Quantcast
Channel: つれづれの記
Viewing all articles
Browse latest Browse all 855

大相撲の椿事   1

$
0
0

2017年12月17日(日)  大相撲の椿事  1 

 

 

  大相撲の横綱春日富士の暴力沙汰が、世間の注目を浴びて、一頃よりは下火になったが、いまだに気になる話題である。 

大相撲フアンの一人として、自分なりに整理し、いくつかに分けてコメントしたい。

 

 

◇事件の事実関係

・10月後半のある夜、九州場所前の中国巡業中の鳥取市内で、鳥取城北高校を卒業して大相撲に入ったOB(*)を激励するための食事会があったが、モンゴル出身力士が主だったようだ。

(*白鵬 春日富士 鶴竜 照の富士 貴の岩 日本人力士、地元関係者 下線はモンゴル出身力士)

一次会でも、ごたごたがあったようだがなんとか収まったものの、2次会となり、春日富士が、前頭貴の岩に、平手だけでなく、道具を使った暴力を振るい、頭に怪我を負わせたという。

 負傷した貴の岩は、部屋へ戻って貴乃花親方に暴力事件を報告したが、地方巡業の責任者でもある親方は、事件について相撲協会へは報告せず、鳥取県警に、直接被害届を提出した。 これに基づき、警察では、加害者・被害者・参加者から事情聴取が行われた。

警察からの連絡で、初めて事件を知った相撲協会は、危機管理委員会が、遅まきながら調査を始めた。

 

・ 警察と協会の調査が進む中で、11/12(日)~11/26(日)の日程で九州本場所が始まっている。

九州場所の冒頭で、八角理事長(横綱北勝海)が、異例の陳謝の挨拶をしたが、春日富士と貴の岩は欠場している。

  この場所で優勝した横綱白鵬は、千秋楽でのインタビューで、“協会の膿を出し切って、事件当事者である、春日富士 貴の岩を復帰させたい”と語り、万歳を三唱すると言う、とんでもない勇み足もあった。

 

・ 九州場所が終わった11月29日、引退を決意した春日富士が、伊勢が浜親方(横綱旭富士)と並んで、記者会見を行ったが、この様子を、どのチャンネルも、LIVEで流している。

翌11/30に、場所後の定例の理事会(非公開)が開かれたが、暴力事件の解明が全く進まず、空振りに終わっている。 

 

・12月3日から、17日までの日程で九州・沖縄の冬巡業が始まっているが、巡業部長である貴乃花親方は、警察対応があるため、春日野広報部長(関脇栃の和歌)が、急遽、巡業の責任者になっている。欠席届が提出されていないままでの、貴の岩の巡業不参加も問題となった。

 

・ 冬巡業が終わって警察の送検やその後の措置も進んでいると思われる、12/20に、臨時理事会が予定されている。これも、11/20の理事会と同じく、非公開で進めるのかは不明だが、今後に向けて、どのような方向付けが行われるのだろうか。 

 協会としての事件の調査が、被害者に関しては全くできていないのだが、何らかの処分が出されるだろうか。加害者に関しての処分は当然だが、被害者側の貴乃花親方についても、協会への報告が無かったこと等について、何らかの処分があるようだ。

 また、詳細は不明だが、翌12/21には、協会役員だけでなく、全力士や業界関係者も出席する、総会があるようだ。

 

・ 今回の事件は、相撲界全体の意識や体質が、余り変わっておらず、協会としての新体制が機能せず、危管理が出来ていない体たらくを露呈したと言える。 暴力沙汰は許されないことが徹底されていないとともに、 事件後の処理が出来ていない。

被害者側の貴乃花親方のやり方がやり玉にあがっている感じだが、でも、被害者側としては、協会に連絡すれば、もみ消しや隠蔽を迫られることを恐れたのだろうか。

  貴乃花親方としては、自身の信念に基づいて、たとえ無勢でも、親方流の相撲界の改革を進めたいのかも知れないが、でも、自身が理事でもあり、事件について警察へ被害届を出す前に、協会へも通報するべきであったろう。(一歩譲っても、同時並行的に行うべきだろう。)

 

