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都議選が終わって   続続

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2017年9月5日(火)  都議選が終って 続続

 

 

 7月4日の都議会議員選挙に関しては、下記ブログで取り上げたところだ。

    都議選が終わって    (2017/7/11)

    都議選が終わって 続  (2017/8/25)  

今回はその続編で、

   ・築地市場移転問題の状況

   ・都民ファーストの会の人気

を取り上げた後、都議選で、国政に対する都民の不満が表れたことが影響した、とされる、

   ・安部内閣の改造

   ・民進党の党首選

について触れることとしたい。

 

◇築地市場移転問題の状況

 都議選後、8月初めに議会の正副議長等を選出し、8月28日から9日間(今日9/5まで)の日程で、臨時都議会が開会した。主な議案は、現市場の豊洲移転に伴う補正予算等の審議という。 前稿で触れたように、都議選直前(6/20)に、市場移転問題の基本方針が示されたが、それ以降、都議会の本会議で論議されるのは初めてである。

 豊洲新市場については、土壌汚染対策の追加工事(盛り土の実施、地下空間の措置、モニタリング設備の改善)が必要とされ(専門家会議は、安全基準はクリアしていると公表しているがーー)、このために必要な予算案が審議される。

 今回の追加工事に伴う環境アセスメントの大幅な見直しは必要ないようで、先日の小池知事の発表では、全体が整い移転が可能となるのは、来年6月以降としていて、実際は、秋頃とも言われる。  そして驚いたことに、豊洲新市場の建物内の一割程の店舗スペースで、大量のカビが見つかったという報道だ。この所の気象条件や、空調が関連していると言われるが、食品を取り扱うだけに、徹底した除去作業が必要なのは言うまでもない。

 オリ・パラ関連の準備のための駐車場の整備など、現在の築地市場跡地の活用も、具体化が必要となってきているようだ。

 

当面の豊洲新市場とともに、築地を再開発して、活用するという、長期的な二股作戦がどうなるのか、注目したい。 

 

 

◇都民ファーストの会の人気 

 小池知事誕生後に、急遽具体化した、地域政党である「都民ファーストの会」の人気は高く、都議選の投票前から圧勝が予想され、その通りの結果となったことは、前前稿で述べている。

 舛添前知事のコスイやり方にあきれ返り、立候補する小池候補に対する都自民党の突き放す姿勢を容認できない有権者の都民が、ガラス張りでオープンにして、正面から堂々と取り組む小池候補の姿勢を全面的に支持した結果と言える。 

筆者は、昨年9月に都議会で行われた、小池新知事の就任演説を、詳しく読ませてもらったところだが、日本の首都である東京の首長としての、分かりやすい見事な施政方針であった。

日本の首都であり、政治・経済・文化の中心である東京都の都議会議員選挙の結果が、国政にも大きなインパクトを与えたことは、当然だろう。

 

 都民ファーストの会の人気にあやかって、2匹目のドジョウを狙うように、知事の盟友の若狭勝衆議院議員が、先月、「日本ファーストの会」を立ち上げたが、肝心の小池都知事が、当面の公務に忙殺されていることもあって、殆ど盛り上がりが無い。

「国民ファーストの会」という政治団体は既に存在しているため、アメリカのトランプ政権を連想させる日本ファーストの会というネーミングとなったようである。 

 

 地域政党では、先に、大阪維新の会の活動があったが、大阪府と大阪市の二重行政の無駄を無くすと言った狙いが、支持を得たとは言えなかったようだ。

大阪府知事でもある松井代表が、森友学園問題の法的処理で、存在を示してはいるがーーー。

大阪都構想の主導者であった橋下氏が、政界から去り、国政レベルでも、「日本維新の会」が結成されているのだが、党派としての立脚点が良く見えないところだ。 

 

 日本ファーストの会を具体化するには、小池百合子氏の人気に頼るのではなく、日本維新の会の事例を他山の石として、国政を行う姿勢や、主要政策事項を明確にしなければならないのは当然のことだ。

 

 

◇安部内閣の改造

 この8月3日、安部内閣の改造が行われた。都議選以降、各種世論調査(読売新聞、毎日新聞、NHK、)では、内閣の支持率が低下していたのだが、それを浮揚させる狙いがあった。 

内閣改造後、世論調査(日経新聞)での支持率は、多少上向きになったのだが、大勢は変わっていない。(詳細は略) 

 政権与党が、議会で多数派を占めることは、政治の安定や政策の遂行のためには極めて重要だが、それに胡坐をかいてきたともいえる自民党の姿勢が問われることとなっている。

 

 現内閣は、良く見える外交での総理の動きなど(日米首脳会談、日露首脳会談 イタリアG7サミット G20会議 等々)は、それなりに対応してきていると言えるのだが、足元の内政では、都合の悪い事案が出ると、議会内での数の力をいいことに、うやむやにする姿勢が、顕著に出ているのは事実だ。

 以下のような事案に関する国会内の論議では、答弁の中味が空疎であり、閉会中審査にもしぶしぶ応じているが、同様で、説明責任が果たされていない。

 ・大阪の森友学園関係では、国有地が、大幅な値引きで、超格安で売却されている。 地価の埋設物を処理する費用が値引きの根拠と言うが、総理夫人が、関連の幼稚園の園長をしている事が、大きく関係していると言うのが、国民大方の見方だ。

忖度という、古めかしい変な言葉が流行った。総理夫人の担当官が、その後の人事異動で転出している。

 

・加計学園関係では、今治市に特区を設定して、獣医学部を新設することとなっているが、他の地域や大学の要望ではなく、総理との長年の知人が経営する、今治市の加計学園が認められた経緯が曖昧だ。前事務次官の証言も、宙に浮いている。

しかも、総理は、加計学園に決まったことを、会議の直前になって知った、というのは、到底納得できないところ。

 獣医師業界が規制を求めているとも言われるが、獣医学部の新設が規制されていたのはなぜか。獣医師の需要供給関係はどうなのか。特区を設定して措置するようなテーマか? 今治市の加計学園に決まった理由はなにか?

特区の設定や、獣医学部の開設にあたっての手続きには、一点の曇りもないと証言しているのは白々しい限りだ。 

 

・防衛省関連問題もある。

 南スーダンに派遣されている、PKO部隊の日報問題では、現地の状況に関する日報の記述をめぐって、戦闘があったのかなかったのか、防衛省内の日報情報の存在や管理が論議されたが、空疎な論議が続いた。南スーダンの現地ジュバでは、自衛隊の撤退後、武力衝突が激化していると言うのに、日本の国内では、日報の記述をめぐるレベルの低い御目出たい議論が続いた。

このような、内向きの問題が大きく取り上げられ背景に、一昨年、強行採決で成立した安保法制下では、自衛隊のPKO派遣をめぐる後ろめたさがあり、現地では戦闘が無かったこととしたかったようだ。このため、都合の悪い日報は隠した、ということだろう。

 これらをめぐる前稲田防衛大臣の国会での対応は、操り人形のようであった。

防衛省幹部も、責任をとって辞任したようだが、このような隠蔽事案が発生した事は、文民統制という観点からはどうなのだろうか。 

 都議選での選挙応援演説での、前稲田防衛大臣の発言も、公務員としてあるまじき、とんでもないものだ。これを、咎めなかった政府や党の姿勢は頂けず、内閣改造の前に自主的に辞職した(実際はさせられた)ことで、けじめをつけたということで、不問に付す、といういつもの日本流の処理である。その後の前大臣に対する野党の追及要求は、どこ吹く風である。

 

・総理が、5月の憲法記念日にあたって、憲法改正の内容や、スケジュールについての発言があったが、傲慢さの現れであり、数の力がある今こそ、自民党の積年の宿題を片付けるチャンス、という総理の腹積もりだろうか。

 憲法9条をめぐる論議は、国内では、意見は統一されておらず、一昨年の安保法制のドタバタのように、現実には、憲法は度外視して、数の力がまかり通っている。

 一昨年、ブログで取り上げたように、自衛隊の存在は、現憲法の規定では、明確な憲法違反である。自衛権は、憲法によってではなく、国連憲章で認められている、という、他力本願である。

一方、明治以降から大戦までの反省から生まれた、平和主義と戦争を放棄を掲げることと、軍隊を持つこととの関係がポイントである。

自衛権を、自力本願で、憲法で規定・肯定し、小学生にも分かる日本語で、平和主義と軍隊との関係を明記しなければならないと、筆者も思う。

現在の9条と1、2項を残したままで、自衛隊は加憲するというのは、到底理解できない、自己矛盾そのものである。

また、一切の軍備を持たない丸腰主義や、無抵抗主義は、現実の国際情勢下で、どこまで存在できるだろうか? 軍備は保有した上で、これらを、理想像として、憲法に残す形はとれるだろうか?

 

 先日、北朝鮮のミサイルが、襟裳岬上空通過したというニュースは、国民を驚かせたが、防衛大臣が変わっていて良かった! と言うのが率直な実感である。

内向きの要素が多く、国内の分断が進んでいるアメリカのトランプ政権も、こと、防衛・軍事や安全保障に関する限り、これらは、実務であるだけに、ある程度の信頼は置ける。これも信頼できなくなり、アメリカが暴走すれば、世界は終りになるかもしれない。

ごく最近、北朝鮮が、水爆レベルの核実験を行ったことが判明し、事態は緊迫している!

 

 日本では、日本経済と消費税、国際的な安全保障、地球環境問題、住みよい街づくり、等々、課題は多い。

この秋10/22に確定している衆院3補選(青森、新潟、愛媛 いづれも自民議員死亡)を経て、来年12月の衆議院議員の任期が切れ前に、総選挙が行われる訳で、今後の政治のポイントである。

果たして、国内政治動向と、国際情勢はどう展開していくのだろうか?

 

◇民進党の党首選

 都議選を前にして、都議会の民進党で離党者が相次ぎ、7名が残ったものの、当選したのはたったの5名という惨敗ぶりである。敗れたというより、存在が霞んでしまったと言えようか。

 この結果も受けて、民進党の蓮舫代表が結局辞任することとなり、民進党の党首選が実施された。 前原誠司、枝野幸男の両氏が立候補し、サポーターも含めた投票の結果、9月1日の党大会で前原氏が選任された。第3の候補が出てこなかった事もあり、新鮮味がない結果となった。

両候補の主な争点として、以下のような諸点

   国民生活と消費税増税

   野党共闘の在り方

   原子力政策

   憲法改正問題 等

が挙げられたが、あまり盛り上がらなかった。

挙党一致という、新たな体制が固まりつつあるようだが、早くも、肝心の幹事長の人選が、ゆれ動いている。

 

 離党した細野豪志氏や、野党共闘で除籍された長島昭久氏との関係、日本ファーストの会との関係などもあり、今後の動きに期待したいところだが、往時のように、自民に対抗できる、実行力を伴った政治勢力となるまでの道のりは、程遠いようだ。

 

 


日本版GPS衛星「みちびき」3号機の打ち上げ成功

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2017年9月9日(土) 日本版GPS衛星「みちびき」3号機の打ち上げ成功

 

  先月の8月19日午後、種子島宇宙センターから、日本版の衛星測位システム(Navigation Satellite System)の構築を目指す、準天頂衛星「みちびき3号機」が打ち上げられ、順調に予定軌道に投入された。

今回の打ち上げは、天候不良や、ロケットの推進系の不具合で、当初予定より8日程遅れているが、H2Aロケット35号機が使用された。

 

「みちびき」については、最初の1号機が打ち上げられたのは、7年前であり、それを基に、各種の試験や調査が行われてきている。当ブログでも、1号機について、以下の記事で取り上げている。

        日本版GPS衛星「みちびき」が宙に浮く?  (2010/9/29) 

2号機は、今年の6月1日に打ち上げが成功しており、今回の3号機に続いて、来月の10月10日に予定されている、4号機が打ち上げられれば、「みちびき」4基を活用した、高精度の衛星測位システムが確立し、国内で、本格サービスが開始される予定である。

 

◇世界の衛星測位システム

 米国が軍事用に開発した、全地球規模の衛星測位システムであるGPS(Global Positioning System)の電波を、無料で、民生用に開放して以来、これを利用したカーナビなどが、世界的に普及しており、最近は、精度も上がっているようだ。

この米国のGPSに依存する形で、社会インフラとして、衛星測位サービスの民生利用が進展すると、米国の姿勢が変わった時のリスクが大きく、社会不安に陥る危険もあることから、各国とも、自前の衛星や技術を保有すべく、開発整備に躍起となっている。 

下記に示すように、ロシア、EU、中国の衛星測位システムは、全地球をカバーしており、インド、日本では、地域を対象としている。

  国    システム名    衛星数   カバー域    記  事

アメリカ GPS           24+7基  全地球      完成運用中 

ロシア  GLONASS     24基      全地球      一時荒廃後復活

EU    Galileo           18基     全地球      2020頃 30基体制に

中国   北斗BeiDou     16基     アジア太平洋 2020 35基で全地球に

インド   IRNSS          7基    インド地域     完成

日本   みちびき             4基     日本(豪州)   10月4号機打上げ  2025に7基体制

 

◇ 衛星の軌道

人工衛星は、地球の周りを周回する飛行体だが、衛星の軌道と地球との関係は以下のように様々だ。

 

・静止衛星 

身近な衛星の代表的なものが、放送・通信衛星や気象衛星(ひまわり)である。これらは、静止衛星で、赤道上空約36000kmの軌道(GEO:GEostationary Orbit)を旋回し、衛星の旋回速度が、地球の自転速度に同期しているため、見掛け上、衛星が、赤道上の天空に静止しているように見える。

各静止衛星の位置を地図上で示すと、赤道上に、一定間隔を置いて点状に並ぶ軌跡となる。

    

・国際宇宙ステーション

衛星として、日本人宇宙飛行士の活躍で話題となるのが、国際宇宙ステーション(ISS:International Space Station)だ。地上約400kmの上空を、地球を1周約90分で周回(1日約16周)している。赤道に対する周回軌道の傾斜角は、51.6度という。

 国際宇宙ステーションと、この直下の地球上の地点との関係を示す地上軌跡(Ground Trace)は、地球の自転の関係から、メルカトール図法の地図では、下図のように、波型となり、これが西側に移動していき、24時間後に、ほぼ同じ元の地点に戻ることとなる。(ISSや人工衛星の地上軌跡が大きな波線のようにうねっているのはなぜですか? ) 

    ISSの地上軌跡

 

・GPS

  先述のアメリカのGPS衛星は、地球に対して、傾斜角55度の6個の軌道面に、4個づつ配置されている。これらの衛星は、地上約20200kmの上空を、1周約12時間で周回している。

GPS衛星の地上軌跡を、メルカトール図法の地図で表わすと、宇宙ステーションと同じように、以下のような波型となる。 

  

                                      GPS衛星の地上軌跡(特定衛星に着目) 

 

・みちびき       

   みちびきは、1、2、4号機が通常の衛星で、3号機は静止衛星という。

 この静止衛星は、赤道上空(東経137度)に静止しているように見える。

 

  残る3基の衛星は、高度32000km(近地点)~40000km(遠地点)の上空を、地球の赤道面に対し、約40度(39~47度で変化)の角度で、120度づつ位相をずらした同一形状の3通りの楕円軌道面(離心率 0.1)を、8時間ずつずらして配置されて周回しているという。

地上軌跡は、下図のような、東経135度(日本標準時 JSTの基準)を中心とした、大小非対称ループの8の字型になるという。日本近辺では、ほぼ天頂に近い仰角で、小ループをゆっくりと動きサービスを提供し、大ループのオーストラリア周辺では、速度が速くなる。 小ループの滞空が約13時間、大ループの滞空が約11時間で、24時間で1周しているという。

みちびきでは、日本近辺の地上からは、静止衛星の他に、1個のみちびき衛星が、天頂付近で見えることとなる。東京付近では、7時間以上、仰角70度以上で見えるという。(みちびきの軌道|技術情報|みちびき(準天頂衛星システム:QZSS)等参照)

  みちびき自身は、地球の上空の軌道を周回しているが、地上から見える衛星の様子を地図上に表すと、どうして、上述の8の字の地上軌跡になるのか、又、8の字軌跡が、対称になったり、非対称になる要因は何か、筆者には、いまいち、理解出来ていないのだがーー。 

          みちびき衛星の地上軌跡(Wikipedia より) 

 

◇みちびきの用途

  衛星を使った測位では、4個の衛星からの電波を同時に受信できることが必要と言われるが、GPSでは、都市部では、建物等に遮られて、電波が受信できないケースも多く、これをカバーするために、日本周辺で、天頂近くで見えやすい、準天頂衛星(Quazi Zenith Satellite)みちびきが、考案された。

この10月の4号機の打ち上げが完了すれば、日本では、静止衛星の他、天頂近くで、少なくとも1機が見えるようになり、GPSを補強・補完する形となる。

この結果、現在のGPSの約10数mの測位誤差が、1m以下~数cmと、大幅に改善されるようだ。

 カーナビをはじめ、子供の所在確認や、除雪車の自動誘導、工事現場の監視や、農業トラクターの自動運転、ドローンによる配送、防災用監視などなど、みちびきを使った、数多くの試用実験が行われることとなる。 

  

◇所用費用

  みちびき衛星は、1機当たり、400~350億円と、多額の資金が必要となるようだ。衛星の寿命は10数年といわれ、測位システムを維持するには、衛星を交代させる必要があり、改めて費用がかかることとなる。

我が国での衛星本体の開発は、公的機関の他、最近は民間ベースでも進められ、特に、小型衛星の民間開発が盛んなようだ。

 

  一方、衛星の打ち上げ費用については、今回も含めて実績を積んできているH2Aロケットだが、大変なコストがかっており、ビジネスとして、国際的に生き残っていくためには、大幅なコストダウンが重要な課題と言われる。

このところ、特にアメリカでは、民間ベースの打ち上げが、強力に進められているようだ。

日本国内でも、先日、民間ロケットの初の打ち上げ実験が、北海道で行われたが、残念ながら失敗したようだが、今後に期待したい。 

日本人初、100m走で9秒98

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2017年9月12日(火) 日本人初、100m走で9秒98

  

○嬉しい快挙!

