2024年11月11日(月) 選択的夫婦別姓
○国連からの勧告
先月の10月29日、国連の女性差別撤廃委員会から、日本政府に対し、日本の氏姓制度に関する勧告があったようだ。このような趣旨の勧告は、今回で4回目となるという。
同委員会としては、ジェンダー平等に関する政府の取り組みについて、夫婦が同じ苗字にする事を定めた、日本の民法の改正を求める勧告だったようだ。
夫婦は、同性でなければならないという民法の制度は、世界で、日本だけという。
日本は、女性差別撤廃条約(*)には加盟していて、8年ぶりに審査がまわってきて、今回の勧告になったようだ。
*女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(略称:女性差別撤廃条約)
Convention on the Elimination of
Discrimination Against Womenn;(CEDAW (セダウ))
この条約は、1979年12月の国連総会で採択され、日本も批准し加盟している。
2023年現在、条約の締約国は、189カ国のようだ。(下図)
(参照:女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約 - Wikipedia.html)
未署名の国が数カ国あり、アメリカは、なぜか、署名のみで、批准していない。
○結婚時の姓の選択
日本での、結婚時の姓の選択の状況は下図で、94.5%もの夫婦が、夫の姓を選択している。
周知のように、日本では、婚姻届は、夫婦同姓しか受け付けられず、このような国は、
世界では、日本だけという。
5.5%と少ない妻の姓を名乗るのは、いわゆる、婿養子のケースだろう。
(参照;夫婦の姓(名字・氏)に関するデータ _ 内閣府男女共同参画局.html)
女性の中には、結婚前の姓を使いたいという希望者もいる。
この場合、結婚後も、通称として使うケースもあるが、正式な姓として残す場合は、選択的夫婦別姓となり、民法の改正が必要となる。
以前、韓国を旅行して旅先で親しくなった、2人の男の子の母親と話していて、子供達の苗字が異なるので、聞いたことがある。
子供は父親の姓で、自分は、結婚前の姓ということで、韓国では、ごく普通のことと教えて貰ったことがある。
結婚時の姓をどうするかは、妻自身の選択だけでなく、子供の姓も関係するので、簡単ではなく、色んな議論が生れることとなる。
日本では、家族の一体性を維持する観点から、夫婦同姓がいいという意見も多いだろうか。
○最高裁判決
2021年6月、最高裁大法廷は、夫婦同姓を強制する、民法の規定は、憲法25条に違反するものではないとの判断を示している。
どうも、行政と司法とで、この問題は、相手の仕事だとキャッチボールをしている風で、一向に埒があかないようだ。
そうこうしている内に、国連は、4度目の勧告をしてきたということだ。
以前、当ブログで、氏姓に関して、いくつかの記事を投稿していて、以下のようだ。
名前の話題―姓と名 (2015/11/30) (W44)
名前の話題―夫婦別姓 (2015/12/10) (W45)
名前の話題―最高裁判決 (2015/12/22) (W46)
夫婦別姓制度 (2020/12/31) (S38)
*夫婦別姓の話題が再び (2021/4/23) (S61)
*印の記事に、各億の状況を要約してあるので、以下に引用する。
『 日本 夫婦同姓のみ(殆どが、夫の姓)
韓国 各自の姓を称する(夫婦別姓)
中国 夫婦別姓・複合姓(冠姓)・夫婦同姓より選択
イギリス 規定なし 同姓・別姓・複合姓を選択可能
フランス 妻は夫の姓を通称として名乗れる
オランダ 別姓、同姓、複合姓から選択
ドイツ 夫の出生姓での同姓から、その後、妻の出生姓、複合姓も可能に
スイス 2013年以降原則別姓に
イタリア 1975の民法改正以降、同姓、別姓、結合姓が選択可能に
アメリカ 1970年代から選択的夫婦別姓が認められた 州ごとに細部は異なる
ブラジル 別姓、同姓、複合姓から選択
ニュージーランド 別姓、結合姓、同姓から選択
エチオピア 殆どの女性は改姓しない
カメルーン 別姓、同姓から選択 』
世界的には、基本は夫婦別姓のようで、子供の姓については、自由に選べるようだ。
夫婦同姓のみというのは、日本だけである。
○今後のこと
選択的夫婦別姓に関するアンケート結果は下図のようで、男性は、賛成が6割ほどで、反対も2割もいる。女性は、賛成が8割と多いようだ。(2020年11月実施)
(参照・20〜50代の7割が賛成!47都道府県「選択的夫婦別姓」全国意識調査の概要 _ 選択的夫婦別姓・全国陳情アクション|一般社団法人あすには運営.html)
法改正が必要となれば、国会議員の意見が重要となるが、アンケート結果は下図だ。
(出典;衆議院選挙 2024 候補者アンケート「ジェンダー」 選択的夫婦別姓の導入への各党の賛否は _ NHK _ 衆議院選挙.html)
今回の選挙結果、衆院の法務委員長が、立憲民主党になるようなので、法改正が行われるのでは、との見方があるようだ。ネットには、以前示された、民法を改正する、法律案要綱も出ている。 (参照:法務省:民法の一部を改正する法律案要綱.html)
日本の氏姓制度は、男女平等の見地から人権問題である、と改めて確認した次第で、真剣に取り組むべき時期に至っているようだ。