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小池都知事ー豊洲移転の決断

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2017年4月12(水)  小池都知事―豊洲移転の決断

 

 

  昨年7月末の東京都知事選で、新たに、小池都知事が誕生して、まだ、8か月程だが、次々と身近な話題が生じていて、都民の一人でもある筆者にとっては、目が離せないところだ。

当ブログでは、これまで、新都知事に関して以下のように取り上げてきているが、最近は、特にテンポが速く、フォローできていない状況だ。

    新東京都知事         (2016/9/6)

    新東京都知事    その後(2016/9/30)

    新東京都知事   続その後(2016/10/16)

    新東京都知事  続々その後(2016/11/3)

 

 報道では、これまで、築地市場の豊洲移転に関連する話題や、オリンピックの会場に関するものが、多かったのたが、最近では、この夏の、都議選をめぐるニュースも、熱を帯びている。

 今回は、とりあえず、豊洲移転問題の大まかな経過と最近の状況について取り上げ、一区切りとしたい。

 

○ 移転時期の延期

 周知のように、新装なった豊洲新市場へは、昨年11月15日に移転することとなっていた。

これに対して、小池知事は、就任後の昨年8月、移転の延期を発表した。理由は、

    ・地下水などの安全性への懸念

     この1月に、地下水モニタリング調査の最終9回目の結果が出るので、それを見てから移転の可否を判断する

    ・6000億円と大幅に膨れ上がった整備費の検証

      ・耐震性などについての事業者に対する情報公開の不足

等と言われた。

 

○盛り土無し/地下空間ありが発覚

 移転延期を決めた後、建物を新築した豊洲の土地に、本来あるべき「盛り土」がなされていないことが発覚した。また、建物の地下部分に、図面にはない大きな空間があり、そこに、地下層から染み出したとみられる、かなりの水(汚染水?)が溜まっていることも判明した。

このように、これまで公表されていた情報と、土地建物の実態が食い違っている事が分かり、大問題となった。

盛り土がなされていなかったことから、都の環境局が以前に行った環境アセスメントのやり直しも必要となり、かなり、時間がかかると言われた。 

 これらから、安全性確保の前提が崩れたとして、汚染対策や建物の耐震性等を改めて検証し、報告書を纏めたうえで、この夏ごろに判断することとなった。

 

 盛り土なし/地下空間ありの問題には、二つの側面があるだろうか。

    ①安全性の問題

     盛り土が無くても、コンクリート被覆があるから問題はないのか?

     環境アセスメントのやり直しが必要とされたが、その後どうなったのか?

     地下空間に溜まっていた水は、現在はどうなのか? 

   ②事実と異なる報告等の問題 

     地下空間の存在⇒独善的な縦割りの仕事の進め方(連携がない)

     盛り土なしで実行⇒工期短縮で経費節減?

                  業者とつるんだごまかし? 

     事実と異なる表示や報告 ⇒ガバナンスの欠如

 

○地下水モニタリング最終結果にびっくり!

 この1月の第9回目の調査は、201箇所で行われたが、約3分の1に当たる、72箇所から、

   ・最大で環境基準の79倍のベンゼンを検出

   ・検出されてはならないシアンを検出

2014年から8回にわたって行ってきたモニタリング調査では、ほぼ、問題がなかったのに、最終回で、、とんでもなく悪い値が検出される結果となり、またもや大騒ぎとなった。 

 急遽、調査する主体や調査方法(4機関で並行)を変えて、1か月程を掛けて、再調査が行われた。そして、この3月下旬に、再調査結果が公表された。

再調査は、27箇所で行われたが、結果は下記のように、9回目よりも悪く、環境基準を超える有害物質がみつかったようだ。

  ・環境基準の最大100倍の ベンゼンを検出  25か所

  ・検出されてはならない シアン を検出  18か所

  ・検出されてはならない ヒ素 を検出  5か所 

この結果について、自身も再調査に加わった、専門家会議の平田健正座長は

  ・土壌中に有害物質が残っている可能性

  ・地下水をくみ上げるシステムが最近稼働しているため、汚染された地下水が広がった可能性

があると述べたようだ。そして、

  「汚染土壌に人が接触したり、地下水を飲んだりするリスクは無いため、法律的、科学的には安全である」

と断言したようだ。これは、筆者には、大きな驚きであった。

 (本項は、「豊洲か築地か 移転はどうする?」(時論公論) | 時論公論 | NHK 解説委員室 | 解説アーカイブス 等を参照)

 

○都議会百条委員会

 一方、都議会でも、豊洲にあった東京ガスの工場跡地を取得し、そこに、新市場を移転することに決定した経緯をめぐって、都議会内に、百条委員会が設置され、当時の関係者や責任者の証言が聴取された。詳細は略すが、汚染物質の除去や瑕疵担保責任等が論議されたが、結局、新たな事実は見つからなかったようだ。

 

○現築地市場の改修案

 豊洲新市場の問題で、もたもたしている一方で、急遽、都のプロジェクトチーム(小島敏郎座長)が、現市場の業務を中断せずに、施設を改修する案を検討し、最近、市場関係者に説明された様だが、大変な反発があったという。

筆者としては、改修案の内容を調べる意欲も湧かないところだ。 

 

