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日本スペイン交流400周年  5

2013年7月11日(木) 日本スペイン交流400周年  5 

 

 

 江戸初期に、スペインとローマに慶長遣欧使節が派遣されて、今年が、丁度400年の記念の年に当たると言うことで、当ブログでは、下記記事 

  日本スペイン交流400周年  1 (2013/6/26)

以降、2、3、4と続けて投稿して来た。

 これらの中で、慶長遣欧使節に関連する話題、スペインの大まかな歴史、スペインの現状についての概況と文化的側面、多言語国家と国際公用語、等について取り上げてきている。

 スペインシリーズの続編となる本稿では、ユニークな世界遺産での、スペイン巡りをして見た。

 

 

 先日、富士山が、世界文化遺産として、日本として17番目に登録されたことで、日本国内のムードは盛り上がっているところだ。

スペインは、現時点で、44件もの世界遺産をもつ、フランスに次いで、世界第2位の遺産大国だ。国内には、トレド コルドバ グラナダ等の、歴史的な古都が多く、日本の奈良、京都の仏閣と同様の教会の建物や、ローマ時代の古い遺跡等も多く登録されている。

 前々回で触れたが、バルセロナのサグラダ・ファミリア教会は、建設途上だが、既に遺産として登録されている(行ってみたい所の一つである)。

 

 本稿では、上記の様な通常の遺産ではなく、ややユニークな世界遺産の幾つかについて、現地に行った気分になって、触れることとしたい。

 

 

◎サンチアゴ・デ・コンポステーラ

 スペイン北西部のガリシア州に、キリスト教の聖地 サンチアゴ・デ・コンポステーラ(Santiago de Compostela)があり、その地に向けて、広大な南欧一帯から通じている巡礼路がある。

 この、サンチアゴ・デ・コンポステーラは、エルサレム、ローマ(バチカン)と並ぶ、キリスト教の世界3三大巡礼地と言われ、キリスト教の大司教座が置かれている。スペイン北部に、このような聖地があることは、これまで、殆ど知らなかったと言ってよい。

 ここが聖地と言われる由縁は、この地に、キリスト12使徒の一人である、聖ヤコブが、降り立ったと言い伝えられていて、そのために、9世紀頃に建設されたという大聖堂には、聖ヤコブの遺骸が残されているという。

長年に亘って、イベリア半島の南部がイスラム教勢力に征服・支配されたが、この大聖堂は、これに抗する、キリスト教勢力の反攻(レ・コンキスタ)の拠点として、シンボル的な存在でもあったようだ。

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  サンチアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂  

 サンチアゴ・デ・コンポステーラの関連では、世界遺産登録は、以下のように、3度に分けて行われている。

1回目で、大聖堂を含んだ「サンチアゴ・デ・コンポステーラの旧市街」が、文化遺産として、1986年に登録されている。そして2回目が、「サンチアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」(文化遺産 1993年登録)である。この登録は、フランスとの共同ではなく、スペイン単独のようだが、構成資産である巡礼路には、何処まで含まれるのだろうか。

 そして同様の主旨で、3回目は、フランス国内の巡礼路について、スペインとは別件(理由は不明だが)で、1998年に登録されている。(フランスのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路 - Wikipedia

 

 少しく、言葉から調べてみた。まず、サンチアゴ(Santiago)とは、キリスト12使徒の一人である、聖ヤコブに因んだ人名・地名のようで、そうとは知らなかったが、Santo Jacob⇒Satiago となるのかな? 

 世界各地に、こう呼ばれる地名は多いようだ。

   例: サンチアゴ(・デ・チリ)     チリの首都(これは、よく知っている)

      サンチアゴ・デ・キューバ   キューバの都市

      サンチアゴ・デル・エステロ  アルゼンチンの州都 

 次の、デ・コンポステーラ(de Compostela)だが、通常は、

      コンポステーラ の

の意で、一般的には、上記例のように、コンポステーラが地名となるのだが、ここでのコンポステーラは、一般的に、「星降る野」、「墓場」、「いい土地」(諸説あり)と言った意味で、独立した地名ではなく、サンチアゴ・デ・コンポステーラで、一つの地名のようだ。

この、サンチアゴ・デ・コンポステーラは、ガリシア州の、州都でもある。

    

 

 長い歴史の中で、下図のように、フランス、ドイツ、イタリヤ、スペイン等の南欧各地から、網の目のように、この聖地に通じる、巡礼路が出来ているようだ。 

 フランスで、4つの道(図の青色)に集約され、更に2本になって、2つの峠経由でピレネー山脈を越えてスペインに入る。スペイン国内で、最後に太い一本の道(図中の赤色 フランスの道と呼ばれる)に纏まって、サンチアゴ・デ・コンポステーラが終点となる。スペイン国内からの何本かの小さな巡礼路も、途中で、これに合流している。

