2019年4月22日(月) 虐待とハラスメント 続き
先だっては、当ブログに、
虐待とハラスメント (2019/3/4)
を投稿し、主に、千葉県野田市での児童虐待死事件について取り上げたが、本稿は、これの続編である。
野田市での事件だけでなく、この種の事件が起こると、決まって児童相談所が鎗玉に上がり、悪者扱いされてきた感じである。
また、昨年暮れ頃だろうか、南青山で起った、児相建設計画に対する住民の反対運動は強く印象に残っている。
筆者は、児童相談所の名前は、かなり以前から知ってはいるものの、児童の面倒をみる行政機関の一つ、という程度の理解しかなく、具体的に、どんな業務を行っているか、はほとんど分かっていない。今回、改めて調べてみることとした。
◇ 足元の児童相談所
最も身近な、住んでいる足立区の児童相談所はどうなっているか、調べてみた。
東京都では、23区・三多摩・島嶼全体を複数地域に区分して、13の児童相談所(相談センター)が分担して所管していて、足立区と葛飾区は、足立児童相談所が所管しているようだ。都庁の組織の、福祉保健局の配下になっている。
足立児童相談所
施設概要 足立区西部の江北地域にある。
1984年(昭和59年)に完成 床面積 約1500m2
現庁舎の近隣に行ったことはないが、地図上で確認した。
現庁舎ができてから30年以上経過し、建て替えが進められているようだ。建て替えが必要な理由は、
・保護が必要な児童が増加 ➡ 一時保護所が狭隘化
・虐待等の相談に対応する職員が増加 ➡ 相談対応のスペースの確保
等で、手狭になっていることだ。
建て替えは、子供を取り巻く環境が、年々悪化している表れであろう。
新庁舎の計画は以下の様だ。
新庁舎:3640m2(現庁舎の2倍強!)
・相談所機能用 約1400m2
・保護所機能用 約2200m2
目下基本設計中で、21年に着工という。完成は何時頃だろうか?
新庁舎ができるまでの間、仮設施設を、現庁舎敷地の隣接地や、近隣の土地に建設して
対応しているようだ。(以上 東京足立児相建て替え)
◇ 児童相談所とは
児童相談所(じどうそうだんじょ)とは - コトバンク 知恵蔵より、以下に引用する。
”児童相談所は、子どもに関する相談に応じ、子どもが心身ともに健やかに育つことができるよう子どもや家庭を援助する機関。略して「児相」と呼ばれる。児童福祉法で都道府県に設置が義務づけられており、全国に205カ所ある(2010年5月10日現在)。 児童福祉法でいう児童とは、満18歳未満の子ども。
近年、暴力や育児放棄などの児童虐待が深刻化しており、児相が対応した児童虐待相談件数も年々増加。08年度は4万2662件(速報値)で、10年前の約6倍になった。こうした事態を背景に、08年の児童虐待防止法改正では虐待が疑われる家庭への臨検(強制立ち入り調査)制度ができるなど、児相の権限と責任が強化されてきている。 身近な子育て相談などに応じる市町村と役割分担・連携を図りながら、専門的な知識や技術を必要とする事例への対応や市町村の後方支援を行うことが、児相には求められている。運営指針では、
(1) 市町村援助(市町村相互間の連絡調整など)、
(2) 相談(専門的な角度からの調査・判定、援助指針の策定、指針に基づく援助)、
(3) 一時保護(子どもの家庭からの隔離)、
(4) 措置(子どもや保護者を児童福祉司や児童委員に指導させたり、子どもを児童福祉
施設に入所させたり里親に委託する)
の4つが児相の基本的機能とされている。
各地の児相では、通報への即時対応や関係機関との連携強化に取り組むなどしているが、虐待に関する情報を受けても速やかな安否確認ができなかったり、親子の引き離しの判断が遅れたりして、子どもを救えないケースが後を絶たない。 ”
◇ 児相の業務
児相に詳しい専門家である山脇由貴子氏の、以下のサイト、
◎「児童相談所」とは? その実態と保護された子どもに待ち受ける試練.url
から、前項にある児相の業務を、図式的に示した下図を引用させていただく。
上図で、➡できない場合 で示されているように、親・子の意向や、児相のマンパワー不足や、施設がいっぱいなどの理由で、事案がすんなり進まないケースも多いようだ。
◇ 相談件数の推移
児相への相談件数だが、ここ30年間程の推移を見てみると、前前項の知恵蔵では、
08年度 4万2662件
となっているが、下図の最新のデータでは
17年度 13万3778件
となっており、信じられない急増ぶりなのである!
(下図は、統計データ 子ども虐待について オレンジリボン運動 より引用)
◇ 児相の保護人員
先述の山脇氏のサイト(◎)にある下図、「一日当たり保護人員及び平均在所日数」をみると、保護人員は年々増加している一方で、在所日数が増加傾向なのは、相談事案が複雑化しているということだろうか。
機械的に、H27年の保護人員を、児相数(208)で割ってみると、
1885/208≒9
となり、児相当たり、平均一時保護人員が9人となる。
◇ 児相の職員事情
又、前述の山脇氏のサイト(◎)では、児相の職員についても触れている。
このサイトから引用した下図のように、児童福祉司の所要数は増える一方という。
児相の職員は、相談件数や児童数に応じて、専門家として、児童福祉司士、児童心理士、医師が配置されるが、本来、専門家は、しかるべき学校を卒業した資格を持った人だ。
しかし、児童福祉司については、専門職は7割強で、残りは、一般業務職から研修を受けてなった人という。
児相の業務だが、ケースバイケースに異なる処理・対応が必要な案件が多く、一方、子供の家庭だけでなく、学校や、警察や市町村等、関連組織間の連携を取りながら進めなければならず、職員は多忙を極めているという。
こんな状況下で、職員の数を増やし、質を充実させることも急がれているようだ。 いま注目されている、働き方改革の一環でもあり、意欲をもって働ける職場にしていくことが求められる。
次稿では、港区 南青山での住民運動を取り上げたい。 なお、前稿で予告していた、カソリック協会での性的虐待については、当面見送り、機会を見て扱うこととしたい。