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川内原発の仮処分請求の棄却

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2016年4月13日(水)  川内原発の仮処分請求の棄却

 

 

 先月、大津地裁が、再稼働間もない高浜原発3、4号機に対して、住民の運転差し止めの仮処分請求を認めたため、関電は、稼働を停止しているところで、以下のブログ記事でも取り上げている。

      高浜原発の運転差し止め  (2016/3/16)

  そして、今度は、大震災後に唯一再稼働していた川内原発1、2号機に対する、運転差し止めの仮処分請求に対して、この4月6日に、福岡高裁(宮崎支部)の判断が示された。

その結果は、住民側の請求を棄却する、というものであった。 

 

○ 判決内容の詳細は把握していないが、報道によれば、西川裁判長は、原発の安全性について、「社会通念を基準として判断する他は無い」と指摘した上で、「住民が主張する絶対的な安全性の確保は、社会通念とはいえず、福島第一原発事故を教訓に策定された原子力規制委員会の新規制基準に、不合理な点はない」と述べたとある。 

 また、火山による危険性は、「噴火の時期や規模を的確に予測できるとの規制委の前提は不合理」としたものの、破局的噴火のリスクは極めて低く、「原発立地が不適切とは言えない」としたようだ。(川内、差し止め認めず 福岡高裁支部 稼働原発ゼロ回避 (産経新聞) - Yahoo!ニュース など)

  自然現象である地震や噴火の、生起の時期や大きさを的確に予測することは難しく、外れるリスクは伴うもので、判決にあるように、絶対的な安全性はないと言える。

ただ、福島第一原発事故の時のような巨大地震が、どの場所にでも起こる訳ではない。例えば、四国南岸では、南海トラフで想定される巨大地震が起ると、福島を越えるこれまでにない巨大な津波が押し寄せると言われるように、立地位置が極めて重要となる。

川内原発の事案では、当然ながら、周辺での地震や火山噴火のリスクを予測している。

 

 そして、これらの自然災害に対する人為的な対策については、リーゾナブルな範囲でいかに実現するかが重要で、万全を期すことは不可能で、極めて低い確率で、リスクがあるのは仕方が無いことだ。

福島事故の経験から、新規制基準では、重要施設の津波被害対策については、抜本的に見直され、SBO(施設全停電)等を想定した、防災対策と、減災対策が取り入れられていることは、これまで、幾つかの記事で触れてきたところである。 

 今回の高裁の判断は、物事を冷静に見ていると評価でき、感覚的な原発反対や、原発に対する一般的な不安を払拭する効果が期待できるだろうか。

 

 

○  しかし、原告弁護団側は、「政府の原発稼働推進政策に追随するもので到底認めることは出来ない」との姿勢だが、これを最高裁まで抗告することは、止めたと言う。

その理由は、仮処分に関する最高裁への抗告は、憲法解釈の誤りなどがある場合に限られている事で、門前払いになる可能性が高いためという。

   一方、最高裁で抗告が棄却された場合、各地の裁判官が誤った前例にしてしまう可能性もある、ということで止めたという。

元々は、川内原発の再稼働を巡っては、約2600人の地域住民が、九電を相手に、鹿児島地裁で係争中の、正式裁判があるようで、こちらの判決はまだ出ていないようだ。今回の仮処分申請は、この中の一部(12人)の住民が事を急いで提起していた案件のようだ。

<川内原発>住民側弁護団、特別抗告せず 抗告棄却決定で (毎日新聞) - Yahoo!ニュース 他)

 

 

○ 高浜原発の事案といい、川内原発の事案と言い、仮処分という、扱いやすい手段を使った案件だが、原告側には、新たな規制委員会も、原発事故以前と同じく、政府や事業者の肩をもつ、御用組織のように思われているようだ。

筆者には、課題に、まともに、冷静に向き合っていない姿勢に見えて仕方がなく、何故か、虚しい争いに思える。

  先月、3・11から、節目の5周年を迎えたのだが、未曾有の福島第一原発事故を経験しただけに、原発事故の恐ろしさは誰しも思う事で、人知では、未だに、十分にコントロール出来ておらず、安全・安心とは言い切れない原子力エネルギーを、出来れば、使いたくないのが本音だ。 

でも、我が国の置かれた環境等から、言わば必要悪として、少なくとも当面は、利用して行かねばならないだろうか。

  国内のエネルギー政策と原発の方向、原発事故処理の見通し等については、我が国の国論は定まらず、未だに、多くの問題・課題を残したまま具体化が進んでいない状況である。

 

 

 

 


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