2014年3月29日(土) ソチ 五輪パラ輪 総集編 1
ソチオリンピック、パラリンピックについては、当ブログで
ソチオリンピック 1 (2014/2/28)
ソチ五輪 カーリング 1 (2014/3/5)
ソチ五輪 カーリング 2 (2014/3/11)
を投稿し、これらに続いて、その後も、何回かに分けて記事にする予定であった。 でも、なかなか手が回らぬ間に、あっという間に行事は終わってしまった感じである。
今となっては、総集編として、幾つかのキーワ−ドに重点化した形で、印象に残っている事項を取り上げることとしたい。
◎ 最初のキーワードは、「回転技」である。
◇ハーフパイプ
ハーフパイプとは、円筒形のパイプを縦方向に半分に切った様な形に仕上げた、雪の斜面のことだが、まだ、現物を見たことは無い。
前回のバンクーバー大会では、筆者としては、このハーフパイプでの、スノーボード競技に興味を引かれ、特に、空中での回転技の呼称に注目して、ブログ記事にしている。
パンクーバーオリンピック その1(2010/3/5)
このバンクーバーの記事では、空中での水平方向(横方向)の回転技について、
360度(1回転) three―sixty(3−60) 略してthree
540度(1回転半) five―fourty(5−40) 略してfive
720度(2回転) seven―twenty(7−20) 略してseven
などと呼ぶ事を、俄覚えで知り、得意になったものだ。
勿論、回転との組合わせで、着地後の進行方向が、前向き、後ろ向きに変わったり、空中でボード板を掴んだりする技もある。
あれから4年経過した今大会での、ハーフパイプを初めとする回転技の進歩(複雑化 高度化)には、目を見張るものがある。
今大会では、横方向の回転技では
900度(2回転半) nine―hundred 9―00 略して nine
1080度(3回転) ten―eighty 10−80 略して ten
が出て来ている。一見しただけでは、何回転したのか判別が難しい。
更に、縦方向(垂直方向)の、頭が下に来る回転技(corkscrew コークスクリュー)、
1回転 コーク cork
2回転 ダブルコーク double cork
が加わって来て、一段と複雑になっている。
技の呼称が、例えば、ダブルコーク1080の技だと
縦回転 2回転
横回転 3回転
という、かなり高度で複雑な技のようだが、このような技での、縦、横の回転数については、違いもあるようだ。
ハーフパイプコース と ダブルコーク(ネットより)
3回転(1260度)、3回転半(1440度)という呼称の技もあるようだが、この場合の縦回転、横回転の数は不明である。(ソチオリンピック2014 スキー・スノーボード 競技ガイド - JOC)
エッジから上がる高さが高いほど、多様な回転技が可能になることは言う迄もないが、複雑に組合わされた技が、短時間の間に次々と演じられ、何が何だかよく分らず、目が眩みそうになる。
TV放送の解説者によれば、4年前のバンクーバーで金メダルを取った技では、今大会では、銅メダルも取れないという。
このような状況の中で、日本の平野選手が銀、平岡選手が銅メダルを獲得したのは立派なものである。 米の第一人者ショーンホワイトが敗れる番狂わせで、金メダルはスイスだったようだ。
今大会の新規種目であるスキーのハーフパイプ女子で、アルペンから変わった日本の小野塚選手が、銅メダルを獲得している。
複雑な技だが、よく、怪我をしないものだと感心する。大会本番では、着地の失敗や転倒は多かったものの、大怪我や大事故は無かったようだ。
TVに出て来る日頃の練習風景では、選手達は失敗を重ねる中で、スケートボードを使ったり、大きな空気マットに着地したり、トランポリンを使って、空中感覚や回転時の平衡感覚を鍛えるなど、技を完成の域に近づけるべく、涙ぐましい努力もしているようだ。
◇スロープスタイル
今大会から、新たに加わった種目が、スキーフリースタイルでの、スロープスタイルである。 スキーでは、雪の斜面を滑り降りて速さを競うアルペンから始まって、ジャンプ台から空中に飛び出すジャンプがあり、更に、フリースタイルに、今大会からスロープスタイルが加わったことで、終に、曲芸に近い種目が現れた、と感じる。 スロープスタイルでは、コースの途中にジャンプ台のようなものがあり、空中での高さや、横回転、縦回転の技を競い合う事がポイントで、何と、時間や距離は無関係である。
スキーのフリースタイルとしては、歴史の古いモーグルでは、長野大会以来、連続して出場してきた上村愛子選手が、今大会でも、メダルに届かず、引退となったのは残念だ。 このモーグルでは、途中で、2度、空中技があり、両手、両足を開いたり、横方向に1回転したりするが、これらは、見ていてもまだ可愛いいもので、スキーのスロープスタイルは、あの比ではない。
スロープスタイルでは、飛び出した空中で、水平方向は勿論だが、垂直方向の回転が入るのもヘッチャラなのである。
この種目では、後ろ向きにも着地出来るスキーを使うようだが、そんな中、何と、後ろ向きのままジャンプ台を飛び出し、空中でも無回転(0 zero)で、そのまま、後ろ向きに着地したのを見た時は、流石に驚き、肝を冷やした!
あの様な曲芸に近い技が、大きい事故もなく、よく出来るものだと感心するのだが、頭が下になって着地するなど、姿勢如何では、死ぬこともあるだろうか。 技の危険性と達成時のスリルとは、紙一重のようで、ハイリスク→ハイリターンだ。
◇基本技とトリック
オリンピックの数ある競技の中で、
走る、投げる、跳ぶ、挙げる、泳ぐ、滑る
等の基本技の能力について、距離Mや、重さKや、時間Sなど、の基本単位だけで、真っ向から競われる、というのが、競技の原点になっているだろうか。
そこに、鍛え抜かれた、人間の能力の素晴らしさや美しさがあるだろうか。
これらの競技の歴史をみると、人間の能力の限界が、遅々としてだが、少しずつ、更新されて来ている。
これに対し、この所目立つのが、「回る」という技であろうか。
スノーボードやスキーの、ハーフパイプやスロープスタイルでは、回転技は、トリック(trick)と総称されるようだ。これらの冬の競技は、陸上のスケートボードや、自転車のBMX(Bicycle Motocross)から派生したものと言われるだけに、今後暫くは、冬の大会でのトリック技が、ますます複雑になっていくのだろうか。
大事故の危険性を孕みながらも、複雑なトリックに挑戦して成功すると、その勇気に喝采が送られ、高得点が与えられる。でも、失敗した時は、残念ながら、チャレンジした勇気は評価されない。
回転する時の速度、空中感覚、平衡感覚などの、人間の身体能力は、どの位が限界になるのだろうか。
冬の競技種目での類似の回転技では、フィギュアスケートのジャンプがある。スケートのジャンプ技には、身体の向きや、踏み切る足や、着地の足などによって、各種あるようだが、回転数が増えると、急激に難しくなるようで、進歩のスピードは、かなり遅いようだ。(次稿)
それでも、まだ、水平方向での、回転技の範囲内だ。その内、スケートでも、垂直方向の回転技も公認されるのだろうか。
又、夏の体操競技でも、難度の高い各種回転技(床運動、跳馬、鉄棒、トランポリン 等)が、次々と生まれているようだ。
今後も、ゆっくりと、或いは、かなりのテンポで、限界への挑戦は続くのだろう。