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虐待とハラスメント  続続き

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2019年8月8日(木)  虐待とハラスメント  続続き 

 

 

この春に、千葉県野田市で起こった児童虐待事件をきっかけに、児童相談所(児相)の在り方が大きな話題となり、当ブログでも

 

 ・虐待とハラスメント 1   (2019/3/2)

 ・虐待とハラスメント 続き  (2019/4/22)

 と、投稿してきたところだ。  

その後は、筆者としては、諸事に紛れて取り上げてはいないのだが、最近では、改正児童虐待防止法が成立し、野田市での事件の裁判も行われている。 また、この6月、国連の組織であるILO総会で、職場での暴力とパワハラを禁止する条約が採択されている。

 本稿では、これらの話題を、取り上げることとしたい。

 

 ◎南青山での児相建設問題

  昨年の暮れ頃だが、南青山で起った、児相建設計画に対する地元住民の反対運動は、強く印象に残っている。そして、野田市での事件によって児相が一層注目されることとなった。

 

◇区毎の児相

 2016年に、児童福祉法が改正された。質的には、「子供目線への転換」という、大きな変化があったのだが、その中の一つとして、特別区の23区でも、区ごとに児相を持てることとなった。

「児童福祉法」が大幅に改正…子どもの虐待を予防するために何が変わった?

 東京23区については、児相の現状は、以下のように、複数の区をまたがって受け持つ施設になっていて、場所としては7か所、センターとしては9か所に分かれている。  

  ・児童相談センター     ・練馬区 他

  (都家庭児童センター内)  ・渋谷区 文京区 台東区 豊島区 他

                ・新宿区 中央区 港区 千代田区 他

  ・北児童相談所        北区 荒川区 板橋区

  ・品川児童相談        品川区 目黒区 大田区

  ・杉並児童相談        杉並区 中野区 他

  ・江東児童相談所       墨田区 江東区 江戸川区

  ・足立児童相談        足立区 葛飾区

  ・世田谷児童相談所      世田谷 他

    都全体としては、他に、児相が4か所ある(八王子、立川、小平、多摩)。

 この中で、港区が、単独で施設を建設しようとして、住民運動が起こったわけだ。

 

 ◇南青山での住民運動に対しては、賛否を巡って、色んな意見が出ている。一般的に、公的施設の建設は、住民の理解が得られることが多いのだが、ごみ処理施設の建設等では、反対運動も多いことだ。

 児相ができると、自分たちの素晴らしい住環境が悪くなるので、迷惑施設だ、と捉えて建設反対を唱える人たちもいる。 一方で、児相は、地域や社会には必要な施設だということから、反対者を批判する意見もある訳だ。

ややこしい言い方になるが、このように反対派を批判することの危うさを指摘した以下の意見は、詳細は略すが、筆者には傾聴に値するものだ。(「南青山の児相反対派」をボコボコに叩く、そんな風潮がよくない理由)

また、下記のサイトも、立派な知見と思われる。

  ( 『ルポ 児童相談所』著者が語った南青山問題の本質。「23区全てにあるべき」  BUSINESS INSIDER JAPAN)

 

  子と親の関係を、二元論的に単純化すると、以下のようなパターンとなる。

   ・子供はだれのものか、(親のもの/社会のもの)

   ・子供を守り育てる責任は誰が負うのか、(親・家庭/社会・行政)

 日本社会には、子供は親のもので、守り育てる責任は親にある、という、二元論的な伝統的な社会通念があり、内と外を明確に区別するのが美徳、という考えがあるように思える。 社会通念や価値観がやや固定的で、周囲のお世話にはならず、お世話もしないとして、多様性を容認したがらない、と言えるようだ。

 このため、非行を行う子供の親は、周囲の支援が少ない中で、生涯それで苦しむことが多くなる。問題を、社会的にも捉える、ということができにくいのだ。 

 実際には、親と子が実際に生活し子供が育つている地域社会があり、自助、公助、に加えて、共助の概念もある。問題が起こる原因として、社会的な背景を考える視点や、社会的な支援を得て暮らしていく視点が必要と言えるだろうか。

 

◇野田市の事件は、南青山の地域住民の意識にも変化を齎したようで、反対運動も沈静化した様だ。この状況を受けて、住民説明会も開催され、2019年3月、南青山を所管する港区議会で、児相建設が決議されたようだ。

 国から取得した一等地に、6.6億円の工事費を投じて、通常の児相の他、母子家庭の支援施設なども入る、「子ども家庭総合支援センター」が建設される予定だ。 この8月に着工し、2021年4月に開設となっている。

