2017年9月17日(日) タバコの今―受動喫煙防止条例制定へ
このところ、喫煙・禁煙に関する話題が、ときどき耳に入るのだが、改めて、タバコに関する昨今の話題を、いくつかとりあげることとした。
○ 都の受動喫煙防止条例案
先日の9月8日、東京都の小池知事が、受動喫煙対策の都の条例案を発表した。10月6日まで、パブリックコメントを募り、その結果を踏まえて、今年度内に都議会に条例案を提出し、審議を進める計画だ。
都は、国の法制化を待ってはおれないということで、外国人が多く来訪する
・2019年のラグビーワールドカップ(2019.9.20~)
・2020年のオリンピック・パラリンピック(2020.7.24~、8.25~)
の開催自治体として、冒頭の東京スタジアムでのラグビー大会に間に合うように、条例を施行するとしている。
公表された資料は、
東京都受動喫煙防止条例(仮称)の基本的な考え方 (2017/9/8)
というもので、9ページに亘っているが、要点は、施設類型別に以下のようだ。
・未成年者や患者等が主に利用する施設
医療施設、小中高等学校、児童福祉施設 ⇒敷地内禁煙
・多数の人が利用し、かつ、他の施設では代替が難しい施設
官公庁、老人福祉施設、大学 ⇒屋内禁煙
・利用者側に他の施設を選択する機会があるものや、嗜好性の強い施設
ホテル、旅館 ⇒原則屋内禁煙(喫煙専用室設置可)
事業所(職場) ⇒ 〃
娯楽施設、百貨店、駅、空港ビル ⇒ 〃
飲食店* ⇒ 〃
*面積30㎡以下の特定のバー等は、禁煙対象外
・公共交通機関
バス、タクシー、航空機 ⇒車内禁煙(喫煙専用室設置 不可)
鉄道、船舶 ⇒原則車内禁煙(喫煙専用室設置可)
施設は、全面禁煙か、原則禁煙かに分かれ、前者では、喫煙専用室を設けることも不可としている。一方、後者では、喫煙専用室を設けることは可としている。仕切り等でエリアを分ける従来の「分煙」は、無くなるようだ。
違反した場合
喫煙者・施設管理者 5万円以下の罰金
国内では、神奈川県(H22 施行)や兵庫県(H25 施行)が、同趣旨の条例を制定している。これ等と比べて、今回の都の条例案は、どうなのだろうかーー。
○ 3つの禁煙案
国内では、禁煙をめぐる議論が続いてきて、厚生省案(H28.10)、自民党たばこ議連案(H29.4)に加え、先の都議選(H29・7)で、都民ファーストの会案が示された。これ等を対比したものが下図である。(ネット画像より)
都民ファーストの会案は厚生省案とほぼ同じだが、今回の東京都の条例案は、選挙公約として、ほぼそれを踏襲している。
自民党たばこ議連案は、厚生省案を骨抜きにして、規制を大幅に緩めたものになっている。
○五輪開催地・開催予定地の状況
最近の五輪開催地、今後の開催予定地の、受動喫煙対策の状況は以下のようだ。(ネット画像より) 小池都知事が言うように、日本の遅れが目立っているようだ。
○WHO幹部の訪日
東京オリンピックを前にして、この4月に、世界保健機構(WHO)のバー事務局次長と、ベッチャー生活習慣病予防部長が訪日し、記者会見している。
その時の発言では、受動喫煙対策についての日本の状況は、「時代遅れだ」とする極めて厳しいもので、抜本改善のための政府と関係筋の真剣な取り組みを求めている。
WHOによると、2014年時点で、世界49カ国が、屋内の公共の場所が全面禁煙となっているという。一方日本は、法律で喫煙を禁じている屋内の公共の場がなく、受動喫煙政策の普及状況を示したWHOの評価基準では、4段階中で最低ランクに位置付けられているようだ。 (「分煙では効果ない」 WHOが、日本に全面禁煙を勧める根拠とは 等より)
記者会見する ベッチャー生活習慣病予防部長
世界各国の受動喫煙対策については、次稿で取り上げる予定だ。