2017年12月2日(土) カタルーニャ州の独立騒動と住民投票
◇この10月1日、スペインで、カタルーニャ州の独立を問う住民投票が実施され、賛成90%(反対8%、白票2%)と言う結果となったようだ。でも、国全体では、有権者数が530万で、投票者数は226万人、投票率は42%程度で、賛成票は、有権者全体の38%と多数ではない。
これを裏付けるかのように、住民投票後、スペイン国内では、カタルーニャ州の独立に反対する100万人規模の大デモが行われているようで、州内では、独立賛成派と反対派とが、激しく対立したという。(カタルーニャ、100万人が独立反対デモ 連帯訴え )
投票結果に勢いづいたカタルーニャ州政府のプチデモン首相の政権は、しばし間を置いて、結局、州議会で、州のスペインからの独立を宣言した。
住民投票の実施を違法とし、投票の妨害も行ったスペイン中央政府は、独立宣言後は、国家反逆罪で首相等の関係幹部を逮捕しようとし、首相一行は国外(ベルギー)に亡命した。一時ベルギー政府に拘束されたが、釈放されて、現在に至っていると思われる。
スペイン中央政府は、カタルーニャ州の自治権を停止して直轄統治することにし、職務代行者を任命している。 州議会を解散して、12月27日に議会選挙を行うこととしているようだ。
(以上 カタルーニャ州独立投票賛成約90%で独立宣言しスペイン政府は憲法に基き州首相等約150人解任・州議会解散 など)
◇スペインは、下記のように、日本よりも国土の面積がかなり広い。
日本 37.8万km2
スペイン 50.6万km2(日本の約1.3倍)
スペインには、17の自治州があり、それぞれに自治が認められている。州の下に、国全体で50の県があるようで、この数字は、日本の都道府県とほぼ同じだ。
自治州のイメージが掴みにくいのだが、日本でいえば、北海道、北東北、関西、九州等の大きさが、スペインの自治州の規模だろうか。州や県の権限は、どうなっているのだろうか。
カタルーニャ州は、フランスに接していることもあり、州都バルセロナを中心として、地域の経済力は旺盛で、州のGDPは、デンマーク一国に相当し、フィンランド、アイルランド、ポルトガルを上回るという。(2012データ)(前 サイト)
民族的に敬意を払ってもらっていないとともに、中央政府に払っている税金額に対して、受け取る配布金が少なすぎる、というのが、州の基本的な不満のようだ。 この出入りの差額が、2012年前後の年平均で、120~160億ユーロ(1.6~2.0兆円)もあると言う。
州都バルセロナは、スペイン第2の大都市で、1992年には、スペインで初めて、オリピックが開催されており、超有名な観光地であるサグラダファミリア教会も、この地にある。
州の住民の民族的特徴は良くはわからないが、言語としては、スペイン語(カスティーリャ語)に加え、カタルーニャ語も、地方公用語として使われている。
カタルーニャ州は、これまで、何度となく、スペインからの独立騒動を起こしているが、煩雑になるので省略する。(カタルーニャ独立運動 - Wikipedia など)
◇スペインでの州の自治権拡大や独立の要求の動きとしては、ビルバオ鉱山等で発展した北部のバスク州の例があり、現在は、中央政府と州との間で、特別な自治権を認められているようだ。(バスク州 - Wikipedia など)
筆者は、カタルーニャ州も、この例に倣うと思ったのだが、最悪の結末となったようだ。
今回の事件は、スペインの国内問題として、“また起こった騒動”、位なものなのだろうが、住民の自治と国家との関係という視点で、興味深い事例である。
◇本来、住民投票は、通常の首長や議員の選挙を補完するものとして、自治権の一環として、自由に実施されるべきものだろう。
しかし、投票に掛ける事案として、地域の独立や、国の権限と競合する徴税・軍隊の保有等については、許容されないものだろう。
国全体で賛否を問うた国民投票には、2016年6月にイギリスで実施された、EU離脱を巡る国民投票があり、予想に反して、離脱派が多数を占める結果となって、イギリスがEUを離脱するということで、世界が大きく揺れているのは周知のことだ。
少し前には、ギリシャの経済危機でのケースや、アイルランドで同性婚の可否を問うたもの、スコットランド独立を問う国民投票、もある。
日本での住民投票の例として話題になったのは、行政組織の簡素化をめざした、大阪都構想の事例がある。
これらについては、当ブログの下記記事で触れているので詳細は省略する。
(記事は、新しい順)
・Brexit 1~4 (2016/7/2~10/10)
・ギリシャの国民投票 1~2 (2015/7/11~7/25)
・選挙と住民投票 1~5 (2015/5/25~6/13)
(大阪都構想はその2、アイルランドの国民投票はその3)
・スコットランドの行方 (2014/9/24~10/27)
そして、国内の大きな話題である憲法改正に関して、国会内での論議が始まっているところだが、国会の発議をうけて、憲政史上初の、国民投票に掛ける手続きとなっている。