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フランスのこと  その3

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       2019年8月16日(金)  フランスのこと  その3

 

 

 先だって、本ブログに、以下の記事

   ・フランスのこと  その1 (2019/7/8)

   ・フランスのこと  その2 (2019/7/29) 

を投稿し、その1では、フランスの国土の形や、地理について触れ、その2では、フランスでの地域行政組織や、海外領土等について取り上げている。

 本稿は、これらの続編であり、冒頭で、G7サミットに触れている。続いて、フランスの交通インフラ全般と、個々の、高速道路、鉄道、航空路、運河について述べている。

 

◎G7サミット

 今月末の8/24(土)~8/26(月)の3日間、フランス南西部のベアリッツで、先進国首脳会議(G7)が開催される予定で、在日のフランス大使館の下記サイトによれば、サミットに先立って、関係閣僚会議が、この4月から7月までの間、8回に亘って、フランス各地で開催されているようだ。 閣僚会議の中には、日本ではあまり聞き慣れない、ジェンダー平等大臣、G7社会雇用大臣の名前を冠したものもある。(G7議長国フランス - La France au Japon.url

 上記の日本のフランス大使館のサイト情報によれば、今回のG7サミットは、「不平等との闘い」を中心テーマとして、

・ジェンダーなどの運命の不平等と闘うこと

・地球を守りながら環境の不平等を削減すること

・公正で公平な貿易・租税・開発政策を推進すること

・社会基盤を揺るがす脅威・テロと戦うこと

・デジタルやAIによる好機を人間中心に活用すること

の5つがテーマという。(要約は筆者)

 地球環境問題については、4年前の2015年のCOP21で、歴史的なパリ協定を成立させ、存在を示したフランスだが、その後のアメリカの協定脱退などがあり、また、中国やロシアの動きなど、世界情勢が見通せないことから、今回のテーマの一つではあるが、2020年からのパリ協定の本実施に向けて、かなり土台が揺らいでいるようにみえる。

 この6月には、大阪で、G20サミットが開催されたばかりだが、世界の首脳たちの、慌ただしい動きが続いている。

 数年前、クリミア問題で、G7からロシアが締め出されたり、中国の存在が大きくなるなど、G7の存在意義がかなり薄れている。今回は、イギリスの首相が、メイ首相から、ジョンソン首相に交代したばかりだが、10月期限のイギリスのEU離脱問題を抱えていること、EUのリーダー的存在だったドイツのメルケル首相が、2021年の任期で引退することが決まっていて、ご自身は健康問題を抱えていること、昨年6月に連立で発足したイタリアのコンテ首相の政権が、連立崩壊の危機にあるとのニュースがあるなど、G7は、元気が出ない状況だろうか。 

 G7もG20も、このところの首脳会議は、新たな方向を打ち出すというよりも、意見の違いを確認する場のようにも見える。

 G7サミットの会場となる、フランスのベアリッツは、筆者は知らなかったロケーションだが、スペイン国境に程近い、大西洋ビスケー湾に面した保養地(人口2万程)で、バイヨンヌ(人口4.4万)の近郊にあるようだ。次項にあるフランス鉄道網の図には、バイヨンヌが出ている。

 ◎ フランスの交通インフラ 

 交通機関が、移動手段として、どの程度利用されているかを表す尺度として、旅客については、旅客数と移動距離を掛けて算出する、人キロベースという単位があり、貨物については、トンキロベースという単位がある。

 このデータから、フランスと日本について、交通機関ごとの利用比率を求めたものが、以下である。

 

     フランス(2005年)    日本(2005年)  

     旅客     貨物    旅客     貨物 

乗用車  82.8%  71.1% 59.9%   4.0%

バス    5.0%         6.2%

 

鉄道   10.1%  16.3% 27.7%  58.7%

航空    2.0%   0.7%  5.9%   0.2%

海運    ー            0.3%  37.1%                 

パイプ          8,4%

    表で、旅客輸送の自動車(乗用車、バス)は、貨物輸送では、トラックになる。

 

 フランスと日本と比較した場合、旅客では、フランスでは、道路利用の比率がかなり高く、鉄道依存度は低いようだ。一方、日本では、航空の比率が高いが、これは、国土の形か細長いこともあるだろうか。

貨物については、フランスでは自動車の比率が高く、日本では鉄道の比重が大である。

又、フランスでは、貨物輸送でのパイプラインの比率がかなり大きいのが目につくが、下図のように、フランスをはじめ、EUの域内では、北海のガス田から、パイプラインが蜘蛛の巣状に敷設されているのには、改めて驚かされたことだ。パイプラインは、道路と同じような公共施設と言えようか。

(以上は、主要5カ国の主要交通統計 国土交通省 2009より 引用)

   

           EU域内に敷設されたパイプライン網

 

ここで、輸送機関別のエネルギー消費量という尺度を観てみる。1995年の日本のデータでは、以下のようだ。

          エネルギー消費量原単位(*) 指数(鉄道を100)

鉄道        117.5           100

自動車(営業用)  696.0           592

   (自家用) 2298.4          1956

内航海運      125.8           107

航空(国内線)  57O3.5          4853

*kcal/トンkm

言うまでもなく、自家用自動車利用では、利便性が得られる反面、エネルギーの無駄がある訳だ。一方、航空利用では、エネルギー消費量に見合った高い料金を払って、時間を買っていることとなる。

 

