2024年10月8日(火) 窒素を取り巻く話題 その3
窒素を取り巻く話題について、先日、以下の記事を投稿している。
窒素を取り巻く話題 その1 (2024/10/02) (Q49)
その1では、主に、アンモニアについて取りあげた。
窒素を取り巻く話題 その2 (2024/10/04) (Q49)
その2では、主に、空気の成分や、窒素循環や、光合成と呼吸について取りあげた。
今回は、締めくくりのその3で、ある、研究成果についてとりあげる。
◇先月の9月29日のNHKテレビの「おはよう日本」で、高知大学の素晴らしい研究成果について報道された。
ネットでも、以下などで紹介されている。
(参照:藻の研究で歴史的発見 高知大客員講師の萩野さん サイエンスの表紙飾る _ 高知新聞.html)
同大学で進められている研究論文が、下図のように、アメリカの科学学術雑誌「SCIENCE」に掲載され、この雑誌の表紙を飾ったのである。
「SCIENCE」を手に喜ぶ萩野さん
この人は、論文の共著者で、高知大学客員講師の、萩野恭子氏である。
(参照:藻の研究で歴史的発見 高知大客員講師の萩野さん サイエンスの表紙飾る _ 高知新聞.html)
◇ヒゲロイ
大学の研究対象は、海の中に棲む、藻の一種の微生物で、研究者間では、「ヒゲロイ」と呼ばれている生物だ。
下図のように、ミクロン(μm)オーダーの大きさで、肉眼では分からず、顕微鏡の世界という。
長い尻尾(鞭毛)を含めて、20μm程度という。
このヒゲロイを採集するため、萩尾さんは、時間をみては海に出かけたようだ。
この「小さな小さな子供達」を、安定的に飼育することが、極めて重要で、餌としてあれこれ調べ上げ、辿り着いたのが、名物の「ところてん」だったという。
これにより、安定した研究環境が獲得できた。
◇京都大学の吉田天士教授によれば、窒素を直接利用できる真核生物は。この藻の仲間がはじめてという。(参照:藻の仲間“窒素取り込み利用する能力獲得しつつある” 高知大などが研究結果 _ NHK _ 高知県.html)
これまでは、窒素を利用できるバクテリアが、藻と共生していると考えられてきたが、それから踏み込んで、藻と一体化しつうあることが分かったという。生物進化の壮大な長い歴史のなかで、このような、一体化した例は、ヒトの体内にあるミトコンドリアや、植物で光合成を行う葉緑素など、僅かな例しか知られていないようで、これらと同レベルの、画期的な発見という。
ヒゲロイの細胞分裂の状況を、詳しく分析した、米国カリフォルニア大の研究チームは、分裂の際に、窒素を固定する部分も、下図のテキストのように、個体の一部として分かれていくことを確認したという。
前稿でふれた、マメ科植物の根は、窒素を固定する、根粒菌と共生関係にあると言われるが、今回のヒゲロイで発見されたのは、より進化し一体化した状態と言われる。
将来、この藻を活用すれば、肥料の使用量が大幅に減るなど、農業分野などで多くの可能性が開けるようだ。