 先日の9月9日だが、久々に明るいニュースが国内を流れた。読売新聞は、何と、北朝鮮問題等の記事を抑えて、一面トップの扱いである。

それは、福井市で開催された、陸上競技の日本学生対校選手権の100m走の決勝で、東洋大4年の桐生祥秀選手が、9秒98のタイム(追い風 1.8m)をマークしたというもの。

日本人選手で、10秒を切ったのは、史上初の快挙である!(下図はネット画像) 

      

 これまでの日本記録は、伊東浩司選手の10秒00(1998年)で、又、世界記録は、ジャマイカ ウサインボルト選手の、9秒58(2009年)である。

桐生選手自身は、高校3年時の2013年と、昨2016年に、10秒01を2度マークし、注目されたが、期待されたようには伸びていない。サニブラウン、ケンブリッジ飛鳥 多田修平など、他の何人かの選手も、9秒台に迫る記録を出しながら、突破できなかった。

世界では、9秒台を出した選手は、桐生選手を含めて、現在、126人もいるという。(9/10 読売)  今回の快挙が大きな刺激となって、日本でも、近いうちに、次の9秒台が記録されるだろうか。

 

○ 2017世界陸上 

 この8月にロンドンで開催された、世界陸上では、いくつかの競技で、日本選手はそれなりに活躍したが、大きな話題とはならなかった。

その中、短距離競走の結果は、以下のようで、注目された。

派遣・エントリー選手

  100m    サニブラウン ケンブリッジ飛鳥 多田修平 (桐生は外れ)

  200m    サニブラウン 飯塚翔太          (桐生は外れ)

  4×100m  多田修平 サニブラウン 飯塚翔太 桐生祥秀 

           ケンブリッジ飛鳥  北川貴理  (補欠)藤光謙司 

           下線は最終メンバー(ケンブリッジ飛鳥から藤光に急遽交代)  

競技結果

  100m    準決勝敗退(サニブラウン ケンブリッジ飛鳥 多田修平)

  200m    準決勝敗退(サニブラウン)

  4×100m  最終メンバーは、上記の下線   

           銅メダル:世界陸上短距離で初のメダル 

           世界記録を持つジャマイカチームだが、ボルトの故障で途中棄権

           この種目、昨年のリオ五輪では、堂々の銀メダル 

     4×100m 日本チーム

            多田    飯塚   桐生    藤光

 

○時間と距離と速度

  陸上や水泳など、多くの競技種目で、時間と距離の関係がポイントとなるが、中でも、最もシビアなのが、100m走だ。勝者には世界最速という称号が与えられる。

 100mの距離を、10秒で走るとすると、単純計算で、

     10秒で100m ⇒1秒で10m⇒0.1秒で1m⇒ 0.01秒で10cm

となり、時間を0.01秒改善するには、たった10cm稼げばよい、となる。

 桐生選手の場合、上述の以前の自己ベストと10秒台の壁を破るまでの差は

     10.01秒-9.99秒=0.02秒⇒20cm

となる。これは言ってみれば、たった20cm改善するのに、これまで苦闘してきた、ということで、今回、これが、30cm程改善された、ことになる。

 

 速度にすると、平均的には、

       100/10=10 m/s=36000m/時=36km/時

となるが、静止状態から始まるスタートの速度は遅く、途中や後半で伸びることとなる。 短距離走の場合、記録を出すには、歩幅とピッチと最高速度が重要なようだ。  9秒台のタイムを出すためには、秒速11.60m台の最高速度が、後半に必要と言われる。 

 速度が遅い水泳では、1秒の差は、1m~2mほどの差になる。また、競馬では、速度が速いため、ゴール近くでは、きわどい鼻(20cm)や首(80㎝)の差で、写真判定で決着がつくことも多い。

 

○ 風の影響

短距離走では、走行時の風の影響は大きく、公式記録規定では、追い風2mまでが許容されている。追い風が2mを超えると、公式記録としては認められず、追い風参考記録となる。(風速は平均値  向かい風の規定は見当たらない)

 

追い風(向かい風)の強さが、走行時間にどの位の変化をもたらすのかをネットで調べたら、競技選手のレベルでは、追い風とタイムとの関係は、

   追い風1m  ⇒時間0.1秒短縮

という記事が見つかった(陸上競技の100mで、追い風はどのくらいタイムに影響するのですか... - Yahoo!知恵袋 )  

向かい風とタイムとの関係についても、同様に、

向かい風1m ⇒時間0.1秒増加

という関係になると思われる。

 今回の桐生選手の場合、追い風1.8mはかなりラッキーな状況だったと言える。これが、仮に、追い風1.0mだと

  (1.8-1.0)×0.1=0.08

で、

  9.98+0.08=10.06

という数値になる。風の向きや強さ次第で、記録は大きく変わると言う事のようだ。

昨夜のNHKのテレビ番組では、福井市営競技場で長年スターターをやっている人の話では、競技規定内の公式記録になるように、吹き流しの動きを見定めながら、ピストルを撃っていると言う事だった。

 

 

 

○バトンタッチ

  上述のように、8月のロンドンでの世界陸上で、4×100m決勝で、日本勢は、銅メダルを獲得しているが、一昨年のリオ・オリンピックでは、同種目で、何と、銀メダルを獲得している。

どちらの大会でも、日本チームのメンバーには、9秒台の選手は0人だが、他国チームには、9秒台の選手が、沢山、含まれている。

 よく言われているように、日本チームは、バトンリレーでのチームワークが極めてよい。対する他国チームは、1人1人は優れたランナーでも、バトンの引き継ぎの不手際が、散見される。

リレーの引き継ぎエリアで、ゾーンを越える違反をして失格となったのは、この8月のロンドン世界陸上でのアメリカチームである。

又、大会名は忘れたが、先を走るチームで、バトンを落とす不手際があって大きく遅れ、日本チームがメダルを手にしたこともある。 

 

 一昨日9月9日の早朝、なんとなくNHK-TVを視ていたら、目撃日本! という番組で、かなり重い知的障害者である、川上春奈さんが、石川県能登半島の先端に近い珠洲市にある、七尾特別支援学校珠洲分校に在籍し、先生の指導を得ながら、短距離走に取り組む様子が放映された。

走る事にかけては、ずば抜けた特別な才能を持つ彼女だが、人見知りが激しく、すぐ固まって、心を開こうとしない彼女が、少しずつ打ち解け、理解を深め、短距離走に集中するようになっていく物語が、極めて感動的であり、最後まで、魅せられてしまった。

抜群の走る能力(男子のような、体を揺らすダイナミックな走法)を買われて、4×100mの日本代表に選ばれ、バトンを受け取るだけでいい最終ランナーを任された。

でも彼女は、バトンを受け渡しするリレー競技の仕組みが、なかなか呑み込めない。

 前の走者が近くに来た時に、どの時点で自分も走りはじめるか、決められた引き継ぎゾーンの中で、如何にスムーズにバトンタッチするか、は極めて重要な事項だ。

指導する先生が、短い言葉を工夫し、先ず、“にげろ”という言葉を見つけた。にげろという言葉を先生が叫んだタイミングで動き始めるのだ。

そして、具体的に動きだす地点で、“ピュー”という言葉。これを、自分の心の中で叫ぶ。

新たに、専属のコーチも付いたが、なかなか馴染めない。十分にマスターできない状況で、時間切れとなり、先生やコーチが同行しない中で上京し、リレーの仲間と練習に励み、少しづつ、チームワークが上達していった。

そして、6月に開催されたバンコクでの国際大会の結果は、堂々の銀メダル獲得となり、日本新記録も達成した。(写真は 卒業生川上さん、銀メダルおめでとう! - 石川県立七尾特別支援学校珠洲分校 より)

    右端 川上春奈さん

 

 2020年のパラリンピックを前にして、出場しようと思っている選手諸君とそれを支える皆さんには、一段の努力をお願いしたいが、国民側としても、外国選手達も含めて、受け入れ態勢の整備に万全を期したいところだ。

タバコの今ー受動喫煙防止条例制定へ

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2017年9月17日(日) タバコの今―受動喫煙防止条例制定へ 

 

 このところ、喫煙・禁煙に関する話題が、ときどき耳に入るのだが、改めて、タバコに関する昨今の話題を、いくつかとりあげることとした。

 

○ 都の受動喫煙防止条例案

 先日の9月8日、東京都の小池知事が、受動喫煙対策の都の条例案を発表した。10月6日まで、パブリックコメントを募り、その結果を踏まえて、今年度内に都議会に条例案を提出し、審議を進める計画だ。

都は、国の法制化を待ってはおれないということで、外国人が多く来訪する

     ・2019年のラグビーワールドカップ(2019.9.20~)

     ・2020年のオリンピック・パラリンピック(2020.7.24~、8.25~)

の開催自治体として、冒頭の東京スタジアムでのラグビー大会に間に合うように、条例を施行するとしている。

 

 公表された資料は、

      東京都受動喫煙防止条例(仮称)の基本的な考え方 (2017/9/8)

というもので、9ページに亘っているが、要点は、施設類型別に以下のようだ。 

  ・未成年者や患者等が主に利用する施設 

     医療施設、小中高等学校、児童福祉施設  ⇒敷地内禁煙

 ・多数の人が利用し、かつ、他の施設では代替が難しい施設

     官公庁、老人福祉施設、大学       ⇒屋内禁煙

 ・利用者側に他の施設を選択する機会があるものや、嗜好性の強い施設

     ホテル、旅館              ⇒原則屋内禁煙(喫煙専用室設置可)

     事業所(職場)               ⇒    〃

     娯楽施設、百貨店、駅、空港ビル ⇒    〃

     飲食店*                ⇒    〃 

                 *面積30㎡以下の特定のバー等は、禁煙対象外

 ・公共交通機関

     バス、タクシー、航空機       ⇒車内禁煙(喫煙専用室設置 不可)

     鉄道、船舶               ⇒原則車内禁煙(喫煙専用室設置可)

 

  

 施設は、全面禁煙か、原則禁煙かに分かれ、前者では、喫煙専用室を設けることも不可としている。一方、後者では、喫煙専用室を設けることは可としている。仕切り等でエリアを分ける従来の「分煙」は、無くなるようだ。

 

 違反した場合

      喫煙者・施設管理者  5万円以下の罰金

  国内では、神奈川県(H22 施行)や兵庫県(H25 施行)が、同趣旨の条例を制定している。これ等と比べて、今回の都の条例案は、どうなのだろうかーー。

 

○ 3つの禁煙案

  国内では、禁煙をめぐる議論が続いてきて、厚生省案(H28.10)、自民党たばこ議連案(H29.4)に加え、先の都議選(H29・7)で、都民ファーストの会案が示された。これ等を対比したものが下図である。(ネット画像より)

    

 都民ファーストの会案は厚生省案とほぼ同じだが、今回の東京都の条例案は、選挙公約として、ほぼそれを踏襲している。

自民党たばこ議連案は、厚生省案を骨抜きにして、規制を大幅に緩めたものになっている。

 

○五輪開催地・開催予定地の状況

  最近の五輪開催地、今後の開催予定地の、受動喫煙対策の状況は以下のようだ。(ネット画像より) 小池都知事が言うように、日本の遅れが目立っているようだ。

       

 

○WHO幹部の訪日

  東京オリンピックを前にして、この4月に、世界保健機構(WHO)のバー事務局次長と、ベッチャー生活習慣病予防部長が訪日し、記者会見している。

その時の発言では、受動喫煙対策についての日本の状況は、「時代遅れだ」とする極めて厳しいもので、抜本改善のための政府と関係筋の真剣な取り組みを求めている。

 WHOによると、2014年時点で、世界49カ国が、屋内の公共の場所が全面禁煙となっているという。一方日本は、法律で喫煙を禁じている屋内の公共の場がなく、受動喫煙政策の普及状況を示したWHOの評価基準では、4段階中で最低ランクに位置付けられているようだ。  (「分煙では効果ない」 WHOが、日本に全面禁煙を勧める根拠とは 等より)

     

                                 記者会見する ベッチャー生活習慣病予防部長 

 世界各国の受動喫煙対策については、次稿で取り上げる予定だ。

タバコの今ー世界のスモークフリー

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2017年9月21日(木) タバコの今―世界のスモークフリー 

 

 先日、当ブログの記事、

     タバコの今―受動喫煙防止条例制定へ  (2017/9/17)

で、東京都の条例制定の動きについて取り上げた。

本稿は、その続編で、スモークフリーと、世界各国の受動喫煙防止対策の状況についての話題を扱っている。

 

○ スモークフリー

 筆者は、殆ど知らなかったのだが、スモークフリーという言葉がある。 これは、

     smoke-free (タバコの)煙が無い

と言う事で、

     タバコの煙が無い⇒タバコの煙から解放されている

ということで、完全な禁煙状態の場所を意味し、欧米では普通に使われている用語と言う。

 アルコール分を含まないビールや化粧品を、アルコールフリーと言うのに似ている。

 

 一方、紛らわしい言葉だが、

     スモーキングフリー  smoking―free

というのは、喫煙(スモーキング)が自由、ということで、全く反対の意味で、自由に吸っていい場所、吸い放題の場所ということになる。

日本では、スモークフリーという言い方が、この意味に誤解されることもあるようだ。

 

 以前、英語の参考書で、以下の2つの英文の意味の違いを、知ったことがある。

      I stopped to smoke. 喫煙するために立ち止った。

      I stopped smoking.  喫煙を止めた(禁煙した)。

 

 下図は、前稿で触れたが、この春、WHOベッチャー部長の訪日時に示された、2014年時点での、世界の受動喫煙対策(スモークフリー)の普及状況を現したWHOの地図で、対策のレベルを4段階に分け、色の濃淡で表わしたものだ。

図の凡例が、やや不鮮明だが、拡大してみると、日本語では下のようになっている。  

    

           

  ここで、公共場所(public place)とは、家庭内などの私的場所(private place)を除く、複数の人が集まる場所のことで、公共施設(役所、学校、医療機関等)は勿論、私企業の職場や交通機関、路上等も含まれる。

   

図にあるように、日本は最も遅れているレベルにある。(非喫煙者も年間1万5千人が犠牲となるタバコ 世界最低ルールの厳格化は進むのか(BuzzFeed Japan))

  

○ 我が国の喫煙率の推移

 国内の成人喫煙率について、ネットで調べた所、JTによる調査があり、下図のようだ。 (最新たばこ情報|統計情報|成人喫煙率(JT全国喫煙者率調査)より)

   

