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スコットランドの行方   3

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2014年10月27日(月)  スコットランドの行方  3

 

 

 先月の18日に行われた、スコットランドの住民投票の話題をきっかけとして、当ブログで、下記記事

      スコットランドの行方  1 (2014/9/24)

      スコットランドの行方  2 (2014/9/26)

を投稿したが、あれから、暫く経過した。 

 日本でのスコッチウイスキー造りが話題の、NHK朝ドラ「マッサン」も、9月末から、始まった。ドラマの中では、日本でも良く知られている「麦畑」など、スコットランドの歌も出て来た。ウイスキーや、音楽や、衣装など、スコットランドの文化的な側面については、上述の(その2)で触れたところである。

 

 本稿では、スコットランドの今後と、独立や自由を求める世界の動きとともに、良く出て来る言葉について触れて、締めくくりとしたい。  

 

○ スコットランドの自治権拡大

 住民投票の後、スコットランド行政府のサモンド首相は、スコットランドの自治権を拡大するとした英政府の約束が速やかに実行されるよう求め、キャメロン英首相は、イギリス主要3政党の党首が合意した約束は「完全に履行される」と答えたという。

 この方向で、イギリス政府としては、新たな徴税権限や社会保障の支出などで、スコットランド議会の権限拡大を11月までに合意し、来年1月までに法制化する方針を明らかにしたようだ。

この所は、殆ど話題には上らない中で、目下、イギリス国内では、中央集権と地方分権のあり方が大きく見直されているのだろうが、それが順調にいくかどうか、約束事がどのように守られ、実現されるのか、に注目したい。

 「喉元過ぎれば熱さを忘れる」のが世の常だが、スコットランドともども、UK内の、ウエールズや北アイルランドも、熱く、成り行きを見守っているだろう。イギリスにとっては、国の形を問い直す重要な機会となるとともに、世界にとっての、新たなお手本が示されることとなるのだろうか。

 

 スコットランドでの住民投票は、他の地域の分離独立運動などに再び火をつけたようで、バルセロナを中心とするスペインのカタルーニャ自治州では、11月9日の住民投票実施を目指していたようだ(スコットランド独立否決とその後の展望 - ほそかわ・かずひこの BLOG 参照) 

でも、この住民投票は、スペイン政府の動きで、先月末になって、憲法裁判所から差し止め命令が出され、実質、中止になったようだ。(スペイン・カタルーニャ州、独立問う住民投票取りやめ | ワールド | Reuters

 ベルギー北部のフランドル地方でも、動きがあるという。

 

 

○ 世界の独立騒動

 世界各地で紛争は絶えないが、民族の独立を巡るものも多いようだ。民族の定義は難しいが、人種、言語、宗教、文化等を、地域的、歴史的に共有する集団と言えようか。

 長い歴史の中で、ある地域や国が、強国に征服・併合され、属国や植民地となることが繰り返されて来た訳で、その状態から脱して、独立・自立しようとする運動が起こるのは自然だ。独立運動は、民族を単位とするものが多いが、地域的な利害も絡むもの(油田、鉱物資源等)もあるようで複雑である。

 

◇現在、世界各地で繰り広げられている独立運動は、多種多様だが、以下は、その一部である。 (独立主張のある地域一覧 - Wikipedia 等)    

   イギリス(UK)  スコットランド、ウエールズ、北アイルランド

   スペイン      カタルーニャ州、バスク地方

   ベルギー      フランドル地方

   ウクライナ     クリミヤ自治共和国、東部2州(ドネツク、ルガンスク) 

   コーカサス地方   多数:以下のブログ記事

                    ウクライナ情勢の行方 その3 (2014/5/20)

   トルコ       クルド人地域

   中国        新疆ウイグル地区、香港地区、チベット自治区

 

 イギリスの植民地だった香港が、中国に返還されて、今年で17年になるようだが、香港地域として、或る程度の自治権は認められている(一国二制度を50年間維持)。

でも、じわじわと迫ってくる中国の動き対して、それを撥ねのけ、自由な首長選挙を求める学生と、行政府との対立が、現在進行形で続いている。

巨像の様な中国に立ち向かうアリのような香港、という紛争の構図だ。

 

 

◇先月の9月22日、国連で「先住民族世界会議」の分科会というのが開催され、世界の先住民族の代表等が集まったようだ。 先住民族といえば、北アメリカのインディアンや、 オーストラリアのマオリ族などが思い浮かぶが、スペインが進出する前の、中南米にも数多くの先住民がいた訳だ。

この会議には、日本からは、アイヌ民族の代表も出席したようだ。また、沖縄の代表は、琉球民族を、抑圧された先住民として認めるように主張したという。(「画期的」とアイヌ代表 先住民族世界会議に出席 - 産経ニュース 等)

