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プロ野球のルール変更  規格とデータ

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2013年6月19日(水) プロ野球のルール変更  規格とデータ

 

 

 日本プロ野球機構(NPB)が、統一球の規格変更を隠蔽した問題で、この所、揺れている。

これに関連し、日本のプロ野球のルールや、やり方を、極力、国際ルールに近づけるために、これまで、幾つかの事が行われて来た中で、前稿では、 

     プロ野球のルール変更  BSO   (2013/6/18) 

として、?ストライクとボールの順序 の変更について触れたところである。

 その続編である本稿では、現在、正に問題になっている、?ボールの規格の変更の話題について取り上げることとしたい。 

 

?ボールの規格の変更

 今回の騒動は、ボールの規格の変更に関することだ。本家のアメリカでは、野球のボールの規格に関して、色んな経過があり、この野球を、日本に導入して以来、日本でも、ボールの規格について、色んな変遷や経過があったようだが、ここでは、最近の動きについてのみ触れたい。

 前稿で述べたように、野球の国際的な交流が盛んになった結果、国際規格(MLB規格)と国内規格(NPB規格)との違いが問題となり、その中の一つとして、NPBのボールの規格を、国際規格に合わせることとなったもので、2011年のシーズンから、従来の規格(以下 旧規格)の統一球(公式球)が使われている。 しかも、球団ごとの製造メーカの違いを無くして、1社供給(ミズノ)としたようだ。

 

 旧規格のボールの導入がもたらした影響については、投高打低で、ボールが飛ばなくなり、ホームラン数が大幅に減って、打者にとっては厳しくなった、と言われてきた。

使用球についての検査やデータ収集は、定期的に、適宜行われているようだが、2012年に行われた調査で、実際に使っているボールを調べた結果、ボールの反発係数が規格よりも少さく、バラツキも多いことがから、統一球導入以前よりも、ボールが飛ばなくなったことが明確になったようだ。 

 そこで、反発係数を高くするように、ボールの規格を変更する事にしたが、この事をNPB内部(事務局)だけで決めて、何処にも公表することなく、製造をミズノに依頼して、この春のシーズンから、新規格のボールに切り替えてしまったようだ。10万個以上とも言われる、旧規格の古いボールは処分したという。 

事務局としては、米国に倣い、コミッショナーとして、ボールに自身のサインも入っている、NPBの責任者である加藤コミッショナーにも、規格の変更については、何の報告・相談もしていなかった、とされている。

 野球をやる当事者である、肝心の選手達や球団側にも、情報は出さず、報道機関にも、一切、公表していない。ミズノに対しては、規格を変更したことは、口外しないように口止めしていたようだ。

 これが、今回の騒動の、発覚前までのあらましである。

 

 何も聞かされていない選手や球団だが、昨年のオフシーズンには契約を更改し、新シーズンに臨んだのだが、実際にプレーしている当事者として、今年は、去年よりも打ったボールがよく飛ぶことを、経験的に感じていたようだ。

 先日の11日、東北楽天イーグルスで捕手をやる嶋選手が、現在の日本プロ野球選手会会長として、NPBとのミーティングで、最近のボールの飛び方について問い質したことから、ボールの規格を変えたことが明るみに出たようだ。

シーズン途中ではあるが、最後まで、曖昧なままでいるよりは、ここで明るみに出たのは幸いだったと言えよう。 (「不祥事ではない」/一問一答 - プロ野球ニュース : nikkansports.com、)

14日には、NPBとして、12球団に対して謝罪し、経過と状況を説明したようだ。

 今後は、第三者委員会を組織して、原因究明と再発防止策の検討を依頼するという。(統一球問題、第三者委で検証へ…「大変な失態」 : プロ野球 : スポーツ :

 

 今回の事件は、国民的スポーツとも言われる程、ファンの多い野球だけに、マスコミにとっても格好の話題でもあり、色んな場で論評されているのだが、自分も一枚加わって、自分なりのコメントを、以下に述べることとしたい。

 論評の前に、先ず、ボールの反発力の規格と、それに基いて製造された実際のボールのデータがどのようになっているかを、押さえておきたい。

 

 

◎ボールの反発力の規格と実データ

 でも、反発力の規格や、具体的なデータは中々見つからなかったのだが、幸いに、統一球の製造を一手に請け負っている、ミズノから、以下の様な、具体的な情報が公表されている事が分った。 

この発表は、勿論、NPBも了解してのことだろうが、タイムリーヒットのごとく公表した、メーカーの良心のようなものを感じる。(プロ野球統一球の仕様の変更について|ミズノ│企業情報│ニュースリリース

 

プロ野球統一球の仕様の変更について

2013年06月12日

ミズノでは、日本野球機構(NPB)との契約に基づき、2011年からプロ野球12球団に統一球を納品しておりますが、2013年シーズン用のボールにつきましては、反発係数を従来より高めたボールを納品していました。

新しいボールは、中心にあるコルク芯を覆うゴム材の低反発素材の配合を少なくすることで、反発係数を高めています。従来の統一球は反発係数の規定値(0.4134〜0.4374)を下限に目標値を設定していたため、実際には下限値を下回るものがありました。今回、ゴム芯を変更することで反発係数を高め、下限値を下回るボールを出難くしています。

