Quantcast
Channel: つれづれの記
Viewing all articles
Browse latest Browse all 864

ウクライナ情勢の行方  3

$
0
0

2014年5月30日(金) ウクライナ情勢の行方  3

 

 

 この所、世界的に注目されているウクライナ情勢だが、当ブログでも

       ウクライナ情勢の行方  1  (2014/5/17)

       ウクライナ情勢の行方  2  (2014/5/20)  

の記事を掲載し、今後のウクライナの方向を見るために、

       ・ウクライナという国の姿(地勢 人種 言語 産業 等)

       ・民族紛争が絶えないコーカサス地方やロシア連邦の統治構成 等

について、取り上げている。

 

 先稿でも触れたウクライナの大統領選挙が、先日の5月25日に行われたようで、親欧米派のポロシェンコ氏が、新たな指導者に決まったという。1回目の投票で、過半数を制したため、6月に予定されていた決選投票を行わずに、新大統領が選出されたのは、余分な混乱が避けられて、幸いだったと言えよう。

 新大統領のポロシェンコ氏は、実業家で、チョコレート王と呼ばれる富豪のようで、前政権の外相を務めている。(CNN.co.jp : ウクライナ大統領選 ポロシェンコ氏が勝利宣言

 

本稿では、主に、この話題を取りあげ、ウクライナシリーズの、一区切りとしたい。

 

 

◆良く言われることだが、ウクライナは、下図のように、地域によって、話される言語の構成がかなり異なっているようで、西部はウクライナ語、東部はロシア語が多いようだ。国全体の人種構成では、ウクライナ人:ロシア人の比は、8:2位と言われる。 

   

              ウクライナで話される言語の分布  (図は上記サイトより)

  今回の大統領選挙がどの様に行われたのか、実態は良く見えないが、OSCEは1000人もの選挙監視団を送ったようだが、親ロシア派の反政府勢力は、この選挙を妨害し、阻止する行動に終始したようだ。 特にロシア系住民が多いと言われる東部2州、中でもドネツク州では、2000箇所以上も予定していた投票所の開設が、ままならなかったようだ。

 投票率に関する最終的なデータは入手できていないが、投票終了前の、午後3時時点では、ウクライナ全土では41%程度で、中部〜西部は、31〜51%、東部の、特にロシア系住民が多いドネツク州では、9%(最終的には、15%?)程度だったようだ。

今選挙の全土の投票率は、前回の大統領選(2010年)の時より、10ポイントも高かったという。(ウクライナ大統領選、投票妨害も 親ロ派の占拠続く東部:朝日新聞デジタル

 

 最近ロシアに編入されたクリミア州では、選挙が行われたのか否かは未確認である。

 当然だが、反政府勢力は、この選挙は無効と主張している。

 

 マスコミで伝えられる所では、新大統領は、欧米やEUとの関係を重視する姿勢だが、東部地区の親ロシア派勢力との話し合いにも応じるとしているようだ。

 一方、東部地域などでの治安回復のためには、反政府勢力の武力制圧も辞さないとしており(選挙後も、武力衝突が続いている)、ロシアがクリミヤを編入したことは認めない、とも明言している。

東部2州の独立を宣言している反政府勢力としては、新政権との話し合いでは、ロシアの仲介以外は受け入れない、と言っているようだ。

 また、ロシアのプーチン大統領は、この選挙結果を尊重するとは言っているようだが、実際、どの様な行動になるのか、クリミヤとの関連もあるだけに微妙だ。

 

 

◆この2月のウクライナの政変で、ヤヌコヴィッチ大統領の前政権が倒された状況は、ソチオリンピックにマスクされて、良く見えなかったのだが、首都キエフで大規模デモが繰り返されて、退陣に追い込まれたようだ。政治の腐敗が原因の一つとも言われ、又、親ロシア志向を強めた前政権の路線に対する反発もあったという。

 

 先日夜、NHKTVで、前政権を倒す大衆行動に参加し、キエフの独立広場のテントに寝泊まりしている、ドネツク出身の若者の事がレポートされた。(番組名は特定できず)

この若者としては、自分達が立ちあがったのは、あくまでも、ロシアから独立したウクライナのポジションを守る、ということだったのだが、家族の居る故郷のドネツクが、何時の間にか、親ロシア派の拠点の様になってしまった事に戸惑っていた。この男性は、ドネツクに戻ったら、反政府勢力と戦う決意という。

 

 

 

◆5月27日のNHKの朝のニュースでは、最近、EU加盟各国で行われた欧州議会選挙で、極右勢力の台頭が目立つという。この極右勢力の主張は、EUになって以降、多数流入してくる外国人勢力を排除し、自国民の利益を守るべき、と言うもののようだが、勿論、国内の政治への不信もあるようだ。EUの本家のフランスなどで、この傾向が強いという。(欧州議会選挙 極右政党が台頭 NHKニュース

 

 争いの無い世界・地域の実現という、高邁な理想に向かって、営々と努力を積み重ねて来て現在の段階に至っているEUだが、上述の状況は、求心力ならぬ、遠心力となる動きといえるだろう。ウクライナの親欧米派には、EUへの加入は悲願のようだが、EUも理想の集団ではないのだろうか。

これらの極右勢力が、ウクライナの反政府勢力を支援している、というニュースもあり、ウクライナの状況は、より複雑になるようだ。

 

 

◆歴史的にウクライナは、欧州とロシアの間に挟まれた緩衝地帯のように、揺れ動き、幾多の苦難を経験しているようで、今回もその1ページとなるのだろうか。

 「自由」や「独立」は、どの地域や民族にとっても、第一の悲願だろうが、真の自由や独立を実現し、継続的に維持することは、生易しいものではないようだ。

 ウクライナは、ソビエト連邦の崩壊で、新たな独立国とはなったが、それ以降は、“欧州を恃むか、ロシアを恃むか”、という選択に明け暮れて、真に独立してはいなかった事が、現在の対立の根本原因だ、と言う下記のレポーターの指摘は、極めて印象的である。(有馬キャスター ウクライナ報告(2) 大統領選挙 直前ルポ | 国際報道2014 [特集] | NHK BS1 )

 

 ウクライナを巡る国内・国際情勢は、今後、色々変化していくと思われる。

 我が国への直接的な影響もなさそうなので、日本の一市民としては、悟ったように、“争いながら、離合集散や、統合分裂を繰り返すのが、世の習い、世界の歴史”、などと言ってしまえば、元も子も無いので、精々、関心を持ちながら、状況を見守っていくこととしたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 864

Trending Articles