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事故原発との闘い  1

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2013年9月11日(水) 事故原発との闘い 1 

 

 

 東日本大震災で、福島第一原発が事故になって以来、今日で2年半になる。

この間、原発や放射能に関する色々な状況があり、本ブログでも、何度も取り上げて来ているのだが、最も入口の課題である、事故原発に関する汚染水の管理問題が、未だに、明確な見通しが立たない状況といえるだろうか。

 

 2020年オリンピック開催都市の選定に向けた最後の土壇場で、Tokyoでは、事故原発からの汚染水漏れの問題が、にわかにクローズアップされ、大きく影響するのではと危惧したのだが、幸いにも、8日早朝、2020年のオリンピック・パラリンピックの東京開催が決定したのは、近年にない、嬉しい大ニュースである。

 このオリンピックについては、稿を改めて取り上げることとし、本稿では、放射能に関する当面のトピックスについて、先ず、取り上げることとした。

 

 

○安部総理のスピーチとQ&A

 サンクトペテルブルグでの、G20の会場をそそくさと切り上げて、IOC総会の会場であるブエノスアイレスに乗り込んだ安部総理は、最後の日本のプレゼンで、特に、原発事故に関連する放射能問題の安全性について強調した。

 内容については、正確な記録は入手していないので、詳細は述べないが、港湾の0.3kmの範囲内でブロックされ、コントロール下にある(under control)、と言うのは正しく無く、貯蔵タンクの事故や、地下水脈などを通じて、事故原発からの汚染水が、海洋に流出している可能性はかなり高く、コントロールは不十分と言わざるを得ないのだ。 

 又、食品の安全基準については、その通りだが、現行のルールを述べただけで、検査体制や魚介類を含めた各種食品の現在の数値を示すべきだった。  (【五輪】安倍首相は強弁、「汚染水は問題ない」「港湾内で完全にブロック」、IOC委員質問に

 

 安部総理の説明やQ&Aで、世界が納得した訳ではなく、一国の総理大臣が出て来て、安全性を保証すると言明した事で、それを信用し、取りあえず、矛を納めたものであろう。

 日本は、今後の放射能の安全性を確保することに関し、重大な責務を負った訳であり、少なくともオリンピックが開催される迄の間、腰を据えてきっちり対応し、内外に対して、情報を公表して、納得させていかねばならない。

 これを、一つのチャンスととらえ、マイナスイメージを変えて、事故原発の処理や放射能の管理を通じて、一つの見本になるような、いい結果を残して行きたいものだ。

 

 先日、隣国韓国は、日本の原発周辺の8県域からの魚介類等の水産物の輸入禁止を決めたようで、根拠は不明だが、日本たたき、オリンピック妨害などの悪意すら感じられるニュースだろう。 (【NHK】 韓国、日本水産物輸入禁止強化★3 : にゅーすまとめログ )

 

 

○事故原発のコントロール

 ここで、総理の言う事故原発のコントロール状況について、見てみたい。

 

・「循環注水冷却システム」

 言うまでも無く、事故原発については、放射能が周囲環境に漏れないように確実にコントロールする、冷温低状態を作り、これを保持することが第一の課題である。

 そして、この状態を保持しつつ、長い道のりをかけて、危険の原因を取り除く廃炉作業を、着実に進める事が、第二の、最大の課題であることは言うまでもない。

 

 まず、指し向きの課題だが、4号機は別として、メルトダウンしたと想定されている1〜3号機の3基の原子炉だが、原子炉本体や配管等のあちこちが破損・故障していると想定されることから、これらの補修が完了する迄は、注水している冷却水が、高濃度の放射能を含んだ状態で漏れ出てくることは避けられない。

 こんな状況下で、一昨年秋に、漏れ出る汚染水から放射性物質を除去する設備を介在させながら、その水を循環させ、冷却用に再利用するという、苦肉の策とも言える、「循環注水冷却システム」が、何とか実現している訳だ。

この時の政府は、冷温停止状態が実現した、原発事故は収束した、などと、言明したのだが、まったくもって、誤解を招く言い方であった。

 今回の循環注水冷却システムは、原子炉等の破損状況が殆ど分らないまま、冷却水を循環させ、言わば汚染水垂れ流し付きの継ぎはぎだらけで、辛うじて、冷温停止状態を保持していると言える。

この巨大な冷却系の最近の状況については把握していないのだが、循環している水が、配管の途中で漏れていた、と言った事故のニュースが、何度か伝えられている。

 

 毎日、300トンもの新たに汚染水が出て来る事から、循環させ再利用している水の他に、新たに冷却水を加える必要もあり、更に、悪いことに、周囲から地下水が建屋内に流れ込み、破損した原子炉等に触れて、これがまた、新たな汚染水となっているようだ。

事故原発の周辺は、目に見える、地上経由での海洋汚染は無いとしても、汚染水が、地下を経由して、海岸の岸壁等から、海へ直接流れ込んでいる可能性も否定できないようで、一体全体、地下ではどのようになっているかは、かなりの部分が未知数だろうか。

又、護岸の周辺が、海中で、どのようにガードされているのかも定かではない。 

地下の水系については、その道の土木等の専門家には自明の理なのだろうが、素人目には、思わぬ抜け道があった、と言う思いである。

 

