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プロ野球のルール変更  組織の運営

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2013年6月20日(木) プロ野球のルール変更  組織の運営 

 

日本プロ野球機構(NPB)が、統一球の規格変更を隠蔽した問題に関連し、当ブログでは、これまで、 

   ?プロ野球のルール変更 BSO   (2013/6/18)

   ?プロ野球のルール変更 規格とデータ(2013/6/19) 

を載せ、?で、ストライクとボールの順序の変更の話題を、?で、ボールの規格変更の問題に関する概略の状況と、ボールの規格やデータについて触れたところだ。本稿では、後者の規格変更の問題を、組織の運営の面から見ることとし、3回のシリーズの記事を終結したい。

 

 

◎ 公表の要否と公表しなかった理由 

 野球と言うスポーツの中心となるのは、言うまでも無く、使用するボールだ。今回の事案は、この、使用球の規格に関する変更だが、当事者である選手や球団の意見を聞くのは当然のことで、オープンにして公表すべきだった、と筆者は考える。

だが、意見も聞かず、公表もせずに、一方的に進めたというのは、何故だろうか。以下に推測して見た。

 

●?に示したように、ミズノのデータで計算する範囲では、飛距離の差は、精々、1m程度で、大して問題になる値ではない、とも言えるのだ。 

でも、日々、神経をすり減らしながら投打で苦心している選手諸君にとっては、僅かな違いでも、やはり大きな問題と言わざるを得ないだろうがーー。

 しかし、事務局としては、選手達にとって大して問題ではなく、小さな変更で、公表する必要はない、と認識し、製造上のバラツキの範囲内で調整した、と言って処理したかったのではないか。自分も、当初は、規格の変更ではなく、製造上のバラツキの範囲内での調整と思った位だ。

しかも、打ったボールが、少し飛ぶようになることは、飛ばなくなるよりも、試合を面白くすることから、飛ぶように変えることは、歓迎すべきことで、特に問題は無い、と、単純に割り切って考えたかも知れない。

 NPB事務局としては、公表するメリットとデメリットを考え、そのタイミングを計っていたかも知れない。 今シーズンは、何ら変更していないと言って、最後まで通し、今シーズンの状況を見て、必要により、来シーズンに公表して進める積りだったのかも知れない。

 

●憶測や推測で判断するのではなく、まず彼らの意見を聞くべきだし、そうするのが一番だろう。でもそうはせずに、事務局のスタッフが独断で決めて実行したと言うことだ。

 変更内容を関係者に説明し、了解を得る手続きが面倒に思われ、あれこれ、質問されたり、注文をつけられるのを、避けたのではないか、とも思える。

 ここが肝心な所だが、結局のところ、NPBの事務局から見て、プレーする当事者である選手達は、対等に相談する相手には思われておらず、球団関係者への配慮も欠けていた、と言うことだろう。

 さらに言えば、全体として、コミッショナー、事務局、選手会、各球団オーナーとの間での、組織間の役割分担・権限配分や連携が不十分で、観客動員数などの差から来る力関係もあって、相互に、色々な見えない溝があり、風通しが良くない、ように思えるのだ。

 昨夜のNHKクローズアップ現代でも、統一球に絡んで、日本におけるコミッショナー制の問題点等が指摘されている。(隠された“飛ぶボール” - NHK クローズアップ現代

 昨年、第3回WBCへの不参加・参加問題でごたごたした事なども含め、日頃の拭えない不信感が尾を引いて、蓄積されているのかもしれない。

 

    

◎ 最高責任者の姿勢

  今回のハプニングに関して、最高責任者である加藤コミッショナーの姿勢と言動は頂けない。

 加藤コミッショナーは、“直前まで、何も知らなかった” と言い張った。でも、このことは、誰も信じてはいない。氏に何の相談も無く進めた、とは考えられず、実際には相談したのだろうが、お飾りに過ぎないコミッショナーは、ボールの規格が変わると、プレーにどのくらい影響するかは殆ど理解できず、上の空で聞いていたのであろう。

 事務局としては、コミッショナーに報告相談していたようだが、事務局員が、“相談したと言ったのは、担当している自分の記憶違いだった”、と、公の席で、前言を訂正するという、見苦しい一幕もあったようだ。

これはよくある手で、事務レベルの独断で進めた、ことにしたのだろう。またもや繰り返されるのか、と、うんざりである。

 

 コミッショナーは、記者会見の席で、“知っていたら、公表するように指示しただろう”、などと、格好をつけて言ったが、後出し じゃんけん もいい所で、空虚さだけが残った。

 初期の会見では、これは不祥事ではない、などと、居直るような言動もあったが、“いわゆる不祥事には当たらないので、責任を取って止める積りはない”と言いたかったと思われるが、選手やファンの事は考えず、自己保身のためだけに言っている、としか思えなかった。

 

 組織や企業等で、自分の配下や部下が、問題を起こした時に、上司や上に立つ者や組織の責任者が、どの様に対処し、責任を取るかは、組織のガバナンス上の重要なテーマでもある。