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     巡礼路

  この聖地での、周年的な行事については未調査だが、今も、毎年、10万人もの信者が、巡礼に訪れるという賑わい振りの様だ。それも、スペイン国内からの巡礼者は多くなく、大半は、フランス等から、国境のピレネー山脈を越えて巡礼者が集まるようだ。 

          

 ネットを見ると、なんと、この巡礼路を歩く、日本からのツアーを募集している旅行社もあるようだ。

 比較的最近のことだが、この巡礼行の様子を、TVで見たことがある。田舎の町を発った一行が、トラックに乗ったり歩いたりしながら、何日もかけて聖地を目指すようだ。結構楽しそうな雰囲気で、こういう人達が今もいるのだ、と印象に残った次弟。

 巡礼路周辺には、色んな遺跡などもあるようだが、特に最後となるスペイン国内の巡礼路沿いには、多くの教会等の施設があり、巡礼者に対して、色々な支援が行われるようだ。無料の宿泊所が整備されていたり、食事も用意されるという。これらは巡礼を支える人々の、無償の奉仕で成り立っているようで、通行証の様なものも発行されると言う。

 徒歩によるスペイン横断は、イベリア半島内だけでも、数百kmの道程という、大変なもので、先ず、健康が第一だ。その上で、長い巡礼を続けることは、人々にとって信仰と向き合う貴重な時間となるのだろうか。

 

 似たような例では、世界的には、イスラムの聖地メッカへの巡礼が思い浮かぶ。同様に、規模は小さいが、日本で言えば、お伊勢詣り、が相当するだろうか。あるいは、江戸時代に盛んだった、富士講による富士登山もこれに匹敵するかもしれない。又、お遍路さんの四国八十八か所の霊場巡り等も、似ているだろうか。(巡礼 - Wikipedia) 

 

 日本では、「紀伊山地の霊場と参詣道」として、2004年に、神社や古道が、世界文化遺産に登録されている。

 スペインや日本の例のように、巡礼路や参詣道が、世界遺産として登録されるのは珍しいようだ。和歌山県とスペインガリシア州は、永続的な友好関係を確立するため、両古道の姉妹道提携を1998年に締結しているという。(サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路 - Wikipedia) 

 

 

◎ 人類の祖先が残した遺産

 スペインには、有史以前の、人類の祖先が残した世界遺産も多い。著名なのは、スペイン北部のカンタブリア州にある、世界文化遺産アルタミラ洞窟の壁画で、登録は1985年で、その後、拡張・改称されている。(アルタミラ洞窟 - Wikipedia

18000年〜10000年程前、先人の住んだ洞窟内に、野牛、イノシシ、ウマなどの、動物の絵が、生き生きと描かれていると言われ、130年も前に発見されたという。 

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            アルタミラ洞窟の壁画 (野牛?)                     洞窟内の見物風景 

 更に、地中海に面する地域には、世界文化遺産「イベリア半島の地中海沿岸の岩絵」がある。紀元前8000〜3500年ごろに、岸壁に描かれた絵のようだ。カタロニア州、バレンシア州などの、6つの州にまたがる、広大な地域にある岩絵は、700地点以上と言われる。登録されたのは、1998年である。(イベリア半島の地中海沿岸の岩絵 - Wikipedia) 

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  岩絵がある地域の広がり

 この地域の岩絵と、世界遺産に登録されている、他の案件の岩絵と比較すると、描かれている図像の小さいことが特徴で、狩猟採集社会から農耕社会への過渡的な時期に描かれた貴重な証言である、とされているようだ。

 その中にある下図は、バレンシア州の、アラーニャ洞窟にある岩絵のようで、左は鹿の様な動物が描かれた絵だ。 右は、女性が蜂蜜を集めている様子が描かれていて、この地域は今も養蜂業が盛んと言う。(NHK世界遺産 | 世界遺産ライブラリー  [イベリア半島地中海沿岸の岩絵])(スペイン・アラーニャ洞窟の岩絵|ミツバチと共に90年♪ 鈴木養蜂場 はちみつ家のブログ

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       動物(鹿のよう)            蜂蜜 集め  

 これらと同様の先史時代の岩絵が、北欧(ノルウエー、スエーデン)や、南欧(ポルトガル、イタリア)や、サハラ(リビア)等でも、発見されているようだ。 

 又、カスティーリャ・イ・レオン州の世界文化遺産「アタプエルカの考古遺跡」(2000年登録)の洞窟からは、数十万年程前の、人類の祖先の人骨が沢山掘り出されていると言う。


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