 図にあるように、喫煙率は、年々低下傾向にあり、特に男性の喫煙率は、昭和40年と平成28年とでは、大変な減少で、改めて驚かされる。

 図では分かりにくいが、全年齢の数値では、

     S40年 男82.3% → H28年 男29.7%

           女15.7% →      女 9.7%

となっている。

 また、喫煙率から、人口を推計すると、H28の値で

           喫煙人口     喫煙率

              男 1498万人   28.2%

        女  528万人    9.0

となるようだ。 

  子供も含めて、人口の8割は、タバコを吸わない人たちになるようだ。

 

筆者にも、タバコとの関わりについては様々な思いがあり、当ブログでも、7年前に

       タバコ その1  最近のタバコ事情  (2010/3/30)

       タバコ その2  タバコとの付き合い (2010/4/11)

       タバコ その3  タバコの今後    (2010/5/3) 

を、シリーズもので投稿している。

 この中のその2で、筆者の喫煙・禁煙体験について触れているが、当時から以降、タバコには、スッカリ興味が無くなっている。

 

○ 受動喫煙

  タバコは、コロンブスがアメリカ新大陸(西インド諸島)から持ち帰って以来、嗜好品の一つとして、世界に広まっていった、と言われる。

嗜好品として愛用する人にとって、タバコを自由に吸う(能動喫煙 active smoking、first-hand smoking)ことで、身体的快感や、精神的なリラックス効果が得られるものだ。

長い歴史の中で、これまで、タバコの種類や、喫煙形態も多様化し、関連産業も含めた、裾野の広い、社会・文化現象になってきた、とも言える。

 

  でも、吸わない人、臭いや煙が嫌いな人達もおり(前述のように、現在の日本では、国民の約8割が吸っていない!)、受動喫煙(passive smoking、second-hand smoking)という概念が広がり、いまや、この人たちは受動喫煙から守られるべし、という権利意識が確立しているだろうか。

吸っている人たちが発生させている、環境タバコ煙(ETS:Environmental Tobaco Smoke)を、公害の一種とみなして、社会的に規制し、公的場所から追放する動きが広まっている。

 

  下図は、平成22年(2010年)に、わが国で初めて、条例を制定し、「神奈川県からなくそう、受動喫煙」と、公共場所でのスモークフリーを打ち出した、先導的な神奈川県のロゴマークである。スモークフリーという横文字の意味が、“煙から解放されて自由になる”とある。 

象(ゾウ)の吸うタバコの煙を、白鳥(スワン)が顔を背けて嫌がっている絵がかわいいが、スワンゾウ(吸わんぞー)と懸けているようだ。

        

 スローガンの 

       “吸わない人には、吸わせない”

の「吸わせない」という日本語だが、

      周囲が、本人を保護するために、吸わせない

という、積極的な意味になろうが、本人の欲求(?)を抑える、という禁止な意味合いにもなり、やや不自然だが、苦労したところだろうか。 

  スローガンとしては平板だが

      “吸わない人は、吸わなくてよい”

もあるかも知れない。

 

  喫煙が、体の健康に及ぼす害悪(ニコチン、タールなど)の研究も盛んだ。吸う人本人だけでなく、ETSに晒された場合の、吸わない人たちの、身体的害毒や、精神的苦痛の大きさも指摘されている。 

 

  欧米に比べて、公共心に乏しいと言われる日本人だが、タバコについては、私的な欲求と、公的な配慮とをバランスさせることについて、国民的なコンセンサスを得る(腹を決める)時だろうか。 

個々人の「嗜好の自由」は保障されるべきだが、周囲に迷惑をかけてまで、私欲を追及するのは控えるべきだろう。

  個人レベルでは、タバコの喫煙だけでなく、電車中の携帯通話、コンサート場での呼び出し音、イヤホンから漏れるシャカシャカ音、壁越しのピアノの音、うなぎ屋の店先の煙、道路脇や登山道でのポイ捨てごみ、なども入るだろうか。マナーと言う柔らかい言い方で定着しつつあるがーーー。

  社会レベルでは、工場の排煙・排水、車の排気ガス、ゴミや産廃の不法投棄、歓楽街の夜通しの騒音、畜産場の周囲への悪臭拡散、等があるだろうか。

 

  最後の砦である家庭内ですら、同居家族との関係で、肩身の狭い思いで喫煙している人は多いようで、心行くまでタバコを楽しむためには、広大な砂漠の真ん中か、無人島に行くしかなくなるのだろうか!!

 

次稿では、最近の加熱式タバコや、タバコ税などについて取り上げる予定だ。 

タバコの今ー最近のタバコと税金

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2017年9月29日(金) タバコの今―最近のタバコと税金

 

 これまで、当ブログで、

     タバコの今―受動喫煙防止条例制定へ  (2017/9/17)

     タバコの今―世界のスモークフリー   (2017/9/21)  

について取り上げた。 本稿は、これらの続編で、最近のタバコ事情について触れ、シリーズを締めくくることとしたい。

 

○ 電子タバコの登場

  歴史の長い紙巻きタバコ(cigarette)に代わって、最近は、電子タバコ(eーcigarette)が登場し、欧米を中心に、結構な人気のようだ。

  紙巻きたばこは、タバコの葉に火をつけて燃やすものだが、電子タバコは、燃やさずに電熱器で加熱するものだ。タバコの葉を直接加熱し、そこから出る香気を吸うもの(初期の電子タバコ)や、熱い水蒸気をタバコの葉の間を通し、その蒸気を吸うもの(液体型)など、各種あるようだ。

  英国では、いまや下図のように、これまでの

       smoke(煙、煙を出す)⇒smoking(喫煙)

に加えて、電子タバコの

       vape(蒸気、蒸気を出す)⇒vaping (喫蒸? 吸気?)

という言葉も定着しているという。 

     

 

○ 日本の電子タバコ

 国内で、JTが2013年に発売した電子タバコ「プルーム」は、カートリッジ内のタバコ葉を加熱する製品だ。2016年には、この後継製品である、「プルーム・テック」を、通販と一部地域で発売したが、こちらは、液体式で、加熱した液体から出る蒸気を、タバコ葉のカプセル中を通過させる方式という。品切れ状態が続く人気のようだ。

 2015年に、フィリップモリス社が、タバコ葉を加熱する製品「iQOS」を発売。 こちらも、人気が急増し、入手が困難な状況という。 奇妙な名称は、

     “I Quit Ordinary Smoking。”(通常の喫煙を止めた)

から来ているとも言われる。(iQOS(アイコス)の名前の由来は?

 2016年12月には、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)も加熱式タバコを、仙台限定で販売しているようだ。

 

  電子タバコ用の喫煙器具の日本国内での入手方法だが、ネット通販が多いようだが、価格は、iQOSの場合、喫煙用器具一式(パイプなど)が、10980円で、吸うたびに取り替え装着する専用葉タバコ(ヒートスティック)は、20本入りで460円という。(コンビニでも買えるiQOS(アイコス)の値段・価格は?購入方法は?

                      

               上 従来の紙巻きタバコ

                  中 専用ヒートスティック

                    下 iQOS専用パイプ

 

 電子タバコの市場規模は、日本ではまだ小さいようだ(全体の10%程度)が、先行して急成長している欧米では

    2014年  約35億ドル (約3500億円)

           うち、米国が約半分

               EUが約10億ドル(うち、英国が約3億ドル)

という。

  2017年には、世界の市場規模は、約100億ドル(約1兆円)との予測もあり、2047年には、電子タバコ市場が、既存のタバコ市場を上回るとの予測もある。(以上 電子たばこ - Wikipedia など)

  電子タバコの特徴だが、電子タバコを吸う時の煙や蒸気の中味には、紙巻きたばこの燃焼で発生し発ガン物質と言われるタール成分が無く、タバコ本来の、麻薬的なニコチンだけという。このことから、欧米の医療機関では、患者の禁煙治療を始める時は、電子タバコを勧めるようだ。でも、他人に迷惑を掛けないという受動喫煙防止の観点からは、電子タバコも、規制の対象であるのは、勿論である。  

 

○ タバコと税

 嗜好品であるタバコは、アルコールとともに、課税の対象とされてきている。 現在の我が国では、紙巻きたばこの場合、販売価格440円のメビウスの例では、消費税を含めた税金総額は、277.47円となるようだ。

           内訳  国タバコ税、地方タバコ税、タバコ特別税、

                消費税(32.59円(税率 7.4%))

したがって、販売価格に占める税率は、63.1%となる。(たばこ税 - Wikipedia 参照) 

 国の税制論議では、折に触れ、課税・徴収がしやすいタバコ税(酒税も)が話題に上がってきた。タバコの消費が大幅に減ってきている中で、最近の電子タバコが目を付けられ、紙巻きタバコ並みに税率を上げるべきとの論議も出ているようだ。

喫煙や、受動喫煙が、体に悪いのならば、いっそのこと、タバコには高い税金を課し、禁止的な値段(3~4千円/20本)にし、需要・喫煙を抑えるべき、という過激な意見もある。

 

 東京都の受動喫煙防止条例制定の行方や、今後の国際競技大会開催に向けての国内の規制状況がどうなるのか注目したい。

風呂場に秋の風情

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2017年9月30日(土)  風呂場に秋の風情

 

 久しぶりにワイフKが、秋の風情漂う屋上庭園から切り取ってきた草花で、風呂ギャラリーを飾ってくれた。

  風呂場風景

 

   

 中央のぼんやり白い集団は、マルバフジバカマ(丸葉藤袴)     赤紫の細かい花とつぼみは、サンジソウ(三時草) 

                                            ハゼランとも

   

秋の七草の一つ、黄色のオミナエシ(女郎花)は、やはり欠      紫色の小さな実の集まりはコムラサキシキブ(小紫式部) 

 かせない役者 

 

    

直線的で存在感十二分のサンスベリア達。                   左右にぶら下がるのはシカクマメ(四角豆)の実。

室内で増え過ぎ、一部屋外に引っ越し中。                    角張った莢の横断面が、ユニークな十文字型になる。 

水俣条約の第1回締約国会議

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2017年10月3日(火) 水俣条約の第1回締約国会議

  

○ 水俣条約

 熊本県水俣市の有明海沿岸で発生した水俣病は、わが国での4大公害の中でも、最も知られた大きな公害である。

水俣に代表される水銀公害を、地球上から撲滅すべく、2013年10月、熊本で開催された、国連の環境計画(UNEP)の国際会議(外交会議)で、水俣条約(The Minamata Convention on Mercury)が採択されている。締約国数は129カ国という。 その後、批准数が、既定の50カ国になったことから、今年の8月に、発効した。 

条約に、特定の地域名が付くのは珍しいが(ワシントン(USA)条約、ラムサール条約(イラン)など)、水俣の被害を繰り返さないという世界の願いと、発生国である日本の取り組み姿勢が込められており、今後に対する大きな責任がある。

  条約の内容については、詳細は省略するが、概略の骨子は下図のようだ。 (ネット画像より)

         

 下図は、世界の水銀汚染を示したものだ。(ネット画像より)

日本等の先進国での、工場排水によるメチル水銀汚染は、今は大幅に減少しているが、手作業で金を取る仕事が盛んな地域(東南アジア、アフリカ南部、南米ブラジルなどの途上国)では、使用する水銀による環境汚染が、今も進んでいるようで、水俣条約でも、廃絶のための行動を訴えている。

        

 そして、この9月、この条約の第一回締約国会議(COP1)がジューネーブで開催され、今も水俣病に苦しむ坂本しのぶさん(母親の胎内で罹患)が、

「水俣病は絶対に終わっておりません。患者の気持ちになってやって下さい。公害を起こさないで下さい。女の人と子どもを守って下さい。」

などと切々と訴えた様子が、9月28日のニュースで報道され、深く印象に残ったが、水俣条約が抱える現状の問題を、再認識させられた次第。(「水俣病は絶対に終わっておりません」 坂本さんが訴え

 

○ 4大公害

  周知のことだが、国内の4大公害を簡単に整理すると以下のようだ。

     水俣病     新潟水俣病    イタイイタイ病  四日市ぜんそく

 場所 熊本水俣市   新潟県        富山県      四日市市*

     不知火海沿岸  阿賀野川流域   神通川流域 

 時期 1959年     1965年      1968年     1967年

     (国1968年)    

 原因 化学工場排水  化学工場排水    精錬所排水    工場排煙

     水質汚染     水質汚染       水質汚染      大気汚染

    (メチル水銀)   (メチル水銀)      (カドミウム)   (二酸化硫黄)

                                      (四大公害の比較 等 参照)

*昭和38(1963)年、筆者は、就職間もない訓練研修で、鈴鹿にある学園寮で過ごしたが、ほど近い四日市には時々遊びに出かけた。四日市コンビナートの沢山の煙突から、もくもくと煙が出ていたのを思い出す。

 

 4大公害には含まれないが、1968年頃のカネミ油症事件も大きな公害だろう。

米ぬか油の製造工程で使った脱臭剤のPCB(ポリ塩化ビフェニル)が、製品中に混入した事が原因と言う。 この油を利用した多くの人たちが罹患した。

その後、本当の原因物質は、PCB中に微量に含まれていた、ダイオキシンと判明したようだ。このダイオキシンは、ゴミの焼却等でも発生することから、焼却炉を高温化するなどの対策が進められた。

 

公害に対する対策を通して、公害を出さないための日本の各種技術が、大幅に進むとともに、裁判等を通して、患者への補償も行われている。

 これ等の公害事件は、大方、解決していると言えるようだが、有明海の沿岸には、最終処分場が決まらないことから、問題の汚染廃棄物が、いまだにそのまま残されている、というのは驚きである。 

 

○ 毒物の重金属など

 地球上の金属類は、便宜的に、比重によって、分けられる。

   重金属  比重4~5以上  鉛 カドミウム 水銀 銅など

   軽金属   〃 〃  以下  アルミニウム チタン など  

重金属には、人体に有害なものもあり、前述の水銀とカドミウムの他には、鉛などもある。

 

・水銀 Hg(ラテン語 hydrargyrumから)

 産出 自然水銀(常温で液体)と辰砂(HgS)として採掘

 用途 体温計などで御馴染

     小規模な金の精錬に必須

     以前は、圧力表示に、水銀柱 ○○mmHgなどと使われた。

 

・カドミウム Cd(英語 cadmiumから)

 産出 亜鉛と同時に産出

 用途 電気メッキ 電池 塗料

 

・鉛 Pb(ラテン語 plumbumから)

 用途 鉛は、以下のように、身近でも多方面に利用されてきたが、

       釣り用具

       ケーブル被覆や接続部の鉛工 

       化粧品  等

     人体への害毒問題で忌避されるようになり、脱鉛化や他への置換が進んでいる。

 

・銅 Cu (ラテン語 cuprum から)

 重金属の銅自体は、銅鍋、おでん鍋などに見られるように、有毒金属ではないが、明治時代、足尾銅山で、銅の精錬で発生する鉱毒が周辺を汚染し、足尾鉱毒事件として大問題になり、閉山に追い込まれている。

 

・PCB

  金属ではないが、化合物であるPCB(ポリ塩化ビフェニル)も厄介な有毒物質だ。日本では、前述のように、カネミ油症事件の原因物質として大きな話題となったが、その後、この事件の主要害毒成分は、ダイオキシンとされている。

現在は、PCBの管理は厳しく行われているが、以前関係していた工場に、PCB入りの変圧器が多数保管されていて、処置に手を焼いていたことを思い出す。

 

 人体内に入った毒物を無害化することを、解毒(デトックス )と言うようだが、そう簡単な事ではないだろう。 

   detoxification⇒detox

人体内に入った毒物によって引き起こされる症状は、多くの場合、後遺症として、生涯、残ることとなる。

 

  食品である農作物中の残留農薬や、身辺の微生物・ウイルス類、放射性物質からの放射線、などなど、われわれは、常に無数の害毒の中で生きているとも言え、気にしていたらきりが無いとも言える。勿論、気にするかしないかは、個人差は大きいのだが、日々の生活では、人体の抵抗力や免疫力を信じて生きていくことだろうか。


世界遺産:宗像・沖ノ島が登録

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2017年10月5日(木) 世界遺産:宗像・沖の島が登録 

 

 さる7月9日、ポーランドのクラカウ(クラクフ)で開かれていた、ユネスコの第41回世界遺産委員会で、日本から申請していた、

     「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群

が、審議の結果、世界遺産に登録される事が決定した。 我が国としては、2年前の2015年7月の第39回委員会で登録が決まった、

    明治日本の産業革命遺産

に続くものだ(2016年の西洋近代美術館は、仏との関連で)。これで、日本の登録遺産は、総数21件となった。

 

