2014年3月11日(火) ソチ五輪 カーリング 2
ウクライナ情勢が緊迫する中で、ソチ五輪に続いて、ソチパラリンピック(我流略称:パラ輪)が始まっていて、日本代表は、早くも、メダルを5個も獲得している。
先月閉幕したソチ五輪については、当ブログで、概要と、閉会式の様子や、ロシアの時間等について、
ソチオリンピック 1 (2014/2/28)
で記事にしている。 又、競技の中で、カーリング女子の活躍については
ソチ五輪 カーリング 1(2014/3/5)
で述べているが、今回は、その続編で、カーリングのルールやゲームの特徴について触れている。
カーリング ロゴ(カーリング - Wikipedia)
次稿以降、ソチ五輪に関する主な競技等について、取り急ぎ、記事を纏め、パラ輪に進む事としたい。
○カーリングでの先攻・後攻の決め方
野球、バレーボール、サッカーなどの、通常の勝敗のあるスポーツでは、先攻/後攻や、サ−ブ権等は、最初に、トス等で決める訳だが、どちらになっても、有利、不利の違いは余り無い、と言えるだろう。また、場所の移動やファン・サポーターが関係する、ホーム/アウェイに関しては、かなりの違いがあるだろうか。
出来る限り、チャンスが公平にあることが基本原則のため、次の試合やゲームでは、先攻/後攻、サ−ブ権や、ホーム/アウェイ等が、逆になる。
一方、室内ゲームの囲碁の場合は、経験的に、先手がかなり有利になると言われる。これをほぼ公平になるように調整して、試合を面白くするために、現在は、先手に6目半のハンデ(コミ出し)を付けている。
でも、この上で、7番勝負等、通常、奇数回となる試合では、先手、後手の機会をできるだけ均等にすべく、試合毎に先手、後手が交代する事になっている。
カーリングの場合は、ルール上、囲碁の場合とは逆に、後攻が大幅に有利となる、珍しい事例だろう。でも、これを調整するための、ハンデの様なものは無い。
対戦するエンド数を偶数回(通常は10)にし、各チームに、同じ回数だけ、後攻のエンドがあるようにすれば、機会の公平さは保たれる訳だ。
この競技をよく知るまでは、このように、冒頭の第1エンドはトスで先攻、後攻を決めるが、以降はエンド毎に、先攻、後攻が交互になる、と思っていた。
でも、このように、予めエンド毎に先攻、後攻が決まっていると、後攻有利のため、半ば、答えが分っているようなもので、面白さに欠けるきらいがある。
このためだろうか、カーリングでは、得点した方が、次のエンドでは、不利な先攻となるという、ユニークなルールになっていて、ゲームを面白くしていると言えよう。
有利な後攻の時は、出来るだけ沢山得点し(2点以上〜)、不利な先攻の時は、出来るだけ相手に得点させず、あわよくば、得点を奪うことが、戦い方の基本となる。
先攻の時は、敢えて後攻の相手に1点だけとらせて(そうしないと、先攻の大量得点になってしまう状況をつくり、取らざるを得なくする)、次のエンドの後攻の権利を得る、と言った戦略もある。
又、当該エンドで得点が無い場合(ブランクエンド)は、後攻の順序は、そのまま次のエンドに持ち越されるというルールなので、後攻なのに、1点では不満として、意識的に、全ストーンをハウスの外に出して、ブランクにする等の作戦もあるようだ。
○氷上の物理幾何学 (以下は、カーリング - Wikipedia 等より)
カーリングは、別名、「氷上のチェス」とも言われる。チェスについては、殆ど知らないが西洋将棋とも言われ、カーリングともども、頭脳プレーの固まりということだろうか。
自分流には、やや視点を変えて、「氷上の物理幾何学」と言いたいところだ。
氷上でのストーン(石)の動きは、まず、直線運動が基本だろう。