東京新聞南青山の児相着工へ 港区議会で予算案可決社会(TOKYO Web) (2).url

前稿で触れた、足元の足立区での児相建て替え工事も、進んでいるようだ。

◇児相等を、問題児が集まる収容所と捉えるのでなく、子育ての疑問や悩み事を相談に行くと、支援し、解決してくれる組織・窓口にしよう、との動きがある。前稿と同様、山脇由貴子氏のサイトから、下図を再度引用させていただく。図で、通報する人は、周囲の人だけでなく、悩みを抱える当人も含まれるのは勿論のことだ。

     

  最終目標として、図の左下に、「家族再統合」とあり、元の家族に戻ることとなる。又、右下に「社会的養護」とあり、子供は児童養護施設、里親などのもとで生活することとなる。

 日本は、制度的にはアメリカなどと同じだが、子供を受け入れる、里親の数や比率が圧倒的に少ないようだ。

  

◎改正児童虐待防止法の成立

 野田市の事件を含め、このところ、家庭内暴力(DV)等が多発していることから、児童の生命を守ることが急務として、児童虐待防止法の改正が急がれ、与野党協調で取り組みがなされたようで、この6月に、改正児童虐待防止法が成立し、来年4月から施行されることとなっている。

 この中で、親や施設関係者が、しつけとして「体罰」を加えることを禁止することを明文化したことが大きな前進と言われる。一方、児相関係者の、家庭への介入も強化され、全体としての人的体制の強化と、関係機関の連携強化がはかられるようだ。

改正児童虐待防止法が成立 体罰禁止が柱

 

 この8月1日、厚労省から、昨年度の児相への相談件数(速報値)が公表されたが、過去最高件数になっているという。

 内訳は、心理的虐待(面前DVなども)が55%を占め、身体的虐待が25%、ネグレクト(育児放棄)は18%、性的虐待は1%とのことだ。

相談件数の増加は、関係機関の連携と情報共有が進み、社会的な関心が高まったことが理由、と分析しているようで、単純に虐待が増加したとは見ていないようだ。

 一方、対応件数の増加で、児童福司士などの専門職が足りず、争奪戦になっているという。(読売新聞 2019年8月2日朝刊 より)

 

◎野田事件の裁判

 野田事件で、傷害幇助罪に問われた母親に関する裁判が行われ、2019年6月26日、千葉地裁判決が下ったようだ。

懲役2年6か月(検察の求刑は2年)で、3年の執行猶予つきである。判決の後、裁判長は最後に母親を説諭したという報道がなされた。「社会で反省の日々を」 心愛さん母、裁判長の言葉に涙:朝日新聞デジタル.url

DVの張本人である夫の裁判は、今後行われるようだが、日取りは未定という。

 

 今回の裁判に関して、識者の一人である、武蔵大学の千田有紀教授は、関連するサイトで、以下のように述べており、そのまま引用させていただく。(赤下線は筆者)

求刑を上回る判決の根拠は? 野田、心愛ちゃん虐待死事件判決の謎(千田有紀) - 個人

    

 千田教授は、今回の裁判では、夫の家庭内暴力(DV)の下での母親に対する状況認識、夫と子供の中間にある母親に対する理解が全く不十分と言っていて、唯一の解決策は、子供を連れて逃げることだった、と痛烈に批判している! 筆者には、このような判決が出る遠因は、敢えて言えば、男性中心の社会の価値観の問題だと思われることだ。 

 

◎ILO条約

 この6月、国連のILO総会で、職場での暴力やハラスメントを禁止する条約が採択されている。日本も賛成している。

前々項にあるが、日本国内で、この5月に改正児童虐待防止法が成立したのと同じタイミングでの条約の採択である。

ILO総会でハラスメント禁止条約が採択され、初の国際ルールが成立 ただしLGBT保護は盛り込まれず)

日本の批准までには、国内法の整備など、紆余曲折があるだろうか。

 

 アメリカの映画界での事件をきっかけにして、女優に対する映画監督のパワハラが大きな話題となり、全世界的に、#Me Too運動、が盛り上がったことがある。これについては、下記記事で触れている。

  虐待とハラスメント  1  (2019/3/2) 

#Me Too運動のその後はどうなっているのだろうか。 運動自体は収まっているようだが、アメリカのある調査では、パワハラ、セクハラと見られることを怖れて、職場で、女性社員との関わりを避けるようになっている男性が多くなっている、とのデータがあるようだ。(MeToo運動で、男性が女性を避けるようになった。  ハフポスト

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    


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