2014年5月1日(木) ソチ 五輪パラ輪 おまけ編
ソチオリンピック・パラリンピックについては、当ブログでは
・ソチオリンピック 1 (2014/2/28)
・ソチ 五輪 カーリング 1〜2(2014/3/5〜3/11)
・ソチ 五輪パラ輪 総集編 1〜5 (2014/3/29〜4/24)
と取り上げてきたところだが、最後に、おまけとして、ロシア語の話題で一連のシリーズを締めくくることとしたい。
○ 今回の、ソチ 五輪パラ輪では、ロシア語に接する機会が多く、とりわけ、ユニークな「キリル文字」を目にする機会が多かった。
テレビで見たのは、以下のようなものだ。
日本語 ロシア語 発音 英語表記
国名 ロシア россия rossija Russia
後述のように、旧ソ連の国名にも、CとPが多かった!
国名 日本 япония japonija Japan
珍しいяが2個と、п、н、иも入っている。
地名 ソチ сочи sochei Sochi
船名 平和 мир mir Peace
○キリル文字については、筆者は、これまでの長い間、ラテン文字と比べて、ユニークな変った文字が多いな、と思って来たのだが、この際、いい機会なので、簡単に調べてみることとした。
ロシア語は、スラブ系の言語で、ウクライナ語や、ベラルーシ語などと、近縁関係にあるようだ。ロシア語を母国語とする話者人口では、世界で1.6億人程で8位となるが、第二母国語の話者数等を含めた総数では、2.7億人程で、4位になるという。周知のように、国連では、公用語の一つになっている。(ネイティブスピーカーの数が多い言語の一覧 - Wikipedia)
ロシア語で使用されるのは、表音文字のキリル文字(露:Кириллица kirillitsa英: Cyrillic alphabet)である。キリル文字は、ギリシア文字、ラテン文字等をベースに、西暦860年頃に、ブルガリアのギリシャ正教会宣教師、キュリオス、メトディオス兄弟によって創案された、グラゴル文字が基になっていると言われ、正教会の布教活動とセットで、東欧やロシアに広まっていったという。(キリル文字 - Wikipedia)(キリル文字)
現在は、ロシア語、ウクライナ語などのスラブ系言語やその他で使われているようだが、旧ソ連時代、連邦傘下の各国に、ロシア語とキリル文字とが、広範に広まっていったのは、言うまでもない。
キリル文字は、使用している国による違いもあり、ロシア国内でも歴史的な変遷もあるようだが、以下は、現在のロシアのロシア語で使われる、キリル文字のアルファベットについて取りあげることとしたい。
○ 英語でお馴染のABCは、ラテン文字と呼ばれ、現在の欧米の言語文字の基本になっている訳だ。 ギリシャ文字から発展したと言われるラテン文字では、アルファベットは26文字で、活字体の大文字、小文字、と筆記体とがある。(ラテン文字 - Wikipedia)
キリル文字のアルファベットは33文字で、大文字、小文字と、筆記体があるようだ。ラテン文字の場合は、大文字と小文字とではかなり違いがあるが、キリル文字では、小文字は、大文字の字形をそのまま小さくしたものが殆どだ。下の翻字表でも分るように、大文字と小文字で字形が違うのは、
大文字 A Б Е Ё Ф
小文字 a б e ё ф
位である。
文字には名前があり、発音は、凡そ名前に近いもののようだが、正確には、LC翻字やIPAの音価で表示される。日本語での発音をカナ表示したものを含めて、ネットでの各情報を参考にして、筆者が纏めた表を以下に示す。(キリル文字翻字表)(ロシア語 - Wikipedia)(キリル文字 - Wikipedia)(国際音声記号の文字一覧 - Wikipedia) 等。
キリル文字翻字表
大文字
小文字
文字名
日本語
発音
グループ
LC翻字形
(ドイツ翻字)
音価
(IPA)
日本語
А
а
アー
a
a
ア
A
Б
б
ベー
b
b
ブ
A
В
в
ヴェー
v
v
ヴ
C
Г
г
ゲェー
g