 ◇ 高速道路 

 下図は、フランスの高速道路網だが、世界でも、アメリカ、カナダ、ドイツに次いで、高速道路が整備されており、モータリゼーションが進んでいると言われる。

最近、政府所有の、高速道路会社の株式の売却が完了したようで、これら売却を受けた3社と、純粋民間の1社の4社が、図のように地域を分けて運営しているようだ。 

・ASF  南フランス高速道路会社       青

・APRR パリ・ライン・ローヌ高速道路会社  薄茶

・SNEF 北・東フランス高速道路会社     緑

・Coliroute コリルート株式会社    茶

               (世界の有料道路 主要国の現状Ⅱ を参照)

                  

       フランスの高速道路網

 

◇鉄道

 下図は、ネットから引用したフランスの鉄道網で、パリを中心に、放射状に展開している。

      

 以前の稿で参照した鉄道網図にはなかった、バイヨンヌが入っていて、G7会場となるビアリッツは、バイヨンヌの近郊となる(図 左下〇印)。

又、観光地として超有名な、モン・サン・ミッシェルも入っているのは嬉しい(図 左上 〇印)。

 

 

パリからの所要時間でみると、本土内は、5時間程度でカバーできるようだ。

5時間以内なら、鉄道を利用するよう行政が勧奨していると聞いたことがある。鉄道を利用すれば、自動車や航空機と比べた場合、CO2 排出量が、圧倒的に少なく、環境負荷が減るためだ。

旅客輸送に関し、鉄道を1とした場合の、単位輸送量当たりのCO2 排出量(平成17年度データ)は、日本のデータだが、以下のようだ。(国交省:交通白書 より) 

 

  鉄道      19    1

  バス      51    2.64  ≒2.7倍

  航空機    111    5.84  ≒約6倍 

  自家用乗用車 173    9.1   ≒約9倍

 

 

◇ 航空路

フランスでは、国内だけでなく、外国との往来に、空路が利用されることも多く、以下の図に示すような空港が整備されている。(図は、ネットより)

      

  パリには、天下のシャルルドゴール空港があり、空港規模は、欧州全体で見て、ロンドンのヒースロー空港に次いで2位である。パリには、他に、国内中心のオルリー空港があり、下述のように、旅客数では、フランス1、2位だ。 

旅客数の多い順(2009年データ)で見ると、10位までは以下のようだ。(フランスの空港 - 旅行のとも、ZenTech.url

 1 パリ・シャルル・ドゴール空港

 2 パリ・オルリー空港(図にはない)

 3 ニース・コート・ダジュール空港

 4 リヨン・サン・・テグジュベリ空港

 5 マルセイユ・プロヴァンス空港

 6 トゥールーズ・ブラニャック空港

 7 ベール・ミュールーズ空港(図のユーロエアポート ベールはバーゼルのこと) 

 8 ボルドー・メリニャック空港

 9 ナント・アトランティック空港 

 10  ボーヴェ・チル空港(パリ北東 俗にパリ第3の空港 図にはない)

 

◆ユニークなユーロエアポート

図にあるユーロエアポートは、フランスのミュールーズにある空港だが、近隣のスイスのバーゼル、近郊のドイツのフライブルクの3都市に跨って運営されているユニークな空港のようだ。

IATAの空港コードは、フランス国内線はミュールーズ(MLH)、スイス国内線はバーゼル(BSL)、国際線はユーロエアポート(EAP)のようで、3つの空港コードが付与されているのは珍しい。

 

◇ 運河   

  本格的な海港を利用する大型客船や、貨物運搬船は現代も健在だが、往時は、フランス北・東部などで、ローカルな運河が多数作られたようだ。

  17世紀、国家プロジェクトとして、大西洋のビスケー湾の、ガロンヌ川の河口から、ボルドーを経て、トゥルーズ、ベジェを通り、地中海のセートを結ぶ「ミディ運河」が、14年もの歳月をかけて建設されたという(下図)。これにより、悲願であった大西洋と地中海が水路で結ばれ、鉄道が開設されるまで活躍したようだ。ミディ運河は、手持ちのフランスの地図にも出ているが、1996年、世界文化遺産として登録されている。

         

            ミディ運河

 

◎ 飛び恥 

 先月7/21の、NHKの朝の番組で、ヨーロッパで広がっている、「飛び恥」(flygskam)運動が紹介され、聞きなれない言葉もあって、印象に残った。

 ”旅行は、航空機でなく鉄道で”ということで、スエーデンの少女トゥーンベリさんが、言い始めたスローガンで、エコを指向する流れの仲で、欧州では、彼女は、大変な人気という。でも、冒頭に述べたように、世界的には、環境問題への取組みは、やや、心許ない状況だろうか。

 語源の「flygskam」だが、直感的に、flyから、

    fly+gskam

と分解し、ネットで見つけた、スエーデン語の翻訳サービスを使って調べてみると、

   fly   英:fly?   →エスケープ

   gskam 英:shame? →グカム?

となり、特に、後半がうまく行かない。

 然らばと、区切りを変えて、

   flyg+skam

でやってみると、なんと、以下のように翻訳され、全体としても解る意味合いになった!

   flyg →飛行

   skam →詐欺

   flygskam →空気の恥(恥ずかしい雰囲気?)

「飛び恥」は直訳的だが、「恥の文化」を自認する我が国では、急所を突いた訳語だろうか。

 

 番組では、航空機は、鉄道に比べて、CO2 排出量が20倍とあった。

でも、本稿で調べたところでは、前項にあるように、CO2 排出量では約6倍で、エネルギー消費量では、約49倍となり、番組と数字が違い過ぎるのだがーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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