2024年12月3日(火) 年収の壁
最近、「年収の壁」という言葉がよくでてくるが、状況を整理してみた。
今回の総選挙で、国民民主党が、年収の壁を拡張することを公約に掲げたことから、にわかに、壁の論議が出てきたようだ。
◎現行制度での年収の壁
副業的にパートタイマーで働いている主婦や、アルバイトの学生など、得られる収入に、所得税や社会保険料などが掛かからないように、また、配偶者控除が貰えなくならないように、働く時間を調整する事が多い。これらが、税金の壁、社会保険の壁といわれる。
最も基本的な壁が、103万円の壁である。
ア 誰でもが生活していく上で必要な経費として、課税されない基礎控除があり、48万円である。(参照;基礎控除 - Wikipedia.html)
イ 一方、働くのに必要な経費として、給与所得控除があり、55万円である。
(参照:No.1410 給与所得控除|国税庁.html)
ア、イの両者を合わせると、103万円となる。
他に、106万円の壁、130万円の壁、150万円の壁、201万円の壁もあるが、ここでは触れない。
これらを下図に示す。
◎年収の壁の拡張
先の衆院選で、国民民主党が、年収の壁を、現行の105万円を75万円引き上げ、178万円とする公約を発表している。
少数与党となった自民党と公明党が、国会運営を円滑に進めるため、国民民主党との話し合いを始めている。
(参照:勢いづく国民民主党 「取らぬ狸」とならぬように 風を読む 論説副委員長・長谷川秀行 - 産経ニュース.html)
国民民主党の案を実施すると、国税、地方税を併せて、7兆円程の税の減収となり、その財源をどうするかが、大きな問題となっている訳だ。
(参照:国民案なら減税7・6兆円_全国海外_神戸新聞NEXT.html)
地方側を代表する全国知事会では、恒久的な財源の手当が必須、と主張している。
国税である所得税だが、その33.1%が、地方交付金として、自治体側に配布される仕組みとなっているようで、地方にとっては、大きな税収源となっているようだ。
一方、自治体が徴収する、地方税だが、均等割分は定額だが、所得割については、そのまま、税収源となる、
国民案を、実行すると、納税する側からみると、所得税、地方税とも、壁までは税が掛からないため、手取りが増えることとなる。
一方、徴収する側からみると、所得税、地方税とも、減収となり、大きな問題となる。
3党は、103万円の壁を、2年後までに見直す事で合意していて、具体的な話し合いが始まっているようで、国会での論議を含めて、注目していく必要がある。
ここで、論議の行方を見ていく上で参考になりそうな、下記の2つの記事を引用したい。
(参照:103万円の壁対策で地方の税収減への対応が焦点に|2024年 _ 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight _ 野村総合研究所(NRI).html)
これは、与党の一部にも出ている案のようで、所得税と地方税を分離し、壁の見直しは、所得税に限定するという考えという。こうすると、国民民主党も賛成せざるを得ないとみているようだ。
(参照;「財源がない」は本当か~「103万円の壁」引き上げを巡って~ _ニッセイ基礎研究所.html)
このサイトのタイトルの表現は、逆説的で、財源がないことを理由に、必要な政策を諦めるべきではない、としている。
このサイトでは、専門家が以下のように述べている。
「政策を導入するかどうかは、あくまでその政策によって、経済が成長するか、国民生活が豊かになるかといった判断基準で決めるべきだ。その上で、新しい政策に比べて、優先度の低い支出の削減や、国債の発行によって、財源を確保すればよい」
と、述べている。