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トランプ政権の100日  2

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2017年4月23日(日)  トランプ大統領の100日  2

 

 

 トランプ大統領の100日シリーズの第2弾である。

前回は、

   ①閣僚等の体制整備

   ②日米首脳会談

について触れたが、今回は、

   ③入国規制問題 

について取り上げたい。

 

 

 中東からの移民等の入国を規制する大統領令が、大きな話題となっているが、入国規制問題に具体的に触れる前に、以下の2点について、筆者として、予備知識を習得した。

 

*大統領令とは

 アメリカの「大統領令」という用語は、余り聞いたことはなかったが、

     Executive Order 略称:EO 

と呼ばれ、大統領が、行政機関や軍に対して発出する、文字通りの行政命令のようだ。

 トランプ大統領になって、矢継ぎ早に、何通か発出されたことで、この言葉は、スッカリ、御馴染になっているが、就任後、全体で、どのようなものが、どのくらい出されているのかは、把握できていない。

歴代大統領でも、多い場合と少ない場合があるようだ。(大統領令/アメリカ歴代大統領研究ポータル )

EOを実行するのに、予算措置が必要な場合は、言うまでもなく、議会の承認が必須となる。

 

  日本では、首相の意向は、議会での審議の場などで、「○○を指示した」などと伝えられるが、大統領令に該当するものは、余り聞かないところだ。

アメリカの場合は、会議等での意見表明に加えて、大統領としての意思表示を権威づける手段として、大統領令がある、とも言える。

 

*アメリカの司法制度 

 州の独立性が強いアメリカでは、州毎に、州法を定めて、議会、政府、裁判所や、軍隊があるようだ。

一方、アメリカ全体としては、合衆国憲法のもと、連邦議会、連邦政府(大統領)、連邦裁判所があり、軍隊も保有している。

 今回話題となる連邦裁判所は、日本と同様、3レベルになっていて、連邦地域裁判所(地裁:各州に、1~4あり、全国で89 他に、DCとグアム)、連邦控訴裁判所(高裁:12 DCと、50州を、下図の11の巡回区に分けて管轄)、連邦最高裁判所(最高裁:1 ワシントンDC)があるようだ。(アメリカ合衆国の司法制度 - Wikipedia

   

 連邦控訴裁判所の所在地は、以下である。#の次の数字は、巡回区番号

    ワシントンDC、#1ボストン、#2ニューヨーク、#3フィラデルフィア、

    #4リッチモンド、#5ニューオーリンズ、#6シンシナティ、#7シカゴ、

    #8セントルイス、#9サンフランシスコ、#10デンバー、#11アトランタ 

 

◇ 中東からの入国を規制する大統領令(旧)

 政権発足後間もなくの1月27日、トランプ大統領は、欧州などで頻発しているテロから、国を守るという名目の大統領令(第13769号)を発出した。これは、39もある選挙公約の一つと言われた。

大統領令の内容は、テロリストの潜入が疑われる、以下の中東7カ国

   シリア、イラク、イラン、リビア、ソマリア、スーダン、イエメン

からの一般市民の入国を、90日間、禁止するというもの。又、すべての国からの難民の受け入れは、120日間凍結するが、シリア難民は、無期限としたようだ。

アメリカの永住権を持つ人や、ビザを所有している人まで、空港で足止めされたことで、世界中で大混乱となった。

 

 この大統領令に対して、各方面から反対の意思表示があり、多くの訴訟が提起されたようだ。流石に、訴訟が日常茶飯事と言われる国だけのことはある。

その中で、イスラム教徒への差別だ、などとして、ワシントン州の司法長官が原告となって、シアトル連邦地裁に提訴し、2月3日、連邦地裁が、大統領令を差し止める、仮処分を言い渡したというニュースが流れた。

 地裁の判決を不満として、トランプ政権は、サンフランシスコ連邦高裁(#9)に控訴したが、2月9日、高裁は地裁の判決を支持したようだ。このときの判事は、3人だったようだ。これで、政権側の敗北と言う形で、ひとまず、混乱は収まった。

 

 ◇中東からの入国を規制する大統領令(新)

