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原発輸出と放射線医療

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2013年6月4日(火) 原発輸出と放射線医療 

 

 この所、福島第一原発事故の汚染水問題、東海村での放射能漏れ、原発敷地内の活断層問題など、関連する話題が相変わらず多く、当ブログでも、引き続き取り上げる積りだが、今回は、やや、異なる話題にしたい。

 

○先日、インドのシン首相が来日し、その中で、日印首脳間で、インドの高速鉄道計画に関する共同調査を行うことや、原子力協定交渉を再開することで合意されたという。

 この、原子力協定交渉は、2010年6月から始まっていたようだが、福島第一原発事故によって中断していたもので、交渉の再開にこぎつけたようだ。

安部政権は、原発などの社会基盤(インフラ)輸出を、成長戦略の柱に位置付けている。 昨日閉幕した、アフリカ開発会議(TICAD5)でも、これらを見据えたものだろう。

 我が国は、既に、

    米国・英国・フランス・カナダ・オーストラリア・中国・ロシア・カザフスタン

の二国間および、EUとの間で、原子力協定を締結しているようだ。

 この協定は、核関連技術の平和利用や、第三国への流出防止を約束するもので、締結すれば日本のインドへの原発輸出が可能となる。日本政府は、年内にも交渉をまとめ、来年1月には締結して、原発や関連機器の輸出につなげたい考えと言う。

 

 現在、インドには、原発基地が、6箇所あり、20基が稼働しているようだが、今後の増大が見込まれる国内の電力需要に対応するために、建設中の原発も含め、2020年までに、18基の建設を予定しているという。(世界の原子力発電所の一覧 - Wikipedia

日本での原発事故を受けて、インドでは、新規に建設した原発の稼働に対する、反対運動も起こっているようだ。

 インドの原発サイト

 

 世界唯一の、原爆被爆国であり、東日本大震災での深刻な原発事故と広範な放射能汚染の経験国として、国際的にみて、日本はどのような役割を果たすべきなのか。今後、原発にどう向き合うべきか、多様な意見のある所だ。

 国の今後のエネルギーを冷静に考えれば、感情的な原発反対ではなく、遅かれ早かれ、原発の再稼働は避けられないだろう。でも、国内の放射能汚染問題の解決や、廃炉処理の見通しは立たない中、原発の先行きは不透明である。 

 原発を進めたい政権や、関連する企業の論理としては、外国への輸出に、当面の活路を見出そうとしている、という見方もできよう。

 一方、今後の核融合技術等を見据えた時、ここまで培って来た核技術を、ここで捨ててしまうのでなく、どのように維持し高めていくか、という戦略的な課題もある。

 

 核拡散防止条約(NPT)に未加盟のインドとの協定締結を疑問視する声に配慮し、安部首相は、インド側に対し、核実験全面禁止条約(CTBT)の早期発効の重要性を強調し、署名・批准を促し、シン首相は、核実験凍結を継続する考えを示したとある。

 

 核保有国を、公然と認めるような、不平等極まりないNPTの存在自体は大きな問題ではある。 でも、核保有国を無くすことが困難な以上、これ以上の核の拡散は押さえて行こうと言う、この条約には、やむを得ない面もある。実質保有国と言われるインドは当然ながら未加盟で、そのインドと協定を締結しようとしていることを、疑問視する声があるのも当然だろう。

詳細は未調査だが、インドは、アメリカとも、原子力協定を締結しているようで、アメリカとしては、中国を牽制する意味もあろう。

 

 

○福島県浜通りが大津波に襲われた上、そこに所在する原発事故による放射能問題で、福島は二重の苦難の道を歩んでいる訳だが、原発事故をきっかけにした前向きと言える取り組みもあるようだ。

言うまでも無く福島第一原発の廃炉処理作業は、40年もかかると言われ、この期間、大変な作業が待っている。

 廃炉に向けての長い道のりの作業は、特に、事業者である東京電力や、原発行政に責任を果たさねばならない国としては、逃げる訳には行かない。これは、巨大なピンチであることには変わりはないのだが、又とないチャンスでもあると考えられる。

 一つは、廃炉に向けての各種技術の開発や、除染や農作物に関する技術開発である。例えば、強い放射能がある環境下で働けるロボットを開発したり、最近では、汚染水の原因となる地下水を凍結する対策等、数多くの方法が編み出されていくことだろう。これら、苦しい中で生み出される手法は、大変な財産にもなるだろう。

深刻な事故を経験したからこそ、日本の原発システムや管理技術は、世界で、最も安全なものとなる、と言いたい所だ。でも、汚染水問題で、廃炉処理の入り口にも立てていないという苛立ちもある。

 

○もう一つは、放射線医療関連だ。治療体制の確立と人材の育成である。

 大震災のあった年の11月には、県立福島医大は、原爆地である、広島大学、長崎大学で放射線医学の研究等にあたって来られた、神谷研二、山下俊一の両氏を招請し、新規講座の開設など、放射線医療体制の強化に取り組んでいるようだ。

 放射線に関する医療機関としては、

     初期被ばく医療機関

     二次被ばく医療機関

     三次被ばく医療機関

があり、最も高度な治療と研究を行う三次機関としては、現在は、東西で

     放射線医学総合研究所(放医研)  千葉県

     広島大学                  広島県

があるようだが、県立福島医大は、国内の3番目の機関を目指して、早急に、態勢を整備していくという。(3. 我が国の被ばく医療体制 - 緊急被ばく医療研修

       

 長い期間に亘って、廃炉処理や除染作業を行う福島第一原発のお膝元として、今後、予期せぬ被曝事故が起きる可能性は常にあり、それを克服しながら作業を進めて行く上で、福島医大は必要不可欠な医療機関であり、大いに拡充していって欲しいもので、いつの日か、世界から頼りにされる機関になることを夢見たいものである。

千葉に在る放射線医学総合研究所を、いわき市へ誘致しようという動きもあるようだ。 

 

 以前は、原発などを扱う原子核工学科が花形だった時代もあったが、原発事故を経験した現在はどうだろうか。また、放射線医学に使命を感じて、この方面に進もうと言う若い力はあるだろうか。

敢えて、火中の栗を拾うかのように、東京電力や福島医大に進みたいという人達がいる事を信じたいものである。


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