○ 日本の登録世界遺産  以下の21件  

  自然遺産                  白神山地 屋久島 知床 小笠原 

  文化遺産   社寺仏閣  神社   厳島神社 紀伊山地 富士山

                          沖ノ島

                    寺     法隆寺 古都京都 古都奈良 平泉

                建造物             姫路城 白川郷 原爆ドーム 

                                                   琉球王国 日光 

                                  西洋近代美術館 

                    産業                 石見銀山 富岡製糸場   明治産業革命遺産

    これ等の中で、筆者が訪れたことがある箇所(登録前が多い)を下線で示している。

 

○ 「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群の概要

   ・構成資産 8件(下図 イコモス勧告との関係も記載)

  ・沖ノ島 ①宗像大社奥津宮

  ・沖ノ島周辺 

              ②小屋島

              ③御門柱

              ④天狗岩

----------------------------------------------- 以上がイコモス勧告

    ・大島  ⑤宗像大社中津宮

         ⑥宗像大社沖津宮遥拝所

  ・福岡県 ⑦宗像大社辺津宮

          ⑧新原・奴山古墳群 

            (ネット画像)

○主な内容

     沖の島    位置関係 九州本土から沖合約50km

                                   朝鮮半島まで約150km 

                     島自体が信仰の対象    

                     宗像大社奥津宮(おくつみや)が存置

                           宗像大社が管理

                           神職が定期的に入島し拝礼

                           入島時の特異な習俗(禊 みそぎ)

                           女人禁制

                     古代の祭祀遺跡 

                           国の繁栄と航海の安全を祈願   

                  戦後の発掘調査で、大量の祭祀用宝物(全て国宝)が出土

                      海の正倉院とも(大陸の宝物が多い) 

    周辺の岩礁も信仰の対象に

            古代の九州本土と朝鮮半島間との往来は、壱岐・対馬ルート(対馬と朝鮮半島との距離 約50km)が使われ、沖ノ島は無関

            係と思われる。

  大島      位置関係  九州本土から沖合約7km

           宗像大社中津宮(なかつみや)が存置       

           奥津宮の遥拝所(奥津宮には容易に行けないため、女性向けも)       

  九州本土   宗像大社辺津宮(へつみや) 

  沖ノ島の祭祀遺跡から出土した宝物は、8万点にも及ぶと言われ、全て国宝。これらは宗像大社の宝物館に展示されているようだ。

     

○登録までの経過とイコモス勧告

   政府として沖の島関連資産を世界遺産へ登録することをめざし推薦を決定し、2016年2月に推薦書が提出されている。この時点で、TV等で大々的に報道されたが、神職が全裸で禊をして、沖ノ島に入る様子に、筆者は驚かされたことだ。

          入島前の禊風景(ネット画像より)

 日本の申請に対し、ユネスコの諮問機関であるイコモス(*)から、この2017年5月、前図にあるように、沖ノ島とその周辺の岩礁①~④だけの登録とし(⑤~⑧は除外)、タイトルに、「神宿る島」を冠することが勧告された。

   *International Counsil On Monuments and Sites:ICOMOS イコモス 国際記念物遺跡会議

このイコモスの勧告の原文は、読んではいないが、その理由は以下のようだ。 (「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群 - Wikipedia 等を参照)
  ・自然崇拝に基づく古代の沖ノ島信仰と現在の宗像大社信仰に、継続性は確認できない。
  ・なぜ、どう信仰が変容したのか、説明が不十分。
  ・女人禁制など沖ノ島の禁忌の由来は、17世紀までしか記録をさかのぼれない。 

上記のように、自然崇拝(アミニズム)に基づく古代の沖ノ島信仰には、普遍的な遺産価値があるが、現在の宗像大社信仰(国内随所にある、一般的な神社信仰)との継続性が確認できない、等の指摘は、筆者も、尤もだとも思う。

信仰の島、神宿る島、という意味で沖の島こそ信仰の中心で、そのために、長年、禁忌戒律が守られてきたもので、その他は、これを支える、周辺資産に過ぎないとも言えよう。

 

 この勧告に対し、日本の関係者は、びっくり仰天し、奥津宮、中津宮、辺津宮の三宮をセットで捉えた8資産で無ければ意味が無い、と必死で訴え、活動したようだ。

イコモスが指摘した上記の3つの疑問について、どう回答したのかは不明であるが、最終的には、了解され、各国の委員の同意も得られ、目出度く、当初の原案通り、8資産セットで登録されることとなった。これに至るまでの関係者の尽力を多としたい。

 

 今般、勧告のように、沖ノ島と周辺だけが登録されると、通常は入島できないので、観光資源としての価値が半減する。沖の島に加えて、大島と、九州本土の宗像大社や関連施設まで登録されれば、その効用は極めて大きなものとなる。地元の人たちが、8資産の一括登録に必死だったのは当然だろう。

 そもそも、世界遺産に登録する狙いは、建前では、遺産そのものを、提案国の責任で、保存し後世に伝えていくことだが、実際の本音では、登録することで、観光資源として有名になり、観光客が増え、これで、地元が活性化し、潤うことが狙いなのだ。 今回の沖の島の例での当事者の慌てぶりは、この両面性を浮き彫りにしたとも言える。

 

 イコモスの勧告の関連では、先の富士山の登録をめぐって、イコモスから、構成資産にある「三保ノ松原」を外すよう勧告されたことが思い出される。 三保の松原は、景観資産とでも言うべきもので、日本的な美意識が関わっているだろうか。関係者の努力で、この構成資産も含めて、登録された事ではある。

今回の場合は、三宮の深い関連があることで、より、本質的と言えるだろうか。

 

○ 当面の日本からの登録予定案件 

 2018年の、ユネスコの第42回世界遺産委員会(開催国 未定)で、日本からの以下の2件が審議される予定のようだ。

   ・潜伏キリシタン関連施設  文化遺産(18件目) 

      キリシタンの迫害・受難の歴史 

      これまでの信仰関連遺産は、自然崇拝、神社信仰、仏教信仰で、キリスト教は初めて

   ・奄美大島と関連島嶼   自然遺産(5件目)

      奄美大島、徳之島、沖縄島北部、西表島の多様な動植物

 

 

  

 

 

 

世界遺産:登録後に維持する問題 1

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2017年10月11日(水) 世界遺産:登録後に維持する問題 1

 

 

 この夏に世界遺産に登録された、「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群 について、当ブログの下記記事、

         世界遺産:宗像・沖ノ島が登録 (2017/10/5)

で取り上げたところだ。

 

 本稿は、世界遺産登録後の、維持管理に関する問題を話題にしているが、これは、先日、10月4日朝のNHK―TVの7時のニュースの中、けさのクローズアップで、 世界遺産について、

    イ.富岡製糸場の訪問客が大幅に減っていること

    ロ.ドイツのドレスデンの登録遺産が抹消されていること

    ハ.オーストリアの登録遺産が、地域との係争問題で危機遺産になったこと 

について、報道されたのが切っ掛けになっている。

 

 世界遺産の保護・保全に関しては、先に、当ブログの下記記事

    世界遺産の保護・保全 (2015/8/11)

で話題にしているが、その続編として、今回と次回の2回に分けて取り上げたい。

 

イ 富岡製糸場の例

 3年前に、富岡製糸場が登録された時には、当ブログに、

    ・富岡製糸場と絹産業遺産群 1、2 (2014/6/22~25)

    ・糸の太さに関する話題  1、2  (2014/6/28~30)

を投稿している。

 先日のNHKのニュースによれば、富岡製糸場の入場者数が、下図のように、かなり減少してきているようだ。(けさのクローズアップ|NHKニュース おはよう日本

  

 その理由として、

    ・当初の物珍しさが無くなってきたこと

に加え、

   ・見学できる施設が少なく、立ち入り禁止の未整備な施設が多いこと 

   ・機械類を動かすなどして、実体感できる場が少ないこと

等が挙げられている。

 遺産を管理・展示する側の富岡市当局としても、資産の活用で観光客の増加を図るのに躍起で、一部をホテルに改装する案などもあるようだが、

   ・改修を行うには、多くの規制があり、大変な金と時間が掛かる、

と、地元の財政力や、人手が足りないことを嘆くばかりだ。 3年経過後にして、登録後の遺産の維持・保全の問題が表面化しているのは、想定通りともいえようか。

 

 全国で、既に21もある世界遺産それぞれに、維持・保全上の特有の問題や悩みがあるだろう。登録以前から、観光地等として人気の高かった施設や地域(奈良・京都の宗教関連など)では問題は少ないだろうが、世界遺産になって、名を知られ、覚えられた所(富岡の産業遺産など)は、かなり深刻だろうか。

筆者の思い付きだが、以下のような方向が考えられようか。

  ・政府や行政の援助、篤志家の寄付などに工夫の余地は無いだろうか? 

  ・民間の力やボランティアの力を活用できないだろうか?

  ・ネットなどを活用した小口の募金法は? 

  ・見学者が持続するような、魅力アップの方法は無いだろうか?

 又、周知のことだが、自然遺産の場合は、本来の自然の保護と、観光による環境破壊という、本質的ジレンマを抱えている。

 

ロ ドイツ ドレスデンの例

 ドイツ東部(ザクセン州)に位置するドレスデンは、エルベ川流域に栄えた古都(残念ながら未訪問)だが、この付近のエルベ川流域とドレスデンの街並みの文化的景観が、2004年、世界文化遺産(ドレスデンとエルベ川渓谷)に登録されている。

エルベ川は、チェコとポーランドの国境付近にあるステーディ山地に端を発し、チェコの首都プラハを経て、ドイツのドレスデンを通り、北海に面したハンブルクに達するもので、ライン川、ドナウ川とともに、良く知られた、国際河川である。

 因みに、ドイツでは、水運の動脈であるこのライン川流域が、歴史的施設と美しい自然風景が調和した文化遺産(「ライン渓谷中流上部」)として登録されている。

 

 ドレスデン市のエルベ川の南部は、歴史のある旧市街で、反対の北部は、新市街となっているようで、エルベ川にかかる橋が少ないことから、長年、慢性的な交通渋滞となっていて、両岸を結ぶ、長大な橋(バルトシュレスヒェン橋)を掛ける計画は、世界遺産登録以前からあったようだ。

いろんな駆け引きがあったようだが、登録翌年に橋の建設が具体化し、世界遺産か地元の利便化か、をめぐって、2005年に住民投票が行われた結果、橋の建設を支持する賛成票が多数だったようだ。 

 これに対し、2006年の世界遺産委員会(WHC:World HeritageComittee)は、橋が出来れば景観の価値が損なわれると警告し、危機遺産に指定したようだ。

結局、橋の建設が本決まりとなり、これを受けて、2009年の世界遺産委員会は、危機遺産を廃止し、登録抹消を決めている。 橋自体は、2012年に完工し、2013年から、供用されているようだ。(下図)

    

        開通を祝って橋を渡る住民達(川の対岸側はドレスデン旧市街)(ネット画像)

 

 下図は、ドレスデンの地図で、中央を左右(東西)に流れるのがエルベ川。川の南側が旧市街、北側が、新市街である。既存の橋の状況と、新橋の位置関係が良く分からなかったのだが、苦労して調べて知った下記のサイト

   エルベ川の橋が開通 - ドイツ生活情報満載!ドイツニュースダイジェスト

に的確な情報があり、この情報を基に、市街地図上に示したのが、下図だ。

 下図で、黄○で示したのが既存の5つの橋で、赤○で示しているのが、今回新たに架橋された橋である。

橋は、左から

   マリエン橋

   アウグストス橋

   カローナ橋

    アルバート橋

   バルトシュレスヒェン橋

   ロシュヴィッツ橋

だが、新橋は、既存の橋が無かった中間地点に建設されているのが良くわかる。

                         ドレスデンのエルベ川にかかる橋

   

              ○ ○   ○   ○   ○          ○                ○

 世界遺産の登録抹消の事例はあるが、多くの場合、自然災害や崩落、テロによる破壊など不可抗力に近い理由のようだが、先進国のドイツで、このような事態が生起したのは極めて珍しい事例だろう。

 

地域住民としては、世界遺産が抹消されても、橋の建設は、生活向上や産業発展に欠かせず、背に腹は代えられないとして選択したようだ。現地のタクシー運転手は、登録抹消後も、観光客は減っていないと述べていた。

 テレビでは、ドレスデンの住民感覚としては、世界遺産への登録は、数ある訴求ポイントの一つと、軽く見るふしがあったのは、やや意外であった。

 

反して、日本には、地域おこしのために、世界遺産に登録して、国際的なお墨付きを得たいという「舶来志向」が、いまだに根強くあるだろうか。 でも、結局は、他力本願ではなく、自分達の力で、何とか地域の問題を解決しなければならない、ということだろう。

 

 先のレポートは、現地在住の日本人の建築ジャーナリストが書いたものだ。この中で著者は、新橋の意義について、建設当初は、非難轟々だったパリのエッフェル塔の例を引用し、50年後になって、この橋が周囲と溶け込んだ、素晴らしい景観になっているだろう、と述べているのが印象的。

文化遺産は、古いものを確実に残す一方で、時代とともに工夫を凝らしていく所に意味がある、というのが、世界遺産の核心に迫るポイントに思えるのだがーー。

 

 

世界遺産:登録後に維持する問題  2

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2017年10月15日(日) 世界遺産:登録後に維持する問題 2 

 

 

 先日、当ブログに投稿した記事

    世界遺産:登録後に維持する問題 1 (2017/10/11)

では、世界遺産の登録後の維持に関して

   イ.富岡製糸場

   ロ.ドイツのドレスデン

のケースを取り上げたが、本稿は、その続編である.

 

ハ.オーストリアのウイーン

◇ 世界遺産に登録

  オーストリアの首都ウイーンは、2000年もの長い歴史を持ち音楽の都でもあることで、旧市街地を主にした歴史地区として2001年、世界文化遺産に登録されている。 

 ウイーン歴史地区に登録されている地域は、下図左の航空写真のようだ。赤線で囲った地域が主要エリアで、371ha、対象物件が約1600件、外側の青線で囲った地域が、関連エリアで、461ha、対象物件が2950件といい、全体では、広さが832ha、対象物件が約4550件と大変な数字となる。(ウィーン歴史地区の世界遺産の範囲 - ウィーンの街を公認ガイドと歩いてみませんか!