 後に引けないトランプ政権は、3月6日に、上項の大統領令(旧)の一部を修正した、新たな大統領令を発出した。主な変更点は以下という。

  ・イラクを対象国から外す

  ・アメリカの永住権を持つ人や、ビザを所有している人は対象外

  ・シリア難民受け入れは、無期限禁止から90日に緩和

新大統領令の発表は、トランプ大統領は欠席し、以下の関係3閣僚が行った。

   ティラーソン国務長官、セッションズ司法長官、ケリー国土安全保障長官

この新たな大統領令に対しても、またもや、反対表明と訴訟が起こり、メリーランドとハワイ連邦地裁で、イスラム教徒への差別などとして、新大統領令を差し止める仮処分の判決が出た。

 この連邦地裁の判決を不満として、政権がリッチモンド連邦高裁(#4)に控訴したが、この5月9日に、10数人の判事による大法廷形式で審理を開始するという事が、先日の4月14日、発表された。果たして、どのような判決が出されるか、注目される。

同じように、ハワイ連邦地裁の判決を不満として政権側が上訴し、こちらも、サンフランシスコ連邦高裁(#9)で、5月15日に審理が始まるようだ。

 

 テロの脅威から国を守る、という趣旨には、大方の人は、異論なく賛成するだろうが、アメリカの永住権を持つ人や、ビザを所有している人は対象外にしたのは、当然だが、テロリストの入国を規制する場合、どのように判別するかが難しいところだ。 

旧、新大統領令とも、原文は見ていないが、イラクの扱いがどのように変わったのか、シリアなどからの難民の受け入れもどのように変わったのだろうか。

 建国以来、自由を掲げ、移民を基本にして発展してきたアメリカだけに、今回の大統領令の行方がどうなるかは、今後のアメリカにとって、大きな岐路になるかも知れない。

 

◇専門職就労ビザの審査厳格化の大統領令 

 高度な専門技能を持つ外国人向けの査証(ビザ)H1Bの発給に関し、申請手続きを優先処理する「特急審査」を、4月から、最大6ヶ月間停止する措置を発表しているようだ。そして、高度な学歴を必要としない初級レベルのプログラマーは、ビザ発給の対象外とすることで、動いている。このビザの発給枠は、年間8万5000件と言われ、IT業界にはかなりの影響がでるようだ。

このような大統領令を、この4月19日、発出したようだ。 (米政府、専門職ビザの審査厳格化 IT業界に影響も  :日本経済新聞 )

外国の安い労働力によって、アメリカ人の雇用が奪われることなく、アメリカ人の雇用を優先するという考えである。 

 

◇不法移民を追放する大統領令

 アメリカは、建国以来、移民によって成り立ってきた国だが、移民の数は、正規の移民が2013年で、4130万人ほどのようだ。そして、不法移民は、2014年で、1300万人(3.5%)と言われる。(アメリカ社会の深刻な不法移民問題 | Listn.me  等)

  不法移民は、国境を越えて侵入したり、ビザの期限が過ぎても、居残るケースなどだ。

メキシコとの国境にある壁を、更に増設する、と選挙期間中から、トランプ大統領は息巻いている。

 

 オバマ政権時代は、一部に限って、不法移民を認める大統領令を出したようだが、トランプ政権になって、これを否定し、不法移民を積極的・強制的に国外に追放する大統領令をこの1月27日に出したようだ。

これに対して、政策に反対する勢力と、支持する勢力とで、いろんな動きがあるようだ。

最も影響を受ける不法移民当事者の動揺は大きく、彼らの供給元である隣国のメキシコ政府や中南米諸国の政府も躍起だ。

 彼らは、低賃金ながら、アメリカ経済の底辺を支えている実態がある。農場・造園業・建設業等の現場労働、食品加工などの工場労働,レストランなどのサービス業などでの作業労働などだ。 これ等の労働者を強制送還してしまえば、アメリカ経済は成り立たなくなるだろうか。

 

 不法移民である親が、強制的に本国に送還されると、残された子供たちは、どうやって生きていくのだろうか。

 アメリカでは、国内で生まれた子は、アメリカの国籍を取得できる道があるようだが、正式な出生届がされていない子供たちには、大人になった段階で、社会生活上の支障が出てくる。

 

 アメリカには、ワシントン、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスなどの大都市を中心に、「サンクチュアリ・シティ」を宣言している地域があるという。ここでは、不法移民であっても、人権が保護されるようだ。バード・サンクチュアリなどが連想される。

不法移民をめぐって、トランプ政権とこれらの地域の行政当局が、対立関係になりつつあるといわれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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