 本人が、知っていたか知らなかったか、ではなく、組織内部で問題が起こったこと自体が問われるのだ。 一般的に言えば、本人が知らなかったことでも、統治責任、道義的責任、監督責任があるのは、少なくとも、民間企業では当たり前のことで、いわゆる、「監督不行き届きで」、「不徳の致すところで」、と言って、責任を取ることとなる。

 常に組織全体に目配りし、組織内の活動が順調に行われているか、問題が起こっていないかを把握し、日頃、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)がスムーズに行われるような、システムを構築し雰囲気を醸成することは、上に立つ者の大きな責務であろう。

重要事項なのに、責任者である己に報告や相談が無かった時は、先ず、己のやり方の不十分さや、足らなさを恥じ、反省ずべきであろうか。

 このように考えれば、組織としての統治責任(道義的責任)を果たすことは、民間企業だけでなく、公的な組織等でも通用する、大原則と言えよう。

 

 この件で思い起こすのは、いわゆる小沢事件と、厚生労働省での公文書偽造事件だ。 両事件とも、本人には何も知らされておらず、刑事責任は無い、として無罪となっている。

 刑法や刑事事件では、あくまでも、本人が関与しているか否かだけが問われるようだ。ここでは、詳細についての言及は避けるが、二つの事件とも、部下や配下が、捕まって有罪となっているのに、組織上の責任者は、道義的責任どころか、刑事責任も無い、と言うことだ。何とも後味の悪い結末の判決ではある。

 加藤コミッショナーは、この流儀で行きたかったようで、自分は何も知らされておらず、責任は無く、不祥事でもない、などと見栄を切ったのだろう。

 

  

◎ 今後の見通し

 最後に、今後の事について触れたい。先日の記者会見では、第3者委員会を設置して、調査検証を進めることとして、7月上旬までに委員会の人選を進めると言う。第三者委員会として、何時頃を目標に、調査検証結果をまとめるのかは不明である。(統一球問題、第三者委で検証へ…「大変な失態」

 

 先年の相撲界での事案のように、暴力団との関係や、八百長相撲など、本来あるまじき状況が起こると不祥事といわれ、それを隠蔽しようとするのが、一般的な世間の体質だ。

 今回の事案は、コミッショナーが言う通り、通常の意味での不祥事ではないし、組織として都合の悪いことだから隠蔽した、と言うことでもないのが、極めて特異である。

 

 この時代、外部に情報が漏れなかった、と言うのにも、驚かされる。流石、NPBは一枚岩だと褒めたい位で、今回の案件に関わった、一握りのNPB職員の、組織に対する忠誠心は見事である! 

 この事で、関係したNPB職員やメーカー関係者を責める積りは毛頭ないが、でも、隠蔽して秘密裏に進めることに、良心の呵責や疑問や、選手やファンに対して申し訳ないといった、正義感の様なものは感じなかったのだろうか。

色んな手段があるこの時代、匿名で、内部告発なども、簡単に出来るのに、情報が漏れなかったのは何故だろうか。

 要するに詰まる所、告発すべきと言う感覚が湧かなかった、と言えるだろうか。

 

 上述したように、結局、秘密裏に事を運んだ理由や背景が殆ど分らず、不思議で特異な事件に思えるのだが、関係者には、隠蔽していると言う意識は無かったのではないか。このように大騒ぎになって、当人達が驚いているかもしれない。

 でも、先述のように、選手達にも相談せず、秘密裏に事を進めたことは、組織全体としてみると、色々な溝があって風通しが悪い、と言った、より大きな課題があるように見えるのも事実だ。この事案(事件)を契機として、NPBや我が国の野球界が少しでも良くなれば嬉しいことではある。

 

 このように、公開しなかった原因の究明や、再発防止策について、第三者委員会から、何処まで踏み込んだ提案や改善策が出て来るのか、注目されるところだが、踏み込み不足で、余り期待はできないように思われる。

 ただ、反発係数の規定については注文したい。?の記事で、反発係数に関する、複雑怪奇な旧規格の事に触れたが、このような規格の形になっていることが、今回の事案・事件の遠因の一つのように思えるのだ。

この機会に、新規格を正式に採用し、表現は、0.415〜0.416でもいいが、例えば、

   平均値   0.4155

   バラツキ ±0.0005 ただし、下限値以下は不合格

などと、明快に規定すればよいように思われる。

 併せて、公認野球規則などにある、広範な規格(0.41〜0.44)にも意味があるのなら、上記の新規格との関連を明記すべきで、特に、上限値については、そうすべきだろう。

 

 又、組織の最高責任者の姿勢だが、現コミッショナーが、

  ”第三者委員会の結論が出て、実行される見通しが立った所で、統治責任(道義的責任)をとって辞任する”

ことを、この時点で、先出し じゃんけん で公言するようなら、立派な責任の取り方で、NPBの今後にも、期待が持てるのだが、望んでも仕方のない事だろうか。 

  

 ネットの、NPBのオフィシャルサイトには、当然ながら、記者会見の模様については載っている。 これ以外に、今回の統一球問題に関するステートメントや関連情報、反発係数の規格等も載っていて、ミズノの資料もリンクされている、と思って探したのだが、残念ながら(予想通り!)見つからなかった。 

組織の姿勢として、全く頂けないことだ。

 

 

 


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