下右の、ウイーン市郊外を含めた地図では、右上の河川がドナウ川の本流で、そこから、ドナウ運河が分岐している。ドナウの南西側が旧市街が、北東側に新市街が広がっていて、世界遺産の歴史地区は、ドナウ運河の更に南西となる。

別の世界遺産になっていて地図の左下隅にあるシェーンブルン宮殿(ハプスブルグ王家の離宮)は、写真では良く分からない。 

    

 

 下図は、ネットにあるウィーン市内の観光地図で、人気の高いスポットを表示。中心地にあるシュテファン寺院4は、図にあるシンボリックな尖塔で有名である。

   

 因みに、ウイーンのこの地域の広さを、身近なものと比較してみようと、咄嗟に思い浮かんだのは皇居で、調べたところ、広さは、約142haとある。ウイーンの歴史地区は、皇居の数倍の広さのようだ。

 下図左は、皇居周辺の東京駅方面からの空撮で、おおよそ、嘗ての江戸城の内堀(現マラソンコース)あたりまで含むだろうか。下図右は、現在は大方埋め立てられている、嘗ての江戸城の外堀あたりまで含めた広さで、ウイーンの歴史地区はこのくらいかもしれない。

     

           皇居(内堀)                                            江戸城(外堀)

  

◇ 危機遺産に

 ウイーン市の中心部の一角にある市立公園(Stadt park)には、ヨハン・シュトラウスの立像などがあるので有名だ。

この公園の直ぐ南にある敷地内に、高層ビルの建設が予定されているのだ。市内の地図や、下図の航空写真で、市立公園の位置を確認した。(下図の赤○印)(ウィーン歴史地区、「世界危機遺産」に 高層ビル建設計画で 写真1枚 

    

 高層ビルの建設計画は、3年前になって具体化したようだ。 当初は、歴史地区の規制の高さの43m以内とし、コンサートホールなどを作る計画だったようだが、更に73mまで高層化し、高層マンション、ホテル、複合スポーツ施設(フィットネス、スケートリンク)、会議場などを配置する計画に変わったと言う。 

 

 この建物ができると、周囲の景観を損なうとして、2017年、クラカウで開催された世界遺産委員会(WHC)では、ビルの高さを、65mまで低くするとの修正案も示されたようだが、了解が得られず、警告を込めて、危機遺産に指定されたという。

市立公園から、シュテファン寺院の尖塔や旧市街の建物などが、どのように見えるのだろうか。また、高層ビルの工事の進捗状況はどうなのだろうか。

  ウイーンの市民としては、世界遺産として維持すべきだ、という意見と、生活や市の発展が大事で登録を抹消されても構わない、という意見もあるようだが、市当局は、世界遺産を維持する意向とも伝えられている。

 

 前稿で触れた、ドイツのドレスデンのケースは、渋滞解消のための橋が建設されると、周囲の景観が損なわれるとして、WHCで危機遺産に指定されていたが、地域の発展の方が大事と、予定通り橋が建設され、世界遺産から抹消となった例である。

   又、似たような事例として、ドイツのケルン大聖堂(2001年登録)がある。ケルン市内の再開発計画の中で、大聖堂の周辺に高層ビルが出来ると、景観が損なわれるとして、2004年のWHCで、危機遺産に指定された。でも、ここで市当局は、工事を一時中断し、高さを60m以下に抑え、大聖堂周辺の空間も明けるなどの変更を行ったことで、2006年に、危機遺産の指定が解除されているようだ。

  高い建物が出来ると問題だとして、世界遺産ではないが、高さ規制が行われた日本の例として、東京の皇居周辺と大阪城周辺が挙げられる。これは、景観と合わせて、特定な建物に対する畏敬の念も大きかったようだ。  

 

◇ウイーン訪問 

 大分以前のことになるが、筆者が現役の頃、ジュネーブでの国際会議への出張のついでに、ウイーンを訪れて見物したことがある。

市内の、とあるホテルに泊まったが、マロニエの花が咲くホテルの中庭では、有志が、ワルツ音楽に合わせて、賑やかにダンスを楽しんでいた。

 ホテルで申し込める市内観光バスで、あちこち回ったが、シェーンブルン宮殿の整った前庭の美しさ、スペイン馬術学校での馬の調教風景、国立オペラ劇場の外観、市立公園のヨハン・シュトラウスの立像、ドナウ川の流れ(支流の運河?)、等が、今も鮮やかに思い浮かぶことだ。 

 

◇歴史地区の例 

 世界遺産には、個々の建造物ではなく、地域全体として、○○歴史地区などとして登録されている所が、数十箇所もあるようだ。 特に、ヨーロッパに多いようで、以下のようなよく知られた都市で、歴史地区に指定されている。 これ等の中の幾つかを、筆者が訪れた思い出がある。

   オ ウイーン ザルツブルグ

  仏 リヨン

  伊 ローマ フィレンツエ ナポリ

  西 コルドバ トレド

   ポ ワルシャワ クラクフ

  チ プラハ

  ト イスタンブール

  エ カイロ

  カ ケベック

  韓 慶州

 

世界遺産:米国のユネスコ脱退

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2017年10月21日(土)  世界遺産:米国のユネスコ脱退

 

 

 ユネスコと言えば、当ブログでも、この所、世界遺産のことで何度も御馴染である。

言うまでもなく、ユネスコは、

    UNESCO : United Nations Educational , Scientific and Cultural Organization

            国連教育科学文化機構

のことで、日本を含め、現在は、195カ国が加盟している。

  先日の12日、米国のトランプ大統領が、ユネスコを脱退すると表明し、大きなニュースとなった。実際の脱退は、来年12月となるようだ。

 

◇ パレスチナのヘブロン

 この7月の世界遺産委員会(WHC)で、中東のパレスチナ地域内にあるヘブロンが、パレスチナの世界遺産に登録されたことに反発して、アメリカは、脱退を決めたようだ。ヘブロンの登録には、イスラエルが強く反対したようで、米はこれに同調した形で、脱退を表明している。

 米国の脱退理由:

   ・分担金滞納の増大(後述)

   ・組織改革の必要性

   ・反イスラエル的で中立性を欠いていること

        (アメリカの「ユネスコ脱退」が物議に…日本が最大の分担金拠出国へ より)

このヘブロンは、ユダヤ教、イスラム教共通の聖地(キリスト教も含めて、3宗教の聖地とも)と言われるようだ。ニュースでは、大統領の娘婿であるクシュナー上級顧問が敬虔なユダヤ教徒で、娘のイバンカさんもユダヤ教に改宗したという。

 ユネスコとアメリカ・イスラエルとの対立には歴史があり、2011年にパレスチナ自治政府がユネスコに加盟したことに、和平交渉を阻害するものだと反発し、以降、アメリカ(当時は、オバマ大統領)は、ユネスコの分担金の納入を拒否し続けている。

イスラエルも分担金の納付は行っておらず、既に、この夏、米に先んじて、ユネスコを脱退しているようだ。 

 

 ◇ パレスチナと国連

 パレスチナ(Palestina)とは、元来は、中東の死海西岸の地域の名称だが、ここで、パレスチナについて、簡単に触れることとしたい。

 アラブ人が住んでいたパレスチナ地域に、ユダヤ人国家であるイスラエルが、1948年建国されたことに抗して、イスラエルとアラブ勢力間で、数次に亘って中東戦争が続き、パレスチナ人によるパレスチナ解放機構(PLO)も結成された。

1993年のオスロ合意で、なんとか、イスラエル、PLO双方が互いに認め合うこととなった。でも、これも一時的なもので、その後、イスラエルとアラブの紛争があり、イスラエルのパレスチナへの入植等が続いている。

PLOは、パレスチナ自治政府(Palestinian National Authority:PNA)となり、国連への加入も認められた。呼称のパレスチナは、パレスチナ国を意味する場合もある。

 でも、パレスチナの国際的な地位は、現在も不安定で、193カ国の国連加盟国の中で、パレスチナを国家として承認しているのが、136か国、承認していない国が57カ国という。

 2012年12月の国連総会で、パレスチナを、オブザーバー国家として格上げする決議が審議され、賛成多数で採択されたのだが、国家として承認していない国の対応は以下のように、分かれたようだ。(パレスチナ自治政府 - Wikipedia 参照)

   反対       8  (イスラエル 米 カナダ など)

   棄権 欠席 14  (イギリス 韓国 など)

   賛成          24  (日本も)

下図は、イスラエル国とパレス ナ国(ヨルダン川西岸地区、ガザ地区)を示している。     

   

◇ パレスチナの世界遺産

  2011年に、上記国連総会に先んじてユネスコ加入を認められたパレスチナは、以降、世界遺産への登録をすすめ、今回のヘブロンを含めて、以下の3件となっている。(世界遺産の一覧 (アジア) - Wikipedia 参照)

    ・2012年 イエス生誕の地:ベツレヘムの聖誕教会と巡礼路

    ・2014年 パレスチナ:オリーブとワインの地-エルサレム南部バティールの文化的景観  

    ・2017年 ヘブロン(アル=ハリール旧市街)

(ベツレヘム、ヘブロンは前出の図で、緑○で表示。 バティールは、エルサレム近郊の農村のようだ。) 

  でも、これらの世界遺産への登録では、3件とも、通常行われる諮問機関であるイコモスの審査が無く(イコモスが審査拒否)、直接WHCで決議されたようで、地域の政情不安を受け、即、危機遺産に指定されるという、変則的な措置だったようだ。

ユネスコの世界遺産に登録することで、パレスチナ自治政府の存在を世界にアピールするという、強い狙いがあるようだが、これに対して、イスラエルと米国は、偏った政治利用だ、と反発している構図だ。

 因みにイスラエルは、世界遺産に9件登録しているが、パレスチナ自治政府が支配している地域は含まれていないようだ。

中東地域のパレスチナ問題が、世界遺産にも陰を落としている問題と言えるが、今後どのように展開するのだろうか。

 

◇ ユネスコ分担金

  ユネスコ分担金の最大の支払い国であるアメリカが、2011年以降納付しておらず、巨額の滞納金があることは、ユネスコ活動にとっても、由々しきことである。結果的に、当面は、日本が、ユネスコ分担金の最大の拠出国である。 

各国のユネスコ分担金の分担率は、下図のようだ。(図はネット画像)

     

                                                     (2016-2018)

   現在の日本のユネスコ分担金は、年間40億円程で、アメリカは日本の2倍強になる。日本も、2015年、南京事件に関する中国の記憶遺産登録に反発して、ユネスコ分担金の納入拒否をちらつかせたことがあるが、結局、納入拒否はしなかったという経過がある。

   国連全体に対する分担金(ユネスコも含めた)の見直しが、2019-2021年について行われているようで、2018年末に決まるようだ。 情報によれば、中国の存在が増し、米国に次いで2位になると言われており、日本の地位が3位に低下する見通しだ。これに伴い、ユネスコの各国の分担率も変わることとなろう。 (東京新聞:国連分担金、日本3位に 19~21年試算 中国2位 

 

◇ 世界のユダヤ人人口

  ユネスコ関連で話題となったユダヤ人問題について、自分なりに、大まかに整理してみたい。 (以下は、図録▽世界のユダヤ人人口 等を参照、引用)

  ユダヤ人は、世界中で1400万人程と言われるが、下図のように、その約8割の人口が、ユダヤ人の国として戦後建国されたイスラエルと、それとほぼ同数が、米国に集中しているようだ。

イスラエルに多いのは当然として、米国に多いというのは、筆者には、やや、驚きだ。アメリカが、イスラエルを強力に支援してきた理由でもあろう。米国内では、ユダヤ人の人口比は1.7%程でも、ユダヤ人組織の活動は活発のようで、大統領との繋がりも深いという。 

     

 ユダヤ人は、長い歴史の中で、多くの困難を経てきている。 極めて有能である一方で、商売上手の守銭奴(ベニスの商人など)といったイメージもある。 特に、記憶に残るのは、ナチスによるユダヤ人の大量虐殺(ホロコースト)だろうか。

  下図はユダヤ人の人口の推移を示しているが、1900の頃は、旧ソ連地域に多かったが、以降、ロシアにおけるポグロム(ユダヤ人に対する集団暴力行為)が1881‐84年、1903‐06年、1917‐21年と3波にわたって多発したようだ。

推移図では1939年にかけて旧ソ連のユダヤ人人口は減少し、東欧・バルカン諸国が増えている。

そして、1933年にドイツに現れたナチス政権の、東欧・バルカン諸国への侵攻とユダヤ人政策で、ユダヤ人迫害や残酷なホロコーストが行われ、東欧バルカン諸国や西洋で、ユダヤ人が激減した(△600万人とも)。

代わって北米が急増している。 北米は、住処の無くなったユダヤ人にとって、安住の地と映ったのだろうか? 

 1948年のイスラエル建国後、北米はほぼ変わらずで、イスラエルに世界からユダヤ人が集まり、ユダヤ人が漸増して現在に至っているという、、ユダヤ人にとって、目まぐるしい変化である。

  

◇ パレスチナ問題の存在

 世界は、いまや、北朝鮮問題や、シリアでのIS拠点のラッカ陥落など、シリアスな話題が中心で、パレスチナ問題の影は薄くなっている感じだが、今回の米のユネスコ脱退表明で、改めて、問題の所在を自覚させられた次第だ。

先月の9月に、ニューヨークの国連本部で、各国閣僚級が出席したパレスチナ支援会議があったようで、日本の河野外相が、難民キャンプなどを対象とした、2000万ドルの支援を表明している。(【河野外相】 パレスチナ支援に2000万ドル - zduizd’s diary など)

 中東問題に関しては、アメリカに追随するのではなく、日本だから出来る独自の外交を展開することを期待したいところだ。 

COP23

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2017年11月23日(木) COP23 

 

 国連気候変動枠組み条約(UNFCCC:UN Framework Convention on Climate Change)の第23回締約国会議(COP23)が、この11月6日から開催され、11月18日に閉会した。

今回の議長国は、オセアニアの島嶼国 フィジーだが、会議場の関係で、ドイツのボンで開催されている。(下図はネットより)

  

パリ協定の締約国数は192、批准国数は111で、今会議への参加国・地域は、200近いと言われる。 (国連気候変動フィジー会議(COP23)|国連気候変動会議|WWFジャパン など)

  

 気候変動枠組み条約に関しては、一昨年11月に、パリで開催されたCOP21で、議長国フランスの国威をかけた努力の末に、画期的な、パリ協定(Paris Agreement)が、合意・採択された。

排出量世界1、2位の中国とアメリカ(全世界の4割以上)が、それまで後ろ向きだったのに、率先してこの会議をリードしたことも印象深い。 

 

 パリ協定は、京都議定書の後を受けて、先進国だけでなく、新興国、途上国も含めた全員参加が売りで、漸くにして合意された法的拘束力のある国際条約である。

この協定は、地球の温度上昇を、産業革命以前に比して2度以下(目標1.5度)に抑えるという、壮大な夢を実現することを目標としている。 

温暖化ガスの排出量の現状は、下図のようで、これを、今後削減していくため、協定では、各国の数値目標等を示している。この目標は、先進国は絶対値だが、中国、インドなどの新興国は、経済成長と連動した数値となっている。

時間軸では、2020年から本格的にスタートっせることとし、それまでの諸準備のロードマップが示されている。

     

当ブログでも、下記記事で取り上げている。

   地球温暖化防止対策―COP21  (2015/12/29)

 

 昨年の11月、パリ協定採択後初めてとなるCOP22が、モロッコのマラケシュで開催され、協定の実施に向けて具体化が進められた。ここまでは、地球の未来に対する希望的な空気があった、と言え、アメリカはまだ、オバマ大統領の時期であったが、会議期間中に当選が決まった、次期トランプ大統領の姿勢が注目された。

  そして、トランプ大統領に代わったアメリカは、この6月、パリ協定からの脱退を表明したことで、協定が骨抜きになるのではと、全体の雲行きが俄かにおかしくなっている。 京都議定書の策定後も、アメリカは早々と脱退しており、パリ協定でも、またしても、自国利益を優先する、アメリカの独断ぶりである。 

中国に続いて世界2位の大量排出国であるアメリカだが、脱退によって、自国の排出量規制はどうなるのだろうか? トランプ大統領は、石炭火力発電などの化石燃料の使用を容認する姿勢も公言しているようだ。

でも、アメリカ国内では、連邦政府の後ろ向きの姿勢に対し、州などで、自主的に排出規制を行うところもあるようだ。(パリ協定 (気候変動) - Wikipedia など)

 

  アメリカの離脱表明が、大きな暗雲となった今会議だが、2020年から完全施行されるパリ協定のルールについて、2018年に策定を完了することを目指し具体化が進んだようだ。

ルール作りで論議された60項目もの具体的内容は未調査だが、先進国と途上国間での対立が表面化したものもあるようだ。また、アメリカは、研究開発等のため、2億ドルの資金拠出を行うとなっているが、これを止めるようで、フランスのマクロン大統領が、アメリカの肩代わりをして拠出すると表明しているが――。

 

  次回のCOP24は、来年12月、ポーランドのカトビツェで開催されることになり、 

     ・パリ協定のルール策定の完了

         ・各国の温暖化ガス削減の取り組みを評価

等が主な議題となるという。

 喫緊の課題である、地球温暖化防止対策が、アメリカ抜きで果たしてどこまで進展するだろうか。TPPでは、アメリカ抜きの11カ国で、日本や豪州が、何とか進めようとしているがーー。

 

  地球規模の公害問題とも言える地球温暖化問題だが、日本国内の3大公害問題のようには、因果関係が明確でなく、加害者がはっきりせず、影響も比較的緩やかなため、解決するのは至難の技だ。

問題児としてアメリカを非難することはやさしいが、地球レベルの環境問題と、自国の利益とをどのようにバランスさせていくのかという普遍性のある課題の方向付けに関し、世界は大きな岐路に立たされているだろうか。

  いっそのこと、じたばたすることなく、産業革命や文明の進展の結果生じる地球温暖化を、地球上の人類の私利私欲が齎す業(ごう)として受け入れ、地球環境の変化に対応して生き延びていくしか無いのかもしれない。

 

 

 

カタルーニャ州の独立騒動と住民投票

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2017年12月2日(土) カタルーニャ州の独立騒動と住民投票 

 

◇この10月1日、スペインで、カタルーニャ州の独立を問う住民投票が実施され、賛成90%(反対8%、白票2%)と言う結果となったようだ。でも、国全体では、有権者数が530万で、投票者数は226万人、投票率は42%程度で、賛成票は、有権者全体の38%と多数ではない。

