の領土問題が、筆者の知る範囲でも、以下のようにいくつかある。これらには、植民地支配や過去の戦争や民族問題、宗教問題等が、複雑に関係しているのは言うまでもない。
・世界全体
クリミア半島 ロシアーウクライナ
カシミール地方 インドーパキスタン
南沙・西沙諸島 中国ーベトナム 等
コーカサス地方 ロシアー関係諸国
朝鮮半島 北朝鮮ー韓国ーアメリカー中国
台湾問題 中国-台湾
エルサレム・ゴラン高原 イスラエルーパレスチナーシリア
・日本関連
北方領土 日本ーロシア
竹島 鬱陵島 日本ー韓国
尖閣諸島 日本ー中国
◇日露首脳会談
領土問題の話し合いの前に、信頼関係の構築のためとして、日露間の共同経済活動を進めることが、首脳会談で方向づけされている。
活動分野として、以下の5項目が挙げられており、検討が進められているようだ。
・観光
・海産物養殖
・イチゴのハウス栽培
・風力発電
・ゴミ少量化
そして、この4月に、日本で、日ロの担当者の会合が予定されているという。(北方領土での日露経済活動へ 4月末に日本で会合(産経新聞))
この、6月28/29日に、大阪で開催されるG20に出席する機会に、プーチン大統領と日ロ首脳会談が行われる予定だが、安部首相の決意の程はあるようだが、事の成り行きがどう進むのかはよく見えないところだ。
終戦末期の北方領土への侵攻や、ウクライナの併合などに見るように、油断のならないロシアのことだ、計画されている日露経済活動が、ロシア側のいいとこどりで終わるのではないかという懸念も大きい。
◇国際的な統治形態
国際法では、共同主権という統治形態が、現在もあるようだ。国家間の境界近辺などの狭い地域が対象となっているケースが多いようだ。(共同主権 - Wikipedia)
現在、日本が抱えている上述の領土問題では、日本の主張が通らず、単独の主権が得られない場合は、次善の策として共同主権が考えられるだろうか。
・竹島と尖閣諸島は、歴史的にも、居住民がいない小さな島だ。領有権がどちらになるかは、土地の問題よりも、島嶼周辺の占有海域の、漁業資源や、海底の天然資源などの経済的価値や、国防上の領海範囲がが主な問題となる。
・一方、北方4島は、終戦前後に強制退去させられ、帰還を待つ多くの元住民(日本人)が居る。そして、その後入植して、水産業や水産加工場で生活している多くの住民(ロシア人)がいる。寒冷な土地だけに、耕地には適さず、ハウス栽培などの可能性はあるが、農業は大変だろうか。
海域に関しては、北方領土全体の土地の面積では、約7%しかない歯舞・色丹2島分で、領海域全体の40%にもなり、海域の水産資源や海底資源は、大きいだろうか。
◇北方4島の返還パターン
北方4島のどこが返還されて日本の領土となるか、いくつかのパターンが考えられる。
返還島数 状況
0島 現状のまま(最悪)
1島 歯舞のみ
2島 +色丹 日ソ共同宣言レベル
3島 +国後
4島 +択捉 終戦前の状態(古来の領土)
領有形態については、日ソ共同宣言にある、歯舞+色丹の2島返還が、現実的に、実現可能なパターンだろうか。すなわち、歯舞・色丹までが日本の領土で、国後、択捉はロシアの領土とするものだ。これらの4島全体で、前述の共同主権を実現するのは、難しいと思われる。
◇両国民の友好
日本では、、国籍は一義的で、スポーツ選手などは、日本に帰化して日本国籍を取得しているが、下図のように、アメリカなど、複数の国籍(二重国籍)を認めている国も多いようだ。(ロシアは、日本と同じ)(図は、多重国籍 - Wikipedia より)
領土問題では、前記のような線引きをした上で、両国間の交流の在り方では、いろんな工夫ができるだろうか。
筆者の思い付きだが、北方4島の元住民、現住民については
・二重国籍を付与する、
・自由な往来を認める
ビザ無し渡航(EU内のような往来の自由)
観光や旧島民の墓参など
・住民登録、税金、選挙権 などでの工夫
ロシアから出されている、北方4島への米軍基地の建設懸念だが、逆に、ロシア側が基地を建設する可能性もあり、ロシアの腹の内を読むに当たって、性善説に立つか、性悪説に立つかによって、上記のような私案は、単なる夢物語に終わる可能性も大きいのだ。
「付記」
国土ではない、身近にある土地の所有形態では、所有者が名義人として法務局に登記され、所有権が認められていて、住宅ローンでお馴染みの、金融機関の抵当権もある。
一方、他人の土地を借りる、借地権も認められている。
遺産相続では、土地や財産の共同所有や、共同名義もあるようだ。また、夫の死後に住み続ける妻の潜在的相続分が、最近認められたようだ。