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大相撲の椿事   3

2017年1月13日(土)  大相撲の椿事  3 

 

 

 大相撲での、横綱春日富士の暴力事件の関連が、昨年末の大きな話題の一つで、12/28には、協会の臨時理事会があったが、一方で、1月14日から始まる初場所の番付が発表されるなど、慌ただしい動きの中で、決着が、新年に持ち越した形となった。

 本稿は、これまで、当ブログに投稿した、以下の記事の続編である。

     大相撲の椿事  1  (2017/12/17)

     大相撲の椿事  2  (2017/12/25) 

 

◇最近の動きの概況

(昨年末の状況)

   12/25 相撲協会による、貴乃花親方からの事情聴取(帝国ホテル)

   12/26 初場所の番付発表

          3横綱に(春日富士が抜け) 貴景勝が小結に昇進 

          秋場所全休の貴乃岩は十両3枚目

          (初場所も全休でも、次春場所の番付は、十両を保証する救済措置があるようだ)

   12/27  力士会(関取以上) 会長交代 春日富士→鶴竜

   12/28  臨時理事会 

          貴乃花理事に対する降格処分(役員待遇の委員に)

          貴乃花理事は拒否→臨時評議委員会(1/4)で審議 

          再発防止検討委員会を設置(6つの一門から委員、外部委員も入れる)

          貴乃花親方は、降格があっても、次の理事候補選には出られるという   

   12/29  加害者である春日富士を鳥取県警が略式起訴 

          簡易裁判の罰金刑(50万円)で処理され決着

 

(今年の状況)

     1/4   臨時評議委員会 

          貴乃花親方についての理事会の処分案を審議し、理事の降格処分が確定

           ・巡業部長として事件を報告しなかった違反

           ・貴の岩への協会の聴取に応じさせなかった違反

          前回理事会で本人から出ていた意見書は、読み上げられたようだ。  

          今後、裁判沙汰に発展することもあるかも。

   1/14~28 初場所 東京 両国国技館

 

◇ 今後の協会の体制の行方

・初場所終了後、直ちに、2年に一度の、理事候補選が行われる。理事定員は10名で、この理事選では、協会所属の親方(年寄)(100人程)に選挙権がある。

定員一杯の立候補であれば無投票、定員以上の立候補があれば選挙となる。後者の場合は、一波乱が予想される。

理事の互選で理事長が選出される。

 

*親方は、日本国籍が必要で、年寄名跡(めいせき 年寄株、親方株とも)を持つのが原則。名跡数は全部で105で、現役で名跡をもつ力士もおり、現在、空き名跡が5という。また、一代年寄という制度があり、これまでは、大鵬、北の湖があったが、現在は貴乃花だけである。

  

・一門と親方の状況

 大相撲には、一門というグループがある。一門は地方巡業連合体から始まったようで、以前は、地方巡業を行うのには金や人手がかかり、これをこなすために、相撲部屋が連携する必要があり、このための連合体として、一門が機能してきたようだ。

でも、現在は、地方巡業は、協会が実行(この責任者が貴乃花親方だった!)することとなっているので、この点での一門の必要性は消滅している。 現在の一門は 連合稽古としての交流や、理事選での派閥となっているようだ。

 

現在、一門は、以下の6門という。 ( )は、現役時の四股名

 名称       総帥               現役の最高位   部屋数 付親方数   現理事数

出羽海一門  出羽海(前頭 小城の花)  大関 豪栄道     11     21       4  

二所ノ関一門 二所ノ関(大関 若島津)  横綱 稀勢の里     9     11       2  

時津風一門    時津風(前頭 時津海)    横綱 鶴竜         8      8       1

高砂一門    高砂(大関 朝潮)       関脇 隠岐の海     5      7         1

伊勢ケ濱一門 伊勢ケ濱(横綱 旭富士) 横綱 白鵬         5      4       1

貴乃花一門   貴乃花(横綱 貴乃花)   小結 貴景勝      5      3        1

 

無所属                                              2      1

                                                     45     55       10

                     

  理事数は、一門ごとに割り振られてはいないが、部屋(師匠)数、部屋付親方数等から、慣例的な枠はあるようだ。

今回の事件後の一連の動きをみると、理事候補選では、一波乱がありそうだ。

  12/26に、時津風一門から離脱し、無所属となった以下3親方の動向が、話題となっている。

        錣山(寺尾)親方  立田川(豊真将)親方  湊(湊富士)親方

当人達は、理事候補選とは無関係と言っているが、貴乃花一門に同調するのではとも言われている。

 

 貴乃花親方の、事件後の一連の不可解な動きから、今後の理事選がどう展開するのか、気になるところで、マスコミの注目の的だ。が、ここで、これらについて、コメントすることは止めて、大相撲について、別の角度から、原点に立ち返って考えてみたい。