  

 これらの民族は、日本の事例も含めて、歴史の中で、戦いに敗れて征服された民族で、大半は、全滅させられたのだろうが、先住民として現在も残っているのは、数少ない事例と言えるだろうか。

 

 過去にあった、独立を巡る動きについては、アメリカ独立戦争や、植民地からの各地の独立闘争など、数えあげれば切りがない。

やや、性格は異なるが、アラブに征服された国土を奪還する、欧州のレコンキスタ運動については、下記記事でふれている。

     日本スペイン交流400周年  2(2013/6/29)

 

 身近な所では、お隣の韓国では、日本の終戦の日(8/15)を、日本の支配から脱して独立した祖国解放記念日(光復節)としているようだ。

 

 

○ 用語と理念

ここで、良く出て来る関連の深い用語と、その意味(理念、概念)について、自分なりに、整理したい。  

 

◇以下の画像は、有名なフランス国旗(三色旗 トリコロール)だが、三色セットで、

    自由、平等、友愛(博愛)

という理念を象徴しているという。フランス国の現在の憲法では、この3つの理念が、国の「標語」として、規定されているという。 どの理念が、どの色に対応するかは決られていないようだ。

 

 王家の支配を脱して、自らの体制を打ち建てたフランス市民革命を期に、この旗が制定されたようで、当時の、

    青と赤=パリ市の紋章の色、白=王家の紋章の色

を三色合わせて、パリ市と王家との和解を表しているという。具体的な経緯など、詳細については省略したい。

 それぞれの色を、

    青=自由、白=平等、赤=友愛、

とし、個々に対応づけるのは俗説で、誤りのようだ。(125SUGAWARA  三色旗の色の意味.pdf フランスの国旗 - Wikipedia 等)

     フランス国旗(三色旗)             

 

◇人間の根源的な、基本的人権の理念は、三色旗にもある、以下の二つだろうか。 

自由

 英語では

  freedom ((from; of; to do)); liberty ((of doing; to do)) (▼libertyは選択の,freedomは束縛からの自由の意が強い)   プログレッシブ和英中辞典(第3版)

 フランス語では、liberté 

 自由の反対概念 ⇒ 束縛 圧迫 抑圧 拘束  (不自由)

 

平等

 英語では

  〔均等〕equality; 〔公平〕impartiality ⇒コラム「差別・人権」 平等の|equal; even 平等に|〔均等に〕equal  プログレッシブ和英中辞典(第3版) 

 フランス語では、eqalité 

 平等の反対概念  差別 (不平等 不均等 不公平) 

 

 これらの、自由、平等の理念は、世界的には、既に実現されている、と言いたいところだ。

でも、人種差別については、南アフリカでのアパルトヘイト等、明らさまな差別は、無くなったようだが、米国の黒人問題など、目に見えない形で、実質的な差別は、依然、根強く残っているようだ。

 一方、性差別については、我が国では、雇用機会均等法が施行されるなど、表向きの女子の雇用差別は無いようだが、セクハラや、マタハラは後を絶たず、伝統的な女性蔑視や、女人禁制など、根強いものがある。

 今年のノーベル平和賞を受賞した、パキスタンのマララさんに象徴されるように、女子教育差別があり、まだまだ発展途上で、日本でも、少し前の時代の女子教育について、一つ前の、NHK大河ドラマ「八重の桜」や、NHK朝ドラ「花子とアン」で話題になったばかりである。

女性のパワーを生かそうと言う現政権のスローガン自身が、我が国の後進国ぶりを如実に物語っているだろうか。   

 

◇前述の、自由と平等は、個々人をベースとした基本的関係だろう。 これが、集団・組織や、大きな地域、国相互の関係となると、多くの場合求められる理念、・価値観は、自由と平等をベースとした、「独立」だろうか。  

独立  

 日本語では   自立 一人立ち 自主独立 自治 脱依存 

 英語では

    〔自立〕independence ((from)) 独立の|independent 独立して|independently ((of)) 独立を宣言する  プログレッシブ和英中辞典(第3版)

 フランス語では

   independnce 、indepndant(アンデパンダン) 

 独立の反対概念 ⇒ 依存  従属  被支配  被征服

 

 

 個人のレベルから、国家のレベルまで、独立するまでは、独立というスローガンには、一種の麻薬のような、心地よい響きがある。

でも、独立はしたものの、その後、一人立ち(自立)し、それを維持していくのは、並大抵のものではないのも現実だ。

 

 独立か依存か、という、二者択一的で、ホモジーニアスな発想では無く、相互に独立を認め合いながら、協調、協力、連携、相互支援、助け合い、相互理解、といった、多様な価値観に基づく、ヘテロジーニアスな関係を作っていくことが、重要なのであろう。


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