・ 場所終了後、現時点でも、被害者である貴の岩は所在不明で、所属部屋の師匠である貴乃花親方は、沈黙している。 警察の捜査が終わったら協会の調査に協力すると表明してきたが、警察は、想定通り、11日に、起訴が必要との意見が付加して送検している。

でも、貴乃花親方は、依然、口を噤んだままで、会見の予定も言わないのはなぜだろうか。情報では、貴乃花親方は、検察の訴追についての措置が決まった後に、協力すると、言い方を変えているようで、又、遅れるようだ。

 

◇ これまでの不祥事と組織の改善

・ 相撲界では、過去にも、主なものでも、以下のような暴力事件(詳細は略)や、屋台骨を揺るがす大事件が起こっていて、その都度改善が行われた、とされている。(相撲界のこれまでの主な不祥事、事件、トラブルなど:岐路に立つ大相撲

    死亡事件   2007 (親方が新弟子をリンチで死亡させる  親方解雇)

    朝青龍事件  2010 (横綱朝青龍が泥酔し一般人に暴行 朝青龍引退) 

    野球賭博問題 2010  (現役力士等の野球賭博  解雇2名・謹慎休場17名) 

    八百長騒動  2011  (八百長相撲の疑惑 17力士が引退・解雇 春場所開催中止)

 

・ そして、これ等の締めくくりとして、3年前の2014年1月から、協会は公益法人化し、組織運営体制を、下図のように、大きく変えてきている。(「日馬富士引退 暴行問題の核心」(時論公論) | 時論公論 | NHK 解説委員室 | 解説アーカイブス )

 ア 評議員会・理事会

 プロ野球界は、最高位に、外部出身者によるコミッショナー制があり、プロサッカーでも、チェアマン制が敷かれていて、ことある毎に機能していると言えるだろう。 これらに倣った形で、大相撲でも、協会の上部に、評議員会を置いたようだ。

評議員会の構成は、外部有識者4名、力士出身者3名で構成され、議長に、相撲界では珍しく女性の、華道の池坊保子氏が就任していて、TVで見たのは、今回が初めてである。

 大相撲の各事業の執行を行う理事会にも、力士出身の10名の理事の他に、有識者として、外部理事3名が加わっているようだ。

一般社会では、会社や団体の運営の民主化・透明化には、外部の人間の意見が必須と言われるが、筆者は、これまでは、相撲協会で外部の人間が入っているのは、横綱審議会(外部委員9名、協会代表1名)のみと思っていた位だ。 

イ 力士養成受託契約

 長い歴史のある大相撲は、伝統的な部屋制度で支えられてきた。 相撲部屋は、師匠である親方と、おかみさんが、力士だけでなく、行司、呼出し、床山を抱える、寝食を共にする共同体のような組織で、親方が社長を務める中小企業のようでもあり、高校の全寮制のスポーツクラブにも似ているだろうか。

 相撲部屋は、2017.4現在、大小合わせて45あり、いくつかの系列(一門)に分かれているようだ。(相撲部屋 - Wikipedia

上図にあるように、各部屋の力士は、以前は、部屋毎に親方と契約したが、変更後は、先ず、協会と「協会員」の契約を結び、それを受けて、協会と各相撲部屋の親方との間で、

「力士養成受託契約」

を結ぶように変わったようだ。このようになっていることは、今回、初めて知ったことだが、各部屋に対して、協会のコントロールを強くするねらいがあるようだ。

 

・でも、組織上、前図のア、イのようになっていることと、それが上手く機能しているか否かは、全く別問題である。

“仏作って魂入れず”の諺の通り、言うところの、意識・体質改革は難しく、だからこそ、重要な事は言うまでもない。外部の意見を取り入れる形は出来ていても、肝心の魂(心、意識)が伴っていなければ、実質は変わらない、ということだ。

 

一般企業や団体でも、組織運営の民主化・透明化のためには、意識改革がポイントとは、口酸っぱく言われることだが、生易しい事ではない。

でも、意識を変えるためには、形やルールを変えながら、教育を重ねるしかないだろうが、長い伝統のある大相撲界では、しきたりが重んじられるだけに、なおさらのことで、定着するには、10年位の時間は必要だろうか。

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 855

Trending Articles