氷面に接したまま、押し出すように投げ出したストーンは、氷上を投げた方向に直線的に進む。初速度や、氷の滑り具合(摩擦)によって、ストーンがハウスに到着する間の速度や、到達距離が決まる。
このようにして、投げた石を、ハウスの中心付近など、目的とする方向と位置に、正確に持って行くため、投げる姿勢は勿論、距離感や力加減等、微妙なコントロールが必要になるだろう。
カーリングは、石同志を衝突させる競技でもある。進路途中や、ハウスの中に、他の石があれば、石同志の衝突が起こる(2個〜それ以上)。 衝突は、44ポンド(約20kg)もあると言う石の重さや硬さ(反撥力)や、氷の滑り具合と石の速度等が関係する物理現象だが、衝突後の動きが、かなり予測できる(ように見える)運動と言えるだろうか。
カーリングの歴史については不案内だが、往時は、直線的な石当てゲームだったかも知れない。
ビリヤードやスカッシュは、単純化すれば、直線運動に近い、と言えるだろうか。
カーリングの奥深さは、石を回転させる(Curl、Curling)事だろう。競技名もここから来ているようだ。投げる時に回転させるために、わざわざ、石にレバ−が付いている。野球での変化球のように、単なる直線運動だけではなく、曲線運動が出来る訳だ。
見応えがあるのは、直線上では邪魔になる相手のガードストーンを避けて、衝突せずにカーブしながら、その後ろに廻り込む投法(カムアラウンド)だろう。
回転させることで、40メートル程先にあるハウスの中心(ティー)に到達するまでに、直線運動の場合と比べて、1メートルも違ってくるという。これは、石の直径を、約29cmとすると、石3個分以上、曲がる事となる。
スイス戦の最終第10エンドの後攻めで、スキップの小笠原が、名手にして、カーブさせながら中心に持って行くドローショットを、珍しく外して、そのエンドで勝ちを決められず、延長戦に持ち越して仕舞ったのは記憶に新しい(幸い、勝ったのでほっとした!)。
衝突させる場合も、石の正面(芯)というより、側面に当てる場合が多く、しかも、回転させながら当てることで、その当てた石、当てられた石が、味方の石を避けて当たらないようにしながら、相手の石をはじき出すようにする等の、複雑な動きを想定した戦術が必要となる。投げる前に、スキップがブラシで示す位置も、殆ど石の側面だ。
相手の石が、2個、3個とはじかれて、味方の石が綺麗に残るなどの見事なショットは、気持ちがよく、醍醐味の一つだろうか。
勿論、計算通りにはいかず、ミスショットもあるが、そこが、又、面白さでもあろうか。
カーリングのゲームを見ていて気になるのは、床磨きの様なブラシを使った、スイープの効果だ。リンク上には、予め、氷の粉の様なものを撒いてあって、スイープすることで、その粒子が溶けて水分になって滑りやすくなるのだと言う。選手達は、スイープしろ! スイープ止め! などと叫んでいるようだ。
スイープには、どのような効果があるのだろうか。
両側をスイープすると、摩擦が減って滑りやすくなって距離が延びる。 回転させて投げた時に、カーブする度合いは、石の速度が遅くなると大きくなるようだ。このため、スイープして、減速を押さえて速度を保ち、曲がりが大きくなる位置を先に延ばす等も行われるようだ。
又、片側だけスイープすると、反対側の滑りが悪くなり、摩擦でそちら側に曲がることから、スイープによっても、曲り具合を微調整できるようだ。
スイープしている時に、ブラシが石に当たるのでは、と、いつもハラハラしながら見ているのだが、万が一当たると、反則になるという。反則は、誰かが監視しているのか、自己申告か、相手クレームかは分らないが、そのエンドは、どうなるのだろうか、或いは、ゲーム全体がそこで終って負けとなるのだろうか?