g
グ
B
Д
д
デェー
d
d
ド
B
Е
е
イエー
e
je
ィエ
C
Ё
ё
ヨー
jo
ィヨ
C
Ж
ж
ジェー
zh (j)
ž ʐ
ジ
B
З
з
ゼェー
z
z
ズ
B
И
и
イー
i
i
イ
B
Й
й
イー・クラートコエ
j
ィ
C
К
к
カー
k
k
ク
A
Л
л
エル
l
l
ル
B
М
м
エム
m
m
ム
A
Н
н
エヌ
n
n
ヌ
C
О
о
オー
o
o
オ
A
П
п
ペー
p
p
プ
B
Р
р
エル
r
r
ル
C
С
с
エス
s
s
ス
C
Т
т
テー
t
t
ト
A
У
у
ウー
u
u
ウ
C
Ф
ф
エフ
f
f
フ
B
Х
х
ハー
kh (ch)
x
フ
C
Ц
ц
ツェー
c ts
ツ
B
Ч
ч
チェー
ch (tsch)
č t͡ɕ
チ
B
Ш
ш
シャー
sh (sch)
š ʂ
シ
B
Щ
щ
シシャー
shch
š č ɕ:
シシ
B
Ъ
ъ
(硬音記号)
トヴョールドウイズナーク
−
C
Ы
ы
ウィ
y
y ɨ
イ
C
Ь
ь
(軟音記号)
ミャーフキーズナーク
−
C
Э
э
エー
e
エ
B
Ю
ю
ユー
ju
ユ
B
Я
я
ヤー
ja
ヤ
C
○ロシア語を基本から覚えるのは諦める事として、文字として覚えるだけでも大変なことだが、ネットの情報を基に、トライして見た。
文字の、A〜Cのグループ分けは、以下のサイトに準じている。(ロシア文字とローマ字の対照表を覚えよう!(ソチ五輪に向けて) - それ、僕が図解します。)
グループA ラテン文字とほぼ同じか良く似ているもの 6文字
覚えるのに、何の問題も無い。
・ほぼ同じ
:А К М О Т
ア− ケー エム オー テー
A K M O T
・良く似ている
:Б ベー (拡大Б)Bの上部が無い
B
小文字の形бにも近く、硬音記号Ь、軟音記号Ъにも似ている。
グループB キリル文字に特有なもの 13文字
ギリシャ文字関連の6文字は、比較的覚えやすい。その他は、ややこしいが覚えるしかない。
:Г ゲー ギリシャ文字 Γ γ (ガンマ)→ ラテン文字のG
Д デー ギリシャ文字 Δ δ (デルタ)→ ラテン文字のD
Ж ジェー ラテン文字Kの面対象形? 昆虫に見える?
З ゼー 子音 Эに似て紛らわしい
Л エル Lの上下左右を逆にし、尻尾を付けたよう Пと似ている → ラテン文字のL
П ペー ギリシャ文字 Π π(パイ) Лと似ている → ラテン文字のP
Ф エフ ギリシャ文字 Φ φ(ファイ) → ラテン文字のF
Ц ツエー 拡大Ц ラテン文字のUに似ていて、右下に点が付いている
Ч チエー Уと、ラテン文字のYにも似ている
Ш シャ− ラテン文字のWに似ている
Щ シシャー 拡大Щ Шの右下に点が付いている
Э エー 母音 拡大Э ラテン文字のEの左右反転裏返しのよう Зに似ていて紛らわしい → ラテン文字のE
Ю ユー ハングル文字を回転したよう
グループC ラテン文字と似てるけど違うもの 13文字
ラテン文字と同じ字形だが、意味の全く異なるもので、最も厄介なグループだが、一旦覚えてしまえば、後は、こっちのもの
:В ヴエー ラテン文字のBではなく →ラテン文字のVの意
Е イエー ラテン文字のEではない(Эが、ラテン文字のE)
Ё ヨー Eの上にウムルラウト記号 拡大Ё
Н エン ラテン文字のHではなく →ラテン文字のNの意
Р エル ラテン文字のPではなく →ラテン文字のRの意
С エス ラテン文字のCではなく →ラテン文字のSの意
У ウー Чに似ている。 ラテン文字のYではなく →ラテン文字のUの意
Х ハー ラテン文字のXではなく →ラテン文字のHの意
ラテン文字には無い字形の文字 (グループBでもいい)
И イー ラテン文字Nの裏返しのよう 右上がり
Й イエー Иの上部に引出しの把手様の記号 拡大Й
Я ヤ− ラテン文字Rの裏返しのよう 最も気になる文字
この文字、ロシア語での第一人称(私 英語:I)のよう!
