2021年3月20日(土) 東京オリンピック・パラリンピック
先日の3月11日は、10年前に、東日本大震災が起った、節目となる記念の日である。このところ、TVは、原発事故や防災等、震災に関係する、印象深い番組が、今も続いている。現下のコロナウイルスも、天災の一つと言えるが、この21日に、緊急事態宣言を解除する事が、一昨夜、総理が公表した。
世界的なコロナパンデミックで、この夏に1年延期された、東京五輪・パラ輪関連の、最近の動きを取り上げることとした。
先ず本稿は、組織委員会のトップ交代の事件である。
〇オリンピック組織委員会の椿事
組織委員会の前会長の、森氏の発言が、女性差別発言だと、国内だけでなく、国際的にも大きくとり上げられ、トップが交代する椿事となった。
“女性理事が多い会議は、時間が長くなる。一人が発言すると、負けじと他の人が言い出す” というこの発言だ。
日本的な価値観では、一部を除いては、余り問題視されず、当初は、IOCも発言を許容する意向だった。それが、IOCが、ある時期から、急に厳しい意見に変わっていって、最後には、森氏は、交代せざるを得なくなったようだ。
森氏は、東京オリンピックの東京誘致とその後の推進について、大きな功績があるのは、皆んな知っていることだ。
森氏の後任は、
橋本聖子氏 オリンピックスケート・自転車競技選手 オリ・パラ担当大臣
である。
氏は、アスリートであるとともに、参議院議員を経て担当大臣も経験しており、政治にも見識を持っていて、まさに適任であろう。名前の聖は、聖火から採ったとも聞くが、まさに、オリンピックの申し子と言えるであろうか。(橋本聖子 - Wikipedia.html 等を参照)
橋本氏の後任大臣は、以下である。
丸川珠代 参議院議員 5輪・パラ輪担当 男女共同参画担当
〇理事枠の拡大
橋本新委員長は、組織委員会の理事枠を12名拡大し、そこを全て女性理事で埋めて、理事の中での女性比率を40%にするという、形から整える荒療治を、即、実行している。
現在枠 枠拡大後
理事数 33 +12 45
女性理事 7 +12 19 (45の40%)
東京オリンピックの理念の一つが、ジェンダー平等と言われるが、先ず、足元から実行したと言えよう。
クオーター(Quarter 1/4)ではない、クオータ(Quota 割り当て)制
という仕組みがあるようだ。男女による性差別を無くし、女性の参加を促すため、議員数等を予め割り当てて、政治等への参加を促進する制度で、世界各国で行われているようだ。(クオータ制 - Wikipedia.html)
今回の理事枠の拡大も、同様の考え方である。
〇新理事
選任された女性新理事の顔ぶれは、筆者は知らない人が殆どだが、多様な分野に亘っている。組織の代表者や、大学教授も多い。
高橋尚子 JOC理事(マラソン)
大日方邦子 日本パラ協会会長(スキーアルペン)
斎木尚子 日本ラグビー協会理事
佐々木かおり 「イーウーマン」社長
白石弥生子 都障害者スポーツ協会理事
白波瀬佐和子 東大大学院教授
芳賀美津枝 「登別アシリの会」代表(アイヌ文化)
林いづみ 弁護士
日比野鴫子 桐蔭横浜大教授
籾井圭子 JOC常任理事
矢野晴美 国際医療福祉大教授
来田亨子 中京大教授(日本スポーツジェンダー学会会長)
オリンピック開催間近での、組織委員会のトップ交代は、混乱も予想されたのだが、新たな体制が、スピード感をもって、手際よく整ったことは幸いで、雨降って地固まるの言葉のごとく、大幅な新女性理事の参加を得る中で、地に足の着いた運営がなされることを期待したい。
〇開閉会式の演出で、またもや問題企画案
先日の「週刊文春」で、開閉会式の演出企画を担当する、佐々木宏氏が、問題企画を提案していたことが明るみに出て、辞任することになったようだ。太っている女性タレントの、渡邊直美さんを登場させて、豚をイメージして、「オリンピッグ orinpig」と、洒落る案だったという。
オリンピックの理念に悖る、またもやの女性蔑視発言で、国際的な日本のイメージが、大きく損なわれてしまった。 当の渡邊さんは、冷静に、自分の太っている容姿は持ち味、とも述べているという。(下図は、渡邊直美さん)
開会式はオリンピックのメインイベントの一つで、主催国の過去・現在・未来のありようを、世界に訴える、極めて重要なもの。
橋本会長は、数か月先に迫った開会に向けて、急遽、新たな後任を決めて、臨まなければならない。
〇東京オリンピック開催の具体案
1年延期された後の予定では、オリンピックは、以下のように開催される。
7/23(金)~8/8(日) 17日間
開会式 閉会式
一部競技が、7/21からスタート (野球・ソフト サッカー)
札幌での分散開催 (マラソン 競歩)
東京独自の競技種目 スポーツクライミン
空手
野球 ソフトボール
〇開催の行方
コロナの世界的なパンデミックは、国内外で、まだ収まってはおらず、東京2020の開催の形は、現在も流動的である。
当事者である、IOCや組織委員会や東京都は、このまま実行するとの姿勢は当然で、これまで、膨大な準備をしてきた訳で、出来れば、実行して欲しい、と誰しも思うことなのだがーー。
最近に実施されたNHKの世論調査(ネット情報より 3/5~3/7 電話調査)では、下図に示すように、東京オリンピックは、コロナの影響を考えて、中止する、との意見も多いことが注目される。
行う(3%+29%+23%=55%) 中止する(38%)
この3月22日に、東京五輪の関係5者が、会議を持つという。五者は以下。
IOC バッハ会長
IPC パーソンズ会長
日本組織委 橋本会長
日本政府 丸川大臣
東京都 小池知事
(組織委など5者会談22日で最終調整 海外観客受け入れ可否結論か _ オリンピック・パラリンピック 大会運営 _ NHKニュース)
この5者は、3月3日に、オンラインで会議を行っていて、今回はその延長だが、国内の聖火リレーが始まる3月25日の前に、具体的な実施方法の結論を出す必要があろう。
次稿では、近代オリンピックの歴史から、今後の方向を調べてみる予定である。