Quantcast
Channel: つれづれの記
Viewing all articles
Browse latest Browse all 856

江戸時代の方位と時刻  続続き

$
0
0

2023年2月20日(月) 江戸時代の方位と時刻  続続き

 

 

先日以来、下記記事を投稿したが、本稿はその続編で、3稿目になる。

・江戸時代の方位と時刻    (2023/2/10)  (O72)

・江戸時代の方位と時刻 続き (2023/2/15)  (O74)

今回は、江戸時代の時刻について、身近な生活に関わる話題をとりあげ、シリーズの締めくくりとしたい。

 

前稿に示した、往時の時刻図を、以下に、再度引用する。

図の上方には、後述の、時そばに出てくる、与太郎が蕎麦を食べた時刻(図左)と、男が蕎麦を食べた時刻(図右)が示されている。

 

 

◇3時のおやつ

 以前、文明堂のTVコマーシャルを何度も見たことがある。

  ♪カステラ1番、電話は2番、3時のおやつは文明堂♪

 可愛い縫いぐるみの人形達が、楽しく踊りまわるもので、下図は、ネットの動画から引用した。

 

 本稿では、カステラではなく「3時のおやつ」がポイントだが、以前は、午後3時を、昼八つ時と呼んでいて、現代の。午後3時頃になる。朝食と夕食の中間にある3時頃の八つ時が、なんかが欲しくなる時刻だったようだ。

コマソンのメロディーは、よく知られている、軽快なリズムの、オッフェンバッハ作曲の、

「天国と地獄」のようだ。

 

◇お江戸日本橋

 ♪お江戸日本橋七つ立ち、初上り、行列揃えて、あれわいさのさ、コチャ、高輪、夜明けて提灯消す、コチャエー、

コチャエー♪

日本橋から始まって、小田原、箱根、―――と進み、京都にたどり着く、東海道53次の風物を歌っているようだ。元歌は俗謡という。

七つ立ちとは、夜明け前の寅の刻、現代の4時頃に出立した、ということで、かなり早朝だ。行列が高輪に着く頃に夜が明けて、提灯の灯を消したようだ。

下図に楽譜を示すが、歌いやすい曲である。(参照:お江戸日本橋 - Wikipedia.html)

 

 

◇時そば

 時そばという、古典落語がある。戦後の、著名な、3人の落語家が、十八番としたようだ。時そばを聞いた記憶は無いが、春風亭柳橋師匠を、特によく知っている。

お馴染みのストーリーは、寒い夜、夜鳴きそばを訪れた、男が、そばを食べ終わって16文の勘定を払う段になり、店主の手のひらに、小銭を落としていく。

  一つ(ひい)、二つ(ふう)、三つ(みい)、四つ(よ)、五つ(い)、六つ(む)七つ(な)

まで来た時、手を止めて、間髪を入れず、“おやじ、今何どきだい?”と聞いた。

“おう、八つどきでい”との、店主の返事に続けて、

  八つ、九つ、十、十一、十二、十三、十四、十五、十六 

と小銭を渡し、そそくさと店を離れたとう。

八つをスキップしたことで、客は一文、得をしたわけだ。

 

この様子を見ていた、間抜けな与太郎は、別の夜、件の屋台に行き、そばを注文した。

勘定をする段になり、先だっての客の真似をして、七文まで小銭を払い、“今何どきだい” と聞いたら、店主から返ってきた返事、“四つどきでい” に続けて、五つ、六つー―――と十六まで数えて支払った。

結局、与太郎は、四~七の4文を、損したわけだ。

 

先述の時刻図にある様に、江戸時代は、数字で言う時刻は、九から始まって四で終わり、又、九に戻るが、その変わり目がミソで、亥の正刻と子の初刻(現代の夜11時)になる。

与太郎が店に行った時刻が、やや早すぎた、四つ時だったわけで、もう少し遅かったら、1文、得をしたのだがー――。

 

この落語の作者は良く分からないが、時刻の変わり目をネタにした、落語の面白さに溢れた、素晴らしい傑作だ。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 856

Trending Articles