 以上述べてきた各事案について、筆者としては、時間的な前後関係、事案相互の関連、出てきた問題等のその後の措置等については、十分把握してはいないのだが、いくつかの率直な疑問や意見を以下に述べて、この問題を締めくくることとしたい。 

イ、昨年の都知事選の時に、小池候補は、豊洲移転をどのように捉え、いくつかの問題があるという情報を把握していたのだろうか。安全性に関し、盛り土がされていない問題、土壌汚染がかなり残っている等を知っていたとは思えないがーー。 

前述のように、知事は、移転延期を判断するにあたって、

 ・安全性については、最終結果を見ないで、それより早く移転時期を決めていたのはおかしい。最終回の結果をみてから判断すべきだ。

と、常識的に分かりやすい論理に従ったのだと思われる。むしろ、安全性以外の

 ・整備費が巨大になってしまった状況の精査、

 ・建物の耐震性等に対する事業者への説明

等を意図したようにも思える。 都知事選でも、これらを取り上げていたのだろうか。

 

ロ、地下水モニタリングの意義

 上述のように、9回目の最終調査結果が、予想に反して、基準を超える異常値となり、再調査が行われたが、この結果も、やはり異常値であったようだ。

この結果に対する専門家会議の平田座長の発言は、上述の通りで、マスコミでも報道された。筆者の率直な印象は、土壇場で、“梯子を外された”という思いである。

  法律的、科学的に、どのような状況を「安全」と言うのかは、筆者は、よくは知らないのだが、土壌汚染による人の健康被害の防止を目的に制定された、根拠となる「土壌汚染対策法」(平成14年5月 法律第53号 略称:土対法)では、

   人が汚染された土に触れたり、汚染された水を飲んだりしない対策が必要

とされ、これを充たしていれば、「安全」ということのようだ。

 豊洲新市場では、盛り土の有無にかかわらず、地表はコンクリートで覆われ、地下水を業務用としては使用しないことから、法的には安全であるという。平田座長は、開き直ったように、明言しているのである。

 それならば、もっともっと早い時期に、専門家会議として、盛り土がされていなくても、地下水に環境基準を超える有害物質が検出されても、安全性に問題は無い、と、発言出来なかったのだろうか。

 

 これまで、地下水のモニタリング調査を行って来たのは、消費者に「安心」して貰うための、いわば、上積み対策(おまけ策?)というのだろうか。土対法では、対策終了後も、地下水を定期的にチェックすることとされているがーー。最近のマスコミの報道のトーンも、やや、変わってきたようだ。

 小池新知事は、選挙戦の時期から、モニタリング調査のこのような位置づけと意義を承知の上で、最終結果がでてから判断したい、としていたのかも知れない。悪い値が出ることは、勿論、想定外だったろうが! 

 

 平田座長は、法的だけでなく、科学的にも安全としているが、後者はどういう意味だろうか?

地下水の汲み上げ禁止や、上水道との区分は、明確なのだろうか。

筆者には、東京湾周辺で巨大地震が生起した場合の安全性が気になるところである。地震で、地下に埋設された汚染物質や地下水が、地表に出てくる事態になれば、安全性はどうだろうか。

心配すればきりがないと言われそうだがーーー。

 

ハ 石原元知事の発言

 百条委員会での証言で、石原元知事は、“小池知事は、安全と安心を混同している”と批判し、専門家も安全と言っているのだから、(豊洲移転を決めた当事者としては当然ながら、)早期に移転すべきだ、と述べた。

また、“風評被害を恐れるのは、近代国家として恥ずかしい事だ”とも述べている。

 

 安全と安心については、前項ロで触れたところだ。

 一方、風評被害についてだが、原発事故での放射能汚染問題にみるように、現実には、国内外からの風評被害は厳然としてあり、「根拠のないただの風評だ」と言い切るには、膨大なデータや検証が必要とされ、一定の時間の経過も必須だろう。

 板子一枚の船底の下は、底なしの海という環境で働く海の男の心意気は演歌になる。が、魚市場の建物が建つコンクリートの下には、ある程度の汚染物質が残っている一方、汚染されている地下水は利用しないから安全だ、というのは、庶民感覚的には、引っかかるものがあるのは自然だろう。

 

ニ、最終判断の時

 都知事としては、「市場の在り方戦略本部」を、俄かに設置して、市場問題の決着を図りたいようだ。ここで論議した上で、市場の今後の方向付けを行うようで、先日の4/3に、第1回が開催されている。(市場のあり方戦略本部(第1回)の開催について|プレス発表|東京都中央卸売市場

この組織は。決断する知事の負担を減らす狙いだろうが、屋上屋を重ねる回りくどい印象もある。

    

 この夏の7月2日には、都議選が行われる。市場移転問題は、都議選の争点にはしない/ならない、と言われるが、最終判断が行われるのは、選挙前か、選挙後か、不透明である。でも、筆者には、後者になりそうな予感がある。

 昨秋に移転を延期して以降、現在まで、一日500万円とも言われる豊洲新設備の維持費がかかり、移転を見込んで準備していた事業者への補償も必要だ。

 

 今は、じっくり検討を行っている状況ではなく、速やかに方向付けすべき時である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 


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