2022年7月16日(土) 核兵器禁止条約のこと
〇ウイーン会議
先だって、オーストリアのウイーンで、核兵器禁止条約*の、締約国会議が開催されたが、この会議は、コロナ禍の影響で、開催が、22年1月→22年3月→22年6月と、2度延期され、3度目の正直で、漸く、今回、6月21日から23日の間、開催された。
*TPNW: Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons
議長役は、オーストリア外務省 軍縮軍備管理局長 W.クメント氏が務めている。
W.クメント議長
参加数は不明だが、条約の署名国数が86、批准国数が66とされていることから、この中から関係者が参加していると思われる。
一方、加盟していないが、オブザーバとして参加している国が34もあるようで、関心の高さに驚かされるが、オブザーバの中には、NATOに加盟し、核の傘で守られている、ドイツ、ノルウエー、オランダ、ベルギーが含まれているのは、今後の日本の方向を考える上でも、注目される。
〇ウイーン宣言とウイーン行動計画の概要
会議の成果は、「ウイーン宣言」と、「ウイーン行動計画」としてまとめられている。
以下のサイトの記事から引用した。
(核兵器禁止条約 初の締約国会議「ウィーン宣言」など採択 _ NHK _ 核兵器禁止条約.html )
*ウイーン宣言
暗にロシアを意識しながら、核兵器使用の懸念が高まる中で、「核兵器を使用するという威嚇に憂慮し落胆している。いかなる核による威嚇も明確に非難する」として、核の使用や威嚇を行わないよう、強く求めている。
このうえで、「核兵器の存在はすべての国の安全とをわれわれの生存を脅かしている。核兵器は不名誉で正当性が無いという、国際規範を築く」と、訴えているようだ。
このように、「核なき世界」の実現に向けて、国際社会の行動を呼びかけている。
*ウイーン行動計画
50の項目から成り、
▽条約の締結国を増やすための取り組み
▽被爆者や核実験の被害者への支援や救済を進めること
などが盛り込まれているようだ。
さらに、核保有国に核軍縮の取り組みを課すNPT=核拡散防止条約との関係については、「禁止条約とNPTは補完し合う関係だ」として、「二つの条約の調整役」を任命するとしている。
次回の主管庁会議は、メキシコのようだが、時期は明確ではない。
〇核兵器禁止条約の締結
関係者の悲願であった、核兵器禁止条約(TPNW)は、2017年7月の国連総会で採択され、50か国の批准を得て、漸く、2021年1月に発効している。
106か国、607団体が加盟しているという。
このTPNWには、国連安保理の常任理事国5か国や、核の傘に守られている、日本や欧米諸国などは、加盟していない。
〇ICAN
この条約の締結に向けて活躍したのが、スイスのジュネーブに本部がある、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN**)で、2017年11月に、ノーベル平和賞を受賞している。
**International Campaign to Abolish Nuclear Weapons
また、核兵器廃絶に向けて、国際的に活躍したのが、サーロー節子氏で、流暢な英語で、御自身の被爆体験を語ったことが、条約の締結に向けて、極めて大きく貢献している。
氏は、1932年生まれで、13歳の時に、広島市内で被爆している。
ノーベル平和賞受賞を喜ぶサーロー節子さん(カナダ トロントの自宅で)
〇広島
今年のG7サミット会議は、議長国であるドイツのエルマウで開催されたが、席上で、来年の議長国を務める、日本の岸田首相は、被爆地である広島で開催することを表明し、了承されたようだ。
ウクライナでの原発の一時占領や、北朝鮮のミサイル発射のニュース等がある中、G7各国の首脳が、広島の被爆記念館や被爆者と対面して、どのような印象を持つだろうか。
2016年5月には、アメリカのオバマ大統領が広島を訪れている。