これを裏付けるかのように、住民投票後、スペイン国内では、カタルーニャ州の独立に反対する100万人規模の大デモが行われているようで、州内では、独立賛成派と反対派とが、激しく対立したという。(カタルーニャ、100万人が独立反対デモ 連帯訴え 

 投票結果に勢いづいたカタルーニャ州政府のプチデモン首相の政権は、しばし間を置いて、結局、州議会で、州のスペインからの独立を宣言した。

住民投票の実施を違法とし、投票の妨害も行ったスペイン中央政府は、独立宣言後は、国家反逆罪で首相等の関係幹部を逮捕しようとし、首相一行は国外(ベルギー)に亡命した。一時ベルギー政府に拘束されたが、釈放されて、現在に至っていると思われる。

 スペイン中央政府は、カタルーニャ州の自治権を停止して直轄統治することにし、職務代行者を任命している。 州議会を解散して、12月27日に議会選挙を行うこととしているようだ。

(以上 カタルーニャ州独立投票賛成約90%で独立宣言しスペイン政府は憲法に基き州首相等約150人解任・州議会解散  など)

 

◇スペインは、下記のように、日本よりも国土の面積がかなり広い。

     日本    37.8万km2

     スペイン  50.6万km2(日本の約1.3倍)

スペインには、17の自治州があり、それぞれに自治が認められている。州の下に、国全体で50の県があるようで、この数字は、日本の都道府県とほぼ同じだ。

  自治州のイメージが掴みにくいのだが、日本でいえば、北海道、北東北、関西、九州等の大きさが、スペインの自治州の規模だろうか。州や県の権限は、どうなっているのだろうか。

 

  カタルーニャ州は、フランスに接していることもあり、州都バルセロナを中心として、地域の経済力は旺盛で、州のGDPは、デンマーク一国に相当し、フィンランド、アイルランド、ポルトガルを上回るという。(2012データ)(前 サイト)

民族的に敬意を払ってもらっていないとともに、中央政府に払っている税金額に対して、受け取る配布金が少なすぎる、というのが、州の基本的な不満のようだ。 この出入りの差額が、2012年前後の年平均で、120~160億ユーロ(1.6~2.0兆円)もあると言う。

 

  州都バルセロナは、スペイン第2の大都市で、1992年には、スペインで初めて、オリピックが開催されており、超有名な観光地であるサグラダファミリア教会も、この地にある。

州の住民の民族的特徴は良くはわからないが、言語としては、スペイン語(カスティーリャ語)に加え、カタルーニャ語も、地方公用語として使われている。

カタルーニャ州は、これまで、何度となく、スペインからの独立騒動を起こしているが、煩雑になるので省略する。(カタルーニャ独立運動 - Wikipedia など)

 

◇スペインでの州の自治権拡大や独立の要求の動きとしては、ビルバオ鉱山等で発展した北部のバスク州の例があり、現在は、中央政府と州との間で、特別な自治権を認められているようだ。(バスク州 - Wikipedia など)

筆者は、カタルーニャ州も、この例に倣うと思ったのだが、最悪の結末となったようだ。

  今回の事件は、スペインの国内問題として、“また起こった騒動”、位なものなのだろうが、住民の自治と国家との関係という視点で、興味深い事例である。

          

 ◇本来、住民投票は、通常の首長や議員の選挙を補完するものとして、自治権の一環として、自由に実施されるべきものだろう。

しかし、投票に掛ける事案として、地域の独立や、国の権限と競合する徴税・軍隊の保有等については、許容されないものだろう。

  国全体で賛否を問うた国民投票には、2016年6月にイギリスで実施された、EU離脱を巡る国民投票があり、予想に反して、離脱派が多数を占める結果となって、イギリスがEUを離脱するということで、世界が大きく揺れているのは周知のことだ。

少し前には、ギリシャの経済危機でのケースや、アイルランドで同性婚の可否を問うたもの、スコットランド独立を問う国民投票、もある。

日本での住民投票の例として話題になったのは、行政組織の簡素化をめざした、大阪都構想の事例がある。

  これらについては、当ブログの下記記事で触れているので詳細は省略する。

                            (記事は、新しい順)

     ・Brexit 1~4                (2016/7/2~10/10)

     ・ギリシャの国民投票 1~2   (2015/7/11~7/25)

     ・選挙と住民投票 1~5      (2015/5/25~6/13)

            (大阪都構想はその2、アイルランドの国民投票はその3)

     ・スコットランドの行方         (2014/9/24~10/27)

  そして、国内の大きな話題である憲法改正に関して、国会内での論議が始まっているところだが、国会の発議をうけて、憲政史上初の、国民投票に掛ける手続きとなっている。

大相撲の椿事   1

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2017年12月17日(日)  大相撲の椿事  1 

 

 

  大相撲の横綱春日富士の暴力沙汰が、世間の注目を浴びて、一頃よりは下火になったが、いまだに気になる話題である。 

大相撲フアンの一人として、自分なりに整理し、いくつかに分けてコメントしたい。

 

 

◇事件の事実関係

・10月後半のある夜、九州場所前の中国巡業中の鳥取市内で、鳥取城北高校を卒業して大相撲に入ったOB(*)を激励するための食事会があったが、モンゴル出身力士が主だったようだ。

(*白鵬 春日富士 鶴竜 照の富士 貴の岩 日本人力士、地元関係者 下線はモンゴル出身力士)

一次会でも、ごたごたがあったようだがなんとか収まったものの、2次会となり、春日富士が、前頭貴の岩に、平手だけでなく、道具を使った暴力を振るい、頭に怪我を負わせたという。

 負傷した貴の岩は、部屋へ戻って貴乃花親方に暴力事件を報告したが、地方巡業の責任者でもある親方は、事件について相撲協会へは報告せず、鳥取県警に、直接被害届を提出した。 これに基づき、警察では、加害者・被害者・参加者から事情聴取が行われた。

警察からの連絡で、初めて事件を知った相撲協会は、危機管理委員会が、遅まきながら調査を始めた。

 

・ 警察と協会の調査が進む中で、11/12(日)~11/26(日)の日程で九州本場所が始まっている。

九州場所の冒頭で、八角理事長(横綱北勝海)が、異例の陳謝の挨拶をしたが、春日富士と貴の岩は欠場している。

  この場所で優勝した横綱白鵬は、千秋楽でのインタビューで、“協会の膿を出し切って、事件当事者である、春日富士 貴の岩を復帰させたい”と語り、万歳を三唱すると言う、とんでもない勇み足もあった。

 

・ 九州場所が終わった11月29日、引退を決意した春日富士が、伊勢が浜親方(横綱旭富士)と並んで、記者会見を行ったが、この様子を、どのチャンネルも、LIVEで流している。

翌11/30に、場所後の定例の理事会(非公開)が開かれたが、暴力事件の解明が全く進まず、空振りに終わっている。 

 

・12月3日から、17日までの日程で九州・沖縄の冬巡業が始まっているが、巡業部長である貴乃花親方は、警察対応があるため、春日野広報部長(関脇栃の和歌)が、急遽、巡業の責任者になっている。欠席届が提出されていないままでの、貴の岩の巡業不参加も問題となった。

 

・ 冬巡業が終わって警察の送検やその後の措置も進んでいると思われる、12/20に、臨時理事会が予定されている。これも、11/20の理事会と同じく、非公開で進めるのかは不明だが、今後に向けて、どのような方向付けが行われるのだろうか。 

 協会としての事件の調査が、被害者に関しては全くできていないのだが、何らかの処分が出されるだろうか。加害者に関しての処分は当然だが、被害者側の貴乃花親方についても、協会への報告が無かったこと等について、何らかの処分があるようだ。

 また、詳細は不明だが、翌12/21には、協会役員だけでなく、全力士や業界関係者も出席する、総会があるようだ。

 

・ 今回の事件は、相撲界全体の意識や体質が、余り変わっておらず、協会としての新体制が機能せず、危管理が出来ていない体たらくを露呈したと言える。 暴力沙汰は許されないことが徹底されていないとともに、 事件後の処理が出来ていない。

被害者側の貴乃花親方のやり方がやり玉にあがっている感じだが、でも、被害者側としては、協会に連絡すれば、もみ消しや隠蔽を迫られることを恐れたのだろうか。

  貴乃花親方としては、自身の信念に基づいて、たとえ無勢でも、親方流の相撲界の改革を進めたいのかも知れないが、でも、自身が理事でもあり、事件について警察へ被害届を出す前に、協会へも通報するべきであったろう。(一歩譲っても、同時並行的に行うべきだろう。)

 

・ 場所終了後、現時点でも、被害者である貴の岩は所在不明で、所属部屋の師匠である貴乃花親方は、沈黙している。 警察の捜査が終わったら協会の調査に協力すると表明してきたが、警察は、想定通り、11日に、起訴が必要との意見が付加して送検している。

でも、貴乃花親方は、依然、口を噤んだままで、会見の予定も言わないのはなぜだろうか。情報では、貴乃花親方は、検察の訴追についての措置が決まった後に、協力すると、言い方を変えているようで、又、遅れるようだ。

 

◇ これまでの不祥事と組織の改善

・ 相撲界では、過去にも、主なものでも、以下のような暴力事件(詳細は略)や、屋台骨を揺るがす大事件が起こっていて、その都度改善が行われた、とされている。(相撲界のこれまでの主な不祥事、事件、トラブルなど:岐路に立つ大相撲

    死亡事件   2007 (親方が新弟子をリンチで死亡させる  親方解雇)

    朝青龍事件  2010 (横綱朝青龍が泥酔し一般人に暴行 朝青龍引退) 

    野球賭博問題 2010  (現役力士等の野球賭博  解雇2名・謹慎休場17名) 

    八百長騒動  2011  (八百長相撲の疑惑 17力士が引退・解雇 春場所開催中止)

 

・ そして、これ等の締めくくりとして、3年前の2014年1月から、協会は公益法人化し、組織運営体制を、下図のように、大きく変えてきている。(「日馬富士引退 暴行問題の核心」(時論公論) | 時論公論 | NHK 解説委員室 | 解説アーカイブス )

 ア 評議員会・理事会

 プロ野球界は、最高位に、外部出身者によるコミッショナー制があり、プロサッカーでも、チェアマン制が敷かれていて、ことある毎に機能していると言えるだろう。 これらに倣った形で、大相撲でも、協会の上部に、評議員会を置いたようだ。

評議員会の構成は、外部有識者4名、力士出身者3名で構成され、議長に、相撲界では珍しく女性の、華道の池坊保子氏が就任していて、TVで見たのは、今回が初めてである。

 大相撲の各事業の執行を行う理事会にも、力士出身の10名の理事の他に、有識者として、外部理事3名が加わっているようだ。

一般社会では、会社や団体の運営の民主化・透明化には、外部の人間の意見が必須と言われるが、筆者は、これまでは、相撲協会で外部の人間が入っているのは、横綱審議会(外部委員9名、協会代表1名)のみと思っていた位だ。 

イ 力士養成受託契約

 長い歴史のある大相撲は、伝統的な部屋制度で支えられてきた。 相撲部屋は、師匠である親方と、おかみさんが、力士だけでなく、行司、呼出し、床山を抱える、寝食を共にする共同体のような組織で、親方が社長を務める中小企業のようでもあり、高校の全寮制のスポーツクラブにも似ているだろうか。

 相撲部屋は、2017.4現在、大小合わせて45あり、いくつかの系列(一門)に分かれているようだ。(相撲部屋 - Wikipedia

上図にあるように、各部屋の力士は、以前は、部屋毎に親方と契約したが、変更後は、先ず、協会と「協会員」の契約を結び、それを受けて、協会と各相撲部屋の親方との間で、

「力士養成受託契約」

を結ぶように変わったようだ。このようになっていることは、今回、初めて知ったことだが、各部屋に対して、協会のコントロールを強くするねらいがあるようだ。

 

・でも、組織上、前図のア、イのようになっていることと、それが上手く機能しているか否かは、全く別問題である。

“仏作って魂入れず”の諺の通り、言うところの、意識・体質改革は難しく、だからこそ、重要な事は言うまでもない。外部の意見を取り入れる形は出来ていても、肝心の魂(心、意識)が伴っていなければ、実質は変わらない、ということだ。

 

一般企業や団体でも、組織運営の民主化・透明化のためには、意識改革がポイントとは、口酸っぱく言われることだが、生易しい事ではない。

でも、意識を変えるためには、形やルールを変えながら、教育を重ねるしかないだろうが、長い伝統のある大相撲界では、しきたりが重んじられるだけに、なおさらのことで、定着するには、10年位の時間は必要だろうか。

 


エルサレム問題

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2017年12月20日(水)  エルサレム問題

 

   この12月6日、アメリカのトランプ大統領が、イスラエルの首都はエルサレムとし、アメリカ大使館を、現在のテルアビブから、エルサレムに移す、と発表したことで、世界中が騒々しくなっている。 イスラム諸国だけでなく、EU諸国等もアメリカを批判しており、唯一、イスラエルだけが大歓迎しているようだ。 

  このことは、昨年の大統領選中も言っていたことだが、何と、20年以上遡る、3代前のカーター大統領(民主)の時の1995年に、イスラエルのアメリカ大使館をエルサレムに移すと連邦法で決めていたという。でも、世界情勢に鑑み、半年ごとの判断で、これを実行しないまま、今日まで引き延ばしてきたようだ。トランプ大統領にしてみれば、既定路線を実行したまでだ、ということだろうか。

 

◇パレスチナ問題

  中東のパレスチナの地に、ユダヤ人の国家として、1948年にイスラエルが建国されたが、以来、数次に亘る中東戦争を通じて、パレスチナ地域の領有や境界が目まぐるしく変化してきている。

イスラエルは、1980年には、エルサレムを首都と宣言しているようだが、国連は、エルサレムを首都とは認めておらず、テルアビブが実質の首都となっている。各国は、テルアビブを事実上のイスラエルの首都とみて、大使館等を置いている。

  一方、ヨルダン川西岸地区とガザ地区を統治しているパレスチナ自治政府は、エルサレムは、将来の首都だと主張しているようだが、現在は、ラマラ(ラマッラー)に政府を置いている。(下図) 図中に、エルサレム、テルアビブ、ラマッラーを、オレンジ色の○で表示。

 パレスチナ問題は、エルサレムを国連の管理下に置くことで、イスラエルとパレスチナ自治政府間で、辛うじてバランスを保ってきた、と言えるだろうか。

この辺の状況については、当ブログの、下記記事で取り上げている。

 世界遺産:米国のユネスコ脱退  (2017/10/21)

      (ネット画像)

 

◇ エルサレム問題

 今回のトランプ大統領の発表は、エルサレムと言う、具体的な地名を挙げたことで、パレスチナ問題が改めてクローズアップされた形だ。筆者は、この地域には行ったことは無いのだが、これを、仮に、エルサレム問題と呼ぶこととしたい。

 * エルサレム市

 エルサレム市は、形の上では、ヨルダン川西岸地域のイスラエルとの境界にあり、領有・帰属がはっきりしないため、現在、国連の管理下に置かれている。(前述)

筆者には詳細は不明だが、これまでの過程で、エルサレムは、東西に分割され、西エルサレムはイスラエル側、東エルサレムはパレスチナ側となったようだが、力に勝るイスラエルは、東側への入植を進めている一方、イスラエルが、東西エルサレム全域の治安警察権を掌握して、実効支配しているようだ。

 

データは不十分だが、エルサレム市の規模は以下のようだ。(エルサレム - Wikipedia など参照)

    面積 125.1 km2    参考:山手線内は65km2

                                   東、西の広さは不明 

   人口  85.7 万人(2015)   東エルサレム 25.5万人(2014)

                           西エルサレム 新市街が広がる中心街   

東エルサレムと西エルサレムの境界にある、城壁に囲まれた旧市街区域が、双方で譲れない重要な地域のようだ。(下図 ネット画像)

  

ここには、図のように、

  ユダヤ教   嘆きの壁(太古、図の神殿の丘周辺にあったという、ユダヤ教のエルサレム神殿は壊されたが、神殿の周囲を囲んでい

                    た壁の西側壁だけが、往時のまま現存しているという)

  キリスト教  聖墳墓教会(教祖イエスが磔にされたゴルゴダの丘の場所と言われ、埋葬され、復活したと言われる第1の聖地)