 ◎ 大相撲の現況 

◇相撲人気

 現代は、競技・スポーツも多様化したことや、相撲は、やるスポーツから見るスポーツになってきている傾向もあって、往時と比べると、学校等で相撲をやろうとする学生は多くなく、クラブ活動等も、特定の中学、高校や大学に集中しているだろうか。 

大学での相撲経験者が、大相撲に入って、横綱や大関になった力士も多い。

 

  野球と並んで、大相撲には、現在も、中・高齢者層を中心に、根強い人気があるだろうか。

年6場所の大相撲が始まると、筆者には、NHKの相撲中継を見る、捨てがたい楽しみがあり、時々、BS放送の、十両や幕下等の下位の取り組みを観る時もある。

  やや以前の仕事の現役の頃だが、取引先から東京や名古屋場所でのチケットを貰って、生で観戦したこともある。離れていて良く見えず、升席がかなり狭かった、という記憶がある。 

 

 大相撲では、昨年、久々に日本出身の、横綱稀勢の里や、大関高安が誕生したことで、人気も増すと期待されたが、最後の九州場所では、怪我等により相次いで二人が休場し、鶴竜も全休、春日富士も3日間の全敗後休場と散々で、白鵬の1人舞台のようになってしまった。

 でも、九州場所での阿武咲や貴景勝等の若手の活躍や、ベテラン安美錦の復活など、希望も見えている他、この初場所では、一頃人気のあった、わざ師の石浦や宇良の復活後の活躍も期待される。 先日のTVでの某コメンテーターによれば、十両から入幕する阿炎(あび)や、竜電も、大いに活躍するのではと言う。 

 

◇相撲の国際化

 伝統的なしきたりが色濃い大相撲だが、国際化という面でみると、力士の国籍が、大きく拡大してきているのは前進と言える。筆者はこれを、「力士の国際化」と呼ぶこととしたい。 大相撲で、外国人力士の受け入れが始まったのは、1960(昭和35)年頃からのようで、苦しい稽古だけでなく、食事や言葉など、日本の流儀に慣れるための当人の努力は並大抵のものではなく、受け入れる側の部屋の体制にも、一苦労があろうか。

  一頃は、ハワイ出身力士が多く、当時の高見山(現 東関親方)が、1972(昭和47)年に、外国人力士として初めて、幕内優勝を果たしている。これを契機に外国人力士が増え、これまで、ブルガリア、中国、ジョージア、ブラジルなど、国籍は20カ国以上に上るようだ。  外国人枠が設けられ、現在は、部屋当たり1人(Max45人)となっているようだ。 

 最近の力士の国際化状況は、大相撲力士全659人中、外国人は11カ国39人で、その内モンゴル出身が25人といわれ、モンゴル勢が圧倒しているのは周知のことだ。 巷間では、モンゴル勢が、相撲協会を牛耳ろうとしている、との噂も聞かれる。

 数は少ないが、外国出身の力士で日本国籍を取得して、現役引退後、親方になった人もいる。 東関(関脇高見山 ハワイ)、武蔵川(横綱武蔵丸 ハワイ)、鳴戸(大関琴欧州 ブルガリア)、友綱(関脇旭天鵬 モンゴル)だ。 残念な話だが、今回話題となった春日富士は、親方となるべく、日本国籍を申請中だったという!

 

 日本では、長い伝統がある大相撲は、武道の一つで、相撲道と言われる。他に、日本の武道には、柔道、剣道、弓道、空手道、合気道などがある。

この中で、競技の国際化としてみると、オリンピック種目として、

        柔道   1964年東京大会以降 

が行われていて、また、

        空手道  2020年東京大会から初めて

が進められているのは周知のことで、これまでの関係者の努力に対し、敬意を表したい。

 

  これらと比べると、大相撲の「競技の国際化」は、まだまだである。 国内では、大相撲を手本・ベースとして、アマチュア相撲(女子相撲も)が進められている。 また、国際的な組織である、国際相撲連盟もあり、オリンピックへの申請も試みられているようだが、以下のような障害もあるようだ。

   ・プロとしての大相撲力士が強すぎること

   ・裸で競技する事

   ・伝統的な神事と融合した競技である(女人禁制があることを含む)

 

 余談だが、蝋人形で名高い、ロンドンのマダムタッソー館に、横綱千代の富士の像があるようだが、国民栄誉賞に輝いた雄姿というより、回しを付けた裸姿の、物珍しさも手伝っているだろうか。 

      Image may be NSFW.
Clik here to view.
  千代の富士像

  

 大相撲の人気には、根強いものがあると見ているものの、今回の事件が大きく影を落としていて、先行きがよく見えず、組織の内紛等もあって、じわじわと、大相撲が衰退の一途を辿るのでは、との危機感がある。 

ここで出直し、日本の伝統文化に支えられたユニークな競技を、維持・再生して欲しいと思うのだ。 次稿以降で、大相撲の

     ・スポーツ競技としての特徴

     ・伝統文化としての側面

について取り上げ、最後に、筆者としての独断で、

     ・幾つかの提言

を述べることとしたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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