2021年5月11日(火) 北極海航路の活用
先日、当ブログで、
地球環境問題と北極海 2021/5/8
を投稿し、地球温暖化によって、北極海の氷の量が、急激に減少しつつある事象に触れた。
今回は、前稿の続編で、新たな東西貿易ルートとして着目されている、北極海航路について、取りあげることとしたい。
◎国の北極政策
我が国では、平成19年(2007年)に、海洋基本法が成立し、海洋に関する施策を集中的、総合的に推進する組織として、内閣に、総合海洋政策本部を設置(本部長は総理 海洋政策特命担当大臣を任命)。古来からの、海洋国日本の心意気が感じられる。
総合海洋政策本部は、平成27年(2015年)、初めての包括的な「北極政策」を決定し公表している。
北極を巡る国際社会の関心の高まりを反映して、「北極評議会」が設置されているようで、自国土が北極海に接している関係国(アメリカ、ロシア、カナダ、北欧諸国)がメンバーという。これら諸国の他、北極海に関心を持つ諸国(日本、中国、インド、イタリア、韓国、シンガポール)が、オブザーバーの資格で参加しているようだ。
「北極政策」というネーミングは、かなり、大上段に構えたニュアンスで、詳細は未調査だが、北極海に関する国際的なプレゼンスをどのように進めるかや、北極海の調査船の建造などの、方向づけを行っているようだ。
(以上は、 001119440 我が国の北極政策の概要.pdf を参照)
◎ 北極海航路の概況
北極海航路の航海距離や所要日数等に関して、ネットで調べた、幾つかのケースについて、データを示す。
① 商船三井の取り組み
出典 砕氷LNG船が日本に初入港 ~ロシア「最果ての地(ヤマル)」から北極海航路を経て日本へ~ _ 商船三井.html
スエズ運河経由 北極海経由
航海距離 13700mil 4900mil 以上 減
所要日数 38日 14日
②産経新聞情報
出典 ロシアの聖域「北極海」に中国が触手 日露防衛協力に活路(1_2ページ) - 産経ニュース.html
スエズ運河経由 北極海経由
航海距離 20000km 13000km
所要日数 北極海経由の輸送時間が10日短縮
北極海は、天然資源の宝庫といわれ、この面でも、各国の関心は高い。
・未確認天然ガスの30%が埋蔵
・未確認石油資源の13%が埋蔵
③ 研究者の調査結果
出典 宙畑氏温暖化で注目!北極海航路の現状とメリデメ、衛星で将来性を検証 _ 宙畑.html
横浜ーロッテルダム間
スエズ運河経由 北極海経由
航海距離 11300mil 7550mil 3750milの距離短縮
所要日数 39.2日 26.2日
①~③のケース毎に、実距離、実日数に差異があるのは、算定条件の違いと思われる。
北極海経由は、スエズ運河経由に比し、航行距離が、30~40%少ないのは、ほぼ確か。
以下のような、リスクも指摘されている
スエズ運河経由 海賊の襲撃の危険(紅海、マラッカ海峡)自衛艦が護衛した事も
北極海経由 冬季の結氷状態
◎調査研究船の建造計画
「北極域研究船」の建造が、2021年から進められるようで、2026年に就航予定という。
研究船のイメージは、下図のようだ。
南極観測船「しらせ」並みの大型船で、1.2mの砕氷能力(しらせは1.5m)
出典 北極点に到達可能、新型砕氷船を建造へ 新航路の調査も:朝日新聞デジタル.html
◎スエズ運河座礁事故
2021年3月23日、日本の正栄汽船が保有するコンテナ船がスエズ運河内で座礁し、船舶の通行が不能に。 3月29日に、座礁船が離礁し、船舶の通行が再開されたが、スエズ運河庁は、渋滞がなくなって、通常の状態に復帰したのは、4月3日と発表している。
スエズ運河の重要性を再認識させるとともに、北極海航路がクローズアップされることとなった。