  イスラム教 岩のドーム(教祖ムハンマド(マホメット)が昇天した岩 他の2教とも関連)

           アクサーモスク(教祖が、メッカから一夜で飛来したという、イスラム教第3の聖地)

 3つの宗教の聖地があり、旧市街地は、上図のように4つの地区に分けられていて、それぞれの教徒が、各地区を管理していると言う。(図中の空白地区は、アルメニア人地区。 次図参照)  

  旧市街の、やや詳しい地図を以下に示す。(図はネット画像)

   

   旧市街地域の広さは、0.9km2 (90ha*)と狭く、人口は32000人ほどで、70%がイスラム教徒という。(*比較のため:新宿御苑58ha)

          

*今後の方向

  今般のトランプ大統領の表明に関連して、ペンス副大統領が、エジプトとイスラエルを訪問(12/19~)し、理解を求める予定だったのだが、米国議会での、税制改革法案の採決の関連から、急遽、来年(1/15~)に延期したようだ。 

これは、先日のアラバマ州の上院の補選で、共和党候補が民主党候補に敗れたことで、上院での議席数がぎりぎりまで切迫し、状況によっては、副大統領が賛成票を投じる必要性が出てきた、というのが延期の理由という。 現大統領になって、議会を通って成立した重要法案がまだ1本もない、と言われるが、信じられない状況だ。

 

  大使館の移転は、諸準備があり、実行できるのは数年先と言われるが、世界の反発をよそに、アメリカが、大使館をエルサレムに移すとしたら、どの場所に移すのだろうか。いくらなんでも、旧市街地域の中とは考えられず、西エルサレムだろうか。

 

  政治と宗教が絡む、とびっきりの難題であるパレスチナ問題(エルサレム問題)に、世界の問題児 トランプ大統領が、首を突っ込んでしまったことで、中東情勢や今後のアメリカの方向が、より、不透明になってきた、と言えよう。

エルサレム問題   続

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2017年12月22日(金)  エルサレム問題  続 

 

 先日、当ブログに、下記記事

     エルサレム問題  (2017/12/20)

を投稿したところだが、その後の状況変化等について、続編として補足したい。

 

① 国連安保理

 エルサレムをイスラエルの首都と認定する、という、12月6日のアメリカのトランプ大統領の宣言に関し、18日に開催された国連安保理(日本が現在の議長国)に、アメリカの決定を無効とする決議案が提出されたが、アメリカは拒否権を行使して、この決議案は否決されている。

日本は、珍しく、アメリカには追随せず、賛成したようだ。(安保理:エルサレム「首都」撤回決議案を否決 米が拒否権 - 毎日新聞

 

② 国連総会

 国連総会の緊急特別会合が21日に開催され、アメリカの宣言の撤回を求める決議案が提出され、採決の結果、以下のように、賛成多数で承認されたようだが、法的拘束力は無いという。

  賛成 :128 日本、英、仏 など

  反対 :  8 アメリカ、イスラエル など

  棄権 : 35 カナダ、豪、中南米諸国、東欧諸国 など

ここでも日本は、アメリカに追随せず、賛成票を投じたようだ。 

 決議案の採決に先立ってアメリカは、これに賛成すれば、当該国への援助額を減らすぞ、と脅したという。 反対/棄権した国の中には、米国の仕返しを恐れた国もあるだろうか。(国連総会、エルサレム巡り米非難決議 反対9・棄権35 (写真=AP) :日本経済新聞 )

でも、撤回を求められたアメリカには、その動きは全く無いようだ。

 

③ 国の首都と大使館

 筆者は、当初は、今回の宣言は、「エルサレムを首都と認識することは含まれておらず」、大使館の移転だけのことで、大使館は、必ずしも首都で無くてもよい、と思っていたことである。

このことから、筆者は、トランプ大統領の宣言について、改めて、報道された原文を調べた所、以下のようになっている。(下線は筆者)

 President Donald Trump on Wednesday recognized Jerusalem as Israel’s capital and announced he would begin moving the U.S. embassy there, despite warnings from leaders across the globe that the move would undermine peace efforts and spark violence.

Trump Recognizes Jerusalem as Israeli Capital in U.S. Shift - Bloomberg より)

すなわち、“エルサレムをイスラエルの首都と認識し、そこに大使館を移す準備をする” とある。

  民族紛争等の結果、ある地域が新しく独立宣言した場合等は、それを国家として承認するか否かは、国際関係上の、大きな問題である。各国が、イスラエルやパレスチナ政府と、どのように付き合うかは、まさにこれに該当するだろう。

でも、その国の首都の位置がどこかについては、他国がとやかく言う事ではないだろう。今回のアメリカの言動は、主権侵害とも言えるのではないか?

  どこを首都とするかは、各国が自由に決められる、主権の表れそのものでもあり、以下のような事例もある。

     オーストラリアのキャンベラ

     ブラジルのブラジリア

     インドのニューデリー

     スリランカのスリジャヤワルダナブラコッテ 

 前稿でも触れたように、イスラエルはエルサレムを、パレスチナ自治政府は、東エルサレムを首都にしようとしているが、目下は、エルサレムは国連の管理下にあり、暫定的に、他の都市(テルアビブ、ラマラ)に、当該国の政府機関を置き、各国の大使館もそこにある、と言う事だ。

 

 

 

 

大相撲の椿事   2

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2017年12月25日(月)  大相撲の椿事  2 

  

 大相撲の横綱春日富士の暴力沙汰に関して、先日の12月20日、 臨時の横綱審議委員会(横審)が開かれ、日本相撲協会に進言(答申)があった。これを受けて、協会の臨時の理事会が開催され、関係者の処分が発表された。ただ、貴乃花親方の措置は、聞き取りが間に合わなかったということで、28日に予定されている、次の理事会に持ち越されている。 

初場所に向けて、当面の進展が大いに注目されるところだ。 

 本稿は、先日当ブログに投稿した、以下の記事の続編である。

     大相撲の椿事  1  (2017/12/17)

 

 

◇ 概況

 今回の事案の措置については、マスコミで詳細に報道されているので、ここでは、ごく簡潔に記すこととしたい。

・横審の答申

  今回の事件に関係した、3人の横綱につい、横審の北村委員長から、審議会としての答申(進言)内容と主な意見について、言葉を選びながらの、分かりやすい発表がなされた。 横審は、相撲協会の諮問機関として、国民と相撲界との中間にある存在、との認識が示されている。

  答申では、加害者である横綱春日富士については、引退が相当とし、同席していた、白鵬、鶴竜の両横綱については、暴力を止められなかった責任があり、厳重注意とした。

 貴乃花親方については、理事、巡業部長として、協会に報告しなかったのは問題があるが、協会の事情聴取後に措置する。

 でも、横綱に推挙した横審の責任については、品性までは分からないとし、横審としての反省の言葉がなかったことに、批判もある。

 

・理事会の措置と処分

 横審の答申を受け、理事会として審議した結果について、八角理事長と、高野危機管理委員長(外部理事 元名古屋高検検事長)から発表された処分内容は、以下である。

  春日富士   横審の答申通り、引退が相当 (自発的な引退を追認) 

           横綱の暴力は引退という、今後の前例になる 

           功労金については、今後の検察の措置をみて減額

           (通常の会社で言えば、懲戒免職ではなく、依願退職の形で退職金は支給)

  白鵬 鶴竜  1月分の給与は支給停止 

           白鵬は2月分も1/2カット

           (出場停止等の処分は無い)

 同席の他力士 注意処分 

 伊勢が浜親方 理事を降格、2階級下の役員待遇参与に

             事件後、本人から理事辞任の申し出があったのを留保

 貴乃花親方   答申通り、協会の事情聴取後、12/28の次理事会までに措置する。

 八角理事長   3月までの残された任期は無給 

 

 ⇒全体として、かなり生ぬるい、と言うのが、筆者の率直な感想だ。

 

・全員研修会

  21日、全力士と、親方、行司、呼び出し、床山を含めた 全員研修会が開催され、評議員会の池坊委員長と、協会の八角理事長の訓   話があり、暴力追放を申し合わせたようだ。

 

◇いくつかのコメント

 大相撲は、長い歴史を持つ、国民的に人気のある競技だけに、今回の事件は、誰もが評論家になれる話題だ。筆者も、フアンの一人として、コメントしたい。

 ①暴力の許容範囲

・学校での部活動や、格闘技などのスポーツの世界では、一昔前までは、暴力やリンチは、良く耳にしたが、各方面での国民的な暴力追放運動の流れから、この所は、(表向きは)殆ど無くなってきているだろうか。

大相撲の世界でも、過去の幾多の暴力事件の反省から、大幅に減って来ていると思われる。

 でも、今回の暴力事件は、

 ア 例外的に稀なケースとして起こったものか、

   (殆ど無くなっているが、たまたま、起こったもの) 

 イ 「氷山の一角」として、表面化しただけ、

   (現在も日常的に行われている)

なのか、判断に迷うところだ。 願わくば、前者のアであって欲しいのだがーーー。

  先日の記者会見での高野危機管理委員長の言葉では、以前は、暴力的な「しごき」に耐えて頑張る事で、強くなるとされた、と、過去形で述べていた、と記憶している。

でも、上述の全員研修会の席上、八角理事長が、

   “何気ないちょっとした暴力が組織を揺るがす”

と発言したと伝えられたが、これが事実とすれば、相撲界は、理事長以下、いまだに、イであることを、如実に物語っているようで、筆者は愕然とした。 口先だけで、行動が伴わないのは世の常と言われるがーーー。

 

・スポーツの中でも、

   相撲、レスリング、柔道、ボクシング

などの、直接体を触れ合い組み合う競技(格闘技)では、暴力との境界が明確でない面がある。

各競技には、「禁じ手」があるが、相撲の世界では、以下のような禁じ手がある。  (禁じ手 - Wikipedia より)

   1 握り拳で殴ること

   2 頭髪をつかむこと

   3 目またはみぞおちなどの急所を突くこと

   4 両耳を同時に両手のひらで張ること

   5 前立みつをつかみ、また横から指を入れて引くこと

   6 ノドをつかむこと

   7 胸、腹をけること

   8 一指、二指を折り返すこと 

 

一方、相撲では、土俵上の技として、

   ・ 張り手(平手打ち)、

   ・  目くらまし

   ・ ぶちかまし(頭突き)、

   ・ かちあげ(肘で押上げ ボクシングでは禁止)

などが許容されていて、相撲のTV中継では、よく見かける。

 

 こんなことから、相撲部屋での普段の稽古や日常生活の場でも、先輩―後輩などの間で、手を使って頭をたたく、などの動作は、あるだろうか。 いっそのこと、相撲業界として、禁じ手と同じように、暴力として禁止される行為(パワーハラスメント)を、列挙したらどうだろうか。

  いまや潮流としては、競技やスポーツの世界だけでなく、一般社会や家庭内でも、暴力の許容範囲は、ほぼ、0になっている、と言えるだろう。

 

② 横綱の品格

 横綱は現役力士の頂点に立つということで、横綱に推挙される場合、力量だけでなく、品格が重視されると言われるが、横綱の品格についての、明確な規定等は見当たらない。横綱の品格とはなんだろうか。 手許の「広辞苑」には、

  品格  しながら 品

       気高いこと 気品

とある。 

・ある時、ベテランのNHKの刈屋谷富士雄アナ(現 解説委員)が、悩んでいた横綱朝青龍から、横綱の品格について質問されたという。 これに対し、横綱の有るべき姿について、刈屋アナは、以下のように答えたというエピソードが、ネットで紹介されている。(「横綱の品格」を説いたNHK アナウンサー 刈屋富士雄さんの言葉が深い。) 曰く、

   ・人よりも自分に厳しいこと
   ・人よりも努力をすること
   ・そして、人に対して優しくあること
   ・そういう日々を送ることで身につくもの

これに対して、朝青龍関が、

   ・それよりも勝つことのほうが大事なんじゃないか

 と言ったという。 

 このことは、事柄の本質を突いているとも言え、二者択一ではなく、どちらも大切と言う事で、横綱には、抜群の力量とともに、上記のような人間的な特性が備わっていることが大事、と言う事だろう。  力を頼って暴力を振るう等は、以ての外、という事だ。

 

・往時、横綱双葉山が、3年越しの69連勝でストップした時に、 

      われ未だ木鶏たりえず

と言ったという。双葉山は、中国の故事にある「木鶏」が、横綱の理想と考えていたようだ。  木鶏とは、木製の雄鶏で、闘鶏では、最強のシンボルとされたようだ。

 無言のまま、泰然自若として動じず、そこいるだけで周囲から畏怖される姿という。

これは、横綱としての人間的な優しさの面というより、不動の強さの面を表したものだろうか。永遠に、木鶏には到達できないだろうがーーー。

 横綱とは、気はやさしくて力持ち、の刀を持たない桃太郎だ、という喩を聞いたこともある。

 

・神事との関係が深い大相撲では、横綱土俵入りで、回しの上から締める白い綱は、神社の注連縄(しめなわ)を表していると言われる。

 でも、横綱という人間を神格化してはならず、横綱も人の子、慾や迷いがあるのは当然だが、人の道に反しない生き方や行動が求められる。このことは、横綱だけで無く、大関や他の力士についてもいえることだろう。

  今回の事件は、人並み外れた力持ちの力士(しかも横綱!)が、暴力を振るったことで、特に注目された事案だ。良く話題になる事だが、取り締まる立場の警官が、飲酒運転をしたり、指導する立場の学校の先生が、生徒を土付いたりするとニュースになる。

でも、彼らは、そういう点で特別に優れている人物と言うわけではなく、そのように教育され、自らを戒める努力をしている、ということだろう。

 

・横綱相撲

 横綱相撲という言葉があり、時々、話題となる。

ネットでは、以下のように説明されている。(横綱相撲(よこづなずもう)とは - コトバンク

     正面から相手を受け止めて圧倒的な力の差を見せつけて勝つこと

 それなのに、最近の横綱白鵬は、張り手(目くらまし)、かちあげ(肘技)など、小手先で相手を制する動きが多くなっているのは、横綱らしくない、横綱相撲とは言えない、と批判されているのだ。

 これらに加えて、八艙飛び、立ち合いの変化、なども、姑息な動きともいえるが、得意とする力士もいて、これ等が無くなると、相撲の面白味が減るとも言える。

横綱(や大関)だけ、これらを禁止するという決め方も可能だろうが、一種のマナーとして定着させるやり方が妥当だろうか。

 

 先日、横審の北村委員長が、答申の中で、九州場所での白鵬の所作について、望ましくないとコメントしている。取り組み終了後、行司軍配への不満を現して、暫く手を挙げて、土俵に残った、あの動作だ。 

しかし、4人の審判からの物言いもなく、異様な時間が流れた。行司は、両者が手をついたので、立ち合い成立とみなし、白鵬は、その後、“まった”の積もりで力を抜いたことで、そのまま押し出された。 

TVを見ていた筆者には、立ち合いは、咄嗟の事でよくわからなかったのだが、ビデオで見ると、行司軍配通りであり、行司と審判は筋を通した、と言う事だろう。

 取り組んだ力士自身から物言いするのは許されない、という規定があるのかも知れず、前例は無いのだろうか。

 でも、筆者の提案は、あの場面では、見ている観客へのサービスとして、物言いに準じて処理し、審判役が集まって、即、結論を出し、白鵬に厳しく注意すべきだった、と思う。

 

・ 富岡八幡宮

 江東区にある深川富岡八幡宮は、江戸幕府の勧進相撲の発祥の地とされ、そこには歴代横綱の碑があり、横綱名が刻印されているようで、最新では、横綱稀勢の里である。

先だって、骨肉の争いから、この神社の宮司が殺害されるという凄惨な事件が起こっている。今回の暴力事件とは無関係だが、不思議な偶然の一致だろうか。

大相撲の椿事   3

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2017年1月13日(土)  大相撲の椿事  3 

 

 

 大相撲での、横綱春日富士の暴力事件の関連が、昨年末の大きな話題の一つで、12/28には、協会の臨時理事会があったが、一方で、1月14日から始まる初場所の番付が発表されるなど、慌ただしい動きの中で、決着が、新年に持ち越した形となった。

 本稿は、これまで、当ブログに投稿した、以下の記事の続編である。

     大相撲の椿事  1  (2017/12/17)

     大相撲の椿事  2  (2017/12/25) 

 

◇最近の動きの概況

(昨年末の状況)