 

2013年

2011年、2012年

目標とする反発係数
(平均値)

0.415〜0.416

0.4134に近づける

※反発係数が0.001変わることで、飛距離はおよそ20cm変わる
(ボールスピード144km/h、バットのスイングスピード126km/h、飛び出し角度27度とした場合)

 

 このミズノの資料にあるように、ボールの内部の材質等を変更して、反発係数を上げており、明らかな規格の変更で、製造時の工程管理に絡む、単なる、バラツキの範囲内の問題ではない。

 反発係数の測定法については、詳細は分らないが、ボールを硬い壁に当て、当たる直前の速度と、当たって跳ね返った直後の速度との比、が、反発係数になるようだ。

   統一球と内部 

 

 この公表された資料で、 統一球の反発係数の従来の規定値(0.4134〜0.4374)を見て驚いた。この、従来の規定値は、今回、2013年から新たに非公式に設定した反発係数(0.415〜0.416)をも、完全に包含する、広範囲の規定になっているのである。

 野球の諸規則を定めている、「公認野球規則」では、ボールの重量141.7-148.8g円周22.9-23.5cmと、定められている。又、ボールの反発係数が、0.41−0.44の基準を満たすボールが合格となり、ボールに公認マークが付けられるとある。(ボール (野球) - Wikipedia

 そして、反発係数が、この広範囲の規定値の中に入っていればよさそうなのに、資料にあるように、実際の製造では、下限に目標を設定していた、とあるのは、又又、驚きで、難解極りない、二重規定と言えるだろう。

 統一球を導入した2011、2012年は、反発係数を、下限値である0.4134に近づける事を目標としたようだ。反発係数の目標値を決めたのなら、そのバラツキの幅を、例えば、0.4134±0.001などと、決めなかったのも、やや、いい加減であろう。

 

 NPBとして、このような、規格とは言えない規格を決めた理由は何なのかは分らないし、世の中には、このような規定をした規格が他にあるか否かも、知らないが、何とも不思議な規格と言える。 硬式球は、プロ野球の公式球だけでなく、実業団、大学、高校などの野球大会にも使用されることから、規格に幅を持たせているのだろうか、以前の、複数社で製造していた頃のバラツキ幅を残したのだろうか、或いは、国際大会やMLBの規格などと関連があるのだろうか。若しそうなら、その旨を明記するべきだろう。

 常識的には考えられない、このような、従来の旧規格の分り難さも、今回の統一球問題の背景になっているように思える。ミズノの肩を持つ訳ではないが、製造を担当するミズノとしては、NPBの曖昧さに、大いに戸惑ったのではないか、と想像される。

 

 

 ともあれ、今回、ミズノから発表されたデータを基に、旧規格の下限値を目標に製造されているボールと、新規格で製造されているボールとの、飛距離を計算してみると、以下の様になる。

 

新統一球の反発係数(0.415〜0.416)と、旧統一球での、その下限値0.4134との差は、

    (0.415〜0・416)―0.4134=0.0016〜0.0026

となる。反発係数が0.001変わることで、飛距離はおよそ20cm変わる、とあるので、これから、飛距離の差を求めると、

    (0.0016〜0.0026)/0.001*20cm

    =(1.6〜2.6)*20cm=32〜52cm

となり、新統一球の飛距離が、数10cm、長くなる計算だ。

 

 この計算では、旧統一球での反発係数は、下限値としたが、資料にあるように、実際は、下限値を更に下回る事もあったようだ。 一方、新統一球では、下限値を下回る事は出難くしている、とある事から、新・旧統一球での飛距離の差は、これよりも、更に大きくなるだろう。

 

 先日のNHKテレビだが、新旧のボールを、数10cmの同じ高さから、スタジオ内の床に落として見たら、双方のボールの跳ね返りには、予想に反して、差は見られなかった。これは、床に当たる時の速度が小さいからだ。

ミズノの資料にあるように、ボールとバットのインパクトの瞬間には、双方の反対向きの速度を足し合わせた、270km/hもの速度になる。これは、言わば、270km/hの高速で、硬い壁に当たるのと同じで、反発係数の僅かな違いでも、飛距離の差が出て来ることとなるのだろう。       

 この飛距離の違いは、投手にとっても、打者にとっても、球場を設定する関係者にとっても、無視できない差と言えるだろう。

今シーズンと、昨シーズンの同時期で、ホームラン数を比較してみると、あるチームでは、今シーズンが5割も多くなっている、と言った報道もある。勿論、全てが、使用球の違いに起因するものではないがーー。

 観客から見れば、ホームランになるか、ならないかの、ギリギリの所が、野球の醍醐味の一つで、ホームランが少な過ぎては面白くないし、多すぎても、場外ばかりでも面白くない、という微妙な面がある。

 

余談:従来の旧規格値

 反発係数についての旧規格値(0.4134〜0.4374)の幅の、最小値と最大値でボールを作ったとして、前述と同じように飛距離の差を計算して見ると

    (0.4134〜0.4374)/0.001*20cm

    =0.0240/0.001*20cm=24*20cm=480cm=4.8m

と、とんでもない数字になる。

 

次稿では、規格変更を秘密裏に進めた理由や、組織の責任の在り方等について取り上げることとしたい。

 

 


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