 人工物だけのシステムであれば、コントロールしやすい訳だが、肝心のこの人工物も、随所で破損している上、そこに、地下水脈という自然現象も関係するという、全体として、現在の「循環注水冷却システム」は、極めて扱い難い複雑なシステムになっていると言えよう。 

 

 地下水脈を経由した汚染水を、これ以上に増やさないために、事故原発の周囲から、地下の水脈を経由して建屋に流れ込む水を、原子炉建屋の手前で遮断する方法が、これまでも検討されて来ている。 目下の案は、建屋の手前の土を凍らせ、凍土壁で地下水が事故原子炉建屋に入るのを遮る方法という。

凍土壁で堰きとめられて溜った地下水は、汚染されていないとして汲み上げ、海に放出する案のようだ。この場合、海水の汚染にならないように、細心の注意が必要だが、地域漁業者団体は、黙っている訳は無く、調整は難航が予想される。

これらの工事を、政府が主導して行い、このため、政府が470億もの資金を出すようだ。(<福島汚染水漏れ>国費470億円投入へ (毎日新聞) - Yahoo!ニュース

 

 

・汚染水貯蔵タンク

 循環注水冷却システム全体としては、300トン/日もの汚染水が新たに出ると言われ、これを外部に棄てる訳にはいかないことから、貯蔵するための多量のタンク等が必要だ。

タンクの建設等については、この春に、下記記事で触れている。

     廃炉処理の現況は問題ない?(2013/3/5) 

この記事の時点では、既設タンクの使用・空き容量と、敷地の広さ見合いの今後のタンクの増設予定は、以下の様になっていた。

     既設タンク 容量32万トン

             使用済26万トン 

             空き6万トン⇒単純計算で、あと150日分⇒8月上旬で満杯!

     新規増設予定 2015年度までに  32万トン⇒70万トンに

             単純計算では、約3年後の2016年3月迄は持つ

 日々に出る汚染水の量やタンクの設備・使用状況などのデータは、現状は、果たしてどうなっているかは、把握してはいないが、先程のNHKニュースでは、貯蔵量は35万トンという数字を見た。一方、8/27時点で、汚染水の量は、既に、47万トンという数字もある。(<福島汚染水漏れ>国費470億円投入へ (毎日新聞) - Yahoo!ニュース )

 

 このタンク群から部分的に汚染水が漏れている事故は幾つかあったのだが、最近になって、特定タンクの接合部が破損して、かなりの量(300トン)の汚染水が漏れていることが判明している。(NHK NEWS WEB 追及解説・原発汚染水漏れ問題

 今回、多量の汚染水が周囲の環境に漏れた事態を重く見た原子力規制委員会は、IAEAとも相談の上、原子力事故の国際評価基準(INES)で、レベル3に相当する放射能事故とした。福島の原子炉事故そのものは、チェルノブイリ事故と同じレベル7だが、今回の放射能漏れは、本体の事故とは別扱いとしたものだが、不可抗力とは言い難い2次災害的な事故だけに、先進国を自任する日本としては、申し開きが出来ない、お粗末な事故でもある。(原子力規制委:汚染水タンク漏水 「レベル3」に正式決定− 毎日jp(毎日新聞) )

 タンクに貯蔵している汚染水が、先ず漏れ出さないようにすることは喫緊の課題だ。

 

 

 

○船頭ばかりーー?

 オリンピック候補都市の最終選定間近になって、事故原発の扱いについて、急に国が表に出て来た感は否めず、人気取りのパフォーマンスという批判もある。

 今後は、東電に任せっきりだったのを改め、政府も関与していくと言うが、なにを今更、という感じである。 信用して任せて来たのに、うまく行っていないので、これからは、国が前面に出てやって行く、と聞こえ、東電だけを悪者にして、国には責任が無いと言わんばかりの言い方である。 

 原発事故は、人災の要因もあるものの、殆ど、天災と言うべきもので、事故の処理については、事業者は勿論だが、原子力政策を推進して来た国の責任も極めて大きいのだ。

これまで、国は国として、それなりにはやってきたのだが、これまで国が十分に関与して来たとは言えず、責任を逃れられない東電だけが、お白州に引き出されてきた印象がある。

 

 事故原発に関連した問題への対応では、国としては、資金面の支援は当然として、口先だけでなく、ガレキの撤去や汚染水の扱いなどの、危険で忍耐強い作業も、やる必要があるのだ。

国として、現場での実際の作業を、何処までやるつもりなのか、責任者の現地常駐と指揮管理系統や、作業の項目や、専門性の高い要員の確保、などをどうするのか、それらが問われている。

これまで、「悪」の代表の様に言われながらも、黙々とやっている東電との連携を、どのようにするのだろうか。

 

 口を挟むだけ、質問したり・報告を求めるだけの介入は、現場にとっては、マイナス以外の何物でもない。

NTTの現役時代、何度か経験した、通信回線の大事故の事が思い出される。回線の利用者であるユーザー対応で苦慮した思いが多いのだが、一番迷惑だったのは、事故の状況や回復の見通しについての、上層部等からの、矢継ぎ早の問い合わせや報告の要求であった。

 「船頭多くして船山へ上る」、の愚はやってはいけない。

 

 オリンピックの東京開催の決定を受けて、瞬く間にスポーツ庁が具体化したようだが、同様に、事故原発問題についても、国として、時の政権に左右されずに、しっかりと本腰を入れて長期的に処理する体制を、整えるべき時なのだ。勿論、国内外のあらゆる技術や英知を活用する必要もある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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