   12/25 相撲協会による、貴乃花親方からの事情聴取(帝国ホテル)

   12/26 初場所の番付発表

          3横綱に(春日富士が抜け) 貴景勝が小結に昇進 

          秋場所全休の貴乃岩は十両3枚目

          (初場所も全休でも、次春場所の番付は、十両を保証する救済措置があるようだ)

   12/27  力士会(関取以上) 会長交代 春日富士→鶴竜

   12/28  臨時理事会 

          貴乃花理事に対する降格処分(役員待遇の委員に)

          貴乃花理事は拒否→臨時評議委員会(1/4)で審議 

          再発防止検討委員会を設置(6つの一門から委員、外部委員も入れる)

          貴乃花親方は、降格があっても、次の理事候補選には出られるという   

   12/29  加害者である春日富士を鳥取県警が略式起訴 

          簡易裁判の罰金刑(50万円)で処理され決着

 

(今年の状況)

     1/4   臨時評議委員会 

          貴乃花親方についての理事会の処分案を審議し、理事の降格処分が確定

           ・巡業部長として事件を報告しなかった違反

           ・貴の岩への協会の聴取に応じさせなかった違反

          前回理事会で本人から出ていた意見書は、読み上げられたようだ。  

          今後、裁判沙汰に発展することもあるかも。

   1/14~28 初場所 東京 両国国技館

 

◇ 今後の協会の体制の行方

・初場所終了後、直ちに、2年に一度の、理事候補選が行われる。理事定員は10名で、この理事選では、協会所属の親方(年寄)(100人程)に選挙権がある。

定員一杯の立候補であれば無投票、定員以上の立候補があれば選挙となる。後者の場合は、一波乱が予想される。

理事の互選で理事長が選出される。

 

*親方は、日本国籍が必要で、年寄名跡(めいせき 年寄株、親方株とも)を持つのが原則。名跡数は全部で105で、現役で名跡をもつ力士もおり、現在、空き名跡が5という。また、一代年寄という制度があり、これまでは、大鵬、北の湖があったが、現在は貴乃花だけである。

  

・一門と親方の状況

 大相撲には、一門というグループがある。一門は地方巡業連合体から始まったようで、以前は、地方巡業を行うのには金や人手がかかり、これをこなすために、相撲部屋が連携する必要があり、このための連合体として、一門が機能してきたようだ。

でも、現在は、地方巡業は、協会が実行(この責任者が貴乃花親方だった!)することとなっているので、この点での一門の必要性は消滅している。 現在の一門は 連合稽古としての交流や、理事選での派閥となっているようだ。

 

現在、一門は、以下の6門という。 ( )は、現役時の四股名

 名称       総帥               現役の最高位   部屋数 付親方数   現理事数

出羽海一門  出羽海(前頭 小城の花)  大関 豪栄道     11     21       4  

二所ノ関一門 二所ノ関(大関 若島津)  横綱 稀勢の里     9     11       2  

時津風一門    時津風(前頭 時津海)    横綱 鶴竜         8      8       1

高砂一門    高砂(大関 朝潮)       関脇 隠岐の海     5      7         1

伊勢ケ濱一門 伊勢ケ濱(横綱 旭富士) 横綱 白鵬         5      4       1

貴乃花一門   貴乃花(横綱 貴乃花)   小結 貴景勝      5      3        1

 

無所属                                              2      1

                                                     45     55       10

                     

  理事数は、一門ごとに割り振られてはいないが、部屋(師匠)数、部屋付親方数等から、慣例的な枠はあるようだ。

今回の事件後の一連の動きをみると、理事候補選では、一波乱がありそうだ。

  12/26に、時津風一門から離脱し、無所属となった以下3親方の動向が、話題となっている。

        錣山(寺尾)親方  立田川(豊真将)親方  湊(湊富士)親方

当人達は、理事候補選とは無関係と言っているが、貴乃花一門に同調するのではとも言われている。

 

 貴乃花親方の、事件後の一連の不可解な動きから、今後の理事選がどう展開するのか、気になるところで、マスコミの注目の的だ。が、ここで、これらについて、コメントすることは止めて、大相撲について、別の角度から、原点に立ち返って考えてみたい。

 ◎ 大相撲の現況 

◇相撲人気

 現代は、競技・スポーツも多様化したことや、相撲は、やるスポーツから見るスポーツになってきている傾向もあって、往時と比べると、学校等で相撲をやろうとする学生は多くなく、クラブ活動等も、特定の中学、高校や大学に集中しているだろうか。 

大学での相撲経験者が、大相撲に入って、横綱や大関になった力士も多い。

 

  野球と並んで、大相撲には、現在も、中・高齢者層を中心に、根強い人気があるだろうか。

年6場所の大相撲が始まると、筆者には、NHKの相撲中継を見る、捨てがたい楽しみがあり、時々、BS放送の、十両や幕下等の下位の取り組みを観る時もある。

  やや以前の仕事の現役の頃だが、取引先から東京や名古屋場所でのチケットを貰って、生で観戦したこともある。離れていて良く見えず、升席がかなり狭かった、という記憶がある。 

 

 大相撲では、昨年、久々に日本出身の、横綱稀勢の里や、大関高安が誕生したことで、人気も増すと期待されたが、最後の九州場所では、怪我等により相次いで二人が休場し、鶴竜も全休、春日富士も3日間の全敗後休場と散々で、白鵬の1人舞台のようになってしまった。

 でも、九州場所での阿武咲や貴景勝等の若手の活躍や、ベテラン安美錦の復活など、希望も見えている他、この初場所では、一頃人気のあった、わざ師の石浦や宇良の復活後の活躍も期待される。 先日のTVでの某コメンテーターによれば、十両から入幕する阿炎(あび)や、竜電も、大いに活躍するのではと言う。 

 

◇相撲の国際化

 伝統的なしきたりが色濃い大相撲だが、国際化という面でみると、力士の国籍が、大きく拡大してきているのは前進と言える。筆者はこれを、「力士の国際化」と呼ぶこととしたい。 大相撲で、外国人力士の受け入れが始まったのは、1960(昭和35)年頃からのようで、苦しい稽古だけでなく、食事や言葉など、日本の流儀に慣れるための当人の努力は並大抵のものではなく、受け入れる側の部屋の体制にも、一苦労があろうか。

  一頃は、ハワイ出身力士が多く、当時の高見山(現 東関親方)が、1972(昭和47)年に、外国人力士として初めて、幕内優勝を果たしている。これを契機に外国人力士が増え、これまで、ブルガリア、中国、ジョージア、ブラジルなど、国籍は20カ国以上に上るようだ。  外国人枠が設けられ、現在は、部屋当たり1人(Max45人)となっているようだ。 

 最近の力士の国際化状況は、大相撲力士全659人中、外国人は11カ国39人で、その内モンゴル出身が25人といわれ、モンゴル勢が圧倒しているのは周知のことだ。 巷間では、モンゴル勢が、相撲協会を牛耳ろうとしている、との噂も聞かれる。

 数は少ないが、外国出身の力士で日本国籍を取得して、現役引退後、親方になった人もいる。 東関(関脇高見山 ハワイ)、武蔵川(横綱武蔵丸 ハワイ)、鳴戸(大関琴欧州 ブルガリア)、友綱(関脇旭天鵬 モンゴル)だ。 残念な話だが、今回話題となった春日富士は、親方となるべく、日本国籍を申請中だったという!

 

 日本では、長い伝統がある大相撲は、武道の一つで、相撲道と言われる。他に、日本の武道には、柔道、剣道、弓道、空手道、合気道などがある。

この中で、競技の国際化としてみると、オリンピック種目として、

        柔道   1964年東京大会以降 

が行われていて、また、

        空手道  2020年東京大会から初めて

が進められているのは周知のことで、これまでの関係者の努力に対し、敬意を表したい。

 

  これらと比べると、大相撲の「競技の国際化」は、まだまだである。 国内では、大相撲を手本・ベースとして、アマチュア相撲(女子相撲も)が進められている。 また、国際的な組織である、国際相撲連盟もあり、オリンピックへの申請も試みられているようだが、以下のような障害もあるようだ。

   ・プロとしての大相撲力士が強すぎること

   ・裸で競技する事

   ・伝統的な神事と融合した競技である(女人禁制があることを含む)

 

 余談だが、蝋人形で名高い、ロンドンのマダムタッソー館に、横綱千代の富士の像があるようだが、国民栄誉賞に輝いた雄姿というより、回しを付けた裸姿の、物珍しさも手伝っているだろうか。 

        千代の富士像

  

 大相撲の人気には、根強いものがあると見ているものの、今回の事件が大きく影を落としていて、先行きがよく見えず、組織の内紛等もあって、じわじわと、大相撲が衰退の一途を辿るのでは、との危機感がある。 

ここで出直し、日本の伝統文化に支えられたユニークな競技を、維持・再生して欲しいと思うのだ。 次稿以降で、大相撲の

     ・スポーツ競技としての特徴

     ・伝統文化としての側面

について取り上げ、最後に、筆者としての独断で、

     ・幾つかの提言

を述べることとしたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

LGBTと広辞苑

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2018年1月20日(土)  LGBTと広辞苑

 

 

 先日の1月12日、わが国のデファクトスタンダードとも言える権威をもつ国語辞典「広辞苑」第七版が発売された。出版元は、岩波書店で、10年振りの、満を持しての改版だ。 筆者は、家内がかなり以前に、幼稚園勤務の退職記念に貰った、この辞典の第1版を愛用しているが、旧仮名づかいということもあり、この新版を、出来れば手に入れたいと思っている。

          (図はネット画像)

 

◎ LGBTで誤り

 所が、この辞典、思わぬところで話題となっている。すなわち、今回、新たに収録した外来語 エル・ジー・ビー・ティー 「LGBT」について、上図右のように

   LGBT:多数派とは異なる性的指向をもつ人々

となっている説明文が、誤っているという指摘が、当事者等からネット上で出されているようなのだ。

LGBTに関する今回の指摘は、筆者にもよく理解できない、かなり複雑な内容のようで、本稿で、LGBT、特にTについて、以下に、改めて取り上げることとした。

 

◇ LGBTとは

 人権擁護の国際的な活動などで、この所は、LGBTという用語は、かなり知られてきている。筆者も、当ブログで、以下のように話題にしてきたところだ。

  ①選挙と住民投票   3   (2015/6/2) 

  ②パートナーシップ証明書  (2015/11/18) 

  ③LGBT             (2016/1/9)

①では、同性婚をめぐるアイルランドの国民投票について、②では、世田谷区の事例をとりあげている。 そして③で、LGBT全般を扱っており、ここでは、詳細は省略し、ポイントを絞って触れることとしたい。

 

◇性的多数派と性的少数派

  人間の性(sexuality)については、大まかに、以下のように言われている。

 

・性には、生理的性(雄/雌 sex)と社会的性(男/女 gender)がある。

・生理的性と社会的性が一致し、性同一性(gender identity)が保たれている人たちがいる。

・どの性を求めるかという、性的指向(gender orientation)があり、性同一性が保たれている人たちでは、自分と異なる性(異性)を求める人たちが多く、このような人たちは、性的多数派(sexual majority)と言われる。

 

・これに対し、生理的性と社会的性が一致していても、性的指向が、同性(L、G)や両性(B)を求める人たちがいる。

・また、生理的性と社会的性が一致せず、性同一性に障害がある (gender identity disorder)人たちがおり、この人たちの性的指向も、同性や両性と、様々である。

・このような人たちは、性的少数派(sexual minority)と言われる。

 

 以上について、上述の③で引用した図を、再度、以下に示す。図では、生理的性は、身体の性、社会的性は、心の性、性的指向は、好きになる性と呼ばれている。

        

図で、2、10の場合が、性同一性が保たれ、異性が好きになるマジョリティである。他は、性的指向が、同性(1G,11L)や異性(4、5,7,8)、両性(3 6 9 12)だったりするマイノリティーである。

 

◇ 難解なT(トランスジェンダー)    

 今回話題となった、Tについては、前稿の③でも、筆者にはよくは解っていなかったのだが、今回、やや分かったことは、以下の、イがL・G・Bで、ロがTで、基本的に異なるらしい、と言う事だ。

イ  L、G、Bの人たちは、性同一性が保たれず不一致の状態(性同一性障害)だが、不一致を自認(自覚)している人たちと言える。上図は、これ等のケースだ。

ロ  しかるに、Tの人たちは、自分の社会的性が、どちらなのか自認(自覚)できず、行ったり来たりさ迷っている(trans)という。 日本語では、Tが、性超越者、性越境者などと呼ばれる所以だ。 上図には、Tは含まれない。

 

 筆者の理解では、このTは、性的指向以前の、性同一性の問題で、性的指向とは別次元、というのが、今回の指摘のようだ。当該辞典の説明文での、「性的指向」という用語が、T(トランスジェンダー)に関しては、問題があると言うこととなる。

 

 ネットで、LGBTの説明のトランスジェンダーを見ると、以下のよに、出典により、様々に記されている。(LGBT(えるじーびーてぃー)とは - コトバンク

  トランスジェンダー    ・性同一性障害など        

               ・心と体の性が一致しない人

               ・出生時に診断された性と、自認する性の不一致

               ・性同一性障害を含む体と心の性が一致しない人

               ・出生時に法律的/社会的に定められた自らの性 別に違和感を持つ人

 筆者の理解では、これらは、上記のイが主で、ロには殆ど触れていないように思える。

また、トランスジェンダーのWikipediaでは、あらゆる性的状態を包括する一般用語だ、という、勇ましい説明もあるがーー。 (トランスジェンダー - Wikipedia

 

◇ 修正案は?

 「はやり言葉」が定着するのをみて、辞典を編纂するのは、時代を映す国語辞典として、極めて重要なことだが、LGBT自身が、医学や心理学や社会学にも広がる、今も動いている先端分野だけに、厄介な事例に首を突っ込むことになった、と言えよう。

 しからば、どういう説明ならいいのだろうか。ネットでは、具体的な修正案の提案は無いようだ。岩波書店も、ネットの指摘に対して、今後、修正するかどうかを検討するとしているという。指摘を踏まえ、限られた語数内で、簡潔に正しく説明するのは、容易ではないが、筆者も、誤解を恐れず、考えてみたのが以下である。

 LGBT  現文 多数派とは異なる性的指向をもつ人々

       案1 生理的な性と、社会的な性が一致しない人等の性的少数派 (等でごまかしているがーー)

       案2 生理的な性と、社会的な性が一致する、しないに拘わらず、多数派とは異なる性的指向をもつ性的少数派

       案3  性同一性の障害の有無に拘わらず、多数派とは異なる性的指向を持つ性的少数派 (案2の下線部を短縮)

       案4 多数派とは異なる性的指向を持ったり、社会的性が分からない性的少数派(下線部で性的指向と区別) 

これらの中では、似た用語が多いものの、案3あたりが良いのだろうか? 

  LGBTという用語自身は、特定の4つの性的状態を表す言葉の頭文字の集合だが、性的少数派全体を指す一般用語として、性的多数派に対比して使われることも多い。

いやはや、難しい時代になったことだ!       

 

◎ しまなみ海道

 また、つい先日の報道では、広辞苑第7版で、新規に追加された項目の、「しまなみ街道」で、経由地の説明に誤りが見つかったようで、簡単に触れることとしたい。

瀬戸内海の島々を経由して、広島県尾道市と、愛媛県今治市とを結ぶ自動車専用道は、「しまなみ海道」と呼ばれる。(下図は、左 地図、右 広辞苑    ネット画像より)                

      

  左の地図にあるように、道路は、尾道から、因島、生口島、大三島、伯方島、大島を経由して今治市に至るが、今回の辞典では、この大島を、右図のように、山口県の周防大島と間違えてしまったという。

日本国内には、大島と呼ばれる島は、数え切れない程あるようだ。(大島 - Wikipedia

 

◎ 誤りへの対処

  広辞苑 第6版では、約24万の収録項目数(語数)だったが、今回、新たに約1万項目を厳選追加し、第7版は、約25万項目となっているが、薄く強い用紙を使用することで、全体の厚みは維持しているという。

この種出版物では、念には念を入れてチェックしても、出版後に、誤りが判明することは皆無ではなく、内容的な誤り(LGBT)や、ケアレスミス(しまなみ海道)もあると思われる。

  権威ある国語辞典としての、責任と名誉にかけて、これからも判明するであろう誤りも含め、重版などの機会に、善処して欲しいものである。 

 

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