2019年4月18日(木) 姓と名の順序
一昨夜のNHKニュースで、河野外務大臣が、参議院外務委員会の席で、国際会議などの場で、英語で自分の名前を言う時に
Taro KONO
と、ひっくり返すのを不思議に思っていた、と述べたという報道があった。
(C河野外相「なんで英語のときだけ”Taro KONO”になるのか…)
筆者も、長年、欧米流の表現法には、違和感を感じていたのだが、現職の日本の外務大臣が、公式の場で、率直に発言したことには大変な重みがあり、わが意を得たり、という思いである。
この発言を受けて、政府(外務省や文科省)内で検討が進められるだろうが、具体的にどう進められるのかは不明である。
世界の中で、姓と名の表し方には、東アジア流と欧米流とがあるのは周知のことだ
・東アジア流
言うまでもないが、日本では、普段は、姓ー名の順序になっていて、例えば、以下のようになる。
日本 安部晋三首相(アベ シンゾウ) 河野太郎外相(コウノ タロウ)
中国や韓国でも、人名を表す時は、姓ー名と、性が先で名が後になる。普段、このように呼ばれていて、国際的な場でも同様だ。
例えば、
中国 習近平主席(シュウ キンペイ) 李克強首相(リ コッキョウ)
韓国 文在寅大統領(ムン ジエン) 康京和外相(カン ギョンファ)
と、マスコミでも報道されている。
世界の中では、日本のほか、中国、韓国、ベトナムなどアジアの数か国と、欧米ではハンガリーで、「姓-名」の形式が用いられて
いるようだ。
・欧米流
一方、欧米では、通常は、「名ー姓」となり、ファーストネームが先、ファミリーネームが後となる。公の場では、姓を呼ぶことと
なる。例えば、
米国 トランプ大統領 Donald John TRUMP
英国 メイ首相 Tehresa Mary MAY
独国 メルケル首相 Angela Dorothea MERKEL
となる。欧米人は、日常的に、このように呼んでいて、国際的な場でも、同様である。
要は、日本や中国等の東アジア(漢字文化圏)では、普段、姓が先で名が後になっていて、欧米では、この逆で、姓と名をひっくり
返す言い方が、日常的に、使われているということだ。
然らば、国際的な場では、如何にあるべきなのだろうか?
ローマ字表記に関する国の方針として、第22期国語審議会の答申(2000年12月)(現在は文化審議会国語分科会)では、以下の
ように述べられているようだ。
“したがって,日本人の姓名については,ローマ字表記においても「姓-名」の順(例えばYamada Haruo)とすることが望ましい。なお
,従来の慣習に基づく誤解を防くために,姓をすべて大文字とする(YAMADA Haruo),姓と名の間にコンマを打つ(Yamada,Haruo)
などの方法で,「姓-名」の構造を示すことも考えられよう。”
(文化庁 第22期国語審議会 国際社会に対応する日本語の在り方より引用)
国際化の進展で日本の外国との交流も増え、今年のラグビーWC、来年の五輪・パラ輪開催と、山場が目の前である。今や、国際的な
標準語ともいえる、英語の表現に合わせて、名ー姓とすることは、立派な考え方であり、標準化の方向とも言えようか。
NHKの大河ドラマ「いだてん」でも、彼我の習慣の違いに戸惑う場面が多く出てくるが、名ー姓とするのは、言ってみれば、欧米文化に
追随対することで、コンプレックスの表れでもあるように思える。
これに対し、「普段使われている通りに表す」を原則とし、姓ー名とするスタンスは、自己のアイデンティティを明確にしながら、文化
的な多様性を容認する姿勢だ。欧米で普段やっていることに合わせて、無理に、名ー姓とひっくり返すのは不自然で、その必要性は無いのだ。
河野外務大臣の話では、国際の場で使う自分の名刺は、
KONO Taro
としているという。率先して実行する大臣の姿勢は、見上げた心構えと言える。
国際化の時代では、ローマ字表記一つをとっても、人名の名刺だけでなく、地名や建物名や道路の標識等で、固有名とどう調和させるか、
が重要となる。以下のように、二通りがあろうか。
富士山 Mount Fuji(ーsan)
琵琶湖 Lake Biwa(ーko)
東大寺 Todaiーji Temple
日比谷通り HibiyaーDori Avenue
「余談」:自分の体験だが、以前、スイス ジュネーブでの国際会議に出席した時、配られた会議議事録の出席者名の欄に、自分の姓と名
が逆になって、
Abe MASAYUKI
と記されていたことに驚かされたことがある。 持参した名刺は
Masayuki ABE
だったのだがーー。