いっそのこと、はらはらさせられる危ういスイープ動作は、廃止した方がすっきりするのだがーーー。
カーリングに関して、物理学などの学術的な見地からの研究もあるようだ。 スイープの効果の有無や、カールする仕組み等については、諸説があるという。
○TV放送での解説
筆者がカーリングに関心を持ち始めたのは、バンクーバー大会以降だが、何時もTV観戦だけで、まだ、カーリング場には行ったことは無い。
競技のTV放送では、大抵、解説者がいて、競技での戦術などを言ってくれるのは有り難いのだが、何時も、TV映像の向き(カメラングル)で混乱するのだ。
この問題は、当ブログの、以前のバンクーバー大会の記事(バンクーバーオリンピック その2 (2010/3/16))でも触れたことがある。
囲碁や将棋のTV中継では、紙面の棋譜と同じ様に、盤面に写るのは、先手側から見た画像だけで、打った手を、3−12といった座標の形で表現するので分りやすい。
プロ野球中継の解説等では、最近は、ライトペン等で、画面上に表示してくれるので、より具体的だ。でもこれは、自前で作って流している映像だから出来る芸当のようで、オリンピックなどの国際映像では、難しいようだ。
カーリングの放送では、各エンドで、プレーヤ−が交替すると、ハック側(ストーンを投げる側)からハウス側を見た映像で、作戦を練る様子等が写される。 石が投げ出されると、今度は、ハウス側からハック側を見た映像に切り替わるが、当然だが、写る映像の、上下、左右が反対になる。
解説者は、写っている映像で、ハウスを時計に見立てて、3時方向にある石、などと口頭で示すこととなる。これはクロックポジションと言うようだが、短い時間での事だけに、何とも慌しく、2種類の映像で、上下・左右が逆になるので難解なのである。
これを解消するために、カーリングでの画面表示に関する一つの提案だが、例えば、ハウスの外円のハックに近い方(ハウス側から見て、時計の12時)に、TOPのTなどの、何らかの目印を付けるのはどうだろうか。 カメラが切り替わると、映像は逆になるが、目印があるので混乱は殆ど無いだろう。
他の方法としては、チーム毎に8個づつあるストーン表示の色合いに、グラデーションを付けたり、或いは、ストーン表示に番号を貼りつけるのはどうだろうか。
これらの目印は、TV観戦だけでなく、会場で競技したり、観戦する場合も、参考になるだろうか。
○カーリングの楽しみ
カーリングは、頭脳プレーと言われるだけに、体格、体力の違いが、余り影響しない競技と言えるようで、通常のスポーツのように、欧米人に比べて、日本人が不利になる、という事はないようだ。カーリングは、スポーツではない、という意見もあるようだが、ユニークなウインタースポーツとして、今後、盛んになって欲しいものだ。
ウインタースポーツでは、施設を整備する事が大きな課題だが、国内のカーリング専用施設として、通年で競技できるカーリング用シート(ハウスとハックが付いたリンク)が常設されている所は、北海道3か所(北見常呂、札幌、帯広)、長野1か所(軽井沢)だけのようだ。冬期間だけ使える、シート付きのカーリング施設は、北海道には多数あり、東北や、他の地域でも見受けられる。(日本のカーリング場・施設)
上記の軽井沢の施設で行われた、日本カーリング選手権について、一昨日9日の夕刻、NHK―BSで、女子の決勝戦(中部電力―北海道銀行)が実況中継され、全エンド、TV観戦させて貰った。
オリンピックで5位と大健闘した余勢を駆って、北海道銀行が初優勝するか、中部電力が、意地を見せて大会を4連覇するのか、注目されたが、結果は、中部電力が、6−3で勝っている。
オリンピックへ出場するには、先行する世界選手権に参加し、好成績を残してポイントを稼ぐ必要があるようだが、このお膳立てをしたのが、中部電力チームという。
でも、今回と同じカードになった、オリンピックへの日本代表を選ぶ最終試合は、何と、北海道銀行チームが勝ったようだ(漁夫の利!?)。
今回の大会で、中部電力は、北海道銀行に雪辱し、オリンピックに行けなかった悔しさを幾分、晴らせたようだ。
試合後のインタビューで、中部電力の藤沢スキップは、ソチ五輪金メダルのカナダ代表の名スキップ:ジェニファー・ジョーンズを目標にしている、と、世界を見ていたのが印象的であった。
国内で複数の有力チームが競い合う事で、ますます、層が厚くなることを期待したい。
このTV観戦を通して、今回の記事で触れた、戦略・戦術や、物理学や、カメラアングルについても、じっくり見させて貰ったが、放送の中で、過去、2度の五輪に出場している、石?琴美さんが、両チームの戦術等について、的確に解説して呉れた。
この解説では、なんと、蛍光色のライトペンを使って、注目する石や、狙うコースについて具体的に示してくれたので、何時も感じるイライラが無く、実に分りやすかったのである。
カーリング競技のTV中継で、オリンピック等の国際映像ではなく、国内の映像を見るのは初めてだが、国内の自作の映像だから、ライトペンも自由に使えたようだ。