その他 (文字の用法が、よく分らないがーー)
Ъ Ьの上部にひげ Ьと紛らわしい бにやや似ている
Ы 2個で1字?
Ь Ъと紛らわしい бにやや似ている
以上のグループ分けを、上述のキリル文字翻字表の最右欄に示してある。
○キリル文字の具体的な使われ方を、国名、地名、人名、料理名や、日常会話などで調べて見た。
◇国名・地名
キリル文字 ラテン文字転写 英語表記(日本語)
Российская Федерация
rossijskaja federacija
ラスィーイスカヤ フィヂラーツィヤ
Russian Federation
現 ロシア連邦
Москва́ moskva Moscow(モスクワ)
СССР SSSR USSR
Союз soyuz Union of
Советских sovyetskikh Soviet
Социалистических Socialist
sotsialisticheskikh
Республик respublik Republics
旧 ソビエト社会主義共和国連邦
旧ソ連の略称は、ロシア語としては、
エス・エス・エス・エル
と発音するのが、正しかったのたが、当時の筆者は、ラテン文字式に
シー・シー・シー・ピー
と読んでいたものだ。キリル文字のCとPは、ラテン文字と字形は同じだが、用法が異なる、典型的なものの2つである。
◇人名
キリル文字 ラテン文字転写 英語表記
Владимир Путин Vladimir Putin Vladimir Putin(プーチン大統領)
Пётр Чайковский Pjotr Cheaikovskii Peter Tchaikovsky(作曲家チャイコフスキー)
Алексей Толстой Aleksjei Tolstoj Aleksey Tolstoy(作家トルストイ)
◇ 飲食物
キリル文字 発音・ラテン文字転写 日本語表記
водка vodka ウオッカ
борщ ボールシュチュ ボルシチ
чёрная икра チョールナヤ・イクラー キャビア(caviar仏) チョウザメの卵
пирожки pirozhki ピロシキ
◇日常会話
キリル文字 発音・ラテン文字転写 日本語表記
Да/Нет Da/Niet はい・いいえ
Здравствуйте Zdrastvuite 初対面の挨拶(朝昼晩)
Доброе утро Dobrae utra おはようございます
Добрый день ドーブルィ ジェーニ こんにちは
Спасибо Spasiba ありがとうございます
Спасибо большое スパシーバ バリショエ どうもありがとう
Простите./Извините. プラスチーチェ/イズヴィニーチェ すみません/ごめんなさい
Я тебя люблю. ヤー・チビャー・リュブリュー 私はあなたを愛します
До свидания. ダ スヴィダーニャ さようなら
Пока パカー じゃあね
「キリル文字余談」
先日、面白い発見をした。ソチオリンピック以降は、ロシア文字に関心を持っていた事もあって、寝床の枕カバーにしていたタオルに書かれた文字が、キリル文字に見えたのである。
タオルの表には、上左図のように
RAINBOW
と印刷されているのだが、たまたま、裏返しに使っていたので、上右図のように、
ШOBИIАЯ
となったのである。 身近な所で見つけた、Иと、Яには、やや、驚いた。
ただ、裏返しのBの文字は、キリル文字には無いので、Bのままだが、発音は、
shaviiaya
とでもなるのだろうか。
ついでに、自分の名前をキリル文字で表してみると、
АБЭ Масаюки
となりそうで、ユニークな文字、Б、Э с、ю、иが入るのが気に入った次第。
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