2016年5月2日(月) 電力事業を巡ってー小売の自由化
長期間、地域独占的に運営されて来た我が国の電力事業に、徐々に自由化の風穴が空けられ、この4月1日から、一般向けの小売の自由化がスタートして、ほぼ1カ月が経過している。
電力の供給網は、下図のようになっている。(電力供給の仕組み|電力小売全面自由化|資源エネルギー庁 より)
電力の自由化には、上のブロック図で、
①発電の自由化
②送配電の自由化
③小売の自由化
があるが、①の発電の自由化は、既に行われていて、太陽光発電等で、多くの事業会社が参入しているが、これらについては、次稿で取り上げる予定だ。
今回実施されたのは、③の小売に関する自由化だが、図に注記されているように、特別高圧・高圧の大口の消費者向けは、既に自由化されていて、今回は、一般消費者向けの、身近な、低圧電力の自由化である。これで、小売が全面自由化されることとなる。
一方、②の送配電については、新規に発電、小売に参入する事業者は、さしむきは、電力事業者の既設の送配電ネットワークを使えるようになっている。そして、2020年4月までに、現在の電力会社の組織を、発送電を分離する形に編成変えするのに合わせて、送配電の自由化を行う計画のようだ。
○参入する事業者
◇小売に参入する事業者としては、既存の電力会社は当然として、新規に参入している事業者は多様で、この4月18日現在で、登録事業者数は、286事業者に上るという。(新電力会社(PPS)とは|新電力PPSポータルサイト)
地域別の事業会社数とプラン数、代表的な会社など、主な状況は、下表の様だ。(ネット情報 より)
新規参入の小売事業者の元の事業分野は、多様だが、上表にある中では、以下のようだ。
再エネ発電から :イーレックス
エネルギ系から :東京ガス 北海道ガス 東邦ガス 大阪ガス 西部ガス
ENEOSでんき 昭和シェル石油
通信系から :auでんき ソフトバンクでんき J:COM eoでんき
商社系等から :丸紅新電力 スマ電 ナンワエナジー
サービス系から :HTBエナジー
◇卸と小売
通常の商品では、製造から小売に至る流通経路の中間に、「卸(おろし)」のステップがあるのが一般的だ(近年の、ネット販売等では、変化しているがーー)。
「電力」という、目に見えない商品にも、このステップがあり得るようで、発電会社から、大口で電力を仕入れ、小分けして小売りする事業形態で、上述の事業会社の多くが、これに該当するだろうか。
これらの事業者が、どの様な自前の設備(変電設備、発電設備、配電設備 等)を保有しているのかは、未調査であるが、特定送配電事業者も16社含まれているようだ。
○メリットとデメリット
一般利用者からみた、小売の自由化のメリット・デメリットは、通常、以下の様に言われている。(価格.com - 電力自由化のメリット・デメリット|電気料金比較 より)
*メリット
メリット1:電力会社が選べる自由化の原点。これで競争原理が働き、既存事業者も安閑とは出来ない。
メリット2:セット割引などプランの選択肢が増える消費者の利用形態に対応した選択肢から、電気を購入する魅力が増える。
メリット3:環境に優しい電気など、電気の特性からも選べる太陽光発電など再エネ系の電気を支援する など。
*デメリット
デメリット1:電力の安定供給への不安停電の頻度、故障時の対応等が大丈夫か?
既存事業者は、この不安を理由に、自由化に抵抗して来たがーー。
安定供給が出来るよう、既存電力会社が支援することとなっている。
デメリット2:電気料金の値上がりの可能性自由化が先行している欧州等では、安くなるどころか、値上がりしている事例も多いようだ。
*筆者の場合
筆者の場合、自家の月々の電気代は、結構な額になっているのだが、自由化になっても、目に見える程、安くなるとは思えず、暫く、様子見である。
また、集合住宅のため、マンション一括という選択もあり、個別の選択はやや難しいかもーー。